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Manuel Gómez Carrilloについて
Manuel Gómez Carrillo(マヌエル・ゴメス・カリージョ)は 1883年3月8日(1881年とする文献もあり)にアルゼンチン北部のサンチアゴ・デル・エステロで生まれた。彼の父は熱心なカトリック信者であり、ゴメス・カリージョを隣州のサルタの神学校に入学させた。神学校の聖歌隊で音楽を勉強した彼は、13歳の時には聖歌隊の副指揮者を務めていたとのこと。ゴメス・カリージョの優れた音楽的才能に気付いた神学校の校長は、15歳の彼を、優れた音楽教師のいる隣州のカタマルカの神学校に転校させた。カタマルカでは本格的にピアノをソルフェージュを習っている。
その後、父の勧めでゴメス・カリージョは首都ブエノスアイレスへ出て数学物理学を学んだらしい。それでも音楽は独学で続け、1908年頃からは音楽教師をしている。
故郷に戻った彼は1917年、María Inés Landeta Césarと結婚。6人の子供をもうけた。(娘のInés Gómez Carrilloはアルゼンチンで有名なピアニストになった。)
1918年、ゴメス・カリージョは国立トゥクマン大学よりアルゼンチン北部の民謡の調査を委嘱された。彼は北部地方をくまなく旅行して調査・研究を行い、1920年には論文を発表した。また彼が収集・採譜した民謡は "Danzas y Cantos Regionales del Norte Argentino(アルゼンチン北部地方の舞曲と歌)" という題名で出版された。
1936年にはロザリオに移住し、師範学校で音楽を教えた。1943年にはブエノスアイレスに移り、翌年にはInstituto Nacional de la Tradición(国立伝承研究所、現在はInstituto Nacional de Antropología y Pensamiento Latinoamericano)の副所長に就任した。
1968年3月17日、サン・イシドロで亡くなった。
ゴメス・カリージョは民族音楽研究が主たる業績の音楽学者であったが、作曲家でもあり、バレー音楽 "La Salamanca"、舞踊音楽 "La Telesita"、また北部アルゼンチン民謡を題材にしたいくつかの室内楽曲や歌曲を作った。ピアノ曲は下記の通りで、多くの作品が彼の故郷をサンチアゴ地方の民謡や踊りを元にしていて、フォルクローレの素朴な響きムンムンである。アルゼンチン北部の民謡って、正直の所あまり明るい雰囲気とは言えないので彼のピアノ曲もどこか憂いを帯びて地味であるが、和声など作曲技法は一流です。
Manuel Gómez Carrilloのピアノ曲リストとその解説
1905-1910
- Cuatro valses 4つのワルツ集
- Re Mayor ニ長調
- Sol Mayor ト長調
- Re Mayor ニ長調
- La Mayor イ長調
-1917
- Tenga mano, Tango お手をどうぞ、タンゴ
タンゴらしい気取った小品。前半はイ長調~イ短調が入れ替わり軽快。後半はイ短調になり、アルゼンチン民謡 "Zamba de Vargas" を、原曲はZambaなので6/8拍子だが、それが2/4拍子のタンゴに編曲されて現れる。-1920
- Rapsodia santiagueña, inspirada en motivos populares de Santiago del Estero サンチアゴ狂詩曲、サンティアゴ・デル・エステロ地方の民謡の主題に霊感を受けて
演奏時間約12分の大作。ゴメス・カリージョの故郷であるアルゼンチン北部のサンティアゴ・デル・エステロ州の光景を絵巻のように描いた作品で、いくつもの主題が次々と現れる。冒頭はヘ短調で、リストのハンガリー狂詩曲第2番の最初を思わせる劇的な旋律で始まる。次はZamba "La Estrellita" と楽譜に記された、変イ短調のサンバのリズムの哀愁漂う主題で、アルペジオや両手オクターブへと盛り上がる。次の主題は異名同音の嬰ト短調になり、VIDALAと記された悲しげな旋律がソ#のドリア旋法で静かに奏される。これも3連符和音連打や両手オクターブへと派手に展開される。次はAire de Zambaと記された、突然の左手16分音符で始まる華やかなホ長調の主題。続いて現れるのはZapateadoと記されたヘ長調の三拍子の活発な主題で、楽譜の右手の軽快なリズムには「ギターをかき鳴らすように (ragueo de guitarra)」、左手低音のバスには「ボンボを打つリズムを模して (Imitando los golpes ritmicos del bombo)」と記されている(ボンボとは主にアルゼンチン北部やボリビアの民族音楽で使われる大太鼓)。このZapateadoは最初は静かにpで、徐々に音域を増してffまで盛り上がる。途中ではChacareraと記された旋律が挟まれ繰り返される。最後はニ短調で、Canción popularと記された旋律がオクターブ和音で荘厳に奏され、華やかなコーダで終る。この曲はフランスのピアニストMaurice Dumesnilに献呈され、彼によってパリでも演奏され、また1924年に管弦楽曲にも編曲された。1924
- El mistolero, Gato santiagueño エル・ミストレート、サンチアゴ地方のガト
ト長調、曲の構成はアルゼンチンの民族舞踊ガトの形式に概ね沿っており、楽譜に順にIntroducción〜Danza〜1er. Zapateo〜Vuelta〜2º Zapateo〜Vuelta finalと記されていて、その順に演奏される。陽気な曲で、Danzaで朗々とした旋律が現れ、1er. Zapateoで愉快なリズムが刻まれ、Vueltaは4小節のみでDanzaの旋律が現れ、2º Zapateoでは右手高音部で愉快なリズムが刻まれる。1934
