Carlos Chávezのピアノ曲リスト
1910
- La danza de las brujas 魔女たちの踊り
1911
- Barcarola I 舟歌第1番
- Canción 歌
- Nocturno 夜想曲
- Serenata セレナーデ
1912
- Miniatura ミニアチュール
- Vals (Vals moderato ) I ワルツ(ワルツ・モデラート)第1番
- Vals (Vals moderato ) II ワルツ(ワルツ・モデラート)第2番
1915-1920
- Cantos mexicanos, Op. 16 メキシコ歌曲集、作品16
1915または1916
- Segundo estudio de concierto 演奏会用練習曲第2番
1917-1918
- Sonata fantasia (Sonata I) 幻想ソナタ(ソナタ第1番)
- Obertura 序曲
- Scherzo スケルツォ
- Romanza ロマンス
- Allegro アレグロ
1918
- Berceuse 子守歌
- Carnaval カーニバル
- Elegía I, Homenaje a mis padres 悲歌第1番、私の両親への敬意
- Elegía II, Mi ofrenda 悲歌第2番、私の贈物
- Elegía III, El amor hace una individualidad dual 悲歌第3番、愛は私を二重人格にする
- Esperanza ingénua 無邪気な希望
- Gavota ガボット
- Meditación 瞑想
- Oda I 頌歌1番
- Pensamiento feliz 幸せな考え
- Suavamente 心地よく
- Triste sonrisa 悲しい微笑み
1919
- Barcarola II 舟歌第2番
- Cuatro Estudios 4つの練習曲集
- Leggiero (1919)
- Presto (1919)
- Moderato Cantabile (1920)
- Allegro Fluido(1921)
- Inocencia 無邪気
- Deuxième sonate pour piano ピアノソナタ第2番
- Allegro doloroso
- Andante
- Molto inquiento
- Vals íntimos 親密なワルツ
- (1919)
- A Otilia (1919) オティリアへ
- (1920)
- (1920)
1920
- Benedición 祝福
- Encanto sutil, El cielo es un follaje de oro y luces 繊細な魅力、空は黄葉と光である
- Hoja de album アルバムの一葉
- Noche: aguafuerte 夜、エッチング
- Prelude 前奏曲
1921
- À l'aube: image mexicaine, Op. 17-1 夜明け:メキシコのイメージ、作品17-1
- Madrigals I-V マドリガル1番~5番
- Vals elegía 哀しいワルツ
1922
- Cuatro nocturnos 4つの夜想曲集
- Jarabe ハラベ
- Madrigals VI-VII マドリガル6番、7番
1923
- Aspectos I-II-III アスペクト1番、2番、3番
- Imagen mexicana メキシコのイメージ
1923-1930
- Seven pieces for piano ピアノのための7つの作品集
- Polígonos (1923) 多角形
- Solo (1926) ソロ
- 36 (Horsepower) (1925) 36(馬力)
- Blues (1928) ブルース
- Fox (1928) フォックス
- Paisaje (1930) 風景
- Unidad (1930) 統一性
1924
- Sonatina ソナチネ
- Xochimilco Dance ソチミルコの踊り
1925
1928
- Tercera Sonata ソナタ第3番
- Moderato
- Un poco messo
- Lentamente
- Claro y Conciso
1937
- 10 Preludes for Piano ピアノのための10の前奏曲集
- Andantino espressivo
- Vivace
- Poco mosso
- Animato
- Cantabile
- Calmo
- Lento
- Vivo
- Moderato, molto cantabile
- Allegro
1940
1941
- Sonata IV ソナタ第4番
1942
1943
- Danza de la pluma 羽の踊り
- La llorona, Regional Son of the Isthmus ラ・ジョローナ(泣き女)、地峡地域のソン
- La zandunga サンドゥンガ
1949
- Three Etudes for Piano à Chopin ショパンのための3つのピアノ練習曲集
- Estudio IV: homenaje a Chopin 練習曲第4番、ショパンを讃えて
1950
- Left hand inversions of 5 Chopin Etudes 5つのショパンの練習曲集の左手への変換
- Op. 10, No. 1
- Op. 10, No. 2
- Op. 10, No. 5
- Op. 10, No. 7
- Op. 25, No. 9
1952 (-1972?)
