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Dinorá de Carvalhoについて
ジノラ・ゴンチージョ・ジ・カルヴァーリョ・ムリシー Dinorah Gontijo de Carvalho Muricy(出生証明書ではDinorahと綴られているが、彼女本人はいつもDinoráとサインしていた)は1895年6月1日に、ミナスジェライス州ウベラーバ Uberaba に生まれた。子どもの頃から、音楽好きの父に勧められてピアノを習った。1904年に父が亡くなると一家はサンパウロに転居。サンパウロ演劇音楽院に入学しピアノの勉強を続け、1912年のリサイタルでは自作曲も弾いている。1916年には音楽院を卒業し、ピアニストとして活動した。その後ミナスジェライス州より奨学金を得て、1921年から1924年頃までパリに留学し、ピアニストのイシドール・フィリップに師事した。
1930年代はサンパウロ女性オーケストラ Orquestra Feminina de São Paulo の指揮者として活躍した。またジノラ・ジ・カルヴァーリョのピアノ曲《セルタネージャ Sertaneja》を聴いた詩人で音楽評論家のマリオ・ジ・アンドラージ (1893-1945) は彼女の才能に感激し、イタリア出身で当時ブラジルに住んでいた作曲家のLamberto Baldiを紹介し、ジノラ・ジ・カルヴァーリョはLamberto Baldiに作曲を師事した。1938年にはJosé Joaquim Bittencourt Muricyと結婚。1939年にはサンパウロ市立劇場で指揮を行った。1940年代以降はピアノ教師として、アウメイダ・プラドなどの多くの生徒を育てた。
彼女はブラジル音楽アカデミーの初めての女性会員に選ばれている。
1960年5月には作曲家ソウザ・リマの指揮で、「フェスティバル・ジノラ・ジ・カルヴァーリョ」と銘打った演奏会が催され、交響組曲《祭りの集まり Arraial em festa》などが演奏された。
1972年-1973年頃にはパリに3ヶ月滞在して、晩年のナディア・ブーランジェ (1887-1979) に作曲をあらためて勉強したとのことである。(予めジノラ・ジ・カルヴァーリョは自作曲を録音したカセットテープをブーランジェに送り、教えを請うていた。ブーランジェは「私は彼女を尊敬しているわ。私に教えをと?、彼女の時間を浪費するというの…」と驚き、「貴女は素晴らしい作曲家ですよ。個性を持ってらっしゃる。生徒としてではなく、友人か同僚としてお越し下さい」と返事したそうである。パリでは作曲家のオリヴィエ・メシアンにも会っている。)
1980年2月28日に、サンパウロにて亡くなった。
ジノラ・ジ・カルヴァーリョの作品には、交響組曲《祭りの集まり》、管弦楽のための《サンパウロの夜 序曲 Noite de São Paulo Ouverture》(1936)、《ピアノと管弦楽のための幻想協奏曲 Fantasia-Concerto》(1937)、《ピアノ協奏曲第2番》(1972)、弦楽オーケストラ・打楽器・ピアノのための《3つのブラジル舞曲 Três danças brasileiras》(1940)、弦楽オーケストラ・打楽器・ピアノのための《コントラスト Contrastes》(1969)、《弦楽四重奏曲第1番》(1962)、合唱・弦楽オーケストラ・打楽器のための《ミサ曲「深き淵より」 Missa "De profundis"》(1975) などがある。また歌曲を約40曲作っており、《エ・バンゴ・バンゴ・エ Ê bango bango-ê》(1948)、《火 O fogo》(1972) などが代表曲である。
ジノラ・ジ・カルヴァーリョは下記のリストの通りピアノ曲を多数作曲したらしいが、未出版の曲が多く、また音源も乏しく全貌は不明である。ブラジル風味満点の《セルタネージャ》、ブラジルの素朴な祭りの光景を多調で描いた《サント・レイの祭り Festa do Santo Rei》、1950-1960年代の複雑な不協和音の作品群、そして晩年に到達した高度な作曲技法を駆使した《ソナタ第1番(イグアスの滝)Sonata Nº 1 (Quedas do Iguaçu)》と、どのピアノ曲も異なった個性を放っていて、音源のいまだ無い他のピアノ曲も聴いてみたいな〜と思わずにはいれらません。
Dinorá de Carvalhoのピアノ曲リストとその解説
斜字は出版がなく、かつ手稿譜が現存せず、どんな曲だか不明な作品です。1913または1915
- Canção do bêrço 揺りかごの歌
1919
- Gavota ガボット
- Vagalumes (Pirilampos) ホタル
1920
- Bailado das sombras 精霊たちの踊り
1921?
