Carlos Guastavinoのピアノ曲リスト
1937
1938
1940
1941
1942
- La siesta, Tres preludios シエスタ、3つの前奏曲集
- El patio 中庭
- El sauce 柳
- Gorriones 雀
1945
- Sonatina ソナチネ
- Allegretto
- Lento muy expresivo
- Presto
1944-1946?, 1947
- Sonata ソナタ
- Allegretto íntimo
- Scherzo - Molto Vivace
- Recitativo - Lento
- Fuga y Final - Allegro
1948
- Tres romances argentinos para dos pianos 2台のピアノのための3つのアルゼンチンのロマンス
- Las niñas de Santa Fe サンタフェの少女達
- Muchacho Jujeño フヘーニョの子ども達
- Baile en Cuyo クージョの踊り
1949
- Tres sonatinas, sobre ritmos de la manera popular argentina 3つのソナチネ、アルゼンチン民謡のリズムによる
- Movimiento
- Retama
- Danza
1952
- Estilo - a la manera popular エスティロ、民謡風に
- Diez preludios, sobre melodías populares infantiles argentinas アルゼンチンの童歌の旋律による10の前奏曲集
- La dama dama 御婦人
- La flor de caña 葦の花
- Rimorón リモロン
- Margarita マーガレット
- Bordando para la reina 王妃のための刺繍
- Una niña bonita 可愛い少女
- ¡Cuántas estrellas! たくさんのお星様!
- Un domingo de mañana 日曜の朝
- La torre 塔
- En un coche va la niña 少女は馬車に乗って行く
- Pampeano パンペアーノ
- La tarde en Rincón リンコンの午後
- Romance de Santa Fe (para piano y orquesta) サンタ・フェのロマンス(ピアノと管弦楽のための)
1953
- Romance de Cuyo (La zamacueca) クージョのロマンス(サマクエッカ)
- Las niñas (piano solo) 少女達(ピアノ独奏版)
- Suite argentina - Ballet (Reducción para piano) アルゼンチン組曲、バレエ(ピアノ編曲版)
- Gato ガト
- Se equivocó la paloma 鳩のあやまち
- Zamba サンバ
- Malambo マランボ
1953-1958
- Diez cantilenas argentinas 10のアルゼンチンのカンティレーナ集
- ...Santa Fé para llorar (1953) 泣いているサンタ・フェ
- Adolescencia (1956) 思春期
- Jacarandá (1956) ハカランダ
- El ceibo (1956) セイボ
- Abelarda Olmos (1957) アベラルダ・オルモス
- Juanita (1957) フアニータ
- Herbert (1957) エルベルト
- Santa Fé antiguo (1958) 昔のサンタ・フェ
- Trébol (1958) クローバー
- La casa (1958) 家
1954
- Tres romances nuevos 3つの新しいロマンス
- La niña del río dulce 甘い川の少女
- El chico que vino del sur 南から来た少年
- Llanura (para dos pianos) 平原(2台ピアノ)
- Se equivocó la paloma (para dos pianos) 鳩のあやまち(2台ピアノ)
1957
1959-1961
- Las presencias ラス・プレセンシアス
- Loduvina (1959) ロドゥビーナ
- Ortega (1960) オルテガ
- Federico Ignacio Cespedes Villega (1961) フェデリコ・イグナシオ・セスペデス・ビジェーガ
- Mariana (1961) マリアナ
- Horacio Lavalle (1961) オラシオ・ラバージェ
1966
- Mis amigos, Retratos musicales para pianistas jovenes 私の友達、若いピアニスト達のための音の肖像画
- Luisito, de la calle Concordia コンコルディア通りのルイシート
- Nelly, de la calle Río Cuarto クアルト川通りのネリー
- Ismael, de la calle Teodoro García テオドロ・ガルシア通りのイスマエル
- Pablo, del Aeroparque アエロパルケ通りのパブロ
- Fermina, de la calle Aranguren アラングレン通りのフェルミーナ
- Gabriel, de la calle Andonaegui アンドナエギ通りのガブリエル
- Alberto, de la calle Posadas ポサーダス通りのアルベルト