1958
1960
- Sonata V ソナタ第5番
- Allegro
- Andante
1961
- Sonata VI ソナタ第6番
- Allegro
- Andantino
- Tema con variazioni
1967
1973
1975
- Five Caprichos for piano ピアノのための5つのカプリーチョ
- Animato
- Lentissimo
- Vivo
- Adagio
- Mosso
Carlos Chávezのピアノ曲の解説
1912
- Vals (Vals moderato ) I ワルツ(ワルツ・モデラート)第1番
この曲の自筆譜には "1912年" と記されているが、12-13歳の少年の作品としてはちょっとお洒落すぎかな?(Carlanita Music出版の楽譜では1918年作曲としている)。ヘ長調、A-B-B形式。ポルタメントの前打音混じりの旋律は艶かしく、ワルツといってもパリジャン風の甘い響きの曲。- Vals (Vals moderato ) II ワルツ(ワルツ・モデラート)第2番
この曲の作曲年はハッキリしていないが、上記のワルツ第1番と一緒に自筆譜が残されており、おそらく同時期の作品と思われる。ハ長調、A-B-B形式。ワルツ第1番同様の媚びるような旋律の落ち着いた曲。1915-1920
- Cantos mexicanos, Op. 16 メキシコ歌曲集、作品16
- Adelita y La cucaracha (1915) アデリータとラ・クカラッチャ
〈アデリータ Adelita〉と〈ラ・クカラッチャ La cucaracha〉はどちらもメキシコ革命(1910年~1917年頃)の愛唱歌で、チャベスによるピアノ編曲版である。チャベスのピアノの師であるポンセに献呈された。〈アデリータ〉とは革命軍の伝説的な女兵士の名前(実在の人物だったかははっきりしないらしい)からとられた歌である。〈ラ・クカラッチャ〉はゴキブリという意味で、言うまでもないメキシコを代表する歌だ。曲は三部形式。最初は〈アデリータ〉がト長調で奏され、左手の半音階進行混じりの対旋律はポンセのピアノ曲を思わせる。中間部は〈ラ・クカラッチャ〉がニ長調で華やかに奏され、これも対旋律が半音階的。最後は〈アデリータ〉が再び奏され、両手オクターブで力強く終る。- Anda buscando de rosa en rosa (1915または1918?) バラからバラへと探し回る
ヘ長調。同名のメキシコ民謡からの編曲作品。一抹の寂しさを湛えた旋律が静かに奏される。- Adiós, adiós (1919) さよなら、さよなら
変ト長調。同名のメキシコ民謡からの編曲作品。旋律は素朴だが、チャベスの付けた半音階的な対旋律は、ちょっとくねくねし過ぎで落ち着かない。- Cuando empieza a caer la tarde (1920) 日暮れ時に
ニ長調。同名のメキシコ民謡からの編曲作品。題名通りの夕暮れの静かな光景を描写するような曲で、チャベスの和音付けは、不協和音が陰うつな感じ。- Las margaritas (1919) マーガレット
1917-1918
- Sonata fantasia (Sonata I) 幻想ソナタ(ソナタ第1番)
全4楽章合わせると演奏時間が約35分かかる大作のソナタ。第1楽章Oberturaは変ロ短調。重々しい前奏に引き続き、付点のリズムが続く主題が奏される。(主題はこれ一つのようで、それでソナタ形式なのだろうか?。)第2楽章Scherzoはト短調、三部形式。スケルツォといっても旋律は重たい響きで、徐々に音域を増して旋律・和音共にオクターブとなり一層重々しい。中間部は変ロ長調で静か。第3楽章Romanzaはハ長調で始まる。アルペジオの伴奏にのって息の長い旋律が奏される。伴奏は低音を多用して重々しく盛り上がり、リストの後期ピアノ曲を思わせる。第4楽章Allegroは演奏時間13分と長く、伴奏のアルペジオや音階がかなり技巧的。全体的にロマン派の響きの作品だが、重く暗い雰囲気なので全曲聴き続けるのはちょっとしんどいなあ~。
- Obertura 序曲
- Scherzo スケルツォ
- Romanza ロマンス
- Allegro アレグロ
1918
- Berceuse 子守歌
楽譜に "con monotonia(単調に)" と記されているように、表情に乏しい旋律が呟くように奏される。ハ長調で始まるが、ホ短調~ト短調~変ホ長調~変イ長調と転調し、最後は冒頭の旋律がハ短調で歌われるのが不思議な雰囲気を醸し出す。- Esperanza ingénua 無邪気な希望
変イ長調、三部形式。6/8拍子の流れるようなリズムにのって抒情的な旋律が奏され、シューマンを思わせる。中間部は3声のコラールが静かに奏される。- Gavota ガボット