- Polonaise militar 軍隊ポロネーズ
1923
- Rêverie 夢
1929
- Soldadinhos 小さな兵隊さん
1930
- Caixinha de música オルゴール
- Dança das bonecas 人形達の踊り
- Lenda da boneca 人形の伝説
- Meditação 瞑想
- Noturno 夜想曲
1930または1933
- Sertaneja セルタネージャ
2分ほどの短い曲だが、ブラジル風味たっぷりのいい雰囲気の曲。ヘ長調、A-B-A'形式。シンコペーションが小気味よい優雅な旋律で始まり、変ト長調〜変イ長調と転調しながら対旋律を加えつつ盛り上がる(ポリフォニックな旋律および対旋律と艶かしい和音が豊かな響きだ、下記の楽譜)。Bはレのミクソリディア旋法で16分音符連打の新たな旋律が野性的に奏され、グリッサンドや、8対3の変拍子などが現れる。Bの終わりは16分音符ド音の連打を残したまま、冒頭のシンコペーションの旋律が再現され、余韻たっぷりに終わる。
Sertaneja、17-25小節、L. G. Mirandaより引用1932
- Berceuse da boneca 人形の子守歌
- O batalhãozinho prá frente 兵隊さんの行進
- O carillon encantado 魔法のカリヨン
1933
- Caixinha de música da princesinha 小さな王女のオルゴール
- Minha viola 私のギター
- Num recanto triste... 寂しい片隅で・・・
1934
- Estudo Nº 1 練習曲第1番
- Prelúdio só para a mão esquerda 左手のための前奏曲
1936?
- O palhaço côxo no circo サーカスの片足の道化師
- Quadrilhas クァドリーリャ
- Fui passar na ponte 橋を渡ったら
- Cachorrinho «Ciranda» 子犬<シランダ>
- Viuvinha «Ciranda» シロアジサシ<シランダ>
- Essas moças de agora querem se casar 今時の女の子達は結婚したがっている
- «Margarida» Can-can <マーガレット>カン=カン
1939
- Lá vae a barquinha carregada de?... (Peça infantil) 小舟に何の荷物を積む?(子どもの小品)
- Manhã radiosa 朝の光
- O burrinho teimoso 強情な小さなロバ
- Valsinha Nº 1 小さなヴァルサ第1番
1940
- Album com onze peças infantis, sôbre motivos populares 11の子どもの小品のアルバム、民謡のモチーフによる
- Fui no Itororó (Ficarás sozinha) イトロロへ行ったら(一人ぼっちに)
- Capelinha de melão (Popular) メロンで出来た小さな教会(民謡)
- As bonecas (Cantiga de roda) お人形(童歌)
- Fui passar na ponte (Popular) 橋を渡ったら(民謡)
- O cravo brigou com a rosa (Popular) カーネーションはバラと喧嘩した(民謡)
- O batalhãozinho prá frente 兵隊さんの行進
- O presente de Papai Noel サンタクロースの贈り物
- O cuco カッコウ
- Cantiga de Ninar (Popular) 子守歌(民謡)
- Ainda não comprei (Popular) まだ買わない(民謡)
- Canção do boiadeiro 牛飼いの歌
- Alegria dos pássaros 小鳥たちの喜び
- Disputa dos garotos いたずらっ子の喧嘩
- Jogos no parque D. Pedro II ドン・ペドロ2世公園での遊び
- O canto da cunuri
- Os apuros do coelhinho
- Alegria dos passaros
- Bezouros irriquietos
- Menino Jesus adormecendo 眠るイエス少年