- Casandra, de la calle Galileo ガリレオ通りのカサンドラ
- Damián, de la calle Malabia マラビア通りのダミアン
- Alina, de la calle Lacroze ラクロセ通りのアリーナ
1974
- Cantos populares 民謡集
- en fa menor ヘ短調
- en fa sostenido menor 嬰ヘ短調
- en mi menor ホ短調
- en sol menor ト短調
- en la bemor 変イ長調
- en mi menor ホ短調
- en re menor ニ短調
- en do sostenido menor 嬰ハ短調
- en mi bemol menor 変ホ短調
- en la イ長調
1987
- Romance del Plata, Sonatina para piano a cuatro manos ロマンス・デル・プラタ(ラ・プラタ川のロマンス)、ピアノ連弾のためのソナチネ
- Allegretto Cantabile
- Andante Cantabile Sereno
- Rondo
1992
Carlos Guastavinoのピアノ曲の解説
1937
- Gato ガト
この頃グアスタビーノがピアノデュオを度々行っていた相手の、ピアニストHéctor Ruiz Díazに献呈。変イ長調、前奏-A-B-B'-A'-後奏の形式。ガト Gato は3拍子の軽快なアルゼンチンの民族舞踊である。"Gato" は英語の "Cat" にあたり、踊りの仕草が猫の手招きににていることからこの名前が付いたとのこと。聴いている分には華やかで楽しい曲。但し楽譜は最初から最後まで3段楽譜で、左手は10度和音+速いテンポの和音の跳躍があって軽快に弾くのは結構難しい、というか速いテンポで演奏するにはやや無理のある楽譜だ(下記の楽譜)。
Gato、7-14小節、Ricordi Americana.より引用- Bailecito バイレシート
アルゼンチンの先輩作曲家であるマヌエル・ゴメス・カリージョに献呈。嬰ハ短調、前奏-A-A-間奏-B-A-後奏の形式。バイレシートとは3拍子と2拍子の可変拍子の舞曲で、ボリビア東部からアルゼンチン北部あたりが発祥。楽譜の冒頭には6/8拍子と3/4拍子が併記されている。まず前奏でバイレシートのリズムが奏される。続いてAでは、高音部に重音で哀愁溢れる旋律がしっとりと奏される。中声部に半音階の対旋律が出てきたりのため、曲の大部分が三段楽譜で書かれている。Bはちょっとすました踊りの雰囲気でホ長調になるが、すぐ嬰ハ短調へ戻る。地味でもの悲しい曲だが、何故かグアスタビーノのピアノ曲の中では一番CDが出ている。また1967年にはギター用にも編曲された。1938
- Gato (para dos pianos) ガト(2台ピアノ)
- Bailecito (para dos pianos) バイレシート(2台ピアノ)
《ガト》、《バイレシート》共に1937年作曲のオリジナルのピアノ独奏版は3段楽譜だが、それでもピアノ独奏では表現し尽くせなかったものが2台ピアノ版では存分に表現できているーといった感じの、作曲者自身による素敵な編曲。《ガト》は音を2台のピアノに振り分けたことにより技巧的に無理がなくなり、演奏者もスピード感をもって弾くことができる。曲は6/8拍子だが、一部で第一ピアノのみが2/4拍子となりポリリズムで16分音符を奏でる所は絶妙な出来。中間部Bに出てくる旋律の一部が完全五度上をそっくりなぞって弾く所はスチールドラムのような音色になり面白い効果だ。《バイレシート》も中声部の対旋律が3連16分音符混じりになったりといい出来だ。1940
- Preludio (Canción) 前奏曲(歌)
この3分ほどの曲は未公開の自筆譜のみが存在していたが、2020年にアルゼンチンの音楽雑誌で楽譜が編集・公開された(Silvina Luz Mansilla y Ricardo Jorge Jeckel. 4' 33'' Revista on line de investigación musical, Año IX Nº 19, Diciembre 2020, pp. 127-140)。自筆譜には、この曲を献呈したグアスタビーノの叔父Elias F. Guastavinoへの献辞が記されていて「貴方がこのCanciónを聴いて率直に気に入って頂き、暖かく褒めて下さったので、この曲を貴方に献呈することを思いつきました‥‥」とある。おそらく当初グアスタビーノは即興でこの曲を弾いたのだが、それを聴いていた叔父がとても気に入ったので、楽譜にしたのであろう。変ロ短調、A-A-コーダの形式。感興の赴くままに即興的に弾いたような感じの曲で、情熱的なオクターブ和音の右手旋律、広い音程の左手アルペジオ、グアスタビーノらしい和声進行にお得意の3連符混じりのヘミオラ、と(ラフマニノフの影響も多少感じるが)ピアニストとしても脂の乗ったグアスタビーノならではの小品である。1941
- Tierra linda すばらしい故郷
アルゼンチンの作曲家・ピアニストであるリア・シマグリア・エスピノーサに献呈。1941年のグアスタビーノ自身による初演時の曲名は「アニジャコのロマンス Romance de Anillaco」であった(アニジャコはアルゼンチン北西部のラ・リオハ州にある村の名前)。グアスタビーノ流「大地への讃歌」といった感じの清々しい曲。変奏曲とも、中間部の雰囲気からA-B-A'形式ともとれる。Aはヘ長調の明るい舞曲風で、7小節目からの拍子記号は2/4 6/8と並記されていて、8分音符が3連符になったりならなかったりと可変拍子である。Aの後半では、ヘ長調 I 度で旋律とベースが奏される中、中音部内声にD~B♭~B~A♭と和音が鳴る(この多調は、グアスタビーノが好んだ作曲法の特徴の一つ)。Bの部分は、Aに似た旋律が静かなヘ短調で奏される。最後のA'は右手も左手も華やかにオクターブと和音を鳴らしまくる。1942
