Pedro Humberto Allendeのピアノ曲リスト
1906
- Gavota ガボット
- Marcha 行進曲
- Sonata en Fa ソナタヘ長調
- Allegro vivace
- Adagio
- Minuetto
- Presto
1907
- Rondó alla Mozart モーツァルト風ロンド
- Sonidos Concomitantes, tema con variaciones 同時の音、主題と変奏
- Teclas negras 黒鍵
- Vals en Mi mayor ワルツホ長調
1908
- Rondó en Sol ロンドト長調
- Rondó en Re ロンドニ長調
1909
- Sonata en Do menor ソナタハ短調
- Sonata en Re mayor ソナタニ長調
- Minuetto メヌエット
- Polonesa ポロネーズ
- Rondó en La menor (Morceau) ロンドイ短調
1911
- Albumblatt アルバムの一葉
1915
- Preludio No. 1 前奏曲第1番
- Sonata en Sol menor ソナタト短調
- Tempo di vals, Gavota, Vals a cuatro manos 連弾のためのワルツのテンポで、ガボット、ワルツ
1916
- Hadvage-arnue, pieza post-futurista
1918-22
- 12 Tonadas de carácter popular chileno チリ民謡の性格の12のトナーダス集
- Lento - Vivo (1922)
- Lento - Vivo (1921)
- Lento - Vivo (1921)
- Lento - Vivo (1918)
- Allegretto - poco meno~come prima (1920)
- Lento - Vivo (1921)
- Lento - Vivo (1921)
- Lento - Vivo (1921)
- Lento - Vivo (1921)
- Lento - Vivo (1922)
- Lento - Vivo (1922)
- Lento - Vivo (1922)
1918-29
-1920
- De mi terruño 私の故郷の
1920
- Minué alla Ravel ラヴェル風のメヌエット
1920-1936
- Études (Estudios) 練習曲集
- Tranquillo (1922)
- Lento (1923)
- Allegretto (1929)
- Allegretto (1920)
- Molto allegro
- Andante - Allegro vivace
- Lento (1930)
- Moderato (1932)
- Andantino (1936)
1925
- Tempo di Minuetto メヌエットのテンポで
1930
- Preludio y fuga en sol menor 前奏曲とフーガト短調
1931
- Trozos infantiles 子供の小品
1932
- Berceuse 子守歌
1936
- Zarabanda y Minué per 2 piano 2台ピアノのためのサラバンドとメヌエット
- Gavota y Rondó per 2 piano 2台ピアノのためのガボットとロンド
1945
- Seis piezas a cuatro manos 連弾のための6つの小品
- Tempo di Marcia 行進曲のテンポで
- Tempo di Minuetto lento ゆっくりとしたメヌエットのテンポで
- Tempo di Gavotta ガボットのテンポで
- Tempo di Corrente, Tempo di Alemanda コレンテのテンポで、アルマンドのテンポで
- Tempo di Vals lento ゆっくりとしたワルツのテンポで
- Tempo di Rigodon リゴードンのテンポで
Pedro Humberto Allendeのピアノ曲の解説
1909
- Sonata en Re mayor ソナタニ長調
- Minuetto メヌエット
アジェンデは1906年から1915年にかけて4曲のピアノソナタを書いた記録が残されているが、うち出版されたのはこのソナタニ長調のメヌエット(何楽章かは不明)のみである。スペインのバルセロナで出版された楽譜の冒頭には「私の特別な友人で、尊敬する師フェリペ・ペドレルへ」と記されている(フェリペ・ペドレルはスペインの作曲家)。アジェンデは1910年にスペインとフランスを訪れていて、スペインのバルセロナではフェリペ・ペドレルに会ったとのこと。ニ長調、A-A-B-A'-B-A'-C-C-D-C-A-A-B-A'形式。後のアジェンデのピアノ曲とは異なるロマン派和声の作品で、穏やかな旋律が奏される。CとDは変ロ長調になる。1918-22
- 12 Tonadas de carácter popular chileno チリ民謡の性格の12のトナーダス集
