Oscar Lorenzo Fernândezのピアノ曲リスト
斜字は出版がなく、かつ手稿譜が現存せず、どんな曲だか不明な作品です。1918
- Duas miniaturas, Op. 1 2つの小品、作品1
- Andante
- Presto
1919
1920
1922
- Historietas maravilhosas, Op. 12 不思議な物語、作品12
- Serenata do príncipe encantado 魔法使いの王子のセレナーデ
- Branca de neve 雪の白さ
- Balada da bela adormecida 眠り姫のバラード
- Aventuras do pequeno polegar 小さな親指の冒険
- A gata borralheira シンデレラ
- Chapeuzinho vermelho 小さな赤い教会
- A fada do bosque 森の妖精
- Prelúdios do crepúsculo, Op. 15 薄暮への前奏曲集、作品15
- Evocação da tarde 夕暮れの回想
- Idílio 牧歌
- Ocaso 日没
- Angelus アンジェラス
- Pirilampos 螢(ほたる)
1923
- Rêverie, Op. 20 夢、作品20
- Visões infantis, Op. 22 子どもの情景、作品22
- Pequeno cortejo 小さな行列
- Ronda noturna 夜の円舞
- Dança misteriosa 不思議な踊り
1924
1925
1926
1927
- Presentes de Noël, Op. 46 クリスマスのプレゼント、作品46
- A dansaria automática 機械仕掛けの踊り子
- A boneca sonhadora 夢見る人形
- O soldadinho da perna quebrada 足の壊れた小さな兵隊
- A monótona caixinha de música 単調な小さなオルゴール
- Peças Burlescas, Op.53 おどけた小品集、作品53
1929
- Três estudos em forma de sonatina, Op. 62 ソナチネ形式の3つの練習曲集、作品62
- Allegro con brio
- Moderato
- Allegro scherzoso
1932
- Bonecas お人形
- A dançarina espanhola スペインの踊り子
- A pastorinha portuguêsa ポルトガルの羊飼い
- A camponesa italiana イタリアの農民
- A lenhadora russa ロシアの木こり
- A baianinha das cocadas 椰子で出来たバイーア人
- Valsa suburbana, Op. 70 町外れのワルツ
1935
- Recordações da infância 子ども時代の思い出
- Caminho da serra 山の道
- Na beira do rio 川岸で
- Fogueiras de São João 聖ジョアンの灯火
1936
- Batuque バトゥーキ
- 1.ª Suíte Brasileira 第一ブラジル組曲
- Velha modinha 古い歌
- Suave acalanto 甘い子守歌
- Saudosa seresta 悲しいセレナーデ
1937
- Pequena serie infantil 子どもの小さな組曲
- Cantiga カンチーガ
- Acalanto 子守歌
- Folguedo 遊び
- Minhas Férias 私の休日
- Madrugada 夜明け
- Manhã na praia 浜辺の朝
- Caçando borboletas 蝶を捕る
1937-1938
- 2.ª Suíte Brasileira 第二ブラジル組曲
- Ponteio 前奏曲
- Moda 歌
- Cateretê カテレテ
- 3.ª Suíte Brasileira 第三ブラジル組曲
- Toada トアーダ
- Seresta セレナーデ
- Jongo ジョンゴ
1942
