Ricardo Castroのピアノ曲リスト
斜字は出版がなく、かつ手稿譜も現存しないが、当時の資料で演奏記録のみが残されている作品です。リカルド・カストロの作品の一部は初版(フランス語)とメキシコでの再販(スペイン語)では表記が異なることがあり、その場合は初版のフランス語の題名を記しました。このリストを見ると作品番号が2つの異なる曲に付されていたり、作曲年と作品番号の順がバラバラなことに気付かれると思います。リカルド・カストロの場合、作曲後十数年たって楽譜が出版された時に出版順に作品番号を振ったり、彼の死後、遺作に出版社が適当に作品番号を振ったりの場合が多く、作品番号はあまり意味をなしていない場合が多いです。
-1880
- Rigoletto, Transcrizione elegante per piano-forte sui migliori motivi dell' opera di Verdi, Op. 1 リゴレット、ヴェルディのオペラの最上のモチーフによるピアノのための優美な編曲、作品1
1880
- Amor filial, Fantasía poética, Op. 4 子の情愛、詩的な幻想曲、作品4
-1882
- Alegría del corazón, Vals birllante, Op. 6 魂の喜び、華麗なワルツ、作品6
- Fantasía sobre temas de Dinorah de Meyerbeer マイアベーア作曲「ディノーラ」の主題による幻想曲
- Josefina, Vals ジョセフィーナ、ワルツ
- Souvenir, Méditation, Op. 9 思い出、瞑想、作品9
1882
- Norma, Fantaisie de concert pour piano sur des motifs de l'Opéra de Bellini, Op. 8 ノルマ、ベッリーニ作曲のオペラのモチーフによるピアノのための演奏会用幻想曲、作品8
- Los campos, Pastoral, Op. 16 田園、牧歌、作品16
1882頃
1883頃
- Aires nacionales mexicanos, Capricho brillante, Op. 10 メキシコ民謡による華麗なる奇想曲、作品10
- Enriqueta, Mazurka エンリケータ、マズルカ
1884
- Capricho-Allegro カプリーチョ・アレグロ
- Deux romances sans paroles, Op. 37 2つの詩のないロマンス、作品37
- Ilusión 幻想
- Dulce recuerdo 甘い思い出
1885頃
- Première polonaise ポロネーズ第1番
- Deuxième polonaise ポロネーズ第2番
- Casta diva de Norma de Bellini, transcripción para mano izquierda sola ベッリーニ作曲の「ノルマ」の〈清らかな女神よ〉、左手のみのための編曲
- Himno Nacional del Brasil de Gottchalk ゴットシャルクのブラジル国歌
- Fantasía sobre Aida de Verdi ヴェルディ作曲「アイーダ」による幻想曲
- Fantasía sobre el Miserere de El Trovador de Verdi ヴェルディ作曲「イル・トロヴァトーレ」の〈ミゼレーレ〉による幻想曲
- Potpourri de aires nacionales de los Estados Unidos アメリカ合衆国の民謡によるメドレー
1885
- Himno nacional mexicano (transcrito para piano) メキシコ国歌(ピアノ編曲版)
- ¡No me caso!, Danza 私は結婚しません!、ダンサ
- Primero nocturno en si menor, Op. 48 夜想曲第1番ロ短調、作品48
- Segundo nocturno en fa# menor, Op. 49 夜想曲第2番嬰へ短調、作品49
1889頃
- Deux mazurkas, Op. 3 2つのマズルカ、作品3
- Nerveux 神経質に
- Gracieux 優しく
- Ballade en sol mineur, Op. 5 バラードト短調、作品5
- Trois pensées musicales, Op. 8 3つの音楽的考察、作品8
- Appassionato (Una hoja de álbum) (1888) 熱情(アルバムの一葉)
- Mélodie メロディー