ト長調、A-B-A-C-A-D-A形式。上品で優雅なこのガボットの雰囲気は、先輩作曲家ポンセのガボットをやや思わせる。ただし、ポンセのガボットが「ポンセ臭さ」に満ち溢れて個性的な名作なのに対して、チャベスのガボットは没個性で、何かありきたりのような感じがする。この時期の、中途半端な出来に思えるチャベスの習作を聴くと、チャベスは自分自身の作曲家として将来進むべき方向はポンセのようなロマン派を発展させたものは自分の性には合わないーもっと他の新しい道を開かねばならないーと自覚したんじゃないかな、と思います。- Meditación 瞑想
嬰ヘ短調、A-B-A'形式。題名通りの、深く考え込むような静かな曲。中間部の嬰ヘ長調になる所の伴奏は全音音階で幻想的な響き。- Pensamiento feliz 幸せな考え
変ホ長調。右手で奏される抒情的な旋律に中音部の対旋律、後打ちの伴奏の雰囲気は、とってもシューマン風。曲は変ホ長調~ホ長調~変イ長調~ヘ長調~変ホ長調と彷徨うように転調する。1919
- Barcarola II 舟歌第2番
ニ長調、A-B-A'-B'-A"形式。Aの9/8拍子の流れるような曲調は舟歌らしいが、チャベスらしい?ひねた半音階の対旋律がくすんだ響きに。- Cuatro Estudios 4つの練習曲集
弱冠20歳前後の作品ながら、後年のチャベスを予期させるような突飛な和音進行などに満ちた練習曲集で、全体的にロマン派の抒情性と決別したかのような、心安らがない!響きである。ピアノ技法からはショパンの練習曲集の影響を受けている一方、和声的にはドビュッシーの影響を感じさせる作品である。この頃のチャベスはドビュッシーに傾倒していたようで、1916に初版が出たばかりのドビュッシーの《ピアノのための12の練習曲集》の楽譜を、ヨーロッパに出張していた兄から取り寄せると貪るように読んだらしい。4曲の曲順はCarlanita Music出版の楽譜に依るが、自筆譜によると第1番→第2番、第2番→第1番と逆である。
- Leggiero (1919)
ト長調、A-A'-A"形式。蝶が舞うような軽やかな両手3連符の練習曲。和声的にはロマン派後期あたりだが、あえて抒情性を省いたような機械的な響きの曲。メキシコのピアニスト、マリア・テレサ・ロドリゲスによると、この曲を速く弾けば弾くほどチャベスは喜び、「もっと速く弾いてみろ」と言っていたとのこと。- Presto (1919)
右手16分音符のトリルが無窮動に続く曲。変ト長調で始まるが転調が頻繁で、また冒頭の主題の和音進行がG♭-DmとかE♭-Bmといった、離れた関係の和音の繰り返しなのはドビュッシーを思わせる。34小節目からは4分音符の新たなモチーフがあちこちに現れ、16分音符トリルと渾然一体となって展開する。- Moderato Cantabile (1920)
ニ長調で始まるも2、3小節おきに転調していく。右手オクターブの3連符の曲で、何か重たい曲。- Allegro Fluido (1921)
16分音符連打の曲で、半音階的進行や全音音階の多用はまた印象派風。- Inocencia 無邪気
変ロ長調、A-B-A-C-A-B-コーダの形式。優しい響きのアルペジオ伴奏にのって、抒情的な旋律が静かに奏される。- Deuxième sonate pour piano ピアノソナタ第2番
チャベスのピアノソナタの中でも、音の密度の濃さからは一番の力作に思える作品。演奏時間約26分。ポーランドのピアニスト、イグナツ・フリードマンに献呈された。フリードマンはこの作品を好んで演奏したらしく、1923年にはベルリンの出版社 Bote & G. Bockから楽譜も出版された。ロマン派の抒情性を残しながらも、破壊的だったり神秘的だったりの不協和音が響くソナタで、スクリャービンのピアノ曲の影響を感じさせます。第1楽章Allegro dolorosoは嬰ヘ短調、ソナタ形式。前奏に引き続き、Agitatoで急き立てられるような旋律の嵐のような激しい第1主題が現れる。続く第2主題Con serenita, ma dolenteはイ長調で、高音で穏やかに旋律が奏され、半音階進行の対旋律が添えられる。再現部は第1主題が一層激しく奏され(第2主題の再現はハッキリしないまま)、アタッカで第2楽章へ。第2楽章Andanteは謎めいたモチーフが静かに奏され、3拍子の子守歌のような部分、夜想曲のような息の長い旋律の部分ばどが現れては消えていく。全体的に和音は沈んだ雰囲気だ。第3楽章Molto inquientoは両手オクターブ連打の炸裂で始まり、両手交互連打がピアニスティックに続く。後半では第1楽章の第1主題、第2主題が変形して現れる。
- Allegro doloroso
- Andante
- Molto inquiento
- Vals íntimos 親密なワルツ
- (1919)
変ニ長調、A-B-C-B-A形式。旋律は優雅だが、和音が多調だった数小節おきに転調したりと、ちょっと耳がついて行けない‥‥。- A Otilia (1919) オティリアへ