- La siesta, Tres preludios シエスタ、3つの前奏曲集
アルゼンチンの田舎の家の軒先の午後のひと時の光景が目に浮かぶような、何とも詩情溢れる組曲である。
- El patio 中庭
ホ短調。昔話を語っているような、物悲しい旋律が三度重音でしっとりと奏される。- El sauce 柳
Julián Aguirreの思い出に、と楽譜に記されている。ホ長調、X-A-X'-A'-X"形式。庭先の柳の葉が、午後のそよ風に揺れるのを描いたような伴奏にのって、のびやかな旋律がゆったりと奏される。この組曲のなかで最も「シエスタ」っぽい。- Gorriones 雀
ト長調、A-B-A'形式。雀のさえずりがあちこちから聞こえてくるような明るいの曲で、雀のさえずりの中をのびやかな旋律が奏される。最後は余韻たっぷりに終わる。なおこの組曲《シエスタ》は、いずれも名ピアニストであるバックハウスとギーゼキング(1950年、コロン劇場)がそれぞれ演奏した事があるとのこと。1945
- Sonatina ソナチネ
チェコ出身の名ピアニスト、ルドルフ・フィルクスニーがブエノスアイレスで1945年に初演した。このソナチネは本当に美しいです。第1楽章Allegrettoはト短調。曲の流れは提示部〜展開部〜再現部から成るソナタ形式風だが、主題は一つのみである。冒頭から、枯葉が舞うようなアルペジオの旋律が何とも切ない雰囲気。展開部は、冒頭の旋律と新しい高音部三度重音の旋律が絡み、度々転調するのが何とも色彩的だ。第2楽章Lento muy expresivoは変ホ長調、A-B-A'形式。晩秋の夜の澄み切った夜空の満天の星を描いたような夜想曲風で、前奏に引き続く冒頭は高音部オクターブの旋律が静かに奏され、中間部は歌のような旋律が転調を重ねる。第3楽章Prestoはト短調のタランテラ風で、後半はト長調になり華やかに終わる。
- Allegretto
- Lento muy expresivo
- Presto
1944-1946?, 1947
- Sonata ソナタ
4楽章からなる本格的ソナタだ。が、グアスタビーノの作品にしては構成も和音も硬く、肩に力が入り過ぎた感じがする曲。第1楽章Allegretto íntimoは嬰ハ短調、ソナタ形式。嬰ハ短調の切ない旋律の第一主題、3連符スタッカートがモチーフの嬰ト長調の第二主題が現れる。もう一度第一主題、第二主題が繰り返されてから短い展開部になり、2つの主題が混じって奏される。再現部では第一主題、嬰ハ長調の第二主題が奏される。第2楽章Scherzo - Molto Vivaceはイ長調、三部形式。冒頭は両手5連符が続くスケルツォ、中間部は静かな旋律となる。第3楽章Recitativo - Lentoは嬰ハ短調。悲劇的な旋律がレシタティーボ風に奏される。第4楽章Fuga y Final - Allegroは嬰ハ短調。楽譜の冒頭には「リオハナ民謡の旋律」が記されていて、これをモチーフにしたフーガが、2声~3声~4声と発展していき華やか。最後は第1楽章の2つの主題が再現され、変ニ長調の大団円となって終わる。
- Allegretto íntimo
- Scherzo - Molto Vivace
- Recitativo - Lento
- Fuga y Final - Allegro
1948
- Tres romances argentinos para dos pianos 2台のピアノのための3つのアルゼンチンのロマンス
- Las niñas de Santa Fe サンタフェの少女達
双子の姉妹でピアニストのIsabel y Amelia Cavalliniに献呈されており、この姉妹のことを描いて作曲されたと思われる。この組曲の初演も1948年9月に彼女らによって行われた。変ホ短調。可憐な旋律の前奏に引き続き、愁いを帯びたような旋律が第1ピアノと第2ピアノの掛け合いで奏される。その後は、楽譜に "tierno(優しく)" と記された密やかな感じの旋律が現れたり、イ長調になって戯けたような旋律が現れたりする。- Muchacho Jujeño フヘーニョの子ども達
グアスタビーノの兄弟姉妹のPiruca, Nelly, Ina, Zuleに献呈。「フヘーニョ」とは、アルゼンチン北西部のフフイ地方を指す。ト短調A-B-A'-C-A"-B'形式。ちょっとおどけながらも素朴な子どもを描いている感じだが、何とも言えぬ哀愁が漂う。- Baile en Cuyo クージョの踊り
Bibi Zogbeに献呈。嬰ヘ長調、A-B-A'-B'形式(調性からはソナタ形式にも見える)。アルゼンチンの中西部にあるクージョ地方の民族舞踊サマクエッカのリズムが溌剌とした楽しい曲。前奏でサマクエッカのリズムが2台ピアノ和音で力強く奏されると、3連16分音符混じりの活発な旋律が第1ピアノに奏され、ト長調で繰り返される時には3連16分音符混じりの旋律が第1ピアノ〜第2ピアノと掛け合いで奏されスリリングな響きだ。Bは変ニ長調になり、今迄と打って変わって、昼下がりに微睡むような穏やかな旋律が現れ、徐々に盛り上がり、その勢いのままA'に戻り、最後はBの旋律が嬰ヘ長調でffで高らかに再現され、サマクエッカのリズムが2台ピアノ和音で再びfffで打ち鳴らされて終わる。この組曲は1949年にグアスタビーノ自身により管弦楽曲にも編曲され、1949年7月にイギリスのBBC交響楽団の演奏で初演された。1949