- No país das palmeiras ヤシの木の茂る場所で
- 4 peças dançantes 4つの踊りの小品
- Toada paulista サンパウロのトアーダ
1944
- Valsa Nº 1 ヴァルサ第1番
1945
- Cantilena カンチレーナ
1949
- Chora minha terra 我が大地が泣いている
2分弱の短い曲。嬰ヘ長調、A-A'形式。高音部に三度重音の素朴な旋律が優しく鳴り、中音部にオスティナートの伴奏が穏やかに奏される。子守歌のような感じだが、嬰ヘ長調I度の伴奏和音にド♮やラ♮が時々混じって不協和音になる所が曲に翳りを与えていて、楽譜冒頭に「穏やかに、悲しく Calmo e triste」と記されている通りの雰囲気の曲である。- Festa do Santo Rei サント・ヘイの祭り
サント・ヘイの祭りとは、イエス・キリストの誕生を祝う公現祭がブラジルで独自に発展したお祭りのこと。嬰ヘ長調、A-B-A'形式。Vivoと記された速いテンポの8分音符シ-ソ-ド♯-レ♯の伴奏にのって、高音部に愛らしい民謡のような旋律が奏され、全音音階の伴奏と嬰ヘ長調の旋律が多調の響きを醸し出している。BはLentoになり、同じ旋律が中音部オクターブで重々しく奏され、低音部伴奏はホ短調でこれまた多調である。- Madonas - Exposição Paim マドンナ
- Verdes mares 緑色の海
- Chuva de ouro 金の雨
- Cáctus サボテン
- Marcha do galindo ガリンドの行進
- Polka do império 皇帝のポルカ
- Sonatina Nº 1 ソナチネ第1番
- Allegro spirituoso
- Lamentoso
- Allegro
- Vendaval, estudo Nº 2 暴風、練習曲第2番
1950
- Dança dos índios cocares vermelhos 赤い飾りを付けたインディオの踊り
- Festim das amazonas "Ballet-suíte" アマゾーナスの宴会「バレー組曲」
- Vivo
- Passo Marcial
- Lenda cabocla (Toada Nº 1) カボクロの女の伝説(トアーダ第1番)
- Sertões 奥地
- Valsa da bonequinha preta 黒人の女の子の人形のヴァルサ
1950-1974
- Mural de pássaros, Suíte 小鳥たちの壁画、組曲
- Pássaro alegre (1950) 陽気な小鳥
- Pássaro colorido (1954) 彩りのある小鳥
- Pássaro azul (1954) 青い小鳥
- Pássaro tranquilo (1960) 物静かな小鳥
- Pássaro triste (1960?) 哀しい小鳥
- Pássaro mágico (1960) 魔法の小鳥
- Pássaro sem rumo (1970) 当てのない小鳥
- Pássaro estranho (1970) 変わった小鳥
- Pássaro enamorado (1973) 恋する小鳥
- Pássaro dançantes (1974) 踊る小鳥
- Pássaro guerreiro (1970または1974) 戦闘的な小鳥
1951
- Coqueterie (miniatura Nº 3) 艶かしさ(ミニアチュール第3番)
- Pregão (Sorveteiro) (miniatura Nº 2) 物売りの声(アイスクリーム売り)(ミニアチュール第2番)
- Xácara D. Jorge (Popular) D. Jorgeの小さな農園(民謡)
1952
- Bate-bate ガタガタ
- Canção de Natal クリスマスの歌
- Vela, vela, velador
- Você disse..., piano a quatro mãos あなたは言った…、ピアノ連弾のための
1953
- Dorme filhinha 娘よ、寝んね
- Morena, vamos serenar モレーナ、ゆっくり踊ろう
- Musete ミュゼット
- Valsa Nº 3, Peça infantil ヴァルサ第3番、子どもの小品
1955
- Cavalinho de pixe タールを塗った小馬