変ニ長調、A-A-B-A-コーダの形式。後にチャベスの妻となるピアニストのOtiliaに捧げた曲で、ちょっとシューマン風の甘い旋律の優しい曲。- (1920)
ハ長調で始まるが、調性が一定しない不安な雰囲気のワルツで、最後は変ホ短調で終わる。- (1920)
変イ長調。チャベスの作品としては適度に美しい程度の不協和音?で夢の世界を描いたようなホワンとしたワルツ。1920
- Benedición 祝福
変ニ長調。チャベスはこの作品を母に献呈している。ハープを思わせる静かな8分音符アルペジオにのって、"con veneración(敬愛して)"と楽譜に記された淑やかな旋律が奏される。- Hoja de album アルバムの一葉
ト長調、A-B-B形式。伸びやかな旋律が後打ちの伴奏にのって歌われる。- Noche: aguafuerte 夜、エッチング
絶え間ないトレモロ(バッテリー)が、夜の静寂の雰囲気を出している曲。全音音階など、印象派風の音使いが神秘的。- Prelude 前奏曲
両手オクターブ和音が荘厳に鳴り続ける曲。変ト長調で始まるがどんどん転調していく。後半はリスト風の左手オクターブ半音階進行など派手に盛り上がる。1921
- À l'aube: image mexicaine, Op. 17-1 夜明け:メキシコのイメージ、作品17-1
メキシコの有名な民謡〈おはよう Mañanitas〉がゆったりと繰り返し奏され、アルペジオの伴奏が朝霞のように幻想的。但し和声はチャベスらしく凝っていて、前奏に引き続き、ホ長調で本来の旋律の三度上のみが奏され、続いて変イ長調で旋律が現れるも毎小節おきにと言っていい位転調し、最後にやっとホ長調で本来の旋律が奏されるも和音は複雑ーと、朝の景色の色彩が変わっていく様を描いているようで面白い(が難解でもある)。- Vals elegía 哀しいワルツ
ヘ短調、A-B-A-コーダの形式。冒頭のワルツは、孤独な寂しさを描いたような曲調。中間部Bは調が次々と変わり、ちょっと夢見るような感じ。1922
- Cuatro nocturnos 4つの夜想曲集
全体に印象主義の響きの組曲で、和音は繊細だが、ちょっとインパクトが弱いような感じの作品。第1番は、線の細い旋律に繊細なトレモロやアルペジオが纏わりつく。増五度や減五度の響きで調性は定まらないが、最後にやっと変イ長調の和音で終る。第2番は、前半はレシタティーボ風の乾いた感じのモチーフが奏され、後半は変イ長調の響きで落ち着く。第3番は6/8拍子の流れるような旋律の曲。第4番は、低音のオスティナートの上で無表情な旋律が静かに奏される。ラヴェルの《夜のギャスパール第2番~絞首台》に似た雰囲気の曲だ。- Jarabe ハラベ
ハラベ(ハラベ・タパティオとも呼ぶ)はメキシコ中西部にあるハリスコ州の民族舞踊で、メキシカン・ハット・ダンスの名で有名。ハラベ・タパティオの音楽はいくつもの旋律が次々とメドレーのように現れるが、チャベスのこのピアノ版も同様の形式で作られている。しかし音は全くでもってチャベスらしく?、まず旋律と伴奏の調がずれて多調。更に旋律までが途中で半音上がったり下がったり目まぐるしく、まるでたわんだレコードの音みたいで、パロディー風の凝った作りの曲ではあるが、耳にはあまり心地よくない‥‥。1923
- Aspectos I-II-III アスペクト1番、2番、3番
アスペクト(=様相)という題名も抽象的だが、曲の内容もとても抽象的でいかにも現代音楽らしい。1番は、(楽譜を見ていないので定かではないが)十二音に近い主題で始まり、破壊的なな世界を現すような響きの曲。2番は、静かに不協和音が鳴り響き、印象派風。1923-1930
- Seven pieces for piano ピアノのための7つの作品集
この7つの作品は1923年から1930年にかけてばらばらに作られた曲を後から組曲として纏めて出版したものである。各曲の題名は抽象的なものが多いが、曲の内容もとても抽象的でちょっと難解だ(抽象美というものを感じさせはするが)。
- Polígonos (1923) 多角形
曲名の抽象的な感じそのままの曲。曲は大体は破壊的な響きだが、テンポ・拍子・音型などが数小節毎に目紛しく変わり、何だかよく分らない世界ーそれが多角形なのかーを現している。- Solo (1926) ソロ
静かな2声の曲で、右手がフリギア旋法、左手がリディア旋法で始まる。- 36 (Horsepower) (1925) 36(馬力)
翌1926年作曲のバレー曲《Caballos de vapor (Horsepower)》の一部と同じらしい。3連符混じりの威勢のいい音楽。- Blues (1928) ブルース
2声で書かれた曲。シンコペーションやけだるいムードはブルースだが、2声の旋律?ともに七度や九度の跳躍だらけで支離滅裂な雰囲気。- Fox (1928) フォックス
題名通りのフォックストロットかラグタイム風の軽快なリズムだが、旋律がハチャメチャなのに加えて、リズムも右手と左手でズレまくり。一部右手だけが3連4分音符で(それがまたシンコペーションして)刻まれたりと、複雑なポリリズムの曲。- Paisaje (1930) 風景
