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Branca Bilharについて
ブランカ・ロペス・ジ・アルカンタラ・ビリャー Branca Lopes de Alcântara Bilhar は1891年11月17日（1886年生まれという資料もある）、ブラジル北東部のセアラー州クラト（またはフォルタレザ）に生まれた。叔父のサチロ・ビリャー Satyro Bilhar は、有名なギタリスト兼ショーロ作曲家である。彼女は８歳の頃からピアノやヴァイオリンを習った。ビリャーが14歳の時には両親は既に亡くなっていたが、叔母のD. Anna Bilharが、孤児となったブランカ・ビリャーを娘のように育てたとのこと。ビリャーは1909年頃にリオデジャネイロに移り住み、1911年に国立音楽学校 Instituto Nacional de Música に入学。ピアノをバホッゾ・ネットに師事し、ヴァイオリンや和声なども学んだ。1913年12月に国立音楽学校で催されたピアノコンクールでは、バッハの《平均律クラヴィーア曲集》やリストの《巡礼の年、第1年：スイス》から〈郷愁〉と〈オーベルマンの谷〉を弾き、一等の金メダルを受賞している。1915年と1916年にはピアノリサイタルを行い、好評を博している。
ビリャーの叔母D. Anna Bilharは「ルルドの聖母マリア女学校」をフォルタレーザに創立した教育者で、彼女がリオデジャネイロに建てた大邸宅は、地方からリオデジャネイロに音楽を学びに来ていた音大生が多数寄宿していて、宛らその家が一つの音楽院のようであったと。ビリャーもこの叔母の家に住み、ピアニストとして、またピアノ教師として活躍した。1921年６月の演奏会では自作のピアノ曲《踊り Bailado》（おそらく《先住民の踊り Bailado indígena》であろう）、《即興曲 Improviso》、《思い出 Reminiscência》などを弾いた記録も残っている。
1928年12月22日、ビリャーはリオデジャネイロで亡くなった。まだ37歳であったが、死因についての資料はない。
ビリャーの作品は主にピアノ曲であるが、他に弦楽とピアノのための《ロマンス Romance》、フルートとピアノのための《舟歌 Barcarolla》、《セレナーデ Serenata》、歌曲《果てしない郷愁 Eterna Saudade》、《Sabiás, sabiás》があるらしい。ビリャーのピアノ曲はサロン風の小品が主であるが、《奥地のサンバ Samba sertanejo》などはブラジル風味と、ピアニストとして活躍した彼女らしいピアニスティックな作りで楽しく聴けます。
Branca Bilharのピアノ曲リストとその解説
- Alayde, Valsa de salão アライジ、サロン風ワルツ
ヘ長調、A-B-A-C-A'形式。２オクターブを駆け上がる旋律で始まる、華やかなワルツ。Bは旋律が左手中音部〜右手高音部と対話のように引き継がれる。 - Allegro de concerto 演奏会用アレグロ
変ニ長調の派手な前奏に引き続き、変ロ短調の旋律がアルペジオを纏いながら奏される。後半は優雅なワルツになり、頻繁に転調していき、最後は変ニ長調の前奏が再現されて華やかに終わる。 - Ao violão ギターで
自筆譜の表紙には「私の叔父のギタリストSatyro Bilharの思い出に」と記されており、Satyro Bilharが亡くなった1926年頃に作曲されたと思われる。何とも切ない哀愁たっぷりの曲。イ短調。冒頭は中音部にギターの音色を思わせるアルペジオの下に陰うつな旋律が呟くように奏される。やがて左手シンコペーションのリズムが軽快に奏されると思ったら、左手はアルペジオに変わり右手高音に悩ましい旋律が切々と歌うように奏される。最後は冒頭の陰うつな旋律が回想されて終わる。 - Bailado indígena, Peça característica 先住民の踊り、性格的な小品
- Dedicação, Valsa lenta 献呈、ゆっくりしたワルツ
叔母のAnna Bilharに献呈。ヘ長調、A-B-A-C-A形式。落ち着いてしっとりとした感じのワルツ。Bはニ長調になり、８分音符の旋律が軽快。Cはイ短調になる。 - Ensaio de composição 作曲の試み
- Estudo de concerto 演奏会用練習曲
- Improviso (1916) 即興曲
へ長調、A-B-A-C-D形式。全曲レガートで奏される３連符の音形が続く曲で、３連符の中から旋律が見え隠れする。Bはいっときニ短調やト短調になる。Dはハ長調になるそのまま終わる。 - No sertão, Cateretê do noite (1927) セルタンにて、北部のカテレテ
- Os heroes de Copacabana, Hymno heroico (1922) コパカバーナの英雄達、英雄賛歌
- Perpetuum mobile 無窮動
- Primeira valsa ワルツ第１番
- Recordação sertaneja 奥地の回想
- Reminiscência... 思い出…
ホ長調、A-B-C-A-コーダの形式。リストのピアノ曲を思わせる技巧的な曲で、また曲中の細かい転調も多く、ビリャーがこの曲の作曲に力を入れたことが窺えるような作品である。ただ全体の曲としてのまとまり感に欠けているように個人的には思います。Aは左手16分音符重音のアルペジオにのって、伸びやかで歌うような旋律が奏される。Bの左手伴奏はアルペジオが２オクターブを上下し、その上で右手オクターブの旋律が情熱的に奏される。Cは変ニ長調〜変ホ長調と劇的に転調しながら、左手重音の伴奏・右手高音部のオクターブ和音の旋律が一層派手に奏される。 - Samba sertanejo, Peça característica 奥地のサンバ、性格的な小品
ブランカ・ビリャーのピアノ曲では代表作。叔母のAnna Bilharに献呈。イ長調、強いて言えばA-B-C-D形式で、無窮動で続くリズムにのっていろいろな旋律が即興的に現れる。リズムはサンバのようでもあり、また楽譜に "Poco Moderato" と記されていて程々のテンポで弾くとショーロの雰囲気でもある。Aはイ長調とイ短調が時々入れ替わるが、基本の和音は毎小節替わる I とV7だけなのに、旋律と伴奏の組み合わせが醸し出すリズムの躍動感と、多彩な旋律で何とも楽しい（下記の楽譜）。
Samba sertanejo, Peça característica、10-24小節、Irmãos Vitaleより引用
