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Miguel Bernal Jiménezについて
ホセ・イグナチオ・ミゲル・フリアン・ベルナル・ヒメネス José Ignacio Miguel Julián Bernal Jiménez は1910年2月16日、メキシコ中部のミチョアカン州モレリアに生まれた。父親はベルナル・ヒメネスが4歳の時に肺結核で亡くなってしまい、母親は外に働きに出ていて、幼い彼は主に母方の祖母に育てられたとのこと。7歳の時に地元の教会附属の小学校に入学し、そこでソルフェージュを習った。ローマ教皇ピウス十世(在位1903年~1914年)を冠した「ピウス十世合唱団 Orfeón Pío X」に10歳の時に入団。合唱団の先生に才能を認められて作曲などを習い、14歳の時には合唱曲や歌曲を作曲している。
1928年、地元のモレーリア宗教音楽学校は優れたオルガニストを育成させるため、ベルナル・ヒメネスをイタリアに留学させることとした。ベルナル・ヒメネスは母親と共に同年8月にイタリアに渡り、ローマにあるPontificia Scuola Superiore di Musica Sacraに入学し勉強を続けた。生計を立てるために、ローマでは無声映画のピアノ弾きなどをしていたとのこと。1933年に卒業するまでに彼はグレゴリオ聖歌、オルガン、宗教音楽作曲の3つのディプロマを取得した。
1933年にメキシコに帰国してからはモレリア宗教音楽学校の教師を務め、また首都メキシコシティなどでオルガン演奏会を催した。1936年にはモレリアのメキシコ青年カトリック協会司教区の教区長に就任。1937年にはサンニコラス・デ・イダルゴ大学の音楽学部教授に就任した。また1937年には初めての本格的な室内楽曲《植民地の弦楽四重奏曲 Cuarteto colonial》(後に副王の弦楽四重奏曲 Cuarteto Virreinalに改名)を作曲。更に1939年にはメキシコ初の宗教音楽雑誌 "Schola Cantorum" を創刊し、晩年まで記事を執筆した。
1940年1月、ベルナル・ヒメネスはMaría Cristina Macouzet Muñozと結婚。新婚旅行は大平洋岸の保養地マサトランに行ったとのこと。同年には管弦楽と合唱のための交響劇《タタ・バスコ Tata Vasco》(スペイン出身のカトリックの聖職者バスコ・デ・キローガ Vasco de Quirogaー彼は1530年代メキシコに渡り、ミチョアカン州の初の司教を務めたーについてをオペラのように音楽劇にした大作)を作曲。また同年には交響詩《ミチョアカン Michoacán》、室内オーケストラと打楽器・ピアノのための《メキシコの夜 Noche mexicana》を作曲。翌1941年に作曲された管弦楽曲《モレリアの夜 Noche en Morelia》と、1946年作曲の交響詩《メキシコ México》はチャベスの指揮でメキシコ交響楽団により初演された。
1944年にはモレリア少年合唱団を創立し、指揮者を務めた。1950年にはモレリア少年合唱団はメキシコ大統領を迎えてリサイタルを行っている。1945年には、約80年間に亘って閉鎖されていたモレリアのラス・ロサス音楽院 Conservatorio de las Rosas を再建した。また宗教音楽やオルガンの大家としていくつかの本を書いており、『グレゴリオ聖歌の伴奏』(1944)、『合唱の訓練』(1947)、『オルガンのペダルテクニック』(1952) などの著作がある。
1947年10月、ベルナル・ヒメネスはスペインのイスパニカ文化協会より交響劇《タタ・バスコ》上演の招聘を受け、妻を伴いスペインを訪問。《タタ・バスコ》は大掛かりな作品のため準備に時間を要し、翌1948年2月20日にマドリッドで上演された。その後ベルナル・ヒメネスはスペイン各地、フランス、オランダ、ドイツ、チェコスロバキア、オーストリア、スイス、イタリアを訪問している。
メキシコに帰国してからも、1949年には交響組曲《3つのメキシコからの手紙 Tres cartas de México》、1950年にはオルガン協奏曲《中世の祭壇画 Retablo medieval》、1951年にはバレー音楽《El Chueco》およびヴァイオリンとピアノのための《3つのタラスコの踊り Tres danzas tarascas》、1953年には交響曲《イダルゴ Hidalgo》などの作品を作った。
1953年、アメリカのニューオーリンズにあるLoyola大学音楽学部の教授に就任。翌1954年には音楽学部学部長となり、数カ月おきにメキシコとニューオーリンズを行き来する生活が晩年まで続いた。
1956年7月26日、グアナファト州レオンにて心筋梗塞で亡くなった。
ベルナル・ヒメネスの作品は上述の管弦楽曲が代表作で、その他バレー音楽、オルガン曲、歌曲、合唱曲なども作った。ピアノ曲は僅かで小品ばかりだが、組曲《ポスター Carteles》は良く出来た作品で、しかもメキシコ風味たっぷり。ベルナル・ヒメネスの才能の片鱗をこの作品から窺うことが出来ます。
Miguel Bernal Jiménezのピアノ曲リストとその解説
1931?
