Dinorá de Carvalhoのページ

Dinorá de Carvalhoについて

 ジノラ・ゴンチージョ・ジ・カルヴァーリョ・ムリシー Dinorah Gontijo de Carvalho Muricy(出生証明書ではDinorahと綴られているが、彼女本人はいつもDinoráとサインしていた)は1895年6月1日に、ミナスジェライス州ウベラーバ Uberaba に生まれた。子どもの頃から、音楽好きの父に勧められてピアノを習った。1904年に父が亡くなると一家はサンパウロに転居。サンパウロ演劇音楽院に入学しピアノの勉強を続け、1912年のリサイタルでは自作曲も弾いている。1916年には音楽院を卒業し、ピアニストとして活動した。その後ミナスジェライス州より奨学金を得て、1921年から1924年頃までパリに留学し、ピアニストのイシドール・フィリップに師事した。

 1930年代はサンパウロ女性オーケストラ Orquestra Feminina de São Paulo の指揮者として活躍した。またジノラ・ジ・カルヴァーリョのピアノ曲《セルタネージャ Sertaneja》を聴いた詩人で音楽評論家のマリオ・ジ・アンドラージ (1893-1945) は彼女の才能に感激し、イタリア出身で当時ブラジルに住んでいた作曲家のLamberto Baldiを紹介し、ジノラ・ジ・カルヴァーリョはLamberto Baldiに作曲を師事した。1938年にはJosé Joaquim Bittencourt Muricyと結婚。1939年にはサンパウロ市立劇場で指揮を行った。1940年代以降はピアノ教師として、アウメイダ・プラドなどの多くの生徒を育てた。

 彼女はブラジル音楽アカデミーの初めての女性会員に選ばれている。

 1960年5月には作曲家ソウザ・リマの指揮で、「フェスティバル・ジノラ・ジ・カルヴァーリョ」と銘打った演奏会が催され、交響組曲《祭りの集まり Arraial em festa》などが演奏された。

 1972年-1973年頃にはパリに3ヶ月滞在して、晩年のナディア・ブーランジェ (1887-1979) に作曲をあらためて勉強したとのことである。(予めジノラ・ジ・カルヴァーリョは自作曲を録音したカセットテープをブーランジェに送り、教えを請うていた。ブーランジェは「私は彼女を尊敬しているわ。私に教えをと?、彼女の時間を浪費するというの…」と驚き、「貴女は素晴らしい作曲家ですよ。個性を持ってらっしゃる。生徒としてではなく、友人か同僚としてお越し下さい」と返事したそうである。パリでは作曲家のオリヴィエ・メシアンにも会っている。)

 1980年2月28日に、サンパウロにて亡くなった。

 ジノラ・ジ・カルヴァーリョの作品には、交響組曲《祭りの集まり》、管弦楽のための《サンパウロの夜 序曲 Noite de São Paulo Ouverture》(1936)、《ピアノと管弦楽のための幻想協奏曲 Fantasia-Concerto》(1937)、《ピアノ協奏曲第2番》(1972)、弦楽オーケストラ・打楽器・ピアノのための《3つのブラジル舞曲 Três danças brasileiras》(1940)、弦楽オーケストラ・打楽器・ピアノのための《コントラスト Contrastes》(1969)、《弦楽四重奏曲第1番》(1962)、合唱・弦楽オーケストラ・打楽器のための《ミサ曲「深き淵より」 Missa "De profundis"》(1975) などがある。また歌曲を約40曲作っており、《エ・バンゴ・バンゴ・エ Ê bango bango-ê》(1948)、《火 O fogo》(1972) などが代表曲である。

 ジノラ・ジ・カルヴァーリョは下記のリストの通りピアノ曲を多数作曲したらしいが、未出版の曲が多く、また音源も乏しく全貌は不明である。ブラジル風味満点の《セルタネージャ》、ブラジルの素朴な祭りの光景を多調で描いた《サント・レイの祭り Festa do Santo Rei》、1950-1960年代の複雑な不協和音の作品群、そして晩年に到達した高度な作曲技法を駆使した《ソナタ第1番(イグアスの滝)Sonata Nº 1 (Quedas do Iguaçu)》と、どのピアノ曲も異なった個性を放っていて、音源のいまだ無い他のピアノ曲も聴いてみたいな〜と思わずにはいれらません。

 

Dinorá de Carvalhoのピアノ曲リストとその解説
 斜字は出版がなく、かつ手稿譜が現存せず、どんな曲だか不明な作品です。

1913または1915

1919

1920

1921?

1923

1929

1930

1930または1933

1932

1933

1934

1936?