Bは、ちょっと哀愁を帯びたイ短調の旋律がカバキーニョの音色を思わせる伴奏にのって奏されるが（下記の楽譜）、イ長調のサンバのリズムや、突然のグリッサンドが時々挟み込まれるのが刺激的。Cはオクターブの賑やかな旋律で始まり、Dは内声に現れる旋律が４オクターブを下り、最後はイ短調で、アッチェレランドして熱狂的に終わる。
Samba sertanejo, Peça característica、75-84小節、Irmãos Vitaleより引用 - Serenata espanhola (1926) スペインのセレナーデ
A-B-A'形式。Aはギターをかき鳴らすようなモチーフに続いて、ニ短調の陰うつな旋律が奏され、時々ギターのモチーフが挟み込まれる。Bはニ長調で重音トレモロが奏され、イ長調になって勇壮な旋律が現れたりと華やか。A'は、Aの旋律が４小節だけイ短調で再現されるが、間もなくテンポを速めたコーダで終わる。
Branca Bilharのピアノ曲楽譜
Irmãos Vitale
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Casa Vieira Machado
- Improviso
- Os heroes de Copacabana, Hymno heroico
- Reminiscência...
Casa Bevilacqua
- Alayde, Valsa de salão
- Improviso
Branca Bilharのピアノ曲CD・LP
星の数は、
は是非お薦めのCD、は興味を持たれた人にはお薦めのCD、はどうしてもという人にお薦めのCDです。
Brasileira: Piano Music by Brazilian Women
Centaur Records, CRC 2680
- Prelúdio (Maria Helena Rosas Fernandez)
- Valsa (Maria Helena Rosas Fernandez)
- Cinco Peças sobre Mucama Bonita (Kilza Setti)
- Valsa-Chôro No. 2 (Adelaide Pereira da Silva)
- Suíte No. 2 (Adelaide Pereira da Silva)
- Corta-Jaca (Brazilian Tango) (Chiquinha Gonzaga)
- Meditação (Chiquinha Gonzaga)
- Atraente (Polka) (Chiquinha Gonzaga)
- Cenas Brasileiras (Nininha Gregori)
- Arabesco (Maria Luiza Priolli)
- Lundu Carioca (Maria Luiza Priolli)
- Suite Nordestina (Clarisse Leite)
- Samba Sertanejo (Branca Bilhar)
Luciana Soares (pf)
2003年の録音。
Mulheres Compositoras França - Brasil
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Piano solo
Piano a quatro mãos
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Sylvia Maltese (pf), Paola Tarditi (pf)
2009年の録音。
Valsas e Serestas (LP)
Clack, BR 23055
- Carinhoso (Pixinguinha / Arr. Radamés Gnattali)
- Remando (Ernesto Nazareth)
- Valsa original para violão (Mozart Araújo / Transc. Aloysio de Alencar Pinto)
- Valsa N.º 2 (Florzinha Emidyo Távora)
- Valsa lenta (Aloysio de Alencar Pinto)
- Lundu amazonense (Arnaldo Rebello)
- Ao violão (Branca Bilhar)
- Seresta (Aloysio de Alencar Pinto)
- Linda flôr (Henrique Vogeler)
- Valsa amazônica N.º 2 - Vitória régia (Arnaldo Rebello)
- Chuá chuá (Pedro de Sá Pereira)
- Valsinha do Marajó (Waldemar Henrique)
- Festa na cachoeirinha (Francisco Donizetti Gondim)
- Valsa para mão esquerda (Waldemar de Oliveira)
Gerardo Parente (pf)
1981年のリリース。
Sons da Terra do Sol (LP)
- Valsa seresteira (Elvira Drumond)
- Zingaresca (Paurillo Barroso)
- Improviso (Branca Bilhar)
- Reminiscências (Branca Bilhar)
- Dedicação (Branca Bilhar)
- Samba sertanejo (Branca Bilhar)
- Ninho desfeito (Antonio Gondim - Antonio Sales)*
- Papagaios de papel (Antonio Gondim - Augusto Campos)*
- A viola (Branca Rangel - Juvenal Galeno)*
- A cabocla (Branca Rangel - Juvenal Galeno)*
- A jangada (Aluysio Pinto - Juvenal Galeno)*
- Feitiço (Silva Novo - Beni Carvalho)*
- As tuas mãos (Silva Novo - Beni Carvalho)*
D'Alva Stella (canto)*, Nízia Diogo Maia (pf)
1980年頃のリリース。トラック１から６まではピアノ独奏、７から13までは歌とピアノ。ブランカ・ビリャーのピアノ曲を４曲も収録したアルバムは、目下このLPのみである。