僅か13小節の曲。静かな間奏曲風だが、音は謎めいている。- Unidad (1930) 統一性
7曲の中でも最も長い曲でソナタ形式。第1主題は3拍子のリズムにのった3連8分音符の主題が快活。第2主題はワルツ風の静かな旋律。全体的に音が無機質なのは相変わらずだが、それは却ってメカニックな美しさを表しているような感じさえする。1924
- Sonatina ソナチネ
チャベスの妻のOtiliaに献呈。単一楽章で演奏時間約4分の短いソナチネだが、4つの部分から成る。最初のModeratoは3/4拍子。下降する3連8分音符と、8分音符♫♫音型の2つのモチーフが元になっていて、何の音が主音かもはっきりしないが、おそらくミのフリギア旋法の主旋律に対旋律が2つ加わるポリフォニックな音楽が始まり(7小節目で早々と転調してしまうが)、fffまで音量を増して一段落。次のAndantinoは4/4拍子。僅か10小節で、二声の静かな部分。冒頭の下降する3連8分音符のモチーフが左手に聴かれる。続くAllegrettoは3/4拍子、やはりミのフリギア旋法と思われる主題が同じリズムでしつこく繰り返しながら徐々にffまで盛り上がっていく。曲は4/4拍子のVivoの9小節で徐々に静まり、最後のLentoは冒頭の3声の音楽がテンポを落として再現され終る。全体的に謎めいた響きのこの作品、チャベスはアステカ王国時代の音楽を表しているのだと分析している文献もある。スペイン人による征服以前のメキシコ先住民の音楽については、むろんある程度研究がなされているとは言え(チャベス自身も1930年代にメキシコ先住民の音楽の調査研究を行っている)、いくらチャベスでも、何の記録も残されていない五百年前の音楽の調べまでは知らないと思うのだが‥‥。1925
- Cake-Walk ケークウォーク
チャベスがアメリカを初めて訪れた頃の作品。変ホ長調。右手オクターブの旋律に左手ブンチャッブンチャッの伴奏で、和声も普通に分かり易く、軽い感じのポピュラー音楽を作ったといった風。- A Fox-Trot フォックストロット
上記のCake-Walk同様の作品。前奏と後奏にしつこく増三和音が弾かれるが、メインの旋律はト長調で陽気。1928
- Tercera Sonata ソナタ第3番
チャベスがニューヨーク滞在中に作った作品で、この頃知り合ったアメリカの作曲家アーロン・コープランドに献呈された。作曲家としてのチャベスの方向性をはっきり示しているような、現代音楽らしい(分かりにくい)作品。第1楽章Moderatoは、2つの短い数小節のモチーフが交互に展開する。前者のモチーフは短九度の多用がきつい響きで、後者のモチーフの方はメキシコ民謡El sombrero Ancho(大きな帽子)に似ている。第2楽章Un poco messoはスケルツォのような性格で、二声の落ち着きない主題が競走するように奏される。第3楽章Lentamenteは、ゆっくりしたテンポで緩徐楽章にあたる。二声~三声~四声と拡大していくフーガから成り、主題はあちこちで移高して奏され、主題の反行形もしばしば現れる。殆ど無調である。第4楽章Claro y Concisoは変奏曲風。快活なリズムが特徴的で、ラグタイムの風のシンコペーションに加え、31/2/4の変拍子や3連4分音符や3連8分音符が絡み、複雑な様相を来す。
- Moderato
- Un poco messo
- Lentamente
- Claro y Conciso
1937
- 10 Preludes for Piano ピアノのための10の前奏曲集
この前奏曲集についての説明は、チャベス自身が以下のように記したのに尽きる。「私の計画はまず7つの白鍵各々のために作曲することである。各々のグレゴリア旋法ののために1曲ずつ、すなわちドリア、フリギア、リディア、ミクソリディア、ヒポドリア、ヒポフリギア、ヒポリディアの旋法で作曲した。更に全10曲に増やすために、複旋法の第8番、旋法と調性のミックスによる第9番、第10番を加えることにした(後略)。」ちなみに、チャベスの言っている「グレゴリア旋法」は、良く知られている中世ヨーロッパの教会旋法ではなく、古代ギリシャの旋法の名称で述べているようだ。因みに中世の教会旋法は、古代ギリシャの旋法からとった名称が付けられているが、同じ名称が異なる旋法に用いられており、両者の間に歴史的つながりはない。とは言え、例えば古代ギリシャのドリア旋法は、中世の教会旋法のフリギア旋法と(旋法の読み順は逆だが)等しい。この前奏曲集の各曲の旋法を表にしました。
- Andantino espressivo
- Vivace
- Poco mosso
- Animato
- Cantabile
- Calmo
- Lento
- Vivo
- Moderato, molto cantabile
- Allegro