- Tres sonatinas, sobre ritmos de la manera popular argentina 3つのソナチネ、アルゼンチン民謡のリズムによる
グアスタビーノのイギリス滞在中に作曲された。第1曲Movimientoはイ短調、一応ソナタ形式。6/8拍子の速めのテンポに乗って切ない旋律の第一主題、ホ短調の可憐な第二主題が現れる。第一主題の9小節目で旋律が左手に移った所はHuellaのリズムが現れる。展開部では順に2つの主題が変奏され、再現部は第一主題、ギターの音色のようなアルペジオ和音が哀愁漂うイ短調の第二主題と奏される。第2曲Retamaはホ短調、A-B-A-B'形式。Retamaとは日本ではエニシダと呼ばれるマメ科の植物で、初夏に黄色の可憐な花が咲く。Zambaのリズムにのってグアスタビーノらしいもの悲しい旋律が歌われる。Bはロ長調に始まり、可憐な旋律が奏される。最後のB'はホ長調になり夢見るように終わる。第3曲Danzaは名ピアニスト、ルドルフ・フィルクスニーに献呈。ハ短調。Chacareraのリズムで活気ある舞曲だ。最後にハ長調に転調したあたりからはリズムはやや野性的になる。
- Movimiento
- Retama
- Danza
1952
- Estilo - a la manera popular エスティロ、民謡風に
サンタ・フェでのグアスタビーノのピアノの先生であったEsperanza Lothringerに献呈されている。嬰ト短調。エスティロとはアルゼンチンの舞曲で、左手のオスティナートの上にやや神秘的な旋律が歌われる。グアスタビーノの作品の中では異色の雰囲気。- Diez preludios, sobre melodías populares infantiles argentinas アルゼンチンの童歌の旋律による10の前奏曲集
1952年1月、サンタフェで作曲された。楽譜の表紙の次のページに注釈があり、「これらの前奏曲集の素材は、サンタフェの全ての子ども達と同様、グアスタビーノが子供時代に歌った童歌から採られている。幾つかの曲は彼が母親から教わったもので、また幾つかは子どもの頃の遊びを通して覚えたものである(後略)」と記されてある。どの曲も1〜2分と短く、童歌から採った素朴な旋律を基にしている。グアスタビーノの作品の中では技巧的には簡単な部類に入るが、とはいえ「子ども」にはちょっと難しく中級者向き。
- La dama dama 御婦人
ト長調。カノン形式の旋律が繰り返される。途中で突然変ニ長調になったり、多調になったりの不思議な和声がいかにも子供の遊び歌っぽい。- La flor de caña 葦の花
ヘ長調。アルゼンチン北西部ラ・リオハ州アニジャコ村で採取した旋律で、ビダリータのリズム抒情的な美しい曲。- Rimorón リモロン
子供の遊び歌らしい勇ましいモチーフが現れ、カノンとなって2声〜3声となる曲。ト長調。- Margarita マーガレット
グアスタビーノが母親から教わった旋律とのこと。ロ短調の呟くようなもの悲しい曲。- Bordando para la reina 王妃のための刺繍
女の子の遊戯のような軽やかな曲。イ長調。- Una niña bonita 可愛い少女
前半はト短調の素朴で悲しげな旋律が歌われるが、後半はその旋律がト長調に変わり左手のアルペジオに彩られるあたりは絶妙に美しい。- ¡Cuántas estrellas! たくさんのお星様!
跳ねるような活発な曲。イ短調で始まるが、転調が頻繁である。- Un domingo de mañana 日曜の朝
ホ短調。日曜の朝とは、教会の礼拝の様子のことかもしれない。楽譜の冒頭に3声のフーガと記されている通り最初の単旋律が2声、3声と増えていき、最後は主題が左手オクターブfで奏され、バッハの曲のように荘厳に終わる。- La torre 塔
この曲の旋律はグアスタビーノが母親から教わったとのこと。とても勇ましい曲で、ロ短調とロ長調がごちゃ混ぜになっているのが子供の戦争ごっこみたいな感じの曲。- En un coche va la niña 少女は馬車に乗って行く
ヘ長調。曲名通りの上品で優雅な曲。馬の蹄の音がトコトコと聞こえてくるようだ。- Pampeano パンペアーノ
イ長調、A-B-A'形式。パンペアーノとはアンデス山脈からパンパ(アルゼンチン中央の大平原)に吹き下ろす冷たい西風のこと。曲の冒頭に現れるユニゾンの16分音符アルペジオがパンペアーノらしい。中間部BのAndante cantabileはのどかなパンパの風景を描いたように抒情的で美しい。最後にもう一度パンペアーノが吹き下ろす。- La tarde en Rincón リンコンの午後
イ長調、A-B-A'-コーダの形式。"Rincón"とは楽譜の脚注に「San José del Rincónーサンタフェ近郊の沿岸の小さな、古い集落ーを指す」と記されている(沿岸とはパラナ川のことだろう)。2分程の短く簡単な静かな曲だが、私はこの曲がとっても大好き。ギターのつま弾きを思わせる柔らかい伴奏にのって、素朴な旋律が語りかけるように奏される。この曲を聴いているとアルゼンチンの田舎の青い空と、農家の納屋かどこかに、こもれ日が差し込む長閑な午後の光景が瞼に浮かんできて、幸せな気分になります(私の勝手な空想です)。ギター編曲版も出版されている。- Romance de Santa Fe (para piano y orquesta) サンタ・フェのロマンス(ピアノと管弦楽のための)
たくさんのピアノ曲を残したグアスタビーノだが、ピアノ協奏曲形式の作品はこれだけである。1953年にグアスタビーノ自身のピアノにより初演された。変ロ長調、一応ソナタ形式。1953
- Romance de Cuyo (La zamacueca) クージョのロマンス(サマクエッカ)
