Osvaldo Lacerdaについて

 オズワルド・コスタ・ジ・ラセルダ Osvaldo Costa de Lacerda は1927年5月23日、サンパウロに生まれた。ラセルダの母はピアノが弾けたとのことで、彼は9歳からピアノや和声などを習った。作曲は殆ど独学であったが、1952年に自作の《弦楽四重奏曲第1番》がサンパウロ市弦楽四重奏団の演奏で初演された。この弦楽四重奏曲を作曲している時、ラセルダは自分の作曲技術の限界を感じ、専門的な作曲の勉強が必要であると悟ったとのこと。彼は1952年から1962年までカマルゴ・グァルニエリに作曲を師事した。1963年にはグッゲンハイム財団の奨学金を得て米国に留学し、アーロン・コープランドやヴィットリオ・ジャンニーニに師事した。

 1969年より、サンパウロ市立音楽学校で教鞭をとり、1992年まで生徒を教えた。また、ソルフェージュや音楽理論に関するいくつもの音楽書を書いている。

 作曲家としてラセルダは数々の賞を受けている。管弦楽のための《ピラチニンガ組曲 Suíte Piratininga》で1962年サンパウロ市作曲コンクールで一等賞および、ラジオMEC交響曲作曲コンクールで一等賞を受け、《ピアノトリオ》で1970年サンパウロ劇場批評家協会「ベスト室内楽曲賞」を受賞。また1972年にはブラジル音楽アカデミー会員に選出された。1997年にはサンパウロ州文化省より「グアラニー賞」を受賞している。

 1982年にはピアニストのEudóxia de Barrosと結婚した。

 2011年7月18日、サンパウロで亡くなった。

 ラセルダは多作家である。管弦楽曲では《ピラチニンガ組曲》(1962)、《序曲第1番、第2番 Abertura Nº 1, 2》(1972, 1982)、弦楽オーケストラのための《4つの旋法による作品 Quatro peças modais》(1975)、《4つの瞬間 Quatro momentos》(1995) などがある。協奏曲ではトランペットと弦楽オーケストラのための《祈りと点 Invocação e ponto》(1968)、ピアノと管弦楽のための《クロモス Cromos》(1992)、シロフォンと管弦楽のための《コンチェルティーノ》(1998) などがある。室内楽曲では《弦楽四重奏曲第1番、第2番、第3番》(1952, 1995, 2001)、打楽器のための《3つのブラジルのミニアチュール Três miniaturas brasileiras》(1968)、《ピアノトリオ》(1969)、《木管五重奏曲》(1988) などがある。器楽曲は、ヴァイオリンとピアノのための《民謡の主題による8つの変奏曲 Oito variações sobre um tema folklorico》(1954) など多数あり。歌曲は百曲以上作曲していて、《私のマリア Minha Maria》(1949)、《病気の男の子 O menino doente》(1949)、《愛の思い出 Lembrança de amor》(1950)、《小さな恋愛詩 Poemeto erótico》(1951)、《オシャラ(太陽神)のポント(歌)Ponto de Oxalá》(1970)、《一人ぼっちのカンチーガ Cantiga de viúvo》(1975)、《天国のモーツァルト Mozart no Céu》(1991) などは録音もある。宗教曲では《二声のミサ曲 Missa a duas vozes》(1966)、《同性の三声のミサ曲 Missa a três vozes iguais》(1971) などを作曲した。

 ラセルダはピアノ曲の分野でも多作家である。第1番から第12番まである連作《ブラジリアーナ Brasiliana》、10曲の《ポンテイオ Ponteio》、6曲の《ヴァルサ(ワルツ)Valsa》などのブラジル民族主義的な作品が中心であるが、ピアノ演奏技法を極めるような難曲の12曲の《練習曲 Estudo》、いろいろな題材を音楽にする試みの5巻から成る《クロモス Cromos》といった作品も興味深い。彼のピアノ曲の多くは二声のポリフォニーだったり伴奏和音も控えめだったりと音数が比較的少ないため、響きの華やかさに乏しく、地味な印象なのが正直な所である。しかしその一方でブラジル音楽らしい数々の材料が満載で、旋法はブラジル北東部(ノルデスチ)の民族音楽で主に用いられる教会旋法(ドリア旋法、ミクソリディア旋法、リディア旋法、これらの混合の旋法)やペンタトニック、ヘキサトニックなどが多用され、リズムでは3-3-2のリズムとかバイヨンなどのシンコペーションが使われている。またブラジルのショーロ楽団がよく使うギターやフルートの響きや、ピフェ pife(横笛の一種)、ザブンバ zabumba(大太鼓の一種)、サンフォーナ sanfona(ブラジルのアコーディオン)、パンデイロといったブラジルの民族楽器を思わせる音使いがあちこちに現れている。それらに加えて現代作曲家らしい数々の作曲技法ー全音音階から多調、無調までーを駆使しており、ブラジルの現代ピアノ音楽を代表する作曲家と言っても過言ではないと思います。

 

Osvaldo Lacerdaのページへ戻る