- Suíte das 5 notas (Sobre os 7 graus da escala diatonica) 5音の組曲(全音階の7度による)
- Despertar 目覚め
- Teimosia 頑固
- Acalanto 子守歌
- Roda ホーダ
- Pastoral 牧歌
- Lamento 悲歌
- Valsinha 小さなワルツ
- Caminho de escola 学校への小道
1944
- Boneca Yayá ボネカ・ヤーヤ
- Yayá dançando 踊るヤーヤ
- Yayá sonhando 夢見るヤーヤ
- Yayá brincando 遊ぶヤーヤ
1947
- Sonata breve 短いソナタ
- Energico
- Largo e Pesante
- Impetuoso
作曲年代不詳
- Bazar (Piano a 4 mãos) バザー(ピアノ連弾)
- O cavaleiro fantástico (1933) ファンタスティックな騎士
- O pião de música 音楽のこま
- O ferreiro automático 機械仕掛けの鍛冶屋
- O barquinho de vela 小さな帆掛け船
- O trensinho de mola ゼンマイ仕掛けの小さな列車
Oscar Lorenzo Fernândezのピアノ曲の解説
1918
- Duas miniaturas, Op. 1 2つの小品、作品1
第1番Andanteは嬰ハ短調。憂うつな旋律が時々嬰ハ長調にも揺らぎながら奏される。第2番Prestoは変ニ長調。軽快な曲。
- Andante
- Presto
1919
- Noturno, Op. 3 夜想曲、作品3
1922年に催されたリオデジャネイロ音楽文化協会コンクールで一等賞を獲得した作品で、ロレンゾ・フェルナンデスの出世作。変ホ長調と変ホ短調が揺れ動き、幻想的な雰囲気で始まる。中間部は8分音符の旋律と3連8分音符の旋律が絡み合う3段楽譜で結構派手。全体的にフランス印象主義の影響を感じさせる曲。- Miragem 空想
三部形式。変ホ長調で始まるが、調性は落ち着かず転調を繰り返す曲で、若きロレンゾ・フェルナンデスの作曲技法の高さを物語っている。霧のかかったな空想の世界を描いたような感じで、詩的で、中間部の両手アルペジオは魔法がかかったように魅惑的。1920
- Arabesca, Op. 5 アラベスク、作品5
上記の《夜想曲、作品3》と同じ1922年のリオデジャネイロ音楽文化協会コンクールで佳作となった作品。イ短調。伴奏アルペジオのレが♯なのがアラブ風。中間部の急速なアルペジオ連続はピアニスティック。1922
- Historietas maravilhosas, Op. 12 不思議な物語、作品12
童話の世界を音にしたような組曲だが、テクニック的には中級以降レベルで子供が弾くにはやや難しい。その上、和音の使い方はとても複雑で転調も多く、調性自体定まらない曲もあり。曲名のイメージにはやや反して(聴き慣れるまでは)難解というか、謎めいた雰囲気の曲が多い印象である。
- Serenata do príncipe encantado 魔法使いの王子のセレナーデ
イ短調、謎を投げかけるような伴奏にのって悲し気なセレナーデが奏される。- Branca de neve 雪の白さ
イ短調。雪がしんしんと降るのを描写するような、ペダルなし単音の静かなアルペジオの伴奏にのって、素朴な旋律が奏される。11小節目からいつの間にか嬰ト短調になってるのが絶妙。曲はずっと静かに奏され消えるように終る。- Balada da bela adormecida 眠り姫のバラード
調性は定まらずで、物語風の意味深長な雰囲気。- Aventuras do pequeno polegar 小さな親指の冒険
ハ長調。変奏曲形式で、両手親指の連打で奏される主題に引き続き、静かになったり、スケルツォだったり、メヌエットだったりの変奏が8個続く。- A gata borralheira シンデレラ
ロ短調の寂し気な旋律で始まるが転調が多く、最後はロ長調で終る。- Chapeuzinho vermelho 小さな赤い教会
イ短調。左手8分音符の連打にのって快活な旋律が奏される。馬車が走るような軽快な、お伽話のような雰囲気の曲。- A fada do bosque 森の妖精