Juan Carlos Legarreに献呈。嬰ヘ長調、A-B-C-D-E-D'-コーダの形式。サマクエッカとは元々ペルーのリマで18世紀に盛んに踊られたスペイン舞曲起源のリズムで、当時はとても流行して南米各地に広まり、それぞれの地方ごとに特有の曲調を持っている。チリやアルゼンチンのクージョ地方のサマクエッカはとても溌溂とした踊りらしい。この曲はグアスタビーノのピアノ曲の中でも最もピアニスティックで、サマクエッカの華やかな踊りが万華鏡のように次々と現れる。実際のサマクエッカの踊りは跳ねるようにな部分に続いて男女が体を寄せ合って踊り、恋をささやきあう様子が描かれるなどストーリーがあるが、グアスタビーノの曲もテンポが次々と変わり、楽譜中に付点4分音符=80-84、92、55-60、88-90、66、88-90と細かく指定がある。(但し楽譜の脚注には、このメトロノーム表示はこの作品のテンポのガイドであって、厳密に守る必要はない、と書かれてある)。技巧的には急速な3連16分音符(下記の嬰ヘ長調の楽譜)、複雑に絡んだポリフォニックな旋律(下記の変ニ長調の楽譜)、左手の速いオクターブと和音の跳躍など、彼の作品の中でも最難曲。華やかで楽しい傑作なのだが、難しくて未だこれといった名演奏の録音がない。
Romance de Cuyo (La zamacueca)、9-14小節、Ricordi Americana.より引用
Romance de Cuyo (La zamacueca)、93-98小節、Ricordi Americana.より引用- Las niñas (piano solo) 少女達(ピアノ独奏版)
1948年作曲の「2台のピアノのための3つのアルゼンチンのロマンス」の第1曲をピアノソロに編曲したもの。- Suite argentina - Ballet (Reducción para piano) アルゼンチン組曲、バレエ(ピアノ編曲版)
原曲は1941年に作曲されたバレエのための管弦楽曲で、スペインのバレリーナPilar López júlvez (1912-2008) が率いるバレエ団によりバルセロナ、ロンドン、パリ、ハバナで公演されたとのこと。ピアノ用編曲はグアスタビーノ自身により作られ、1953年出版された。ピアノ譜は全体的に、管弦楽版をピアノ用に単純にしただけで、グアスタビーノらしいピアニスティックな書法は見られない。楽譜内に所々ピッコロ、フルート、クラリネット、オーボエといった但し書きが付けられている。
- Gato ガト
1937年に彼が作った同名のピアノ独奏曲と同じだが、ここではト長調でピアノ譜は簡単になっている。- Se equivocó la paloma 鳩のあやまち
元々は1941年作曲の彼の代表的な歌曲。この管弦楽編曲版はヘ短調で、原曲同様に歌が付いている上に、合唱も加えられている。- Zamba サンバ
1939年作曲の歌曲 "Arroyito serrano" からの編曲。ニ長調。- Malambo マランボ
この作品のために書き下ろした作品。ト長調の快活な雰囲気の舞曲。1953-1958
- Diez cantilenas argentinas 10のアルゼンチンのカンティレーナ集
グアスタビーノの代表作。どの曲も美しい旋律の中に一抹の寂しさを湛え、豊かな和声の伴奏は心温まる感じで、終り方も余韻たっぷりだ。彼の故郷サンタ・フェへの郷愁やアルゼンチンの花や樹木を描いた、また5、6、7番では人物を描いたこれらの作品を通してグァスタビーノの優しい心が伝わってくるような思いがします。なお1、4、8、9、10番はギター独奏に、1番はチェロとピアノに、6番はヴァイオリンとピアノに、また4、6、10番は弦楽オーケストラにも編曲された。
- ...Santa Fé para llorar (1953) 泣いているサンタ・フェ
他のカンティレーナに先がけ1953年に作曲されており、1954年の初演時には〈カンティレーナ Cantilena〉の曲名で発表された。ホ短調、A-A'-B-A"形式。旋律はミ-ファ♯-ソ-シ-ド-ミと日本の陰音階みたいで、悲しげな民謡がギターのつま弾きで演奏されるような曲。Bはト長調やロ長調に転調して、夢見るような雰囲気になるが、間もなく、悲しげな旋律へと戻る。- Adolescencia (1956) 思春期
1956年6月、演奏旅行中の中国・上海で作曲。A-B-A'-B'形式で、Aは一応ト短調だが、半音階進行の不安定な調性が思春期の戸惑いのよう。次のBはニ長調で、何かへの憧れのを描いたような甘い響きで、思春期の心の揺れを描いているようで対照的。その後転調を経て、ト短調のA'が短く奏され、最後はB'がト長調で夢見るように奏される。- Jacarandá (1956) ハカランダ
1956年11月、ブエノスアイレスにて作曲。ハカランダはアルゼンチンの春を代表する木で、その花は毎年10月~11月にかけて街中を青紫色に染める。その姿は色形こそ違えまるで日本の桜を彷彿させるとのこと。長年の風雨に耐え、年輪を重ねてきたハカランダの木を描いたようなしっとりと落ち着いた曲。変イ長調、A-B-A'-B'形式。Aではしっとりとした主題が対旋律と絡みながら奏され、次のBの変ホ長調の主題も左手8分音符のアルペジオ伴奏にのった3連符のヘミオラの旋律が流れるように美しい。後半はAの主題が静かに展開され、最後はBの主題が変イ長調のまま奏されて終る。- El ceibo (1956) セイボ
1956年11月の作曲。セイボはアルゼンチンの国花で、セイボの木も春には真っ赤な花を付ける。ホ長調、A-B形式。ビダリータのゆったりしたリズムのしっとりした旋律が歌われる。左手伴奏のアルペジオもフワッと心暖まるような美しさだ。- Abelarda Olmos (1957) アベラルダ・オルモス