- Menuet メヌエット
1890頃
1893頃
1894
- Deux morceaux, Op. 9 2つの作品、作品9
- Valse intime 親密なワルツ
- Minuetto メヌエット
1896
1898頃
- Scherzino, Op. 6 スケルツィーノ、作品6
1898-1902
- Polonaise, Op. 11 ポロネーズ、作品11
- Laendler, Op.12-1 レントラー、作品12の1
- Valse-bluette, Op. 12-2 青紫色のワルツ、作品12の2
- Valse-impromptu, Op.17 即興的なワルツ、作品17
1899
- Atzimba, Popurri para piano (オペラ)アツィンバ、ピアノのためのメドレー
- Atzimba, Intermezzo para piano solo y piano á cuatro manos (オペラ)アツィンバ、間奏曲(ピアノ独奏版および連弾版)
- Douze études pour piano d'après Clementi, Op. 7 クレメンティによるピアノのための12の練習曲集、作品7
1903
- Six préludes, Op. 15 6つの前奏曲集
- Feuille d'album アルバムの一葉
- Barcarole 舟歌
- Rêve 夢
- Sérènade セレナーデ
- Nocturne 夜想曲
- Etude 練習曲
- Près du Ruisseau, Op. 16 小川のそばで、作品16
1903-1904
- Suite, Op. 18 組曲、作品18
- Prélude - Moderato 前奏曲
- Sarabande - Andante サラバンド
- Caprice - Vivo カプリーチョ
- Valse rêveuse, Op. 19 夢想的なワルツ、作品19
- Deux études de concert, Op. 20 2つの演奏会用練習曲集、作品20
- Allegro
- Allegro animato
1904
1904-1905
- Deux morceux de concert, Op. 24 2つの演奏会用作品
- Gondoliera (Souvenir de Venise) ゴンドラ(ヴェニスの思い出)
- Tarantella タランテラ
- Esquisse-Mazurka スケッチーマズルカ
1906
- Cuatro danzas 4つのダンサ
- Coqueteria 小粋に
- Declaración 宣言
- Si... もし…
- En vano 空しく
- Valse arabesque, Op.26-1 ワルツーアラベスク、作品26の1
- Berceuse, Op. 26-2 子守歌、作品26の2
- Deux impromptus, Op. 28 2つの即興曲、作品28
- En forme de valse ワルツの形式による
- En forme de polka ポルカの形式による
- Improvisaciones, 8 danzas características mexicanas, Op. 29 即興曲集、8つのメキシコ風ダンサ、作品29
1906?-1907
- Deux pièces intimes, Op. 30 2つの内密な小品、作品30
- Valse sentimentale 感傷的なワルツ
- Barcarolle 舟歌
- Romance, Op. 31-1 ロマンス、作品31の1
- Valse amoureuse, Op. 31-2 愛のワルツ、作品31の2
- Menuet à Ninon, Op. 32 ニノンへのメヌエット、作品32
- Moment de valse (oeuvre posthume), Op. 34-1 ワルツの時(遺作)、作品34の1
- Petite marche militaire (oeuvre posthume), Op. 34-2 小さな軍隊行進曲(遺作)、作品34の2
- Berceuse (oeuvre posthume), Op. 36-1 子守歌(遺作)、作品36の1
- Valse mélancolique (oeuvre posthume), Op. 36-2 憂うつなワルツ(遺作)、作品36の2
- Barcarolle (oeuvre posthume), Op. 37-1 舟歌(遺作)、作品37の1
- Valse fugitive (oeuvre posthume), Op. 37-2 はかないワルツ(遺作)、作品37の2
