Eduardo Cabaのピアノ曲リスト
- Aires indios (de Bolivia) (ボリビアの)アイレス・インディオス
- Andantino
- Con reposo
- Reposado muy expresivo
- Calmado y expresivo
- Andantino (1934)
- Allegretto
- Medio alegre
- Andante (1933)
- Movido y expresivo (1940)
- Con alegría y justo ritmo (1948年に改作)
- Berceuse 子守歌
- Himno al sol, Versión de Eduardo Caba 太陽讃歌、エドゥアルド・カーバ編曲版
- Impresiones de Europa ヨーロッパの印象
- Francia フランス
- Italia イタリア
- España スペイン
- Ocho motivos folklóricos de los valles de Bolivia ボリビア盆地の8つのフォルクローレの主題
- Allegretto
- Alegre moderato y expresivo
- Alegre y ritmo justo
- Andante expresivo
- Allegretto expresivo
- Un poco lento y expresivo
- Moderato
- Alegre moderato
- ? .......
- Preludio en do sostenido menor (1949) 前奏曲嬰ハ短調
- Preludio en re mayor (1949) 前奏曲ニ長調
- Preludio en la menor, Rojo (1950) 前奏曲イ短調、赤
- Preludio en re menor, Azul (1951) 前奏曲ニ短調、青
- Serie Potosí ポトシ組曲
- Danza keshua ケチュアの踊り
- Monólogo keshua ケチュアの独白
- Leyenda keshua (1936) ケチュアの伝説
- Vals en re mayor ワルツニ長調
- Villa Imperial, vals 帝国都市、ワルツ
Eduardo Cabaのピアノ曲の解説
- Aires indios (de Bolivia) (ボリビアの)アイレス・インディオス
Aires indiosは強いて訳せば「インディヘナ(先住民の)の歌」という意味である。エドゥアルド・カーバは少なくとも下記の10曲のAires indiosを作曲したことが分かっている。楽譜の出版は、かつては1940年台にアルゼンチンで出版された1番から6番までのみであったが、2016年にボリビアで1-10番までの楽譜が出版されている。出版譜の冒頭には「荘厳なアンデス高原に、千年続く偉大な民族の精霊が漂い、巡礼者は素晴しい風景に足を止める」というカーバ自身の言葉が記されている。どの曲もアンデス一帯の民族音楽らしく、だいたい五音音階または六音音階で書かれていて、臨時記号の出現は少ない。曲中でレシタティーボ風の部分が度々現れるなど、テンポの揺れが頻繁な作りは、ボリビアの今迄のピアノ曲作曲家のシメオン・ロンカルやミゲル・アンヘル・バルダらによる、一定のテンポで曲が進む、言わば踊りにもそのまま使える音楽とは一線を画しており、ボリビアのピアノ音楽史上「踊りのための音楽」から「演奏を聴くための音楽」への転換点の作品とも言えよう。
- Andantino
ニ短調、A-B-A-B'-A'の形式。もの悲しいケーナの調べのような旋律で曲は始まる。旋律は1回目はf、2回目はppとアンデス山中に響くこだまを思わせ、透き通るような空気をも感じさせる、Bは嘆き続けるようなモチーフが繰り返される。- Con reposo
変ホ短調、A-B-A形式。冒頭は低音部オクターブのモチーフと中高音部和音のモチーフが交互に奏されて、儀式の光景のような荘厳な響きだ。完全四度・五度の響きに空気感を与えることが、ピアニストにとってペダリングを含め腕の見せ所だろう。中間部は踊りのような速いリズムとなり、左手16分音符アルベルティ・バスの伴奏にのって、右手に快活な旋律が現れる。- Reposado muy expresivo