1957年3月の作曲。この曲は10曲の中で一番ピアニスティックだ。A-B-A'-B'形式。最初の主題はヘ短調で、Aは右手の16分音符の切ない旋律に左手の3連16分音符が絡み、ショパンを思わせる悩ましくも華麗な響き。次にハ長調のホルンが鳴り響くような合図に続いて、Bはト長調の息の長い抒情的な旋律が転調を繰り返しながら奏される。盛り上がっていく経過句を経て、ヘ短調の主題がf~ffで力強く再現され、最後は2番目の主題がヘ長調で静かに回想されて終る。- Juanita (1957) フアニータ
1957年4月の作曲。同年の初版の楽譜には曲名はまだついておらず、全10曲が出版された1958年6月のカタログに初めてフアニータという曲名が現れる。フアニータは女性の名前である。ト長調、A-A'-A"-B-A"'形式。可憐で美しい旋律が、変形しつつ繰り返される。- Herbert (1957) エルベルト
1957年10月の作曲。嬰ヘ短調、A-B-A'-B'形式。Aはとぎれとぎれの、ため息のような旋律。Bは嬰ヘ長調で、オスティナートのド#にのって呟くような旋律が奏される。後半はAの変奏、Bが嬰ヘ短調になる。- Santa Fé antiguo (1958) 昔のサンタ・フェ
1958年1月の作曲。グアスタビーノが幼少時を過ごした、いやひょっとしたら遥かいにしえのサンタ・フェに思いを馳せて作曲したのだろうか。イ短調、A-B形式。第1曲と並び、ギターの音色をイメージして作った感じの響きで、中音部にイ短調の感傷的な旋律が現れる。後半Bではその旋律がイ長調に変わり、囁くようなpから徐々にクレッシェンドしていくあたりは感動的。- Trébol (1958) クローバー
1958年4月の作曲。変イ長調。可憐な旋律がゆったりと奏されるが、途中2回程速いパッセージの挿入がある。スペインの作曲家モンポウの「歌と踊り」にちょっと似ているかな。- La casa (1958) 家
1958年4月の作曲。変ホ短調、A-B-A-C形式。遠く離れた故郷の家をしみじみ思い起こしているなかな?。切ない旋律が綿々と続く曲で、組曲を締めくくるに相応しい余韻に満ちている。1954
- Tres romances nuevos 3つの新しいロマンス
3つの新しいロマンスという組曲名を持つが、実際は2曲目までしか作曲されなかった。
- La niña del río dulce 甘い川の少女
Roberto Legarreに献呈。嬰ヘ短調、演奏時間7分の大曲でA-A'-B-A"形式。旋律は少女を描いたらしく可憐だが、伴奏は3連16分音符の走句も現れ、とてもピアニスティック。Bは嬰ヘ長調になり、グアスタビーノらしい甘い旋律が、最初はpで躊躇うように、その後は徐々に音量を増して両手オクターブで華やかに奏される。- El chico que vino del sur 南から来た少年
Juan Carlos Legarreに献呈。ロ短調、A-B-A形式。楽譜の冒頭には「穏やかなリズムで、即興演奏のように」と書かれていて、旋律が試し弾きのようにぽつりぽつりと歌われる。とても不思議な感覚の曲。中間部はタンゴ風の伴奏にのって、素朴な旋律が静かに流れる。- Llanura (para dos pianos) 平原(2台ピアノ)
原曲は1950年に作曲されたヴァイオリンとピアノのための作品で、グアスタビーノ自身により2台ピアノ用に編曲された。原曲はポーランド生まれの名ヴァイオリニスト、ヘンリク・シェリング (1918-1988) に献呈された。1942年、ナチスドイツのポーランド侵攻で亡命したポーランドの首相にシェリングは同行して南米に逃れ、アルゼンチンを訪れている。シェリングはアルゼンチン政府にヴァイオリンの学校を創立する提案をし、その引換えにアルゼンチンの市民権を求めたのだが、アルゼンチン政府からは断られ、その後シェリングはメキシコに渡りメキシコの市民権を得ている。アルゼンチン滞在中にシェリングは、グアスタビーノとの親交があったのだろうか。曲はホ長調、A-B-A'形式。3拍子のゆったりとしたリズムにのって郷愁溢れる旋律が奏される。Bはサマクエッカのリズムで溌溂とした感じ。- Se equivocó la paloma (para dos pianos) 鳩のあやまち(2台ピアノ)
原曲は1941年に作曲された歌曲で、Rafael Albertiの歌詞によるグアスタビーノを代表する歌曲。作曲家自身による2台ピアノ編曲。ト短調。中間部に派手なカデンツァがあったりと、かなり凝った編曲である。1957
- Pueblito, mi pueblo (canción argentina) 小さな村、私の小さな村(アルゼンチンの歌)
原曲は1941年作曲のFrancisco Silvaの歌詞による歌曲で、作曲者自身によりピアノ独奏に編曲したもの。両親にこの曲は献呈されている。A-B-A'形式。原曲の歌曲はホ長調だが、ピアノ独奏版はヘ長調になっている。ゆったりした3拍子のリズムにのって故郷の小さな村への望郷の思いがしみじみと歌われるいい曲。1959-1961
- Las presencias ラス・プレセンシアス