- Menuet rococo (oeuvre posthume), Op. 38-1 ロココ様式のメヌエット(遺作)、作品38の1
- Plainte (oeuvre posthume), Op. 38-2 嘆き(遺作)、作品38の2
- Valse printanière (oeuvre posthume), Op. 39 春のワルツ(遺作)、作品39
- Menuet humoristique (oeuvre posthume), Op. 40 ユーモラスなメヌエット(遺作)、作品40
- Impromptu (oeuvre posthume), Op.41 即興曲(遺作)、作品41
- Scherzando (oeuvre posthume), Op. 42 スケルツァンド(遺作)、作品42
- Fileuse (oeuvre posthume), Op. 43 糸を紡ぐ人(遺作)、作品43
- Nostalgie (oeuvre posthume), Op. 44 ノスタルジー(遺作)、作品44
- Gavotte et Musette (oeuvre posthume), Op. 45 ガボットとミュゼット(遺作)、作品45
- Mazurka (oeuvre posthume), Op. 46 マズルカ(遺作)、作品46
- Thème varié (oeuvre posthume), Op. 47 主題と変奏(遺作)、作品47
- Dos danzas (Obra póstuma) 2つのダンサ(遺作)
- Soirées mondaines, Cinq valses légères 夜会、5つの軽やかなワルツ集
- Vibration d'amour, Valse lente 愛の振動、ゆっくりとしたワルツ
- Parfums de Vienne, Valse lente ヴィエンヌの香り、ゆっくりとしたワルツ
- Paris entrainant, Valse lente 心引き立つパリ、ゆっくりとしたワルツ
- Fleurs, femmes et chant, Valse lente 花々、女性、そして歌、ゆっくりとしたワルツ
- Frivole passionnée, Valse lente 浅薄な情熱、ゆっくりとしたワルツ
- Deux chants sans paroles (Canción sin palabras) 2つの無言歌
- Cuatro danzas 4つの舞曲集
- Allegretto
- Allegretto moderato
- Allegretto epressivo
- Allegro
- Mazurca en si menor (oeuvre posthume) マズルカロ短調(遺作)
- Mazurca mélancolique 憂うつなマズルカ
- Trozo en estilo antiguo (oeuvre posthume) 古風な様式の一片(遺作)
- Valse capricieuse 気まぐれなワルツ
- Scherzetto (Obra póstuma) スケルツェット(遺作)
- Danza frívola (Obra póstuma) くだらないダンサ(遺作)
- Danza de salón (Obra póstuma) サロン風ダンサ(遺作)
- Valse caressante (Vals cariñoso) 優しいワルツ
Ricardo Castroのピアノ曲の解説
1882頃
- Clotilde, Vals elegante, Op. 4 クロティルデ、優雅なワルツ、作品4
クロティルデとは女性の名前で、カストロの女弟子であるClotilde Herreraに献呈された。変イ長調、前奏-A-B-C-A'-D-E-F-E-A"-コーダの形式。舞踏会の音楽にぴったりの華やかなワルツで、メドレーのように次々と新たな旋律が現れてくる。Bは変ホ長調、DとEは変ニ長調、Fは変ト長調になる。カストロのまだ初期のピアノ曲らしく、右手は(技巧的な装飾はあるものの)旋律、左手はブンチャッチャッの伴奏と単純な書法で作られている。1883頃
- Aires nacionales mexicanos, Capricho brillante, Op. 10 メキシコ民謡による華麗なる奇想曲、作品10
1883年5月にベネズエラで開かれたシモン・ボリーバル生誕百年祭に、メキシコ政府はメキシコの多数の作曲家の楽譜をベネズエラ国立図書館へ送ったが、その中にこの曲の楽譜も含まれた。カストロの師のフリオ・イトゥアルテが書いたピアノ曲《メキシコのこだま(メキシコ民謡)、演奏会用奇想曲 Ecos de México (Aires nacionales), Capricho de concierto》と発想は同じく、メキシコ人にとってお馴染みの民謡を次々と繋げていく作品だが、《メキシコのこだま》より更に多数のメキシコ民謡が登場する。まだカストロが弱冠19歳の発展途上の時期の作品であり、和声的にはまだ工夫が今一つだが、名ピアニストのカストロらしく技巧的な華やかな曲となっている。(以下の文中で〈〉囲みは、楽譜に記載のある民謡名。)冒頭の変ニ長調の前奏のような部分は民謡 "El telele"。