高音の速い32分音符アルペジオが幻想的で、森の奥でキラキラと輝く妖精を描いているよう。- Prelúdios do crepúsculo, Op. 15 薄暮への前奏曲集、作品15
夕暮れから夜にかけてを描写した組曲。全体的に哀愁漂う雰囲気の曲が多いが、これまた和音がクネクネと複雑で、転調は目まぐるしく、何かストレートじゃないな~と思うのは私だけかな?。
- Evocação da tarde 夕暮れの回想
夕暮れの光景の中、何か複雑なことを考えているのかな~といった雰囲気。中間部は三段楽譜になり、中声部の旋律の上に対旋律がポリフォニックに絡み付く。- Idílio 牧歌
一応変ニ長調。題名通りの、静かな田園の夕暮れといった感じ。但し中間部は高音部と中音部の旋律が情熱的に応酬する(また三段楽譜だ)。- Ocaso 日没
日没で光線の色が変わっていく様を描いたような曲。- Angelus アンジェラス
全音音階の響きで、魔法がかったような雰囲気。- Pirilampos 螢(ほたる)
エンリキ・オスワルドに献呈された。3連16分音符が速い曲で、螢の青白い光がフワンフワンと点滅するのを巧く描写している。1923
- Rêverie, Op. 20 夢、作品20
夢うつつの世界を描いたような曲で、霧がかかったような雰囲気。ホ長調で始まるが、転調が多く最後は変ホ短調の響き。- Visões infantis, Op. 22 子どもの情景、作品22
テクニック的に子どもでも弾ける曲集だが、機能的和声から離れていて、謎めいた半音階進行が多く、聴いた感じ??となるかもしれない曲ばかりである。(以外と子どもってそういうのに順応できるのかも知れないが。)
- Pequeno cortejo 小さな行列
ト長調。最初は威勢よく子ども達が行進していくようだが、後半だんだんと寂し気になり、最後は冒頭の旋律がト短調でゆっくりと奏され終る。- Ronda noturna 夜の円舞
夜の静寂を描いたような曲。- Dança misteriosa 不思議な踊り
一応イ長調だが、調性はぼやけた感じの不思議な雰囲気。1924
1925
1926
- Berceuse da boneca triste, Op. 39 悲しい人形の子守歌、作品39
オスティナートのppの静かな伴奏にのって、長調とも短調ともつかない素朴な旋律が呟くように奏される。音数も少ない曲だが、何とも素朴で美しい曲だ。この曲は作曲者自身によりヴァイオリンとピアノ用にも編曲された。1927
- Presentes de Noël, Op. 46 クリスマスのプレゼント、作品46
可愛らしく、また和声的にも親しみやすい曲集である。
- A dansaria automática 機械仕掛けの踊り子
ハ長調。全曲両手ともト音記号で書かれていて、ゼンマイ仕掛けの踊り子人形が可愛らしく機械的に動くのを高音部で描写。途中で楽譜に記された "A corda acabou(ゼンマイが切れて)" で曲はリタルダンドして途切れ、"E' só dar corda...(ゼンマイを巻くと…)" でギコギコ巻いて、"E a dansa continúa...(また踊り始める…)" で曲が再開されるのは愉快。- A boneca sonhadora 夢見る人形
イ短調。物悲しい旋律が奏される。中間部はト長調で正に夢見るよう。- O soldadinho da perna quebrada 足の壊れた小さな兵隊
ヘ長調。威勢の良いマーチ風だが、びっこを曳いていてちょっと空元気。- A monótona caixinha de música 単調な小さなオルゴール
ニ長調。これも全曲両手ともト音記号で書かれていて、題名通りの一本調子のオルゴールのよう。中間部はハ長調になる。- Peças Burlescas, Op.53 おどけた小品集、作品53
1929
- Três estudos em forma de sonatina, Op. 62 ソナチネ形式の3つの練習曲集、作品62
ブラジル民謡風の旋律を多用し、技巧的にも華やかな練習曲集。
- Allegro con brio
強いて言えばA-B-A'-C-A"-コーダの形式。全体的に軽快な曲で、Aは右手の無窮動な8分音符リズムの下で、左手にファのミクソリディア旋法の素朴な旋律が現れる。Bはシンコペーションの旋律に16分音符スタッカートの対旋律が絡み付いて粋な響き。- Moderato