古代ギリシャの旋法(高音から低音へと読まれた) 中世の教会旋法 1番 ドリア旋法 ミ-レ-ド-シ-ラ-ソ-ファ-ミ フリギア旋法 ミ-ファ-ソ-ラ-シ-ド-レ-ミ 2番 フリギア旋法 レ-ド-シ-ラ-ソ-ファ-ミ-レ ドリア旋法 レ-ミ-ファ-ソ-ラ-シ-ド-レ 3番 リディア旋法 ド-シ-ラ-ソ-ファ-ミ-レ-ド ヒポリディア旋法 ド-レ-ミ-ファ-ソ-ラ-シ-ド 4番 ミクソリディア旋法 シ-ラ-ソ-ファ-ミ-レ-ド-シ ヒポフリギア旋法 シ-ド-レ-ミ-ファ-ソ-ラ-シ 5番 ヒポドリア旋法 ラ-ソ-ファ-ミ-レ-ド-シ-ラ ヒポドリア旋法 ラ-シ-ド-レ-ミ-ファ-ソ-ラ 6番 ヒポフリギア旋法 ソ-ファ-ミ-レ-ド-シ-ラ-ソ ミクソリディア旋法 ソ-ラ-シ-ド-レ-ミ-ファ-ソ 7番 ヒポリディア旋法 ファ-ミ-レ-ド-シ-ラ-ソ-ファ リディア旋法 ファ-ソ-ラ-シ-ド-レ-ミ-ファ 8番 ドリア旋法、リディア旋法、ミクソリディア旋法、ヒポドリア旋法、ヒポフリギア旋法が聴かれる(もっとあるかも?) 9番 「旋法と調性のミックス」 10番 上記の旋法を用いて現代の作曲家がどれだけの曲を作れるかを、チャベスが自分自身に課したような曲集である。特に第1番から6番までは調号も臨時記号も全く用いないー則ち純粋に旋法の音だけで作曲するという縛りの中で作られており、興味深い。第1番Andantino espressivoは沈みこんでいくような旋律が静かに奏される。ミの旋法(教会旋法のフリギア旋法)は教会旋法の中でも最もそれらしい響きとも言われているように、古代の遺跡が目に浮かぶような厳粛な雰囲気である。中間部は2オクターブ離れたユニゾンで神秘的。第2番Vivaceは二声のカノン風の快活な曲で、無窮動な響きは「ハノン」の練習曲を思わせる。第3番Poco mossoは四声のけだるい雰囲気のコラール。第4番Animatoはトッカータ風の急速な曲で、音の響きはバロックだがリズムに時々シンコペーションが現れるのが戯けている。第5番Cantabileはラの旋法と言っても、シとファを抜いたペンタトニック旋法の曲。二声の素朴な曲作りだが、3連符混じりのリズムも相俟って、メキシコ先住民の民謡のようにも聴こえてくる。第6番Calmoは何か無表情な響きの、淡々とした曲。第7番Lentoは長九度や短九度が重々しく響く曲。第8番Vivoは速いテンポで、暴走機関車が突っ走るようなエキサイトな曲。楽譜上は大体2/2拍子だが、3・4・5拍子が入り混じりのウアパンゴのリズムにも聴こえる。第9番Moderato, molto cantabileはバッハのアリアを思わせる曲調で、旋律は旋法によるが、伴奏は調性音楽となっている。中間部は全音音階から成っている。第10番Allegroはイ長調、快活な曲で8分音符が無窮動に続く。一見、一本調子な曲に見えるが、速度指定は付点2分音符=69→徐々にアッチェレランド→76→徐々にラレンタンド→69→徐々にアッチェレランド→76→80→徐々にラレンタンド、と微妙にしょっちゅうテンポが変わるのが聴いていて面白い。
1940
1942
- Fugas para piano ピアノのためのフーガ
2曲から成り、バロックへのオマージュのような(チャベスにしては)古風な作り。第1番はロ長調で二声のフーガ。第2番は最大四声まで聞こえるような複雑な作りで、転調が頻繁だが一応イ短調みたい。- Miniatura: homenaje a Carl Deis ミニアチュール、カール・ダイスを讃えて
作曲家のカール・ダイス(1883-1960)に献呈された曲。Carl DeisのスペルをとってC、D、Eis(=F)の音をモチーフにした四声のフーガの曲で、ゆっくりと奏される。1943
- Danza de la pluma 羽の踊り
ト短調。行進曲風のリズムは、スペイン民謡《ラ・タララLa Tarara》(タララとはラッパの音の擬声語)風である。伴奏のアルペジオの和音は九度が多く、何かリュートの響きを思わせる。- La llorona, Regional Son of the Isthmus ラ・ジョローナ(泣き女)、地峡地域のソン
1946年に、メキシコの画家ミゲル・コバルビアス Miguel Covarrubias (1904-1957) がニューヨークで出版した『メキシコ南部:テワンテペック地峡 Mexico South: The Isthmus of Tehuantepec』という絵画本に民謡の楽譜を載せる依頼を受けたチャベスが、民謡《ラ・ジョローナ》を歌詞付きのピアノ譜にしたもの。ラ・ジョローナは「泣き女」という意味。メキシコ南部のオアハカ地方の民話によると、ラ・ジョローナは美しい女性の妖怪で、生前に我が子を殺してしまった母親の成れの果てで、毎夜「私の子供達よ!どこにいるの!」と泣きながら我が子を探して彷徨うとのこと。またラ・ジョローナに出会ったものは一年以内に死んでしまうという話もあり何とも怖い民話である。曲は3拍子の舞曲風で、チャベスの編曲は、民謡の旋律を示すという本の意図に沿って複雑な和声は付けず、旋律と簡単な伴奏から成る。両手ユニゾンの前奏に続いて物悲しい旋律が奏される。1949