Aires nacionales mexicanos, Capricho brillante, Op. 10、1~8小節、A. Wagner y Levien.より引用
続く変ニ長調の舟歌のように流れるような旋律は民謡〈El payo〉で、変奏の右手32分音符の装飾音がきらびやか。次の変ト長調は民謡〈El guajito〉でこれまた変奏が華やか。次のニ長調はハリスコ州の民族舞踊で有名なハラベ・タパティオ Jarabe Tapatío の中の〈El atole〉が高音部で、〈El perico〉が中音部で同時に奏される。この変奏はニ短調などに転調しながらffで強打される和音の旋律の上を、半音階スケールが雷のように下りてくるのが聴き所。曲はここで一旦静まり、ト長調の民謡〈La pasadita〉が優雅に奏される。次はまた陽気になりハ長調の民謡〈El palomo〉~ハラベ・タパティオと続く。この変奏の右手がまたリスト風で技巧的。続いてヘ長調でまた別の〈Jarabe〉の一節が現れる。最後はヘ長調のまま民謡〈La tapatia〉、〈Zapateado〉が一瞬奏された後、ハラベ・タパティオが陽気に奏され、最後は民謡〈El perico〉が熱狂的に奏され、両手オクターブ連打で終る。1885頃
- Première polonaise ポロネーズ第1番
変イ長調、前奏-A-A-B-C-C-D-A-B-C'-A'形式。華やかな響きの曲。前奏は高音部にポロネーズのリズムが現れ、三度重音の半音階下降が煌びやかに鳴り響く。Aは堂々とした雰囲気の旋律が奏される。Bはハ短調から頻繁に転調する。Cはニ長調になり優美な旋律に始まり、オクターブの華やかな繰り返しとなる。Dは深刻な旋律が嬰へ短調で始まるが、間もなく前奏で用いられた華やかな三度重音を経てAに戻る。C'は変ニ長調で奏され、最後のA'はコーダの性格で、Aの旋律はテンポを速め、分散和音が盛り上がって奏されて終わる。1885
- ¡No me caso!, Danza 私は結婚しません!、ダンサ
元はピアノ伴奏の歌曲だが、(おそらく同年に)ピアノ独奏譜も出版された。ニ短調、A-B-C形式。愛嬌たっぷりの歌。Bはへ長調、Cはイ長調になって終わる。- Primero nocturno en si menor, Op. 48 夜想曲第1番ロ短調、作品48
ロ短調、A-A'-A"形式。物悲しげなモチーフが現れ、いろいろな声部に現れつつ展開される。- Segundo nocturno en fa# menor, Op. 49 夜想曲第2番嬰へ短調、作品49
嬰ヘ短調、前奏-A-B-A'-コーダの形式。Aは寂しげな旋律が奏される。Bは六度重音の旋律が劇的に盛り上がって奏される。1889頃
- Ballade en sol mineur, Op. 5 バラードト短調、作品5
ト短調。演奏時間約10分の大曲。B♭-C♯-F♯-Gという陰うつなモチーフと、8分音符+4分音符交互のモチーフが展開されていく。音作りはショパンのバラードやスケルツォの影響を強く感じます。- Trois pensées musicales, Op. 8 3つの音楽的考察、作品8
- Appassionato (Una hoja de álbum) (1888) 熱情(アルバムの一葉)
この第1曲は1889年に〈Una hoja de álbum〉の曲名でスペインの音楽雑誌「Ilustración musical hispano-americana」に楽譜が掲載された。その後の1903年に〈Appassionato〉の曲名に変えられて、フランスのアルフォンス・ルデュック社から第2、3曲と共に出版された。嬰ト短調。切ない旋律が、後打ちの伴奏にのって奏され、情熱的に盛り上がる。- Mélodie メロディー
ト長調、A-B-A'-B'-コーダの形式。アルペジオ混じりの優美な旋律が歌うように奏される。- Menuet メヌエット
嬰ト短調、A-B-A-C-A-B-A形式。旋律は度々オクターブになる重々しい響きのメヌエット。Cは変ニ長調になる。1890頃
- Valse de concert, Op. 25 演奏会用ワルツ、作品25