変ホ長調、A-B-A形式。呟くように歌うような素朴な旋律で始まる。中間部は踊りのような速いリズムとなり、3連16分音符混じりの左手伴奏にのって叫ぶような右手旋律が奏される。中間部の終わりに現れる素早い旋律はサンポーニャの音色かな。- Calmado y expresivo
自筆譜では "El Charango"という曲名が消された跡がある。ト短調、A-B-A'形式。重々しいユニゾンの前奏に引き続き、嘆くような旋律がオクターブで朗々と奏される(下の楽譜)。
Aires indios (de Bolivia) 4, 1~9小節、Ricordi Americana. より引用
中間部はチャランゴの音色のような高音部和音スタッカートがリズムと共に特徴的な響きだ(下の楽譜)。
Aires indios (de Bolivia) 4, 19~24小節、Ricordi Americana. より引用- Andantino (1934)
リカルド・ビニェスに献呈。リカルド・ビニェス (1875-1943) はスペインのピアニストで、ドビュッシー、ラヴェルの多くのピアノ曲の初演を行ったことで有名。彼は1935年にウルグアイのモンテビデオでこの曲をを初演。その後も演奏会で度々カーバのピアノ曲を演奏したとのこと。ニ短調、A-A'-B-B'-Aの形式。荷車がゆっくり進むような左手伴奏にのって哀愁漂う旋律が歌われる。A'は少しヘ長調の響きとなる。Bは楽譜に "Danza alegre" と記されている通り、両手掛け合いの速いパッセージが現れる。- Allegretto
スペインの音楽評論家・作曲家のアドルフォ・サラサール (1890-1958) に献呈。カーバはスペイン留学中にサラサールと知己の仲となり、サラサールは「スペインにファリャがいるなら、ボリビアにはカーバがいる」とカーバを讃えている。嬰ハ短調、A-B-C-B-Aの形式。16分音符アルペジオで速いテンポの部分と、レシタティーボ風の歌の部分が交互に繰り返される。- Medio alegre
ホ長調、前奏-A-B-C-A'-B-C'形式。Aは踊りのリズムのようなモチーフが奏される。Bはホ短調になり、レシタティーボ風の調べで哀愁たっぷり。Cはホ長調になり右手の跳ねるようなアルペジオが現れ、六の和音(アジュテー)や属九の和音が艶やかは響きだ。- Andante (1933)
変ホ長調、A-B-A'-B'-A形式。Aはシ♭-ミ♭-ファ-シ♭....シ♭-ファ-ソ-ミ♭....と、鐘の音を模した響きで始まる。自筆譜の冒頭には題名の記載はなく、Andanteとしか記されていない。この曲の上記モチーフはロンドンのビッグ・ベン(ウェストミンスター宮殿の時計台)の鐘の音と似ているので、カーバのピアノ組曲 "Impresiones de Europa" のもう1曲であった可能性も考えられるが、ボリビアの作曲家Javier Parrado氏の作成したカーバの作品カタログによると、「このメロディーは少なくとも(ボリビアの)ラパスの2つの時計台 (Plaza MurilloとPlaza Uyuni) でも鳴らされている」などの理由で、Aires indios第8番と看做しているとのこと。また自筆譜の最後には、「荘厳なアンデス高原に・・・」という件の(第1番〜6番の出版譜で記された)言葉が書かれている。Bはハ短調になり一瞬劇的に盛り上がる。A'とB'は、AとBがそれぞれ変イ長調、ヘ短調に移調される。澄み切った空気を思わせるこの曲の感じからは、私もこの曲はロンドンよりボリビアを感じます。- Movido y expresivo (1940)
ハ短調、A-B-A'形式。Aは急速なアルペジオ和音が高音部から低音部へと段々降りてくる様は、アンデス高原に吹く冷たい風を思わせる。Bは素朴な旋律が奏される。- Con alegría y justo ritmo (1948年に改作)
ト長調、A-B-A'形式。。Aはシンコペーション混じりの軽快な旋律が奏される。Bは語りかけるようなレシタティーボ風の旋律が高音部に現れ、低音部にアンデスのこだまが響くような返しが聴こえる。- Berceuse 子守歌
ヘ長調。左手♪♩ ♪のリズムにのって静かに子守歌が歌われる。穏やかな雰囲気の中、一瞬ヘ短調(ファ-ラ♭-ド)の和音が現れるのが絶妙な効果。旋律は変イ長調に移調されて繰り返される。中間部はヘ短調になり悲しげな調べが現れる。- Himno al sol, Versión de Eduardo Caba 太陽讃歌、エドゥアルド・カーバ編曲版