- Estudio IV: homenaje a Chopin 練習曲第4番、ショパンを讃えて
ショパン没後百年にあたり、UNESCOより委嘱を受けて作った作品。A-A'-A"形式。右手に重音が動く、ヘミオラ混じりの6/8拍子の快活な曲調は、ショパンの〈練習曲作品10-7〉を少し連想させるが、増8度や多調混じりの不協和音の響きは正にチャベスらしい。1950
- Left hand inversions of 5 Chopin Etudes 5つのショパンの練習曲集の左手への変換
かの有名なショパンの練習曲の更なる編曲というと、レオポルド・ゴドフスキーが作った《ショパンの練習曲に基づく53の練習曲集》が知られているが、このチャベスの編曲版は音を楽しむと言うよりも、編曲法の「実験」のような奇妙な作品である。この作品でのチャベスの編曲法は、ショパンの練習曲の楽譜をまず上下逆さまにひっくり返して、それを楽譜の紙の裏から透かして(または鏡に映して)見たのを、小節はショパンの原曲通りの順で楽譜にしたようなものである。但しそれぞれの調をショパンの原曲の平行調に変えたので、平行調の響きになるように、先程の上下逆さま→裏から透かしの楽譜の音を三度または四度上げている。チャベス自身は「この変換は私の発見によって作られている。それは人体の左手と右手は放射相称であるが、ピアノもレの鍵盤を中心として放射相称である事実だ」と述べており、ショパンの原曲を、レを軸にひっくり返して書いたともとれる音高である。当然ながら右手パートは左手へ、左手パートは右手へ変換となるが、チャベスが選んだショパンの練習曲の5曲はいずれも右手パートが技巧的な曲なので、それが左手に移ったため上記のタイトルになったのだろう。以上、ショパンの練習曲を楽譜・調性・音程・手の配分・両手の技巧と色々な点で "inversions" していて、各曲の雰囲気も高音が華やかなショパンの原曲が、低音部がゴロゴロ無気味な感じに "inversions" している。聴いていて、あまり美しい編曲とは思えないけど‥‥。チャベスはこの5曲に引き続いてショパンの練習曲集のOp. 25, No. 2, 6, 8, 11の編曲も予定していたが、出版には至らなかった。
- Op. 10, No. 1
- Op. 10, No. 2
- Op. 10, No. 5
- Op. 10, No. 7
- Op. 25, No. 9
1952
1958
- Invención インベンション
演奏時間約20分の大曲。主に二声(時に三声~四声)による曲調はバッハを思わせるが、和声的には無調。おそらくバッハのインベンションの性格をチャベスなりにどこか工夫していろいろ考えた曲なんだろうが、如何せん難解で、ちょっとやそっと聴いただけでは、彼が何を意図して作った曲なのだかよく分りません。曲は3つの部分から成る。第1部は4/4拍子で、硬質な調べが延々と続く。第2部はLentoになり、けだるい雰囲気。第3部は3/4拍子で、3連符も混じりリズミックになる。1960
- Sonata V ソナタ第5番
チャベスは作曲を学ぶ弟子に、例えば「モーツァルトのピアノソナタと同じ和音進行、同じ性格の主題を用いてオリジナルの曲を作曲せよ」という課題を与えることによって、大作曲家の作曲技法を身に付けさせた。この課題の自らのお手本となる作品が、このソナタ第5番である。原曲となるモーツァルトの《ピアノソナタ第18番(新全集では第15番)》は、モーツァルトが1788年に作曲した《ピアノのためのアレグロとアンダンテ、K. 533》と、1786年に作曲した《ピアノのための小ロンド、K. 494》を、当時のウィーンの出版社がまとめて3楽章のピアノソナタとして出版したもの。チャベスのこの曲は、調や小節数はモーツァルトのとピッタリ同じで、主題の呈示方法も同じ、和音も8割形は同じで、旋律や伴奏型のみがオリジナルとなっている。第1楽章Allegro、第2楽章Andanteまで作ったのが残されており、第3楽章ロンド (K. 494)も編曲する予定だったらしい。曲の印象は、確かにとても上手な模倣で見事ではあるけど、原曲のモーツァルトらしい瑞々しい魅力はこのチャベスの編曲にはなく、「作曲法の勉強のお手本」以上のものは感じられないが‥‥。
- Allegro
- Andante
1961
- Sonata VI ソナタ第6番