ハ長調、A-B-A'形式。子守歌を思わせる静かな曲で、冒頭の旋律に絡む対旋律の絶妙な半音階進行が、微睡みを誘うよう。中間部はニ短調になり、10/8拍子の変拍子がフワッとしたいい雰囲気で、アルペジオにのった旋律が繊細。- Allegro scherzoso
一応ト長調、無窮動な16分音符音階にのって軽快な旋律が奏される。1932
- Bonecas お人形
世界各国の人形を愛らしく描いた小品集である。技巧的に子ども向けで、右手・左手ともそれぞれ5つの音のみで作られている。
- A dançarina espanhola スペインの踊り子
ト長調(実際は左手はソ, ラ,シ, レ, ミ、右手はソ, ラ, シ, ド, ミのみ使用)、A-B-A'形式。セビリャーナスのリズムにのった可愛い踊り。- A pastorinha portuguêsa ポルトガルの羊飼い
ニ短調(実際は左手はレ, ミ, ファ, ソ, ラ、右手はソ, ラ, シ♭, ド, レのみ使用)、A-B-A形式。物悲しい旋律が右手~左手と現れる。Bは二声のポリフォニーになる。- A camponesa italiana イタリアの農民
ホ短調(実際は左手はミ, ファ, ソ, ラ, シ、右手はラ, シ, ド, レ, ミのみ使用)、A-B-A'形式。タランテラのリズムで和声もナポリのII度を多用。- A lenhadora russa ロシアの木こり
イ短調(実際は左手はラ, シ, ド, レ, ミ、右手はド, レ, ミ, ファ, ソのみ使用)、A-B-A'形式。冒頭は左手にボルガの舟歌の一節が現れる重々しい曲。- A baianinha das cocadas 椰子で出来たバイーア人
バイーアとはブラジルの北東部にある州のこと。教会旋法にあたる音階を用いるのがブラジル北東部(ノルデスチ)の民族音楽の一つの特徴で、この曲も一聴するとハ長調だが(実際は左手はシ, ド, レ, ミ, ファ、右手はソ, ラ, シ♭, ド, レのみ使用)、右手旋律はドのミクソリディア旋法に聞こえてくる。A-B-A'形式。愛嬌たっぷりの曲。- Valsa suburbana, Op. 70 町外れのワルツ
やるせない旋律のワルツが嬰ハ短調で始まる。ベースの半音階進行も対旋律となり、また中声部にも対旋律がありポリフォニックな上に、和音も豊かでおしゃれな雰囲気。中間部の変ニ長調~変イ長調の部分は華やか。ミニョーネのValsa de Esquinaなどに雰囲気が似ている。ミニョーネがValsa de Esquina1番を書いたのが1938年なので、むしろロレンゾ・フェルナンデスの方が先だ。1935
- Recordações da infância 子ども時代の思い出
初心者向けの小品らしく全曲ハ長調で始まる。ロレンゾ・フェルナンデス自身の子ども時代の思い出を描いたのか、郷愁を感じさせる曲集である。
- Caminho da serra 山の道
前半は山道をてくてく歩いているみたいだが、突然のffのレ-ラ♭-ドの和音の後はハ短調になりちょっと心細くなる。- Na beira do rio 川岸で
しっとりとした旋律が奏される曲で、夕暮れの川面の静かな光景が目に浮かんでくるよう。- Fogueiras de São João 聖ジョアンの灯火
左手の16分音符がお祭りのように賑やかな曲。ブラジルでは聖ジョアン(ヨハネ)祭で大かがり火を焚くらしい。中間部のゆったりとした部分では、ブラジル童歌の "Ó ciranda, Ó cirandinha" の旋律が現れる。1936
- Batuque バトゥーキ
元は管弦楽曲で、ソウザ・リマによりピアノ曲に編曲された。バトゥーキとはアフリカ由来の踊りや音楽の一つで、伝統的には歌と打楽器による音楽にのって集団で踊られる。荒々しい舞曲が盛り上がっては収まったりを繰り返す。ソウザ・リマの編曲は連打音や低音の不協和音が打楽器的ないい感じ。- 1.ª Suíte Brasileira 第一ブラジル組曲
Suíte Brasileiraは三編作曲され、それぞれの組曲は3曲から成る。悲しいメロディーの曲あり、野性的な舞曲ありと多様で、旋律や和音も美しく、ロレンゾ・フェルナンデスのピアノ曲の代表作である。
- Velha modinha 古い歌