1939

1940

1944

1945

1949

1950

1950-1974

1951

1952

1953

1955

1956

1957

1958

1960

1963

1963-1968

1966

1967

1971

1974

作曲年代不詳

 

Dinorá de Carvalhoのピアノ曲楽譜

Ricordi Brasileira S.A.

  • Cantilena
  • Cavalinho de pixe
  • Lá vae a barquinha carregada de?...
  • O burrinho teimoso
  • Polka "da Suite para piano"
  • Alegro brilhante "da Suite para piano"
  • Solidão "da Suite para piano"

Fermata do Brasil

  • Sonata Nº 1 (Quedas do Iguaçu)
  • Tema e onze variações

Irmãos Vitale

  • Festa do Santo Rei
  • Jogos no parque D. Pedro II
  • Pássaro triste (do livro dos Pássaros)

Breitkopf & Härtel

I. Chirato & Cia.

  • Caixinha de música
  • Soldadinhos

L. G. Miranda

  • Sertaneja

Casa Wagner

  • Album com onze peças infantis, sôbre motivos populares

Universidade Estadual de Campinas (UNICAMP)

斜字は絶版と思われる楽譜

 

Dinorá de Carvalhoのピアノ曲LP・CD

星の数は、は是非お薦めのCD、は興味を持たれた人にはお薦めのCD、はどうしてもという人にお薦めのLP・CDです。

Dinorá de Carvalho - Obras para piano e canto (LP)
Chantecler CMG-1041

Isabel Mourão (pf)*, Jarbas Braga (barítono)**, Maria do Carmo Arruda Botelho (pf)**

 1967年リリースのLP。全曲ジノラ・ジ・カルヴァーリョの作品から成る唯一の録音で、前半はピアノ独奏曲、後半はピアノ伴奏の歌曲から成る。ピアノ曲が醒めた不協和音に満ちているのに対し、歌曲は不協和音は程々でロマンチックな曲が多く、対照的に思えます。どちらもこの作曲家の側面何だろうな〜。

 

Isis Moreira - pianista

  • Variações, recitativo e fuga (Almeida Prado)
  • Momento nº 5 (Das verdes alturas) (Almeida Prado)
  • Sonata nº 1 (Dinorá de Carvalho)
  • Cirandas (Heitor Villa-Lobos)

Isis Moreira (pf)

 イシス・モレイラは、作曲者ジノラ・ジ・カルヴァーリョから《ソナタ第1番(イグアスの滝)》を献呈されたピアニストで、この曲の唯一の録音。ペダルの使用を少なめにした、全体的に乾いた音の演奏で、私の知る「イグアスの滝」の、もわっとした熱帯的な印象とは随分異なります。CDの解説書の写真では、ピアノを弾くイシス・モレイラの横でにこやかにしているジノラ・ジ・カルヴァーリョが写っているが、本当にこの演奏に作曲者は満足していたのかな〜、とちょっと疑問を感じる演奏に感じます。

 

Música brasileira para piano - Savino de Benedictis e sua Escola de Composição

Sylvia Maltese (pf)

 

Mulheres Compositoras França - Brasil

Piano solo

  • Tambiquererê (Chiquinha Gonzaga)
  • Allegro de concerto (Branca Bilhar)
  • Noturno nº 1 Recordação (Souvenir) (Emilia de Benedcitis)
  • Mélisande (Mel Bonis)
  • D'un jardin clair (De um jardim claro) (Lili Boulanger)
  • Improviso (Louise Ferrenc)
  • Sertaneja (Dinorá de Carvalho)
  • Valsa choro nº 5 (Adelaide Preira da Silva)
  • Serelepe choro nº 2 (Silvânia Barros)
  • Adagio (Nilcélia C. S. Baroncelli)
  • Dança nobre (Sandra Abrão)
  • Multisarabanda (Kilza Setti)
  • Vales (Maria Helena Rosas Fernandes)
  • En mer (Augusta Holmès)

Piano a quatro mãos

  • Les Gitanos (Mel Bonis)
  • Six valses caprice (Mel Bonis)
  • Voix du printemps, Six morcecaux (Marie Trautmann Jaël)

Sylvia Maltese (pf), Paola Tarditi (pf)

 2009年の録音。

 

Músicas e músicos de São Paulo (LP)
Museu da Imagem e do Som de São Paulo, MIS 002

LP 2

Ester Fuerte Wajman (pf)*, Eny da Rocha (pf)**, Yara Ferraz (pf)***, Attilio Mastrogiovanni (pf)****, Eudóxia de Barros (pf)*****, Amaral Vieira (pf)******

 1978年の録音、1979年リリースのLP。

 

Dinorá de Carvalhoに関する参考文献