- Vals bagatela とるに足らぬワルツ
- Vals Costanza Gladowska グラドゥスカ・コンスタンツァのワルツ
1935
- Suite bachiana バッハ風組曲
- Allemanda アルマンド
- Gavota ガボット
- Museta ミュゼット
- Minuetto メヌエット
- Minuetto II メヌエット2番
- Giga ジーグ
- Sarabanda サラバンド
1935頃
- Cuatro invenciones 4つのインベンション
1947頃
- Minué de la niña 女の子のメヌエット
1948
- Los siete amigos de Juanito フアニートの7人の友達
- El viejo zapatero 年老いた靴屋
- Katiuska カチュースカ
- Lupita ルピータ
- El abuelo cazador 猟師のお爺さん
- La abuela cariñosa 優しいお婆さん
- El cubanito キューバ人のこども
- Liao Chai リィアオ・チャイ
- Ocho autógrafos juveniles, Suite para piano 8つの青年の自画像、ピアノのための組曲
上記の《Los siete amigos de Juanito》は1948年に作曲されたが、後にベルナル・ヒメネス自身が編集している音楽雑誌 "Schola Cantorum" に掲載するため一部改変して《Ocho autógrafos juveniles》の題名で出版されたとのことである。
- El esquiador スキーヤー
- La bailarina rusa ロシアの踊り子
- Lupita ルピータ
- Mi amigo el poeta 私の友人の詩人
- El cazador 猟師
- La vieja tía 私のおばさん
- La pandilla 遊び仲間たち
- Fu Man Chú フー・マン・チュー
- Naderías 些細なこと
1951 (1954?)
- Antigua Valladolid 古いバジャドリードの町
バジャドリードとは現在のミチョアカン州都モレリアの昔の名前。バジャドリードは、植民地時代には交通の要衝として栄えた古都で、1743年には南北アメリカ大陸で初めての音楽院であるラス・ロサス音楽院 Conservatorio de las Rosas が開院している。街の名前はメキシコ独立運動の英雄モレーロス (1765-1815) を讃え、1828年にモレリアと改名された。モレリアはベルナル・ヒメネスの生地であり、また現在モレリア歴史地区はユネスコ世界遺産に登録されている。バジャドリード時代の音色を二十世紀の作曲家が想像してみたらどうだろう?といった感じの作品で、バロック~古典派の響きの曲が並んでいる。
- Toccatina para la mano derecha 右手のためのトッカッティーナ
ニ短調。右手単音で、オルガンの思わせる16分音符の下降音階が繰り返される。- Minués encadenados つながった(2つの)メヌエット
2つのメヌエットが、Minue I(A-A-B-A-B-A-C-C-D-C-D-C-A-B-Aの形式、A, Bはハ長調、C, Dはイ短調)~Minue II(E-E-F-E'-F-E'-G-G-H-G'-H-G'-E-F-E'、E, Fはイ短調、Gはハ長調、Hは一応へ長調)~Minue I の一部再現(A-B-A)と、何とも繰り返しの多い曲。あまり起伏のない上品で落ち着いた曲調で、チェンバロの落ち着いた響きが、バジャドリードの街角に延々と流れているのを描写したのかな。- Gavota ガボット
A-B-B-C-D-D-A-Bの形式で、A, Bはヘ長調、Trioと記されたC, Dはニ短調。この曲も落ち着いた雰囲気だが、Aは12小節、Bは6小節、Cは8小節、Dは9小節と、不規則な小節数が聴いていて「おやっ?」と思わせる。- Humorada ユーモレスク
ニ短調、A-B-A-B-Aの形式。突風が吹くような速いテンポの曲があっという間に終る。1952
- Carteles ポスター
Cartelesとは、街角などに貼ってあるポスターのことで、ベルナル・ヒメネスがメキシコのいろいろな光景を「ポスターのように」描いた組曲である。演奏技巧的には中級くらいで、音の数もピアノ曲として多くない方だが、それにもかかわらず音楽の表現力は驚くほど豊かである。聴いているとメキシコの日常が瞼に浮かぶようなーしかもそれは単なる「観光ポスター」ではなく、メキシコ人でないと表現できないような、彼等の日常の生の姿を描いたような見事な作品である。
- Volantín ボランティン
ハ長調、A-B-A'形式。ボランティンとは国により「釣糸」とか「凧」とかの意味があるが、メキシコでは「回転空中ブランコ」とでも呼んだらいいのかー地面に10メートル位の柱を垂直に立て、柱のてっぺんから紐を垂らしブランコを付け、柱を回転させるとブランコに載った子どもは遠心力で斜めに浮き上がって回るーというメキシコの公園にかつてはあった遊具を指す。曲の冒頭は左手ドッソッドッソッというスタッカートのリズムにのって、子どもがワクワクドキドキしているような旋律が奏される。中間部Bは、左手スタッカートのリズムが倍速になり、右手は流れるような旋律で、正にボランティンの回転で子供が宙を回っているみたい。最後は冒頭の部分が1オクターブ上で奏される。- Danza maya マヤ族の踊り
一見ト長調だが、旋律はド・ファ抜きのペンタトニックで、伴奏もファは現われずヘキサトニックである。短い変奏曲形式で、マヤ民謡の "Konex-konex-palexén" が愛嬌たっぷり奏され、伴奏型を変えたり、転調していく。- Noche 夜