イ短調。題名通りの悲しい昔話を歌い聞かせているような曲。右手の旋律に続いて、左手にその旋律の一部がこだまのように返されるのが趣深い。右手・左手は共に概ね旋律的短音階で書かれていて、ファとソに♯の付いた右手上行・ファとソが♮の左手下行が同時に聴こえる所など、いい響きである(下記の楽譜の12小節目など)。
1a. Suíte Brasileira, I. Velha modinha、11〜14小節、Irmãos Vitaleより引用- Suave acalanto 甘い子守歌
ヘ長調。楽譜の脚注には「低音部はペダルで音を響かせながらスタッカートで優しく、心地よい雰囲気で弾くこと。全曲una cordaで弾くこと」と書かれている。ずっとpp~pで、ピアノを弾くタッチも優しく触れるような感じで演奏したい。音も少なく飾り気もない曲だが、実に美しい子守歌だ。最後の部分のミ♭の音など、その一音で夢の世界へ引き込まれそう(下記の楽譜)。
1a. Suíte Brasileira, II. Suave acalanto、22〜25小節、Irmãos Vitaleより引用- Saudosa seresta 悲しいセレナーデ
ニ短調、A-B-B'-A'の形式。ヴァルサ・ブラジレイラの雰囲気の哀愁たっぷりの曲で、Aの左手の陰うつな旋律も、Bの右手の切々とした旋律もやるせなく美しい。1937
- Pequena serie infantil 子どもの小さな組曲
ピアノを始めて2~3年目くらいの初心者向けの曲集である。
- Cantiga カンチーガ
ハ長調、付点リズムの旋律がブラジル風の曲。- Acalanto 子守歌
イ短調、左手の揺りかごのような音型にのって寂しげな旋律が奏される。- Folguedo 遊び
ハ長調、左手の八分音符連打は子どもが駆け回っているみたい。- Minhas Férias 私の休日
この曲集も初心者向けの曲集で、全部ハ長調。楽譜はト音記号のみで、右手・左手ともドレミファソの5音(第2曲の中間部はミ♭)のみから成っている。
- Madrugada 夜明け
両手とも単音で、2声が交互に掛け合う静かで清々しい曲。- Manhã na praia 浜辺の朝
爽やかな雰囲気の曲。中間部はハ短調になる。- Caçando borboletas 蝶を捕る
活発で元気。1937-1938
- 2.ª Suíte Brasileira 第二ブラジル組曲
- Ponteio 前奏曲
ホ短調。ポンテイオ Ponteio という言葉は、ポルトガル語のpontear(=ギターなど弦楽器などをつま弾く)とprelúdio(=前奏曲)を混ぜた造語で、1930年頃からブラジルの音楽家達によって用いられ始めていた言葉であったと思われる。カマルゴ・グァルニエリが1931年より作曲したピアノ曲集《ポンテイオス》が有名である。曲は時々ため息をつくような悲しい旋律が歌われ、ギターを思わせるアルペジオ和音が旋律に絡む。最後のレの音がまた、その一音で余韻たっぷり。- Moda 歌
ホ短調、A-B-A形式。楽譜に書いてある曲名の英語訳は "Song" だが、Modaはポルトガル語では流行とか俗歌とかの意味。ちょっと俗っぽく悲しい旋律がギターを思わせる伴奏にのって奏された後、その変奏が嵐のようにffまで一瞬盛り上がり、間もなく最初の旋律が何事もなかったかのように悲しく繰り返されて曲は終わる。- Cateretê カテレテ
イ長調、A-B-A'形式。カテレテ cateretê(またはカチーラ catira)はブラジルの民族舞踊で、ギターを伴奏にして(歌が入ることもある)、手を叩き、足を鳴らしながら二列になって踊る。トゥピ族あたりのブラジル先住民の踊りが起源か、またはアフリカからの奴隷やヨーロッパからの移民の舞踊の混合とも言われており、現在はサンパウロ州やミナスジェライス州、マットグロッソ州など主に内陸部の地方に残っている。全曲3-3-2の躍動的なシンコペーションのリズムの明るい曲。最初はppで始まるが、踊りの盛り上がり宛らに徐々に音域も拡がっていく(ダンパーペダルの指示も、最初はペダル無しから、段階的にペダルを増やすよう楽譜に記されている)。Bで現れる旋律が時々ミクソリディア旋法になるのも、素朴な響きを醸し出している。最後はfff~ffffの和音強打に興奮して終わる。- 3.ª Suíte Brasileira 第三ブラジル組曲
- Toada トアーダ