作品番号からは1904-1905年の作曲と推定されるが、一方1890年にカストロ自身がこの曲を演奏したとする記録がある。イ長調、A-B-A'-C-D-C'-A-B-A"-コーダの形式。題名通りの演奏会向きの華やかなワルツ。Aのポリフォニックな旋律から華やかで、中間部のC(ニ長調)、D(ヘ長調)は落ち着いて優雅な響きになる。1893頃
- Caprice-Valse (Vals Capricho), Op. 1 (カプリース・ワルツ)ワルツ・カプリーチョ、作品1
この作品以前にカストロは多数の曲を発表し楽譜も出版されているが、何故この曲が「作品1」なのか?。この曲は既に1894年1月にカストロ自身の演奏で米国ニューヨークで初演されていたが、ドイツの楽譜出版社Friedrich Hofmeister社が1901年にこのCaprice-Valseを出版した。これがカストロにとってヨーロッパでの自作の初出版だったらしい。そのため作曲家としてのヨーロッパデビューのこの曲を出発点と考えて、(それ以前の作品は横へ置いておいて)1901年の出版時にこの曲を「作品1」としたのかもしれない。作品は超絶技巧的!で、ともかく派手さで聴かせる曲?。ホ長調、前奏-A-B-A-C-D-E-D-A-B-A-コーダの形式。16~32分音符の両手のアルペジオによる前奏に引き続き、VALSと記された明るい右手の主題が始まる。旋律の随所に3~4オクターブの速い音階やアルペジオが上ったり下ったりのてんこもりで、耳には心地よいが弾くのは大変。中間部のCはハ長調、Dはハ短調、Eは変イ長調になる。コーダのGrandiosoの部分はfffで華やかになり、リスト風の両手オクターブ連打で終わる。昔のカタログに拠るとオリジナルのピアノ独奏に加え、ピアノと管弦楽用編曲版や2台ピアノ版編曲もある。1894
1896
- Chant d'amour 愛の歌
1896年にメキシコの楽器楽譜店Wagner y Levienがメキシコシティにコンサートホールを造ったが、そのこけら落とし公演で、カストロ自身のピアノ演奏により初演された。ロ長調、A-B-C-A'形式。チェロのような中声部の息の長い旋律に、ハープのようなアルペジオが纏わリつく。Bは変ロ長調になり、リストの「愛の夢第3番」を思わせるパッセージだ。再現部A'は三段楽譜となり、旋律はオクターブ和音の強奏で、伴奏のアルペジオも16分音符~32分音符と派手々々。随分と大袈裟な「愛の歌」だな~。
Ricardo Castro, Obras escogidas Vol. II, Canto de amor、79~82小節、Ediciones Mexicanas de Músicaより引用1898-1902
- Polonaise, Op. 11 ポロネーズ、作品11
嬰ト短調、A-B-A-C-D-C-A-B'-A形式。最初のAの部分から三度重音の高音の旋律が華やか。CとDは変イ長調になる。旋律と対旋律のポリフォニックな絡み、ショパン顔負けの目まぐるしい転調、ピアノ技法など、幾つもの点からカストロの作曲技法の高さを感じさせる。ただ曲全体に漂う詩情というか、何かその辺が本家ショパンにはかなわなかったかな‥‥。- Laendler, Op.12-1 レントラー、作品12の1
レントラーとは南ドイツからオーストリアにかけての民族舞踊で、ワルツの起源の一つとも言われている。ホ長調、A-B-B'-A'形式。左手のオクターブ、右手の六度重音の響きが華やかな曲。最後のA'はハ長調になる。- Valse-bluette, Op. 12-2 青紫色のワルツ、作品12の2
二長調、A-A-B-A'形式。ゆったりとした優雅なワルツ。Bの後半とA' は、こってりとしたリスト的な装飾音が入る。この曲はカストロ自身により管弦楽曲にも編曲された。- Valse-impromptu, Op.17 即興的なワルツ、作品17
ロ長調。演奏時間は約7分かかる。A-B-C-A-D-E-D'-A'-B'-C'-A"の形式で、色々な主題が現れては転調していく、物語のような曲。カストロお得意の、高音部で音階や装飾音が上へ下へと舞うのがきらびやかな曲。1903
- Six préludes, Op. 15 6つの前奏曲集
カストロがパリ留学中に知り合った、作曲家・ピアニストのセシル・シャミナードに献呈された。カストロの作品の中では技巧的には比較的中級レベルである。
- Feuille d'album アルバムの一葉
イ長調。20小節の短い曲。アルペジオの伴奏にのって穏やかな旋律が奏される。- Barcarole 舟歌
イ短調、A-B-A-B'形式。流れるような音階の伴奏にのって、哀愁漂う旋律が奏される。Bはハ長調に始まり、転調をしつつ劇的に盛り上がる。B'はイ長調になる。- Rêve 夢
変イ長調、A-A'形式。5/4拍子の穏やかな旋律が静かに奏される。- Sérènade セレナーデ
