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Modesta Borについて

 モデスタ・ホセフィーナ・ボル・レアンドロ Modesta Josefina Bor Leandro は1926年6月15日、ベネズエラ北部のマルガリータ島フアングリエゴ Juangriego に生まれた。彼女の父親はギターやクアトロ(ギターに似た4弦の楽器)が弾け、また叔父は(後の)ベネズエラ交響楽団のヴァイオリニストであった。彼女は子どもの頃からギターとクアトロを弾き、14歳からピアノを習った。1942年には首都カラカスに出て、José Ángel Lamas高等音楽院でピアノ・和声・作曲・管弦楽法などをフアン・バウティスタ・プラサやビセンテ・エミリオ・ソホに師事して本格的に学んだ。また1948年から1951年までは国立民族学研究所で働き、民俗音楽の収集・採譜などの仕事に就いた。

 1951年、モデスタ・ボルの身体にギラン・バレー症候群と思われる四肢麻痺が現れ、約三年間の苦しい療養生活が続いた。後遺症で両手指は拘縮し、彼女はコンサートピアニストとしての活動を断念せざるをえなかったが、ソホの勧めで混声合唱曲《Balada de la luna, luna》(1953) を作曲し、この後は作曲家および音楽学者、教育者として活動していく。1953年にはDomingo Sánchez Piconneと結婚し、一男二女をもうけた。1959年には室内オーケストラのための《三楽章の組曲 Suite en tres movimientos》を作曲し、これによりJosé Ángel Lamas高等音楽院より「Maestro Compositor」の称号を授与された。

 学生時代よりベネズエラ共産党員であったモデスタ・ボルは、1960年に国際共産青年同盟の大会(開催国不詳)または国際女性デー(コペンハーゲン)出席のためヨーロッパに渡った。大会後にはモスクワを訪れ、アラム・ハチャトゥリアンに会った。ハチャトゥリアンは彼女が作曲した《ヴィオラソナタ》を聴いて感銘し、ソ連政府の奨学金でモデスタ・ボルはモスクワ音楽院で学ぶこととなった。夫と三人の子をベネズエラに残しての単身留学であったが、ハチャトゥリアンに作曲を師事するなどして、1962年にモスクワ音楽院を卒業した。

 モデスタ・ボルがベネズエラに帰国した1962年はキューバ革命直後であり、それに影響を受けたベネズエラ共産党は急進的になる一方、反共産主義のベネズエラ政権は共産党を非合法化していた。彼女は監視対象となり、また私生活でも1963年に離婚してしまった。1963年にはベネズエラ北東部のアンソアテギ州Lecheríasに転居し、地元の大学附属の少年少女合唱団の指揮をしていた。

 1964年にカラカスに戻ると、1965年にFernando Rodríguez Garciaと再婚し、一児をもうけた。かつての彼女の師であったビセンテ・エミリオ・ソホは政権党である民主行動党党員で、またソホは当時の大統領ロムロ・ベタンクールとも知り合いであった。ソホのとりなしで1965年、ボルはカラカスのJuan Manuel Olivares音楽学校の少年少女合唱団の指揮者の職に就き、1979年まで務めた。この時期に彼女は多くのベネズエラ民謡を合唱曲に編曲した。1966年には六人組女声合唱団 "Arpegio" を結成して、ボル自らが合唱用に編曲したベネズエラ民謡を録音した。1973年にはカラカスのJosé Lorenzo Llamozas音楽学校の作曲科教授に就任、1974年にはベネズエラ中央大学音楽学部長に就任した。1980年代にはキューバを3度訪れていて、1986年にハバナで開かれた「第2回国際現代音楽祭」では、彼女の作曲した《ピアノ協奏曲》が演奏され、また混声合唱のための《ベネズエラのソン Son venezolano》がキューバ国家賞を受賞した。

 1990年にカラカスでの全ての役職を辞し、ベネズエラ西部のメリダに転居。当地のロス・アンデス大学で作曲や合唱を指導し、合唱曲などを作曲した。1991年にはベネズエラ文化庁より音楽国家賞を授与された。