夜の静寂と神秘さを上手に描いた曲。ミ-シ-ファ-シというオスティナートの静かな伴奏のって調性の定まらない旋律が奏される。最後には、遠くで啼く鳥の音が聞こえたりと、夜の澄んだ空気をも感じさせる。- Huarache ワラッチェ
ト長調。ワラッチェとはメキシコのサンダルのこと。威勢の良い前奏に引き続き、左手に3連符混じりの踊りのような伴奏が現れ、右手に短二度の連打が強烈な旋律が奏される。さながら「サンダル踊り」の音楽みたい?。右手旋律は大体ト長調だが、左手伴奏がGの和音とF#の和音を繰り返していて響きも多調で、リズムの滑稽さも相俟って何とも面白い曲だ。- Sandunga サンドゥンガ
イ短調、A-B-A'形式。サンドゥンガとはメキシコ南部の舞踊で、冒頭は半音階進行の伴奏にのって、朗々と旋律が歌われる。中間部Bはイ長調になり、マリアッチのトランペットの響きを思わせる旋律が奏される。- Pordioseros 物乞い
ニ短調。寂しげな伴奏にのって、物乞いの声のような弱々しい旋律が奏される。続いて聴こえる高音部オクターブppで奏される連打音が、また哀れな響きを醸し出している。- Hechicería 魔術
一応ホ短調。左手オスティナートの伴奏にのって、魔術を唱えるような旋律が執拗に繰り返され、盛り上がっては静まる。後半は呪術師が踊りだしたような無気味な雰囲気。曲は最後は消えるように終る。- Parangaricutirimícuaro パランガリクティリミクアロ
変ロ長調、A-B-C-A形式。パランガリクティリミクアロとは、ミチョアカン州にかつてあった村の名前で、1943年のパリクティン火山の噴火による溶岩でこの村の大半が埋まって消えてしまった。(またParangaricutirimícuaroはメキシコで一番長い地名と言われており、メキシコでは早口言葉で知られている。)村の祭りを描いたような曲で、冒頭Aは左手伴奏トリル・右手旋律ともに16分音符で最初から賑やかな響き。続いて、行進曲風ブンチャッブンチャッの左手伴奏にのって、トランペットの勇ましい響きを思わせる旋律が現れる。この旋律は変ロ長調だが、左手伴奏は嬰ヘ長調~ト長調と多調で、その滑稽な響きは村の楽団の音程の狂ったヘタクソな演奏みたいで何とも面白い効果だ。その先も調子っぱずれの行進曲が続き、最後に冒頭の16分音符のモチーフが繰り返され、華やかに曲は終る。作曲年代不詳
- Antier, ayer y hoy 過去、昨日、そして今日
- Pastorela パストゥレル
- Preludio 前奏曲
- Narración 物語
- Danza indígena 先住民の踊り
- Rondó de los angelitos 幼児のロンド
- Entrée 中へ
Miguel Bernal Jiménezのピアノ曲楽譜
Conservatorio de las Rosas, A.C., Morelia
- Carteles
Peermusic Classical
- Antigua Valladolid
- Carteles
Centro Nacional de Investigación, Documentación e Información Musical
- Heterofonía: revista de investigación musical, No.114-115, 1996
- Lupita
- Mi amigo el poeta
- El cazador
- La vieja tía
Miguel Bernal Jiménezのピアノ曲CD
星の数は、
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IMÁGENES MEXICANAS PARA PIANO
Quindecim Recordings, QP054
- Tres danzas indígenas jaliscienses (José Rolón)
- Variaciones sobre una canción francesa (Joaquín Gutiérrez Heras)
- Carteles (Miguel Bernal Jiménez)
- Salmodia I (Alicia Urreta)
- Patios serenos (Gabriela Ortiz)
- Cuatro danzas mexicanas (Manuel M. Ponce)
- Simurg (Mario Lavista)
- Costeña (Eduardo Hernández Moncada)
- Muros verdes (José Pablo Moncayo)
Alberto Cruzprieto (pf)
1994年の録音。Tres danzas indígenas jalisciensesは3,2,1曲の順に収録されているのでお間違いないように。
Azulejos
Quindecim Recordings, QP 037
- Azulejos (Isaac Albéniz)
- Seis apuntes (Rodolfo Halffter)
- Dameros I (Alicia Urreta)
- Dos canciones y danzas, No. V, No. VI (Federico Mompou)
- Simurg (Mario Lavista)
- Suite "Antigua Valladolid" (M.Bernal Jiménez)
- Nocturno (Salvador Moreno)
- Secretos (Salvador Moreno)
- Dos estudios de concierto (Ricardo Castro)
- Tres canciones y danzas (Carlos Surinach)
