Francisco Bragaのピアノ曲リストとその解説
斜字は出版がなく、かつ手稿譜が現存せず、どんな曲だか不明な作品です。1886
- Canto d'amor, Romance sem palavras 愛の歌、歌詞のないロマンス
- Dolce far niente, Gavota 楽しき無為、ガボット
イ長調、前奏-A-B-A-C-Aの形式。和声的にはまだ古典的で、左手のブンチャンブンチャンという伴奏にのって右手に上品な旋律が奏される。Cはニ長調になる。後に、ブラーガ自身により管弦楽曲にも編曲された。- La Maritana, Habanera de salão マリタナ、サロン風ハバネラ
- Meiga 優しく
- Souvenir, Valse de salão 思い出、サロン風ワルツ
- Tymburibá, Tango ティンブリバ、タンゴ
ト長調、A-B-A-C-Aの形式。ハバネラの優雅なリズムにのって、伸びやかな旋律が奏される。- Valse romantique ロマンティックなワルツ
ホ長調、A-A'-B-B'-A-C-D-D-C'-A形式。Aは中音部オクターブで奏される旋律と控え目な後打ちの伴奏和音が、落ち着いて奥ゆかしい雰囲気。Bはロ長調になり、8分音符の旋律が艶やかに舞うように奏される。Cはイ長調、Dは嬰へ短調になる。1890
- Melancolia, Valsa 憂うつに、ワルツ
1892-1893
- Mimi, Gavota ミミ、ガボット
1894
- Première page d'un album, Rêverie アルバムの一頁、夢想
- Scherzo スケルツォ
ト長調、A-B-A'形式。無窮動の右手3連符和音が軽快な曲。Bはハ長調で、ひとしきり盛り上がる。1895
- Deuxième valse romantique ロマンティックなワルツ第2番
変ホ長調。フランス風味というか、ブラーガの師マスネの影響を感じさせる曲。ホンワカとした雰囲気と、風刺の効いたコケティッシュな感じがいい感じ。- Marcha dos Cariocas カリオカのマーチ
- Marionette, Gavota マリオネット、ガボット
ト長調、A-B-A'-C-C-A"形式。マリオネットの動きを描いたような愛嬌たっぷりの曲。Bはニ長調になり、旋律と伴奏のスタッカートが滑稽な感じ。Cはハ長調になり、大らかに歌うような旋律が奏される。- Romance sans paroles 歌詞のないロマンス
1897
- Morceau pour piano a quatre mains 連弾のための作品
- Serenade des fées 妖精のセレナーデ
1900
- Noturno 夜想曲
- Polonaise ポロネーズ
1901
- Madrigal pavane マドリガル・パヴァーヌ
ハ長調、A-A-B-A-C-C-A形式。上品でやや古風な雰囲気の曲。Cはへ長調になる。1906
- Corrupio, Valsa-Capricho コフーピウ、ヴァルサ・カプリーチョ
コフーピウ Corrupio とは手を組んでぐるぐる回る子どもの遊びのこと。また風車とか、コマ(独楽)いう意味もある。ハ長調、A-B-A-コーダの形式。ショパンの《小犬のワルツ》を思わせるような、右手の速い無窮動の旋律が華麗な曲。ブラガ自身により管弦楽曲にも編曲された。- O contratador de diamantes; reducção para piano ダイアモンド商人、ピアノ用編曲
- Gavote ガボット
- Minueto メヌエット
- Vol d'oiseaux, tempo de valsa 鳥の声、ワルツのテンポで
1906?