トアーダとはブラジル民謡の一つのジャンルで、一般的に単純なメロディーに自然や故郷を歌う哀愁のこもった歌である。ホ長調、A-B-A'-B'形式。3-3-2のシンコペーションの伴奏にのって息の長い旋律が歌われる。- Seresta セレナーデ
ホ短調、三部形式。左手のくねくねした旋律に右手の落ち着かない重音の旋律が重なる。中間部はホ長調になり、中声部に抒情的な旋律が流れる。- Jongo ジョンゴ
ジョンゴとはブラジルのアフリカ系住民の民族舞踊で、中部〜南部アフリカ(おそらくアンゴラあたり)を起源とし、多数の男女が一緒にペアまたは輪になって踊り、音楽は歌と打楽器のみからなる。ブラジルの有名なサンバの元の一つかもしれないと言われている。ロレンゾ=フェルナンデスのJongoは楽譜に小節線が途中全くないが、おおむね6拍子のリズム。曲はアマゾンの密林の奥からわずかに太鼓の音が聞こえてくるようにpppで始まる。旋律は一応ロ短調だが、左手の太鼓のリズムは不協和音の固まりだ。段々クレッシェンドしていき、太鼓のリズムも音域が拡がり、楽譜の2頁目最下段のffの所からは3段譜となる(下記の楽譜)。更に曲は盛り上がり右手の旋律も左手のリズムもfffの強奏が続き、最後はffffで終わる。この曲は作曲家自身により2台ピアノ用にも編曲された。
3a. Suíte Brasileira, III. Jongo、小節線なし、Irmãos Vitaleより引用
以上、Suíte Brasileiraにおいてロレンゾ・フェルナンデスはブラジルの多様な姿を上手に描いており、正に彼の傑作と言っていいと思う。ただ、これは私の個人的意見だが、Suíte Brasileiraはその一曲一曲は素晴らしいが、組曲としての有機的な繋がりにやや欠けるのではないか、ちょっとそれが惜しいと思う。1942
- Suíte das 5 notas (Sobre os 7 graus da escala diatonica) 5音の組曲(全音階の7度による)
この組曲はピアノを始めて1~2年目の初心者むけの、本当に初歩の曲。Despertarはドレミファソ、Teimosiaはシドレミファ、Acalantoはラシドレミ、Rodaはソラシドレ、Pastoralはファソラシド、Lamentoはミファソラシ、Valsinhaはレミファソラ、Caminho de Escolaはドレミファソの5音だけで書かれている。
- Despertar 目覚め
- Teimosia 頑固
- Acalanto 子守歌
- Roda ホーダ
- Pastoral 牧歌
- Lamento 悲歌
- Valsinha 小さなワルツ
- Caminho de Escola 学校への小道
1944
- Boneca Yayá ボネカ・ヤーヤ
ロレンゾ・フェルナンデスお得意の、人形の世界をほのぼのと愛らしく描いた小品集で全曲ハ長調である。
- Yayá dançando 踊るヤーヤ
シンコペーションのブラジルらしいリズムにのって気取った旋律が奏される。四分音符=66のテンポ指定で、速すぎず弾くのが相応しい。- Yayá sonhando 夢見るヤーヤ
のんびりした右手の三度の旋律に、左手の和音が半音階で動くのが微睡みを描いている。- Yayá brincando 遊ぶヤーヤ
左手の16分音符連打がせわしなく遊んでいる様を描写。中間部で遊びをちょっと休憩、といった感じののんびりした部分が10小節ほど挟まれる。1947
- Sonata breve 短いソナタ
1947年に作曲されたが、初演されたのは彼の死後の1949年のことである。ロレンゾ・フェルナンデスが晩年に到達した高度な作曲技法を駆使した、ちょっと難解な曲である。第1楽章EnergicoはだいたいA-B-A-C-B形式。Aはラ-ミ♭-レがライトモチーフのようにあちこちに姿を変え現れる攻撃的な響き。Bは一転して静か。Cは低音レのオクターブがずっと続く中、右手に7度の不協和音が無気味に鳴り響く。第2楽章Largo e Pesanteは、付点8分音符+32分休符+32分音符の繰り返しが執拗な悲劇的な雰囲気の曲。第3楽章Impetuosoは左手の速いオクターブの8分音符が力強くずっと続き、その上の右手の旋律は野性的なシンコペーションが特徴的で全曲激しい曲。
- Energico
- Largo e Pesante
- Impetuoso