- Fiesta criolla, Panorama inspirado en motivos santiagueños クリオージョの祭り、サンチアゴ民謡の主題に霊感を受けたパノラマ
Rapsodia santiagueñaに並ぶゴメス・カリージョの代表作で、素朴な民謡の雰囲気たっぷりの作品である。上記の4つの部分から成り、切れ目なく奏される。第1部Alegríaは3/4拍子。まず、「ギターを弾くように」と楽譜に記されたト短調のチャカレーラの躍動的なリズムの伴奏にのって、ソのドリア旋法の素朴な旋律が奏される。変ロ長調~ニ長調と転調していくのが良い響きだ。冒頭の旋律は転調を繰り返しながら変奏されていき、最後は「クリオージョのボンボを打つリズムを模して」と記された左手低音の野性的なリズムで終る。第2部Canción tristeは6/8拍子。"Aire de Vidala(ビダーラのリズム)" と記されていて、哀愁漂う旋律が、これもソのドリア旋法で静かに奏される。この旋律は半音階的な和音が肉付けされて繰り返される。テンポを速めた12小節の部分を経て、第3部El amor en los pañuelosは3/8拍子。"Aire de Zamba(サンバのリズム)" と記されていて、テンポは軽快だが、変ホ長調とハ短調が交互に現れる哀調帯びた調べだ。減五度の和音による転調を経て、ニ長調で終る。この "El amor en los pañuelos" は歌曲としても出版された。第4部Siempre alegríaは再び3/4拍子。第1部が繰り返されるが、後半は変奏形が変わり、最後はfffの両手和音連打で終る。このFiesta criollaは後にゴメス・カリージョ自身により管弦楽曲に編曲され、1941年に作曲者自身の指揮で初演された。
- Alegría - Allegro vivo 喜んで
- Canción triste - Andante 悲歌
- El amor en los pañuelos - Vivo ハンカチの中の愛
- Siempre alegría - Allegro vivo 常に喜んで
1937
- Danza del cuervo, inspirada en el baile popular santiagueño "El Pala - Pala" カラスの踊り、サンチアゴの有名な踊り「パラ・パラ」に霊感を受けて
「パラ・パラ」 とはアルゼンチン北西部の民族舞踊の一つ。変ニ長調、三部形式。軽快で流れるような旋律の曲。中間部はホ長調~ト長調~ホ長調となる。1938
- La huahua, Gato ラ・ウアウア、ガト
イ長調、構成は楽譜に記されている通りーIntroducción〜Danza, vuelta redonda〜1er Zapateo〜Media vuelta〜2º Zapateo〜Vuelta redonda (giro)ーの順。IntroducciónやZapateoは生き生きとしたリズム、Danza, vuelta redondaやMedia vueltaは朗々とした旋律が奏される。繰り返しだらけの曲だが、段々盛り上がっていく様が舞曲らしくてイイ。作曲年代不詳
- Bazar Buenos Aires, Tango compadre ブエノスアイレスの市場、タンゴ・コンパドレ
- El Tunante catamarqueño, Danza nativa tradicional カタマルカのトゥナンテ、伝統的な現地の舞曲
カタマルカとは、アルゼンチン北西部にある州または町の名前。ニ短調、曲の進行に沿って楽譜にはーIntrod (ucción)〜Danza, Entrada〜Vuelta con castañas hasta ocupar su lugar〜Vuelta redonda de la mujer alrededor del hombre, con pañueloーと、踊りの方法まで記されている。- Impresiones de mi tierra, Suite 我が故郷の印象、組曲
- La Donosa, Zamba 優雅に、サンバ
- La estrellita, Zamba 小さな星、サンバ
- La Mocha ラ・モーチャ
- La muchachada, Milonga ラ・ムチャチャーダ、ミロンガ
- Morceau lyrique, Preludio 抒情的な小品、前奏曲
- Mi poema, Vals 私の詩、ワルツ
- 18 de Infantería, Marcha 歩兵第18連隊、行進曲
Manuel Gómez Carrilloのピアノ曲楽譜
Ricordi Americana
- El mistolero, Gato santiagueño
- El Tunante catamarqueño, Danza nativa tradicional
- La huahua, Gato
Casa Romano
- Danza del cuervo, inspirada en el baile popular santiagueño "El Pala - Pala"
Universidad de Tucumán
- Rapsodia santiagueña
1999年に出版された下記の本に "Fiesta criolla" の初版譜のファクシミリが載ってます。
- Juan María Veniard. Estudios y documentos referentes a Manuel Gómez Carrillo 1. Academia de Ciencias y Artes de San Isidro 1999.