変ロ長調、A-B-A-B'形式。軽やかな旋律に、ギターのストロークを思わせる前打音のアルペジオが纏わる。Bはニ長調に始まり、転調が多く、重音の16分音符の連続が技巧的。- Nocturne 夜想曲
変ロ長調、A-B-A'-コーダの形式。息の長い旋律が静かに奏されるが、所々に現れるレシタティーボ風の装飾音がショパン風。- Etude 練習曲
ホ短調、A-A'-コーダの形式。3連符が無窮動に左手→右手と駆け抜けるように奏される。- Près du Ruisseau, Op. 16 小川のそばで、作品16
カストロがパリでピアノを師事したテレサ・カレーニョに献呈。カレーニョのピアノ曲《小川、サロン風練習曲第1番 Le ruisseau, 1re étude de salon、作品29》への返礼で作ったらしく、ピアノの名手カレーニョに捧げるに相応しい、リカルド・カストロの作品の中でも際立って技巧的な作品だ。カストロ自身のピアノ演奏により、1904年4月にパリで初演された。A (変ト長調)-B (ヘ長調)-A' (変ト長調)-B' (変ト長調)の形式で、A、Bの2つの主題から成るソナタ形式ともとれる。冒頭は小川の流れを思わせる右手重音16分音符の下で、左手中音部に伸びやかな旋律が奏される。重音16分音符は左手に受け継がれたり両手で弾かれたりと結構技巧的(ショパンのエチュード作品25-8といい勝負だ、下記楽譜)。レシタティーボ風のBを経て、再びあらわれるA'は、幅広い音域の左手アルペジオにのって、右手オクターブ和音の旋律が華やか。最後はリスト風の32分音符音階が駆け回り静かに終る。
Près du Ruisseau, Op. 16、10~12小節、Friedrich Hofmeister.より引用1903-1904
- Suite, Op. 18 組曲、作品18
カストロのヨーロッパ留学の援助をしてくれた作家で教育芸術大臣のフスト・シエラに献呈。全体的にバロック音楽へのオマージュを感じさせる組曲で、曲想からして彼が作曲に力を入れたことが窺える。
- Prélude - Moderato 前奏曲
嬰ヘ短調。冒頭の旋律が繰り返すうちにオクターブに、2オクターブにと厚みを増し、劇的にアルペジオと和音が鳴りまくる曲。- Sarabande - Andante サラバンド
変二長調、A-B-A'-B-A'形式。ゆったりとした曲。- Caprice - Vivo カプリーチョ
嬰ヘ長調。無窮動に16分音符がずっと走り回り、やや一本調子の曲だがピアニスティックだ。- Valse rêveuse, Op. 19 夢想的なワルツ、作品19
変ト長調、A-B-A'-C-A-B-A'形式。幸せな夢を見ているような、ほんわかと気持ちよいワルツ。Cはロ長調になる。- Deux études de concert, Op. 20 2つの演奏会用練習曲集、作品20
2曲共、ヴィルトゥオーゾ・ピアニストでもあったカストロが作曲したに相応しい、きびきびとした隙のない練習曲で、技巧的にも高度でショパンの練習曲の中に入っていても遜色のないように思える傑作です。
- Allegro
嬰ヘ短調。短いながらもソナタ形式で書かれていて、第1主題は二度~六度のせわしない16分音符重音の連続、第2主題はイ長調で落ち着いたメロディーが美しい。その後第1主題が短く展開され、再現部で嬰ヘ短調の第1主題、嬰ヘ長調の第2主題が奏され、最後に第1主題が嬰ヘ長調で変奏され終る。- Allegro animato
ハ長調、A-B-A'-B'形式。軽快な16分音符の重音混じりの音型が延々と続く曲。Bは嬰ト短調の左手アルペジオにのって劇的な旋律が奏される。その後また16分音符の音型が繰り返され、B'はハ長調のまま劇的な旋律が繰り返され終る。1904
- Menuet pour orchestre d'archets, Reducción pour piano, Op. 23 弦楽合奏のためのメヌエット、ピアノ編曲版、作品23
《弦楽合奏のためのメヌエット》が原曲で、作曲者自身によりピアノ編曲された。ト長調。上品で落ち着いた曲。1906
- Cuatro danzas 4つのダンサ
出版譜には「Paris, Mayo 1906」と記されており、カストロがパリに留学していた終り頃の作品。第1曲Coqueteriaはハ長調の明るい曲。第2曲Declaraciónはロ短調の感傷的な旋律が歌われる。後半はロ長調になり甘い響きに。第3曲Si...はホ短調~ホ長調で、楽譜では曲中に出てくるシの音に"si"と書かれてある。第4曲En vanoはニ短調のやはり感傷的なハバネラで、後半はニ長調になる。全体的に「メキシコ・ロマン派」の流れを汲んだような組曲で、ほのかに漂うメキシコ風味?がいい感じである。それにしてもこの曲や作品29など、メキシコ風舞曲の作品になると、曲の雰囲気はいいのだが書法が保守的になって、カストロの他のピアノ曲で見られる目まぐるしい転調や技巧的な書法が影を潜めてしまう。彼が《ポロネーズ》や《演奏会用練習曲》で用いた華麗なピアニズムで、メキシコ風の大作を作曲してくれたならばさぞかし‥‥、と思わずにはいられない。