アジェンデの代表作で、1923年にフランスのÉditions Maurice Senartより出版された。「トナーダ」とは「歌」という意味のスペインや南米の民族音楽の一つで、お祭りや結婚式、誕生日などといった行事で、ギターかハープの伴奏にのって唄われる叙情歌である。トナーダのリズムは各国によって異なるが、チリのトナーダは大抵6/8拍子で、ゆっくりした部分と速い部分の二部構成から成る。歌は三度音程の重唱のことが多い。アジェンデのこの組曲ではトナーダの形式に従い、ほとんどの曲が "Lento" のゆっくりした部分と "Vivo" の速い踊りの2部から成る。下に各曲の調を記したが、これはあくまでも一応であって、聴いた感じでは何調だがほとんど判らないことが多い。(ちなみに第1番→2番→3番→の順に、嬰ハ→嬰ヘ→ロ→と完全4度上の下属調に移っていく。また"Lento" の同主調で "Vivo" が奏される。)この不協和音や多調、7/8拍子とか5/4拍子の変拍子が、いわゆる西洋音楽とは一線を画した、独特のーこれがチリの先住民の民族音楽かと思わせるー雰囲気を醸し出している。彼の代表作だけあって、1925年に12曲のうち6曲がアジェンデ自身により弦楽オーケストラ用に編曲され、更に1930年に10、11、12番が、1936年に1、2、9番が管弦楽用に編曲された。
- 1922年作曲。Lentoは嬰ハ短調、7/8拍子、A-A-B-A形式。冒頭の中声部旋律に重なる後打ちの和音はレ-ファ#-ラで、いきなり多調で始まる神秘的な響き。Vivoは嬰ハ長調、6/8拍子。三度重音で奏される旋律は♮が多用されてハ長調っぽく、多調の響きだ。
- 1921年作曲。Lentoは嬰ヘ短調、7/8拍子、A-A-B-B-A形式。中声部で呟くように奏される自然短音階の旋律が陰うつ。Vivoは嬰ヘ長調、6/8拍子。ギターを思わせる九度や十度の和音にのって軽やかな旋律が奏されてやや明るい。
- 1921年作曲。Lentoはロ短調、5/4拍子、A-A-B-B-A形式。のっそりとした荷車曳きを思わせる伴奏にのって悲しい旋律が奏される(下記の楽譜)。5/4拍子としたことで、毎小節ため息をついているような間を感じさせている。Vivoはロ長調、6/8拍子。ド-ミ-ソとかソ-シ-レの和音が現れ完全に多調で、それがくすんだ雰囲気を醸し出し、リズムの軽快さと対照的である。
12 Tonadas de carácter popular chileno, No. III、1~6小節、Éditions Salabertより引用- 1918年作曲。Lentoはホ短調というよりミのフリギア旋法、9/8〜6/8〜9/8拍子の繰り返し。フリギア旋法の素朴な旋律がpppで奏される。Vivoはホ長調、6/8拍子。ここもずっとpppで囁くように弾かれ、左手で奏される中声部の対旋律がト長調なので多調だ。
- 1920年作曲。前半は Allegretto、6/8拍子、A-B-A-C形式。珍しくイ長調の爽やかな旋律だが、内声が時々半音階進行する。後半はpoco meno~come prima、イ短調、6/8拍子。悲しい踊りの雰囲気。
- 1921年作曲。Lentoはニ短調、6/8拍子、A-B-A形式。旋律のシはしばしば♮になるレのドリア旋法で、素朴な中に哀愁漂う調べである。Vivoはニ長調、6/8拍子。明るい響き。珍しく全曲臨時記号が少なくて分かりやすい旋律。
- 1921年作曲。Lentoはト短調、7/8拍子、A-B-A形式。所謂ハンガリー音階と呼ばれるソ-ラ-シ♭-ド♯-レ-ミ♭-ファ♯の音階を下る旋律が哀愁漂う。Vivoはト長調、6/8拍子。増三和音や経過和音、全音音階進行、速い3連16分音符の伴奏などが粋な響きで、アルベニスを思わせる(下記の楽譜)。
12 Tonadas de carácter popular chileno, No. VII、19~24小節、Éditions Salabertより引用- 1921年作曲。Lentoはハ短調、7/8拍子、A-B-A形式。呟くような旋律がひっそりと奏される。Vivoはハ長調、6/8拍子。右手には三度重音のハ長調旋律が断続的に現れるが、伴奏がレ♭-ソ♭-シ♭-ミ♭やレ♭-ラ♭-ド♭-ミ♭の変ト長調の和音で、多調の謎めいた響きである。
- 1921年作曲。Lentoはヘ短調、7/8拍子、A-B-A形式。哀愁ある旋律が奏される。Vivoはヘ長調、6/8拍子。踊りの掛け声のような左手シ♭-ミ♭のモチーフにのって、三度重音の跳ねるような旋律が現れる。
- 1922年作曲。Lentoは変ロ短調、7/8拍子、A-B-A形式。伴奏にミ-ソ-シの和音が混じる多調の上で、ちょっとバラード風の旋律が奏される。Vivoは変ロ長調、6/8拍子。特にこの部分は聴いてても調性が全然分からない複雑な響き。
- 1922年作曲。12曲の中でも一番長い曲。Lentoは変ホ短調、7/8拍子、A-B-A形式。4声から成るポリフォニックな作りで、アルトとテノールが反行する半音階進行で動き、複雑な響き(下記の楽譜)。Vivoは変ホ長調、6/8拍子、A-B-A形式。三度重奏の旋律はほぼト長調、中声部の対旋律はラ-ソ#-ファ#と動き強いて言えばイ長調の響き、左手伴奏はベース音こそミ♭だが、ラ-ド-ミの和音が頻発し、超複雑な多調で何と表現したらよいのか?。