 1998年4月8日、メリダで亡くなった。

 モデスタ・ボルの作品の中心は合唱曲で、数十曲のオリジナルの合唱曲、二百曲以上のベネズエラ民謡の合唱編曲があり、ベネズエラ国内の合唱団にとっては欠かせないレパートリーになっている。また《ヴィオラソナタ》(1960)、《チェロとピアノのための組曲 Suite para cello y piano》(1961)、《ヴァイオリンソナタ》(1962)、《管弦楽のための序曲 Obertura para orquesta》(1962)、《金管五重奏のための組曲》(1967)、交響詩《ジェノサイド Genocidio》(1970)、弦楽四重奏のための《Imitación Serial》(1974)、《ピアノ協奏曲》(1982-83)、弦楽オーケストラのための《水彩画集 Acuarelas》(1986)、宗教曲ではカンカータを3曲作っていて、そのうちの1曲は《カンカータ・ヒロシマ》という題名である。

 モデスタ・ボルの合唱曲、歌曲、管弦楽曲を聴くと、和音進行などに所々現代作曲家らしい複雑な響きが現れるが、概ね耳に心地良く、すんなり理解できる作品が多い。一方、彼女のピアノ曲は初期のロマン派風の作品や、それに民族主義が加わったベネズエラらしい作品から、ソ連留学の影響を感じさせる中後期の複雑な和声〜彼女の場合は主に多調や、時に十二音技法も見られる〜によるピアノ曲まで、振れ幅の大きさを感じさせる。若い時にピアニストを目指していた彼女にとって、ピアノは自分の作曲技法をいろいろ試す場として最も身近な楽器だったのかもしれない。

 

Modesta Borのピアノ曲リストとその解説

作曲年代不詳(これらの作品は1954年以前の初期のものと思われます)

1954

1960

1961

1973-74

1978-80

1986

1987-95

1988-89

 

Modesta Borのピアノ曲楽譜

Fondo Editorial de Humanidades y Educación / Universidad Central de Venezuela / Yamaha musical de Venezuela

  • Clásicos de la literatura pianística venezolana.Vol. 2, Obras completas para piano de Modesta Bor
    • Preludio
    • Sonatina
    • Juangriego
    • Valse para piano
    • Pequeña danza para piano
    • Suite criolla
    • Tres piezas infantiles
    • Suite infantil
    • Cuatro fugas
    • Sarcasmos
    • Redoblante
    • Variaciones para piano

 

Modesta Borのピアノ曲CD

星の数は、は是非お薦めのCD、は興味を持たれた人にはお薦めのCD、 はどうしてもという人にお薦めのCDです。

Music of Modesta Bor
TON 4 Records

Vladimir Prado (pf)

 

Clara Rodríguez - Venezuela
Nimbus alliance, NI 6122

Clara Rodríguez (pf)

 2010年の録音。

 

Venezuela
Empresa Becoblohm

Clara Marcano (pf)

 

Latinoamérica en el Piano

  • Bailecito (Carlos Guastavino)
  • A la antigua (Ernesto Lecuona)
  • Nilse (Luis Morales Bance)
  • Mi Marioneta tiene tres Caracas (Eduardo Marturet)
  • Suite Criolla (Modesta Bor)
  • Bambuco (Adolfo Mejía)
  • Los Tres Golpes (Ignacio Cervantes)
  • Las Delicias del Edén (Ildefonso Meserón y Aranda)
  • Vals Venezolano (Rafael Maria Samuell, Hijo)
  • Mañanita Caraqueña (Evencio Castellanos)
  • 17 Piezas Infantiles: El Pajarito, Florentino cuando era becerrero (Antonio Estévez)
  • Intermezzo (Manuel María Ponce)
  • Joropo (Moises Moleiro)

Olga López (pf)

 1983年に録音されたLPからリマスタリングされたもの。

 

América del Sur, Color y Ritmo
AVR, CD 2007

  • Tres danzas Argentinas (Alberto Ginastera)
  • Reverie (O. Lorenzo Fernández)
  • Dansa negra (M. Camargo Guarnieri)
  • Momento II (VII Momentos) (Almeido Prado)
  • Canción triste (Enrique Soro)
  • Intermezzo No. 4 (Luis Alberto Calvo)
  • Suite breve (Luis Carlos Figueora)
  • Preludio No. 1 (Germán Borda)
  • Preludio II (Seis Preludios Incaicos) (Pablo Chávez Aguilar)
  • No. 4 Llaki Triste (Bosquejos Peruanos) (C. Levi de Stubbs)
  • La fuente (Moisés Moleiro)
  • Noche de luna en Altamira (María Luisa Escobar)
  • Suite criolla (Modesta Bor)
  • Secuencias mestizas (Beatriz Bilbao)

Rose Marie Sader (pf)

 

El Fin Del Silencio: Latin American Women Composers
Pixaudio

Antonio Oyarzábal (pf)

 2023年のリリース。

 

Modesta Borに関する参考文献