数々の不協和音が満載だったチャベスのピアノ曲の中で、しかも作曲家として最も成熟したこの時期の、彼の最後のピアノソナタ第6番が、予想に反してハイドン辺りの古典派そのもののような作品なのはちょっと驚きである。「新古典主義」とかならまだしも、本当に100%バロック~古典派の和音で、チャベスは何を目論んでこの曲を作ったのか私には分りません。第1楽章Allegroは変イ長調、ソナタ形式。冒頭の第1主題はとっても真面目な感じで、9小節目からは左手にアルベルティバスの伴奏が長々と続く。30小節目からはヘ短調になるのでそこからが第2主題らしいが、左手のアルベルティバスは変わらずずっと続くので、主題の変化に乏しい。53小節目からが展開部で、ヘ短調やハ短調、変ホ短調などに転調しながら前出の主題が変化して現れる。97小節目からが再現部で、変イ長調の第1主題~126小節目からの変イ短調の第2主題と現れ、最後は変イ長調に戻って終る。第2楽章Andantinoは変ニ長調。穏やかな旋律がゆっくりと奏される。楽譜を見ていて特徴的なのはp・mp・mf・fの指示がやたら多く、全98小節中51箇所に強弱記号が記されている。クレッシェンド・デクレッシェンドも一部現れるが、多くの強弱記号は突然fやpが入れ替わる形の、テラス型デュナーミク Terrassendynamik である。則ちこの楽章は、チェンバロなどのバロック時代の鍵盤楽器をイメージして演奏せよということなのだろう。第3楽章Tema con variazioniは変イ長調。主題と12の変奏から成る、演奏時間約17分の長い楽章だ。最初の主題は第1楽章の旋律にも似ている。変奏は、I:二声の付点リズム、II:両手交互の16分音符、III:滑らかな旋律、IV:両手の音階、V:両手交互の3連符、VI:変イ短調の悲愴的な響き、VII:変イ長調に戻りアルベルティバスにのった流れる旋律、VIII:二声のフーガ風(左手と右手の主題は全然違うけど)、IX:両手交互のスタッカート、X:アルマンド風、XI:四声のコラール風、XII:ジーグ風。
- Allegro
- Andantino
- Tema con variazioni
1967
- Mañanas mexicanas メキシコの朝
1934年作曲の《混成合唱と管弦楽のためのプロレタリア交響曲「集合」Llamadas: Sinfonía proletaria》をピアノ曲にしたような作品で、このピアノ版が、元々以前に作られたスケッチだった可能性もある。ヘ長調の軽快な部分~ヘ長調のゆったりしたアルペジオにのって静かな旋律~ニ長調の爽やかな響き~不協和音が滑稽に響く行進曲風の四つの部分から成る。1973
- Estudio a Rubinstein (Homage to Artur Rubinstein) ルービンシュタインへの練習曲(ルービンシュタインを讃えて)
1974年9月にイスラエルで行われたアルトゥール・ルービンシュタイン国際ピアノコンクールの開催を記念して、チャベスが前年に作った曲である。12/8拍子、(強いて言えば)A-A'-A"形式。短二度重音から成る16分音符が上へ下へと休みなく(両手を交互に使いながら)続いていく。短二度の羅列のみでどこまで音楽が作れるかを実験したような感じで、短二度16分音符は3つ刻みや2つ刻みが不規則に変化し、スラーとスタッカートの使い分け、ppからffまで頻繁な強弱の変化、ヘミオラやシンコペーションの出現など、緊張が途切れない音楽に成っている。短二度の無調もここまでしつこく続くと独特の耳にこびりつくような世界が聴こえてくるよう。曲の後半は両手同時に高音と低音で短二度が鳴り響き、破壊的雰囲気で終る。ピアノ技巧的にも弾きにくそうな難曲だが、出版譜ではメトロノーム記号の♩.=74が記されているところを、チャベス自身は自筆譜に更に速い♩.=84と記していたらしい。1975
- Five Caprichos for piano ピアノのための5つのカプリーチョ
アメリカのピアニストAlan Marksの委嘱で作られた、チャベス最後のピアノ曲。全5曲とも調性は全く感じない無調で、現代作曲家らしい難解な作品です。第1番は3連符のリズムが活動的だが、並んでいる音はもう少しで12音技法という無機質な響き。第2番は冒頭の8小節はダンパーペダルを踏みっぱなしで、その間に中高音部の静かな響き~低音部のクラスターなど無気味な響きと続く。第3番はやはりリズムは一応快活な4拍子だが、音の方は意味不明ないくつかのモチーフがあるかな〜と言った感じ。第4番は、冒頭のモチーフがラ-シ♭-ソ♯-シ-ファ-ミ-ミ♭-レ♭-ド-ファ♯-ソ-レ-と完全に12音技法だ。中間部は(多分)この組曲の最大の聴き所で、低音部の両手で奏される持続する重音トリルが、ゆっくりと階段を上るように全音音階を上がる所で、面白い効果を出している(ちなみにこのトリルの部分は、演奏者が均質な音のトリルを弾くことも必要だが、ピアノ自体も各音の音質や打鍵への反応が均質に整調・整音されていないと、各音のムラがバレてしまう)。最後は冒頭と似た音型のモチーフがやはり12音で奏される。第5番はリズムはポルカ風?だが、音の配列はよく分りません。曲は進むにつれ3連16分音符や32分音符が増し、音も段々破壊的になって、最後はクラスターで終る。
- Animato
- Lentissimo
- Vivo
- Adagio
- Mosso