「タールを塗った小馬」は、タールで塗装したオモチャの子馬という意味になる。A-A-A'形式。8分音符スタッカートの伴奏にのって軽快な旋律が現れるが、旋律はほぼ全音音階なので不思議な響きだ。A'は旋律が重音で変奏される。1956
- Ciranda シランダ
- Roda das flores 花輪
1957
- Caiapó カイアポ族
1958
- Nas mãos do Senhor 主の手の中にあって
1960
- Meninas pulando corda 縄を飛び越える女の子たち
- Valsa da primavera 春のワルツ
ヘ長調、三部形式。春らしい明るい旋律の曲だが、右手旋律は重音で、左手伴奏はしばしば十度和音と重たい響きの曲。1963
- Contemplação 瞑想
左手8分音符の重々しいリズムにのって、減八度や増八度の前打音混じりの無調の旋律が彷徨うように奏される。- Cenas no circo サーカスの舞台
- Palhaços 道化師たち
- Dançarinas 踊り子たち
- Trapezistas 空中ブランコの曲芸師たち
- Bonecos mágicos 魔術師の人形たち
1963-1968
- Suite para piano ピアノのための組曲
- Marcha (1963) マルシャ(行進曲)
変ロ長調のやや重たい左手伴奏にのって、変ロ短調に近い右手旋律が奏される。- Angústia (1963) 苦悩
1963年作曲の《瞑想 Contemplação》と同一曲。- Solidão (Cantos da Solidão, 1963) 孤独(孤独な歌)
A-B-A'形式。一応ホ長調だが、中音部で奏されるゆっくりとした気怠い旋律は長調と短調を揺れ動くような感じで、陰うつな雰囲気だ。- Polka ポルカ
一応変ロ短調。左手のポルカの伴奏にのってスタッカート混じりの軽快な右手旋律が奏されるが、旋律は半音階混じりでくすんだ雰囲気だ。- Alegro brilhante アレグロ・ブリリャンテ
右手に不協和音混じりの16分音符が無窮動で奏される。1966
- O palhaço côxo no circo サーカスの片足の道化師
1967
- Passaros de Atibaia アチバイアの小鳥たち
- Colorido 彩りのある
- Triste 哀しい
- Guerreiro 戦闘的な
- Tema e onze variações 主題と11の変奏曲
主題と11の変奏から成る曲で、演奏時間は約8分。ジノラ・ジ・カルヴァーリョの後期の作品らしい不協和音たっぷりの、やや難解な作品である。この作品の主題はミナスジェライス州ジアマンチーナ Diamantina に伝わる詩〈スン、スン sum, sum〉にジノラ・ジ・カルヴァーリョが旋律を付けたもので、先立つ1960年に彼女は同じ旋律の歌曲〈スン、スン〉を書いている。詩は、蚊のせいで眠れないという内容で、「sum, sum」は蚊の羽音を模している。主題はヘ長調の素朴な旋律が現れるが、ここで既に短九度や長九度の前打音が加わったりと凝っている。第1変奏は中音部主題の上で、多調のアルペジオ和音が奏される。第2変奏は主題が高音部の長九度重音で奏され、音階が装飾音で鳴る。第3変奏は不協和音の左手5連符の上で主題が短九度で奏され、無調の響き。第4変奏は調性がぼやけた8分音符の中から主題が見え隠れする。第5変奏は主題はホ短調になって左手中音部に現れ、右手16分音符スタッカートで対旋律が奏される。第6変奏はホ長調になり、主題旋律の上で短二度混じりの装飾音が魔法のように響く。第7変奏は重苦しい低音部の8分音符にのって、主題がホ短調で奏される。第8変奏は主題がヘ長調に戻るが、高音部16分音符の装飾が多調の響き。第9変奏は主題が変ト長調で中音部に現れ、その下でスラーの音階が、その上でスタッカートのアルペジオが静かに煌めくように鳴る。第10変奏は変ホ短調になり、ゆっくりした左手アルペジオにのって、右手に主題と対旋律が二声で奏される。第11変奏はイ短調になり、主題は低音部に現れ、その下のアルペジオ、その上の三度重音ともに不協和音で混沌とした雰囲気だ。
- Tema, Moderato
- Variação I
- Variação II, Moderato
- Variação III, Comodo
- Variação IV, Animado
- Variação V, Calmo expressivo