斜字は絶版と思われる楽譜
Manuel Gómez Carrilloのピアノ曲CD
星の数は、
は是非お薦めのCD、
は興味を持たれた人にはお薦めのCD、
はどうしてもという人にお薦めのCDです。
Obras de Manuel Gómez Carrillo
- Aires santiagueños (Violín y piano)
- Impresiones de mi tierra (Violín, cello, piano)
- Alma quichua (Violín y piano)
- Vidala del regreso (Canto y piano)
- Mis ojos tienen la culpa (Canto y piano)
- Rapsodia santiagueña (Piano)
- Fiesta criolla (Piano)
- Romanza gaucha (Canto y piano)
- El mistolero (Piano)
- La huahua (Piano)
- Danza del cuervo (Piano)
Inés Gómez Carrillo (pf), Leo Viola (Cello), Susana Naidich (Canto), Edgardo Cataruzzi (Violin)
ゴメス・カリージョの作品を集めた貴重な録音。ピアノ曲は5曲収録されている。ピアノを弾いているイネス・ゴメス・カリージョ (1918-2014) はマヌエル・ゴメス・カリージョの娘で、"Fiesta criolla" は1934年に彼女により初演された。彼女は2014年6月22日に95歳で死去された。
Obras para piano de E. Drangosch, C. Piaggio, M. Gómez Carrillo
CD Tradition, TR050513
- Seis Estudios de Concierto, opus 14 (Ernesto Drangosch)
- Sonata en do sostenido menor (Celestino Piaggio)
- Homenaje a Julián Aguirre (Celestino Piaggio)
- Rapsodia santiagüeña (Manuel Gómez Carrillo)
- Fiesta criolla (Manuel Gómez Carrillo)
- El mistolero (Manuel Gómez Carrillo)
- La huahua (Manuel Gómez Carrillo)
- Danza del cuervo (Manuel Gómez Carrillo)
Elsa Piaggio (pf), Inés Gómez Carrillo (pf)
Los Compositores Académicos Argentinos y El Tango (1867-2002)
Argentmúsica
- El negro Schicoba (José María Palazuelos)
- Bartolo (Francisco Hargreaves)
- Pare el Tranguay, Mayoral (Carlos López Buchardo)
- Don Pepe (Ernesto Drangosch)
- Coquito (Carlos López Buchardo)
- Mburucuyá (Enrique M. Casella)
- El Perseguido (Ernesto Drangosch)
- Aire de Tango (Ernesto Drangosch)
- Tenga Mano (Manuel Gómez Carrillo)
- Asistencia (Athos Palma)
- Mas nunca olvidaré (Arnaldo D´Espósito)
- Tango (Constantino Gaito)
- Preludio en forma de tango (Juan Francisco Giacobbe)
- Junto al Paraná (Juan Carlos Paz)
- Tango que le hiciste mal... (Jorge Arandia Navarro)
- Tango (Gilardo Gilardi)
- Encuentro (Salvador Ranieri)
- Tanguango (Juan Carlos Zorzi)
- Tango (Gisela García Gleria)
- Entonces, Tango No. 1 de "Ayer del Buen Aire" (Irma Urteaga)
- Cristales Rotos (Norma Lado)
- Invención Tanguera Nº 3 (Jorge Pítari)
Estela Telerman (pf)
2002、2003年の録音。