この5曲から成る組曲は、《10のアルゼンチンのカンティレーナ集》に並ぶグアスタビーノのピアノ曲の頂点を成す傑作と、個人的には思います。《ラス・プレセンシアス Las presencias》とは直訳したら「風貌」とか「存在」とかの意味になるが、意訳したら「音楽による肖像画」あたりが相応しいような気がする。各曲の題名は人の名前なのだが、楽譜の脚注には「これらの曲の題名の人名は架空のものである。実在の人間にどんな似た人がいても、それは偶然の一致である」とわざわざ書いてある。いずれの曲もある人物像を表情豊かに描いており、それがアルゼンチンらしいリズムや節回しと上手くマッチしており、またグアスタビーノらしいピアニスティックな書法に満ちた、ともかく素敵な曲ばかりだ。グアスタビーノはこの5曲を作った後に、弦楽四重奏とギターのための《Las presencias, No. 6: Jeromita Linares》(1965)、ヴァイオリンとピアノのための《Las presencias, No. 7: Rosita Iglesias》(1966)、オーボエ・クラリネット・ホルン・ファゴットとピアノのための《Las presencias, No. 8: Luis Alberto》 (1971)、コールアングレとピアノのための《Las presencias, No. 9》(1972) も作曲しており、これらも素敵な曲揃いである。
- Loduvina (1959) ロドゥビーナ
楽譜やCDによっては "Ludovina" と記されているが、正しくは "Loduvina" である。ホ短調、A-A'-B-A"形式。優雅なアルペジオの伴奏にのって女性らしい可憐で、愁いを帯びた旋律が奏される。Bはホ長調になり、夢見るような美しさ。- Ortega (1960) オルテガ
変イ長調、A-B-C-A'-D-A"形式。冒頭はミロンガのリズムにのって、優しいながらも粋な旋律が流れる(オルテガは男性であろう)。Dは変ニ長調になり、トリルを多用していて茶目っ気たっぷりで華やか。その後再び最初の旋律が高音部に現れる所はーあたかも夢を見ているようにー絶妙な美しさだ。- Federico Ignacio Cespedes Villega (1961) フェデリコ・イグナシオ・セスペデス・ビジェーガ
この曲名の人物は実在で、メンドサ出身の画家・彫刻家のフェデリコ・チーポ・セスペデス Federico Chipo Céspedes (1930-2017) であろうとする資料がある。クェッカのリズムによる活発な曲。前半は嬰ト短調で跳ねるような旋律が続く。後半変イ長調に転調して高らかに旋律が歌われるあたりは華やかで、半音階的な対旋律が絡んで技巧的にも難しい。- Mariana (1961) マリアナ
変ロ短調、A-B-A'形式。悲しく、悩ましい旋律が泣かせる。この曲は1966年に作曲者自身によりクラリネットとピアノのためにも編曲され、《トナーダ Tonada》の曲名で出版された。- Horacio Lavalle (1961) オラシオ・ラバージェ
概ねタンゴのリズムによる曲である。タンゴと言えば首都ブエノスアイレスであり、ブエノスアイレスに相応しい人名としてグアスタビーノはこの曲を「ラバージェ」と付けたとする資料がある(ブエノスアイレスのラバージェ通りは映画館などが建ち並ぶ繁華街である)。嬰ヘ短調、A-B-C-C'-A'形式。Aは粋な旋律が奏され、Bはスタッカートが戯けて奏される。Cは嬰ヘ長調になり、抒情的な旋律が初め静かに、段々情熱的に盛り上がる。この男性の気まぐれだが情に厚い性格を描写しているようで面白い。1966
- Mis amigos, Retratos musicales para pianistas jovenes 私の友達、若いピアニスト達のための音の肖像画
1961年の《ラス・プレセンシアス》の作曲を最後に、グアスタビーノのピアノ書法は段々単純になっていき、1950年代の複雑な技法は姿を消す。技巧的には中級者レベルの組曲である。この組曲で描かれた10人の「若いピアニスト達」は実在の人物だったらしい。各曲は、勇ましかったり、大人しかったり、おてんばだったり、謎めいていたりと、それぞれの個性的な人物像を表情豊かに描いている。特に2、5、9番などはその旋律の美しさだけでも充分魅力的。
- Luisito, de la calle Concordia コンコルディア通りのルイシート
ヘ長調、前奏-A-A'-B-B'-A'-後奏の形式。Aは六度重音で、のびやかな旋律が奏される。中間部のBはニ短調で、ちょっと哀愁ある雰囲気。- Nelly, de la calle Río Cuarto クアルト川通りのネリー
イ長調、A-A'-B-A'形式。可憐な旋律と、優しく奏されるアルペジオの伴奏が何とも美しい曲。Bは嬰ヘ短調になる。- Ismael, de la calle Teodoro García テオドロ・ガルシア通りのイスマエル
ト短調、A-B-A'-B'-A"形式。Aは寂しげな旋律がソのドリア旋法で奏される。Bは変ロ長調で、メヌエット風の快活な調べだが、直ぐA'の暗い響きに戻る。B'はBとほぼ同じ旋律がト短調で奏される。- Pablo, del Aeroparque アエロパルケ通りのパブロ
ホ長調、A-B-A'形式。陽気で心温かい性格を描いたような曲。Bはロ長調になる。- Fermina, de la calle Aranguren アラングレン通りのフェルミーナ
アルゼンチンの作曲家、フェルミーナ・カサノバ (Fermina Casanova, 1936-) を描いたらしい。変ホ長調、A-B-A'-B'形式。優しい女性をそのまま音にしたような美しい旋律が流れる。Bはト短調で、最後のB'は同じモチーフが変ホ長調になる。- Gabriel, de la calle Andonaegui アンドナエギ通りのガブリエル
ヘ長調、A-A'-B-B'形式。勇ましい男性を思わせる曲。後半はヘ短調で、この男の哀愁がちょっと漂うよう。- Alberto, de la calle Posadas ポサーダス通りのアルベルト
ニ長調、A-A'-B-A"形式。無口だが信頼できる男性のような、落ち着いた響きの曲。- Casandra, de la calle Galileo ガリレオ通りのカサンドラ