- Variação VI, Tranquilo
- Variação VII, Misterioso
- Variação VIII, Apaixonado
- Variação IX, Calmo expressivo
- Variação X, Saudoso
- Variação XI, Com brilho energico
1971
- Prece (Tranquilidade) 祈祷(平穏)
1974
- Dolor 痛み
- Sonata Nº 1 (Quedas do Iguaçu) ソナタ第1番(イグアスの滝)
ジノラ・ジ・カルヴァーリョが晩年に作曲した、彼女のピアノ曲の中でも最大の力作である。この頃、カルヴァーリョは70歳をとうに越えながら、更に自らの作曲技法を高めようとフランスに渡りナディア・ブーランジェに師事したというのも凄いが、更に79歳にしてこれだけの大作を書いたのも驚き!のピアノソナタである。副題に「イグアスの滝」とある通り、イグアスの滝の大地を揺るがすような音や水しぶき、悪魔的な雰囲気を描く一方、抒情的な雰囲気を一切排し、ほとんどの部分を無調の不協和音で音を埋め尽くすことで「絵葉書」的なものとは一線を画した厳しい書法は、カルヴァーリョのピアノ曲の最高傑作と呼ぶに相応しく、同時に耳に媚びない取っ付き難くもある作品である。曲は単一楽章だが、10個の部分に分けることができる(楽譜では2番目から7番目の部分の始めにそれぞれⒷ〜Ⓖとマークがある)。一応ソナタ形式であるが、ソナタ形式の展開部にあたるⒹからⒼの部分、ⒹⒺⒻⒼはほとんど新たな主題によるものなので、複数楽章のソナタがアタッカで繋がっているようにもとれる構成である。
冒頭の第1部Allegro brilhanteは、fffの低音の和音(冒頭和音の最低音ソ♭は普通の88鍵のピアノには無い音で、この音はベーゼンドルファーの一部のピアノでないと出せない!)のクラスターに続き、地響きのような両手不協和音で駆け上る16分音符交互連打が4回繰り返される(下の楽譜)。このパッセージは4回とも和音やリズムが微妙に異なっていて、そもそもこの曲には最初から拍子記号が書いてない。
Sonata Nº 1 (Quedas do Iguaçu)、1-3小節、Fermata do Brasil.より引用
続いて現れる高音部16分音符は楽譜に「透明に cristalino」 と記されていて、イグアスの滝の水しぶきを描いているよう(下の楽譜)。
Sonata Nº 1 (Quedas do Iguaçu)、5-6小節、Fermata do Brasil.より引用
第2部Ⓑは第二主題に相当する部分で、左手低音増8度の不気味な3連符にのって、楽譜に「Tranquilo」と記された無調の旋律が静かに奏される。続く第3部Ⓒは「brilhante」と記され、冒頭の交互連打が変形して現れる。第4部Ⓓは「SCHERZO」と記され、両手ユニゾンで奏される跳ねるような旋律が悪魔的な雰囲気。この旋律は徐々に音域や音量を増し、両手オクターブの連続(下の楽譜)や両手重音トレモロが現れピアニスティックである。
Sonata Nº 1 (Quedas do Iguaçu)、?-?小節、Fermata do Brasil.より引用
第5部Ⓔは「左手のためのカデンツァ Cadencia para mão esquerda」で、左手単音の無調の旋律が鍵盤上をのたうち回るように奏される。第6部Ⓕは「FUGA」と記され、3小節の主唱に始まり、5度上の応唱が続き、三声〜四声と発展していく(下の楽譜)。
Sonata Nº 1 (Quedas do Iguaçu)、?-?小節、Fermata do Brasil.より引用
第7部Ⓖは「悲痛に Dolente」と記され、低音部オスティナートppの和音にのって、Ⓑ(第二主題)の変奏にも聴こえる減8度や増8度の音程が妙に寒々しい旋律が悲しげに奏される。第8部からはソナタ形式の再現部にあたる部分で、冒頭の16分音符交互連打が再現される。第9部はⒷが左手・右手を逆にして奏される。最後の第10部は「CORAL」と記され、広い音域で両手和音がⒷの主題の変形を荘厳に奏でて終わる(下の楽譜)。
Sonata Nº 1 (Quedas do Iguaçu)、?-?小節、Fermata do Brasil.より引用作曲年代不詳
- Adeus! 3 momentos さよなら!、3つの楽章
- Cântico
- Cadência (?)