Armando Merino (pf)
1999年のリリース。
Latin-American Recital, Vol. 1 Mexico
Piano21, P21 002
- Ecos de México - Capricho de concierto (Julio Ituarte)
- La ausencia - Romanza sin palabras (Julio Ituarte)
- Danzas nocturnas (Luis J. Jorda)
- Sobre las olas (Juventino Rosas)
- Valse caprice d'apres Sobre las olas de Rosas (José Rolón)
- Valse intime (José Rolón)
- 20 National airs arranged for piano (Ruben M. Campos)
- Canción Mexicana
- El tecolote
- El café
- Cielito lindo
- Son michoacano
- Gusto
- Canción Mexicana
- Jarabe del bajio
- Canción Mexicana
- La costeñita
- El aguanieve
- La barranca
- Mama Carlota
- El payo
- La paloma
- El patito
- La golondrina
- El butaquito
- Canción Mexicana
- El adios de fin de fiesta
- Caprice valse (Ricardo Castro)
- Danza criolla (Alberto Flacchebba)
- Primer Intermezzo (Manuel Maria Ponce)
- Tropicales: No. 3 - Danzas (Ernesto Elorduy)
- Variaciones - 1841 (José Antonio Gomez)
- Vals poético (Felipe Villanueva)
- Amar... Nocturno (Felipe Villanueva)
- Suite carteles: Danza maya (Miguel Bernal Jiménez)
- Adiós (Alfredo Carrasco)
Cyprien Katsaris (pf)
1996年の録音。メキシコの作曲家が13人登場。19世紀から20世紀初頭に活躍した作曲家が主で、(ChávezだのGalindoだのSantosだのの難しい作曲家がいないところが私好みの)親しみやすい作品ばかりで聴いていて楽しい。カツァリスの演奏だけにテクニックは申し分なく、Ecos de Méxicoなど楽譜に無いオクターブ下の音をバンバン加えたりと、ホロビッツかルービンシュタインか、という派手な演奏。
From Spain To Mexico
Brioso Recordings, BR148
- Sonata romantique (Joaquin Turina)
- Fantasia baetica (Manuel de Falla)
- Nocturno (Manuel de Falla)
- Carteles: Volnatin, Noche, Sandunga, Hechiceria, Parangaricutirimicuaro (Miguel Bernal Jiménez)
- Prelude No. 1 (From 10 Preludes) (Carlos Chávez)
- Valses intimos, Op. 12, No. 2 (Carlos Chávez)
- Extase, Op. 7, No. 1 (Carlos Chávez)
- Berceuse (Paginas sencillas), Op. 5, No. 2 (Carlos Chávez)
- Adelita y La cucaracha, Op.16, No. 1 (Carlos Chávez)
- Tema mexicano variado (Manuel M. Ponce)
Malinee Peris (pf)
2005年のリリース。マリネー・ペリス Malinee Peris (1929-) はスリランカ出身のピアニスト。
Miguel Bernal Jiménezに関する参考文献
- Ricardo Miranda. Carteles o Miguel Bernal en el Monte de los Olivos. Heterofonía No. 114-115, 1996, pages 74-81.
- Lorena Díaz Núñez. Miguel Bernal Jiménez. Catálogo y otras fuentes documentales. Consejo Nacional para la Cultura y las Artes, CENIDIM 2000.
- Lorena Díaz Núñez. Como un eco lejano... - La vida de Miguel Bernal Jiménez. Consejo Nacional para la Cultura y las Artes, CENIDIM 2003.
- José Antonio Alcaraz. ...en una música estelar, de Ricardo Castro a Federico Álvarez del Toro. Instituto Nacional de las Bellas Artes, CENIDIM 1987.