ホ短調、A-B-A'形式。ミのフリギア旋法がゆったりと奏され、謎めいた雰囲気。- Damián, de la calle Malabia マラビア通りのダミアン
変イ長調。純粋な心の男性を描いたような、清々しい旋律が奏される。- Alina, de la calle Lacroze ラクロセ通りのアリーナ
ト長調、A-A'-B-A'形式。付点音符混じりの快活な旋律は、おてんば娘のような雰囲気。但しBでト短調になる所は、彼女の可憐な一面を垣間見るよう。1974
- Cantos populares 民謡集
この作品ではピアノの書法は更に単純になって、バイエル終了レベル位からならこの曲を始めらそうだが、曲は「大人」の世界の雰囲気で、技巧が簡単でも美しく表現するのはやや難しい曲。フォルクローレのサンバ、マランボ、ガト、ビダーラなどのリズムが使われている。曲が単純になってもグアスタビーノらしい美しさは変わらず、聴いていて心が和みます。
- en fa menor ヘ短調
A-B-A形式。2/4拍子だが、頻繁に3連符が現れ、右手旋律と左手対旋律が8分音符と8分3連符のヘミオラになって絡むのが何とも味わい深い、しっとりとした曲。中間部Bはヘ長調になり、望郷の念を思わせるような雰囲気となる。- en fa sostenido menor 嬰ヘ短調
A-B形式。サンバのリズムにのって、哀愁たっぷりの旋律が奏される。- en mi menor ホ短調
A-B-A形式。マランボのリズムにのった速い曲。中間部Bはミのドリア旋法になるのが野趣を感じさせていい感じ。- en sol menor ト短調
A-B-A形式。遅めのミロンガのリズムの曲。冒頭の旋律は何ともやるせなく、中間部Bのト長調の夢見るような旋律との対比が見事な曲。- en la bemor 変イ長調
A-B-A形式。ガトのリズムにのって、右手左手の掛け合いのようなスタッカートが華やか。中間部Bは高音に三度重音の旋律が奏される。- en mi menor ホ短調
A-B-A形式。憂うつな旋律が切々と奏される。- en re menor ニ短調
A-B-A形式。これも憂うつな旋律の曲。中間部Bはニ長調になる。- en do sostenido menor 嬰ハ短調
A-B形式。低音ソ♯やド♯のオスティナートの沈み込むようなリズムにのって、物悲しい旋律が奏される。この組曲10曲の中でも最も心が痛むような雰囲気の曲である。- en mi bemol menor 変ホ短調
A-B-A形式。ビダーラのリズムにのって哀愁漂う旋律が奏される。中間部Bは変ホ長調になり、四声合唱のような穏やかな響きが美しい。- en la イ長調
A-A'-B-A'形式。クエッカの跳ねるようなリズムにのって軽快な旋律が奏される。1987
- Romance del Plata, Sonatina para piano a cuatro manos ロマンス・デル・プラタ(ラ・プラタ川のロマンス)、ピアノ連弾のためのソナチネ
74歳のグアスタビーノが彼のオリジナルピアノ曲の最後に、本当に美しい曲を作った。2台ピアノでなく1台連弾用で作られたことにより、華やかさよりほのぼのとした暖かさと親密さが曲全体に漂っている。近代作曲家の連弾曲というとドビュッシーやフォーレが思い浮かぶが、グァスタビーノのこの作品はもっと甘くロマンティックで、しかもそれは「大人の甘さ」である。古今東西の連弾曲の中でもこれは傑作だと思う。このウェブサイトを開設した頃は殆ど知られていない作品であったが、最近は日本人でも演奏するピアニストが徐々に増えてきており嬉しいことです。なお曲名のPlataとはラ・プラタ川を指す。Plata(「銀」の意味)が女性名詞なのにdel (de+el) と男性定冠詞が付いているのは、El Río de la Plata(ラ・プラタ川)のRío de laを略したためである。ラ・プラタ川はアルゼンチンとウルグアイの間を流れる川で、アルゼンチン北部の多くの川を支流に持つ、アルゼンチンを代表する大河である。
- Allegretto Cantabile
イ長調、ソナタ形式。朗々と歌うような前奏に引き続き、流れるようなアルペジオの伴奏にのって、とろけるような甘い旋律の第1主題が綿々と歌われる。プリモとセコンドに代る代る旋律が引き継がれるのが愛の会話のよう。第2主題はホ長調で、時々6/8拍子を4拍で弾くヘミオラが現れるのが絶妙。展開部は主に第1主題が展開され、前奏で現れたモチーフが高らかに奏される。再現部は第1主題が奏され、第2主題はイ長調で華やかに奏される。コーダはテンポを上げ、マランボのリズムにのって恋人達が踊りだしたような雰囲気で終わる。- Andante Cantabile Sereno
ニ長調。午後の微睡みのような静かな曲。優しく語りかけるような旋律が繰り返され、2声になってはカノンのように掛け合いで奏される。- Rondo
イ長調、A-B-A'-C-A"形式。ガトのリズムにのった3拍子と2拍子の複合リズムが楽しい曲。Bはホ長調になり、伸びやかな旋律が奏される。Cはニ長調になり、テンポを下げて落ち着いた旋律が現れる。1992
- El sampedrino サンペドロの人
原曲は歌曲集《12の民謡歌曲集 12 canciones populares》より第2曲〈サンペドロの人 El sampedrino〉 (1963年作曲、歌詞はLeón Benarós) でニ短調~二長調だが、1992年に作曲者自身により嬰ヘ短調~嬰ヘ長調のピアノ独奏に編曲された。サンペドロ San Pedro はブエノスアイレ州北部にある町の名前である。グアスタビーノらしい、アルゼンチンの田舎の光景が目に浮かぶような素朴ながら美しい曲で、ピアノ編曲技法も彼お得意の三連八分音符のアルペジオなどが現れる。