- Despedida
- Clarim quebrado 壊れたラッパ
- Duas peças infantis 2つの子どもの小品
- Marcha マルシャ(行進曲)
- Ó que noite bonita 何と素敵な夜
- Uma nuvem que passa 通り過ぎる一つの雲
- Valsa imperial 帝国のワルツ
- Vamos brincar de tamborzinho 小太鼓で遊ぼう
Dinorá de Carvalhoのピアノ曲楽譜
Ricordi Brasileira S.A.
- Cantilena
- Cavalinho de pixe
- Lá vae a barquinha carregada de?...
- O burrinho teimoso
- Polka "da Suite para piano"
- Alegro brilhante "da Suite para piano"
- Solidão "da Suite para piano"
Fermata do Brasil
- Sonata Nº 1 (Quedas do Iguaçu)
- Tema e onze variações
Irmãos Vitale
- Festa do Santo Rei
- Jogos no parque D. Pedro II
- Pássaro triste (do livro dos Pássaros)
Breitkopf & Härtel
- Neue Brasilianische Klaviermusik Heft 1
- Contemplação
I. Chirato & Cia.
- Caixinha de música
- Soldadinhos
L. G. Miranda
- Sertaneja
Casa Wagner
- Album com onze peças infantis, sôbre motivos populares
Universidade Estadual de Campinas (UNICAMP)
- Sonata n.1: Quedas de Iguaçu
斜字は絶版と思われる楽譜
Dinorá de Carvalhoのピアノ曲LP・CD
星の数は、は是非お薦めのCD、は興味を持たれた人にはお薦めのCD、はどうしてもという人にお薦めのLP・CDです。
Dinorá de Carvalho - Obras para piano e canto (LP)
Chantecler CMG-1041
- Cavalinho de piche*
- Festa do Santo Rei*
- Solidão*
- Marcha*
- Angústia*
- Polca*
- Allegro*
- Tema e onze variações*
- Menino Mandú**
- Ê bango bango-ê**
- A ti flor do céu (sobre tema colhido em Sabará)**
- Sinal de terra (letra de Cassiano Ricardo)**
- Pipoqueiro (Pregão)**
- Ausência (letra de Suzana Campos)**
- Coqueiro coqueiro-irá**
- Acalanto (letra de Cleômenes de Campos)**
Isabel Mourão (pf)*, Jarbas Braga (barítono)**, Maria do Carmo Arruda Botelho (pf)**
1967年リリースのLP。全曲ジノラ・ジ・カルヴァーリョの作品から成る唯一の録音で、前半はピアノ独奏曲、後半はピアノ伴奏の歌曲から成る。ピアノ曲が醒めた不協和音に満ちているのに対し、歌曲は不協和音は程々でロマンチックな曲が多く、対照的に思えます。どちらもこの作曲家の側面何だろうな〜。
Isis Moreira - pianista
- Variações, recitativo e fuga (Almeida Prado)
- Momento nº 5 (Das verdes alturas) (Almeida Prado)
- Sonata nº 1 (Dinorá de Carvalho)
- Cirandas (Heitor Villa-Lobos)
Isis Moreira (pf)
イシス・モレイラは、作曲者ジノラ・ジ・カルヴァーリョから《ソナタ第1番(イグアスの滝)》を献呈されたピアニストで、この曲の唯一の録音。ペダルの使用を少なめにした、全体的に乾いた音の演奏で、私の知る「イグアスの滝」の、もわっとした熱帯的な印象とは随分異なります。CDの解説書の写真では、ピアノを弾くイシス・モレイラの横でにこやかにしているジノラ・ジ・カルヴァーリョが写っているが、本当にこの演奏に作曲者は満足していたのかな〜、とちょっと疑問を感じる演奏に感じます。
Música brasileira para piano - Savino de Benedictis e sua Escola de Composição
- Borboleta Azul (Savino de Benedictis)
- Danse Grotesque (Savino de Benedictis)
- 3º Prelúdio (Savino de Benedictis)
- Legenda (Savino de Benedictis)
- Marionette (Savino de Benedictis)
- Égloga (Savino de Benedictis)
- Crepúsculo (Savino de Benedictis)
- La Girouette (Savino de Benedictis)