- Coqueteria 小粋に
- Declaración 宣言
- Si... もし…
- En vano 空しく
- Valse arabesque, Op. 26-1 ワルツーアラベスク、作品26の1
変イ長調、A-B-A'形式。ちょっと気取った、お洒落な雰囲気の曲。Bは変ニ長調になる。- Berceuse, Op. 26-2 子守歌、作品26の2
変ロ長調、A-B-A'形式。ほぼ全曲静かに奏される。夢見るような雰囲気で、装飾音がちりばめられる。Bは変ト長調になる。- Deux impromptus, Op. 28 2つの即興曲、作品28
- En forme de valse ワルツの形式による
ハ長調、A-B-B'-A'形式。旋律は優雅だが、17小節目以降は8分音符の半音階混じりの対旋律が無窮動に続くのが華やかで、カストロらしい曲。BとB'はイ短調に始まり、即興的に転調していく。- En forme de polka ポルカの形式による
イ長調。A-B-A'-C-D-A-B-A"形式。3連16分音符が所々高音部で舞う、華やかな雰囲気のポルカ。Cはヘ長調に始まり、Dにかけて頻繁に転調する。- Improvisaciones, 8 danzas características mexicanas, Op. 29 即興曲集、8つのメキシコ風ダンサ、作品29
短い8つの小品から成り、全曲弾いても8分程の短い曲集。カストロのピアノ曲の中では技巧的に中級レベル位で、アマチュアでも弾けそう。全曲ともA-B形式から成り、多くの曲で短調から同主調の長調に変るのがラテンっぽく、1、2、4番あたりはリズムや旋律に仄かにメキシコ風味を感じさせる。1番:イ長調で、前半はヘミオラ混じりの6/8拍子、後半は2/4拍子で左手に現れる前打音が愛嬌あって面白い。2番:変ロ短調~変ロ長調で、後半の雰囲気はメキシコ民謡風。3番:ロ短調~ロ長調で舟歌風、後半のロ長調で内声に旋律が現れる所は美しい。4番:ト短調~ト長調で、後半は6/8拍子と2/4拍子が交互に変わるのがいい感じ。5番:イ短調~ハ長調でポルカ風。6番:嬰ヘ短調~嬰ヘ長調で、6連16分音符がずっと流れるように続く。7番:ハ短調~ハ長調で、右手旋律は2声から成っている。後半はfffまで盛り上がる。8番:ホ短調~ホ長調で、前半はちょっとシューマンっぽいが後半は3連符混じりとなり陽気に。1906?-1907
- Deux pièces intimes, Op. 30 2つの内密な小品、作品30
- Valse sentimentale 感傷的なワルツ
変イ長調、A-B-A'形式。甘い恋の思い出の感傷に浸っているのかな?、と思わせるような、ゆったりとした旋律のワルツ。- Barcarolle 舟歌
変ト長調、A-B-A'-コーダの形式。左手の伴奏にのって優雅な旋律が歌われる。旋律に纏わりつく前打音や装飾音は水の煌めきを描写しているのかな。- Romance, Op. 31-1 ロマンス、作品31の1
ト長調、A-B-A'-コーダの形式。Aは心が和むような旋律が穏やかに流れる。Bはニ長調になる。A'は左手伴奏が16分音符になり、何とも美しい。- Valse amoureuse, Op. 31-2 愛のワルツ、作品31の2
ト長調。A-B-A'形式。和やかな響きのワルツ。- Moment de valse (oeuvre posthume), Op. 34-1 ワルツの時(遺作)、作品34の1
ト長調、三部形式。愛らしい響きのワルツ。中間部なニ長調になる。- Berceuse (oeuvre posthume), Op. 36-1 子守歌(遺作)、作品36の1
「遺作」とあるが、初版はカストロ生前の1907年1月にメキシコの雑誌「El Mundo Ilustrado」に楽譜が掲載されている。ト長調、A-B-A'-コーダの形式。12/8拍子で、揺りかごが揺れては止まる様を描いたような優しい曲。- Valse mélancolique (oeuvre posthume), Op. 36-2 憂うつなワルツ(遺作)、作品36の2
嬰ハ短調、A-A-B-A-C-A-B-A形式。切ない旋律のワルツが奏される。Bはイ長調で郷愁を誘うような雰囲気。Cは変ニ長調になり子守歌のよう。- Valse fugitive (oeuvre posthume), Op. 37-2 はかないワルツ(遺作)、作品37の2