12 Tonadas de carácter popular chileno, No. XI、1~6小節、Éditions Salabertより引用- 1922年作曲。Lentoは変イ短調、7/8拍子、A-B-A形式。暗い不協和音で始まるが、Bの部分はホ長調で少し色彩的。Vivoは変イ長調、6/8拍子。旋律はト長調に近く、これまたかなり複雑な多調である。
1918-29
- 6 Miniatures Grecques (6 Miniaturas griegas) 6つのギリシャのミニアチュール(細密画)
ギリシャの旋法を用いて、古代の音楽を想像して作ったような作品である。下記の旋法名は教会旋法でも有名だが、古代ギリシャの旋法と中世の教会旋法は全く別である。この組曲の楽譜は、Maurice Senart社より1928年(5曲の組曲)と1930年(6曲の組曲)の2回出版、またチリのConservatorio Nacional de Músicaより1927年に出版されていて、下記の通り、一部の曲が異なっている。
古代ギリシャの旋法 Maurice Senart 1928年版 Conservatorio Nacional de Música 1927年版
Maurice Senart 1930年版ファ#の五音音階 1番 ちょっとドビュッシーを思わせる曲。 レのフリギア旋法 1番 10/8拍子で、5連8分音符のアルペジオがハープのよう。 ソのヒポフリギア旋法 2番 2番 優雅な旋律が流れるような曲。 ファのヒポリディア旋法 3番 3番 右手旋律と、左手内声が掛け合うような曲。 ラのヒポドリア旋法 4番 4番 やや物悲しい雰囲気の曲。 シのミクソリディア旋法 5番 レが♭になるのでミクソリディア旋法の変形で、一番謎めいた響きの曲。 ファのヒポリディア旋法 5番 6番 祭儀的な踊りを思わせる曲。 1920-1936
- Études (Estudios) 練習曲集
アジェンデは1920年から1936年にかけて9曲のピアノのための練習曲を作曲した。それぞれの作曲年は、チリの音楽雑誌 "Revista musical chilena, Año I, Septiembre 1945, Nº 5" に載っているのを以下に記したが、5、6番は作曲年不明である。1〜6番は "Études" のタイトルでフランスで出版、7〜9番 "Estudios" のタイトルでチリで出版された。多くの曲でアルペジオや細かい動きの16分音符が出現して練習曲らしい趣であり、同時にアジェンデ独特の不協和音に満ちていて、分かり易いとは言えないものの、何とも個性的な練習曲集です。
- Tranquillo (1922)
A-A-A'形式。ハ長調ともハ短調ともつかぬ和音の旋律が静かにゆったりと流れる。- Lento (1923)
ト長調ともト短調ともつかぬアルペジオが静かに流れ、それにのって半音階で揺れるような息の長い旋律が奏される。- Allegretto (1929)
A-B-A'形式。ハープを思わせる16分音符アルペジオがファ#-ド#-ファ-ソ-シ-レ-ミをppで上下していて、多調の響きである。これにのって右手高音部に調性の定まらない旋律が奏される。中間部では旋律は左手になり、和音がA♭maj7→E7→A♭maj7→G7→C6と進行する所など印象派の響きを思わせる。- Allegretto (1920)
A-B-A形式。全曲、右手旋律に下降アルペジオが纏わりつくのが続く。Aは一応ホ短調で、Bは似た旋律がホ長調など目まぐるしく転調する。- Molto allegro
A-B-A'形式。右手や左手に断片的な旋律が現れ、この旋律の下や上を16分音符が駆け巡るようなパッセージを展開しており、冒頭がヘ長調であることも合わせて、ショパンの練習曲集作品10の8を思わせる(下記の楽譜)。
4 Études、1〜4小節、Éditions Maurice Senartより引用- Andante - Allegro vivace
A-B-A形式、ホ長調。Aは牧歌的な旋律が奏される。中間部BはAllegro vivaceになり、細かい動きの16分音符が続く。- Lento - Allegro vivace (1930)
A-B-A-C-A形式、ニ短調。Aは中声部で奏される陰うつな旋律で始まる。Bはアルペジオの和音が繰り返され神秘的な響き。CはAllegro vivaceになり、左手の旋律の上で、右手5連16分音符が疾風が吹きすさぶように奏される(下記の楽譜)。
Estudios 7-8-9, No. 7、27〜29小節、Revista de arte, Nº 15 (1937), Universidad de Chile, Facultad de Bellas Artesより引用- Moderato (1932)
ゆったりとした16分音符アルペジオの伴奏にのって、半音階進行で調性がはっきりしない旋律が奏される。- Andantino - allegro (1936)
A-B-A形式、イ短調。Aは左手中声部に民謡風の旋律が現れる。中間部BはAllegroになり、左手の速い16分音符にのって、Aの旋律を変形したようなモチーフが奏される。