- Festa do Santo Rei (Dinorá de Carvalho)
- 12a Valsa de Esquina (Francisco Mignone)
- Romance (Orestes Farinello)
- Scherzo (Angelo Camin)
- Nuvens (Emilia de Benedictis)
- Vision (Norsinha Pierri Martins)
- Toada (Silvio Baccarelli)
- Prelúndio nº 3 (Pe. José Geraldo de Souza)
- 3 Versetos 12 Tons (Pe. José de Almeida Penalva)
- Viva Villa (Gilberto Mendes)
Sylvia Maltese (pf)
Mulheres Compositoras França - Brasil
Piano solo
- Tambiquererê (Chiquinha Gonzaga)
- Allegro de concerto (Branca Bilhar)
- Noturno nº 1 Recordação (Souvenir) (Emilia de Benedcitis)
- Mélisande (Mel Bonis)
- D'un jardin clair (De um jardim claro) (Lili Boulanger)
- Improviso (Louise Ferrenc)
- Sertaneja (Dinorá de Carvalho)
- Valsa choro nº 5 (Adelaide Preira da Silva)
- Serelepe choro nº 2 (Silvânia Barros)
- Adagio (Nilcélia C. S. Baroncelli)
- Dança nobre (Sandra Abrão)
- Multisarabanda (Kilza Setti)
- Vales (Maria Helena Rosas Fernandes)
- En mer (Augusta Holmès)
Piano a quatro mãos
- Les Gitanos (Mel Bonis)
- Six valses caprice (Mel Bonis)
- Voix du printemps, Six morcecaux (Marie Trautmann Jaël)
Sylvia Maltese (pf), Paola Tarditi (pf)
2009年の録音。
Músicas e músicos de São Paulo (LP)
Museu da Imagem e do Som de São Paulo, MIS 002LP 2
- Chora minha terra (Dinorá de Carvalho)*
- Pássaro colorido (Dinorá de Carvalho)**
- Valsa da primavera (Dinorá de Carvalho)**
- Lundu, No.3 das 9 Danças brasileiras (Ascendino Theodoro Nogueira)**
- Serenidade (Souza Lima)***
- Oito variações sobre o tema "Onde vais Helena" (Kilza Setti)****
- Festa na roça (Sérgio de Vasconcellos-Corrêa)*****
- Dança charrua n.º 1 (Breno Blauth)*****
- Dança charrua n.º 2 (Breno Blauth)****
- Variações sobre um tema de cana fita (Sérgio de Vasconcellos-Corrêa)****
- Tocatina (Sérgio de Vasconcellos-Corrêa)****
- Jogos selvagens (Amaral Vieira)******
Ester Fuerte Wajman (pf)*, Eny da Rocha (pf)**, Yara Ferraz (pf)***, Attilio Mastrogiovanni (pf)****, Eudóxia de Barros (pf)*****, Amaral Vieira (pf)******
1978年の録音、1979年リリースのLP。
Dinorá de Carvalhoに関する参考文献
- Flávio Cardoso de Carvalho. Canções de Dinorá de Carvalho: uma análise interpretativa. Editora da Unicamp (Universidade de Campinas) 2001.
- Vitor Alves de Mello Lopes. Levantamento e interpretação de obras para piano solo presentes na Coleção Dinorá de Carvalho do Acervo CDMC/Unicamp. Universidade Estadual de Campinas 2021.
- Vitor Alves de Mello Lopes e Tadeu Moraes Tafarello. A obra para piano solo de Dinorá de Carvalho. Anais do VII Performa Clavis Internacional 2022, p101-112, Instituto de Artes da UNESP.