変ホ短調。ペルーやボリビアでは有名な民謡のカーバによる編曲で、右手旋律・左手ベース共にオクターブで奏され荘厳な雰囲気。- Impresiones de Europa ヨーロッパの印象
- Francia フランス
変ト長調。ゆったりと語りかけるような雰囲気の曲。アジュテーや属九の和音が多用されていて、ドビュッシーの初期作品の響きにやや近いかな。- Italia イタリア
ヘ長調。これもゆったりとした旋律が奏され、時々、眩しい太陽を思わせるアルペジオが鳴る。- España スペイン
ロ短調。いかにもアンダルシア風の雰囲気の曲。- Ocho motivos folklóricos de los valles de Bolivia ボリビア盆地の8つのフォルクローレの主題
カーバがボリビア民謡8曲をピアノ曲に編曲したもの。各曲は大体1分前後くらいと短く、民謡の旋律に和音・伴奏を付けたシンプルな編曲だ。調を記すと、1番ーヘ長調、2番ーイ長調、3番ーロ長調、4番ーホ短調、5番ート長調、6番ート短調、7番ーヘ長調、8番ート長調。
- Allegretto
- Alegre moderato y expresivo
- Alegre y ritmo justo
- Andante expresivo
- Allegretto expresivo
- Un poco lento y expresivo
- Moderato
- Alegre moderato
- ? .......
「? .......」という謎のタイトルの曲で、下記の前奏曲に似た作風からカーバの晩年の作品と思われる。何とも余韻たっぷりの趣き深い小品。ニ長調、A-A'-A"形式。高音部で即興的に奏される五音音階の旋律は、さながら寒風吹きすさぶアンデス山脈にケーナの音色が響くような雰囲気。A'、A"と旋律は1オクターブずつ下がっては繰り返される。- Preludio en do sostenido menor (1949) 前奏曲嬰ハ短調
カーバは1949年から1951年にかけて4曲の前奏曲を作曲している。五音音階または六音音階が現れたり、哀愁漂う旋律だったりと "Aires indios" の流れを汲むような作品である。A-B-B形式。Aはラ抜きの六音音階の語りかけるような旋律が奏される。Bはギターのストロークのような和音の中から嘆くような旋律が奏される。- Preludio en re mayor (1949) 前奏曲ニ長調
A-B-A'形式。Aは跳ねるような上行音階が生き生きしている。Bはアルペジオの伴奏にのって、素朴で楽しそうな旋律が現れる。- Preludio en la menor, Rojo (1950) 前奏曲イ短調、赤
A-A-B-A-B'形式。Aは6/8拍子でタランテラ風。Bはレシタティーボ風の旋律がファ抜きの六音音階で奏される。- Preludio en re menor, Azul (1951) 前奏曲ニ短調、青
A-B-C-A形式。Aはゆったりと呟くような旋律が奏される。Bは太鼓を叩くような♩. ♪のリズムの左手伴奏にのって右手に五音音階の素朴な旋律が現れる。Cは高音部に繊細なアルペジオが奏される。- Serie Potosí ポトシ組曲
- Danza keshua ケチュアの踊り
- Monólogo keshua ケチュアの独白
- Leyenda keshua (1936) ケチュアの伝説
ニ短調、A-B-A'の形式。Aはもの悲しい旋律が3小節奏されては、風が吹きすさぶようなアルペジオが昇っては降りるーが繰り返される。Bは低音部オクターブのモチーフと中高音部和音のモチーフが交互に奏されて荘厳な響きだ。- Vals en re mayor ワルツニ長調
A-B-A-B'-C形式。ボリビアの香りたっぷりの曲の多いカーバの作品の中では珍しく垢抜けた雰囲気の、ちょっとフランス風のワルツ。B、B'、Cはト長調になる。- Villa Imperial, vals 帝国都市、ワルツ
「帝国都市」とはポトシ市の別名である。1910年にポトシ市が独立運動百年記念で発刊した "Álbum Centenario de la Villa Imperial de Potosí" という本にこの曲の楽譜が掲載された。ニ短調、A-B-A-B-C-D形式。哀愁漂う旋律が奏される。Bはニ長調になる。