ト長調、A-B-C-A'-B'形式。明るい中にも、一抹のやるせなさを漂わせるワルツ。- Plainte (oeuvre posthume), Op. 38-2 嘆き(遺作)、作品38の2
ヘ長調、A-B-A'形式。Aの部分はppで奏される穏やかな旋律で、長調ながらそこはかとなく哀愁が漂う。Bはイ短調になり、左手アルペジオの伴奏にのって嘆くような旋律が歌われる。- Valse printanière (oeuvre posthume), Op. 39 春のワルツ(遺作)、作品39
変ロ長調、A-A-B-A-C-D-C-D-A-A-B-A'形式。上下にひらひらと舞う旋律が爽やかで春らしい、喜びの雰囲気に満ちたワルツ。Bは変ホ長調で優雅、C, Dは変ト長調で華やかで明るい。- Impromptu (oeuvre posthume), Op.41 即興曲(遺作)、作品41
ヘ短調、A-B-A'形式。右手の旋律に艶やかなアルペジオが纏わリ付く曲。Bは変ニ長調になって盛り上がる。- Fileuse (oeuvre posthume), Op. 43 糸を紡ぐ人(遺作)、作品43
イ長調、A-B-A'-C-D-C'-A"-B'-A"'の形式。心地よく流れる16分音符が糸紡ぎを描写。中間部にあたるC-D-C'はヘ長調で始まり、転調を経てC'は変ニ長調となる。明るい曲調とピアニスティックで絶えまない16分音符が爽快な佳作だ。- Nostalgie (oeuvre posthume), Op. 44 ノスタルジー(遺作)、作品44
イ長調、A-B-A'-コーダの形式。穏やかな旋律が奏され、旋律は時々16分音符になって舞うように奏される。- Mazurka (oeuvre posthume), Op. 46 マズルカ(遺作)、作品46
嬰へ短調、A-B-A-C-D-C'-A-B-A'形式。Aの旋律の後半はオクターブになってとても力強い響き。CとDはロ長調になる。- Thème varié (oeuvre posthume), Op. 47 主題と変奏(遺作)、作品47
フスト・シエラに献呈。シューマンの影響を感じさせるロマン派的な作品。変イ長調の主題に引き続き、右手のアルペジオがきらびやかな変奏1、変イ短調の悲劇的な変奏2、右手の分散オクターブの跳躍が軽やかな変奏3、ホ長調の優雅なワルツの変奏4、嬰ハ短調の悲しげな変奏5、派手なポロネーズのFinaleと続く。- Soirées mondaines, Cinq valses légères 夜会、5つの軽やかなワルツ集
フランス留学中の作品であろう、全5曲から成るこの組曲は、彼が見た華やかなフランスへの印象を音楽にしたと思われる、ともかく明るいワルツばかりだ。第1曲Vibration d'amourは変ロ長調、A-B-A'形式。第2曲Parfums de Vienneはイ長調、A-B-A'形式。第3曲Paris entrainantはニ長調、A-B-A'-C-A-B-A'形式。第4曲Fleurs, femmes et chantは変ホ長調、A-B-A'-C-A'形式。第5曲Frivole passionnéeはハ長調、A-B-C-D-A-B形式。
- Vibration d'amour, Valse lente 愛の振動、ゆっくりとしたワルツ
- Parfums de Vienne, Valse lente ヴィエンヌの香り、ゆっくりとしたワルツ
- Paris entrainant, Valse lente 心引き立つパリ、ゆっくりとしたワルツ
- Fleurs, femmes et chant, Valse lente 花々、女性、そして歌、ゆっくりとしたワルツ
- Frivole passionnée, Valse lente 浅薄な情熱、ゆっくりとしたワルツ
- Mazurca en si menor (oeuvre posthume) マズルカロ短調(遺作)
初版のWagner y Levienの楽譜は、誤って曲名を "Mazurca en re majeur(マズルカニ長調)" と印刷している。A-B-A-C-A-B-A形式。陰うつな雰囲気の曲。Cの部分はロ長調~変ホ長調と大胆に転調していくのが斬新な響きで抒情的。
- Mazurca mélancolique 憂うつなマズルカ
イ短調。A-B-C-C-A-B形式。Cがハ長調にはなるが全体的に題名通りの憂うつで寂しげな雰囲気のマズルカ。- Valse capricieuse 気まぐれなワルツ
変イ長調A-B-A'形式。両手共オクターブを多用した華やかなワルツ。- Vals caressante (Vals cariñoso) 優しいワルツ
イ長調、A-B-A'形式。暖かく、明るい南国的な調べのワルツでいい雰囲気の曲。