- O pranto da Bandeira (Paráfrase do Hino Nacional) 国旗の嘆き(ブラジル国歌によるパラフレーズ)
1907
- Mazurka lenta ゆるやかなマズルカ
1908
- Hymno (Hino) da confraternização Luso-Brasileira, para piano a 4 mãos ポルトガルーブラジル友好讃歌、ピアノ連弾
当時のポルトガル国王カルロス1世は、王妃と共に1908年にブラジルを訪問することが予定されていた。これを祝賀するためにブラーガはこの曲を作ったが、カルロス1世は同年2月1日にリスボンで暗殺されたため、この曲は使用される機会はなくお蔵入りとなってしまった。ピアノ伴奏の歌曲版の出版譜とピアノ連弾版の手稿譜が現存する。ブラジル国歌とポルトガル国歌を組み合わせた曲だが、ポルトガル国歌の方は現在の国歌ではなく、この当時の国歌《憲章讃歌 Hymno da Carta》を用いている。(ポルトガルの国歌は歴史的には3曲あって、1曲目は1809年から歌われた《愛国讃歌 Hymno Patriótico》、2曲目は1834年からの《憲章讃歌 Hymno da Carta》、3曲目が1911年に採用されて現在の国歌となっている《ア・ポルトゥゲーザ A Portuguesa》である。)変ホ長調。最初はプリモの右手が《憲章讃歌》の前半を、プリモの左手とセコンドが概ねブラジル国歌前奏の編曲を奏する。中間部はプリモが《憲章讃歌》の後半をユニゾンで、セコンドがプリモの伴奏またはブラジル国歌の歌の部分を奏する。最後はプリモの右手がブラジル国歌の歌の部分を、プリモの左手とセコンドが《憲章讃歌》を(一部で音価を2倍に拡大して)変奏する。1940
- Portugal-Brasil, Hino-marcha, para piano a 4 mãos ポルトガルーブラジル、讃歌ー行進曲、ピアノ連弾
この曲はピアノ連弾版の手稿譜が存在するが、吹奏楽版があるとする資料もある。現在のポルトガル国歌である《ア・ポルトゥゲーザ》とブラジル国歌を組み合わせた曲。へ長調。最初はプリモがポルトガル国歌前半をほぼそのまま和音を付け、セコンドがブラジル国歌前奏を(プリモの和音進行に合わせて)編曲している。中間部はプリモがブラジル国歌の歌の部分をそのままユニゾンで、セコンドがポルトガル国歌後半を音価を2倍に拡大して編曲している。最後はプリモがポルトガル国歌後半を両手和音で力強く、セコンドがブラジル国歌前奏を変奏して終わる。作曲年代不詳
- Álbum アルバム
楽譜には"Copyright 1910"とありブラーガの中期の作品であろう。
- Confidência 打ち明け話
ト長調、A-A'-B-B-A'形式。シューマンを思わせる抒情的な曲。- Valsa lenta ゆるやかなワルツ
変イ長調、A-A'-B-B-A'形式。3拍子のワルツだが左手の伴奏が1拍おきに2拍子になるのが流暢だ。Bは変ニ長調になる。- Serenata antiga 古風なセレナーデ
イ短調、A-B-A形式。Aはギターのつま弾きのような伴奏にのって、音階を上下するような旋律が奏される。Bではファが♯のドリア旋法になるのが曲名通り古風である。- Romance ロマンス
イ長調、第1曲同様の落ち着いた抒情的な曲で、子守歌のような穏やかで繊細な調べが美しい。- Amor aristocrata 貴人の愛
- Os lundus da marqueza 侯爵夫人のルンドゥ
侯爵夫人と言えばブラジルでは大抵、ブラジル皇帝ペドロ1世の側室であったサントス侯爵夫人ドミティリア (1797-1867) のことを指す。ルンドゥとはアフリカのアンゴラから連行されて来た奴隷達によって伝えられた踊りが起源とされているが、19世紀にスペイン、ポルトガルのファンダンゴが混ざり、庶民の踊りから上流階級の歌曲に様変わりしてきている(長調ながら哀調を帯びた歌が多いように思えます)。ブラーガのこの曲はシンコペーションを基本としたリズムがルンドゥなんだろうが、曲調は落ち着いていて、そしてとても優雅で、(私個人の思い込みですが…)真昼の夢か幻を見ているかのような美しく、かつ哀愁漂う曲です。変ロ長調、A-A-B-B-C-C-D-A形式。4小節の前奏に引き続き、楽譜に「愛らしく、上品に Amoroso Faceiro」と記された爽やかな旋律が現れる(下記の楽譜)。
Os lundus da marqueza、1~14小節、Mangione, Filhos & Cia.より引用
Bはヘ長調にガラッと転調してからも美しい。その後Cはへ短調になり3連8分音符混じりのもの悲しい部分を経て、Dは変ニ長調になり、天国を散歩しているみたいな平和な雰囲気(下記の楽譜)。
Os lundus da marqueza、62~75小節、Mangione, Filhos & Cia.より引用
曲はダカーポしてAの変ロ長調の主題が繰り返されて終わる。う~ん、この曲の良さは文章じゃうまく伝えられないな~。実際に聴いて頂くしかないです!。- Deliciosa, Polka 心地よく、ポルカ
- Divertimento ディヴェルティメント
ト長調、A-B-A'-C-A-B-コーダの形式。題名通りの軽妙で楽しい作品。Aは速いテンポで右手16分音符が絶え間なく続く常動曲。Bは一転してのどかに民謡を歌うような雰囲気で、Bの後半でAの16分音符が左手に現れそのまままAに突っ込んでいく。Cは変ホ長調で、別の民謡風の旋律が奏される。その後AとBが再現され、コーダは16分音符のモチーフが低音から高音へ駆け抜けて終わる。- Guerreiro 戦士
- Pastoral, Motivo Mystico 牧歌、神秘的な主題
- Primícias 初めて
- Primorosa, Polka 優美な、ポルカ
- Sonho de dante ダンテの夢