Alexandre Levyのピアノ曲リスト
アレシャンドリ・レヴィは1887年にフランスに留学しているが、それ以前より彼の作品の題名はフランス語が多い。これは父がフランスからの移民で、母もフランス系スイス人だったためアレシャンドリは子どもの頃より家庭内ではフランス語で会話させられていたらしい!、とのことで、その影響だろうか。
2曲の《マズルカ》及び《即興曲2番》の両方に「作品6」と付されています。
斜字の作品は、楽譜が現存するのか不明な曲です。また未完成の作品はリストに載せませんでした。1880
1881
1882
- Fosca, Opera de A. C. Gomes, Fantaisie brillante, Op. 3 A. C. ゴメスのオペラ「フォスカ」、華麗な幻想曲、作品3
- 3 Improvisations, Op. 4 3つの即興曲集、作品4
- Romance sans paroles 無言歌
- À la Hongroise ハンガリー風に
- Pensée fugitive つかの間の思い
- Valse caprice, Op. 5 ワルツ風奇想曲、作品5
- Mazurka, Op. 6, N.º 1 マズルカ、作品6ー1
- Deuxième mazurka, Op. 6, N.º 2 マズルカ2番、作品6ー2
- Paulina, Polka パウリーナ、ポルカ
- Recuerdos, Polka de salon (obra póstuma) 思い出、サロン風ポルカ(遺作)
1882?
1882-1885?
1883?
- Causerie お話
- Cavalcante 騎馬
- Étude 練習曲
- Je t'en prie どうぞ
- Petite marche 散歩
1883? 1885?
1884
- La danse des sylphides, Arr. a 4 mains 妖精たちの踊り、連弾用編曲
1885
- Plaintive 嘆き
- Colin maillard コラン・マヤール(目隠し鬼ごっこ)
- Scherzo-valse pour piano a quatro mãos, Op. 9 連弾のためのスケルツォーワルツ、作品9
1886
1887
- Trois morceaux, Op. 13 3つの作品集、作品13
- Coeur blessé 傷付いた心
- Amour passé 過ぎ去った愛
- Doute 迷い
- Allegro appassionato, Op. 14 (obra póstuma) アレグロ・アパショナート、作品14(遺作)
- Variations sur un thème populaire brésilien (Vem Cá, Bitú) ブラジル民謡の主題による変奏曲(ヴェン・サ・ビトゥ)
1890
- Tango brasileiro タンゴ・ブラジレイロ
- Samba (Suite brésilienne, IV.), Reducção para piano a 4 mãos サンバ(ブラジル組曲第4番)、ピアノ連弾用編曲
1891
- Shumanniana, Op. 16 シューマン風に、作品16
- Allegretto, ma un poco agitato
- Allegro moderato
- Lento
- Allegretto giocoso
- Moderato assai
- Allegro
- Moderato
- Allegro molto - Presto
作曲年代不詳
- Papillonage (Papillonnage), Op. 23 パピヨナージュ、作品23
- En mer (poème musical) pour piano a 4 mains 海で(音楽詩)、連弾のための
- Depart. Mer calme 出発、穏やかな海
- Le ciel s'assombrit. Tempète 空が暗くなる、大時化
- Clair de lune. Idylle fugitive 月の光、つかの間の牧歌
- Três pequenas peças pour piano a 4 mains 3つの小品、連弾のための
- Dis-moi Oui ハイと言って
- Scherzino スケルツィーノ
- Sous des orangers fleuris オレンジの花の下で
Alexandre Levyのピアノ曲の解説
1880
- Fantasia brillante sull' Opera Il Guarany di A. C. Gomes composta per due pianoforti, Op. 2 A. C. ゴメスのオペラ「グアラニー族」による2台ピアノのための華麗な幻想曲、作品2
演奏時間は約8分。先輩作曲家カルロス・ゴメスの代表的オペラ《グアラニー族》の音楽のいい所取りをして、2台ピアノ用に編曲を施した曲。2台ピアノがオクターブや和音をガンガン鳴らすので、結構派手な響きで華やかな響きである。1881
- Impromptu-Caprice, Op. 1 即興的奇想曲、作品1
変ニ長調、強いて言えばA-B-A'-C-D-D'-コーダの形式。全体的に華麗な16分音符の連続で、粒の揃った速い16分音符を弾くのは結構技巧的な曲。Aは流れるような速い音階が左手→右手と引き継がれて奏される。Bは変ト長調で落ち着いて抒情的。ホ長調のCからは速い右手アルペジオが続き、イ長調のD、変ニ長調のD'とアルペジオの中から息の長い旋律が聴こえてくる。1882
- Fosca, Opera de A. C. Gomes, Fantaisie brillante, Op. 3 A. C. ゴメスのオペラ「フォスカ」、華麗な幻想曲、作品3
カルロス・ゴメスのオペラ《フォスカ》の名場面をメドレーで繋いでピアノ用に編曲したもので、演奏時間は約12分。結構技巧的で、右手高音部の急速な分散和音またはアルペジオ+右手内声または左手和音による旋律という場面がしばしば現れる。- 3 Improvisations, Op. 4 3つの即興曲集、作品4
- Romance sans paroles 無言歌
イ長調、A-B-B'-A'形式。Aは穏やかな旋律が奏される。BとB'はAの旋律のモチーフが変形しながら繰り返され、後打ちの和音が纏わりつく。題名通りメンデルスゾーン風の《無言歌集》を思わせる曲。- À la Hongroise ハンガリー風に
イ短調、A-B-A'形式。ブンチャッブンチャッの左手伴奏にのって憂いを帯びた旋律が奏される。Bは概ね変イ長調だが、旋律の音階が一部ラ♭-シ♭-ド-レ♭-ミ♭-ファ♭(ミ)-ソ♭としているのがアレシャンドリ・レヴィの考える「ハンガリー風」なのだろう。- Pensée fugitive つかの間の思い
ト短調、A-B-A'-コーダの形式。左手に息の長い切ない旋律が現れ、後打ちの右手の伴奏がシューマンっぽい。Bでは息の長い旋律は右手に受け継がれる。- Valse caprice, Op. 5 ワルツ風奇想曲、作品5
変ニ長調、A-B-A'-C-D-C'-A'-B'-A"-E-コーダの形式。全体的に速いワルツのリズムの華やかな作品で、随所にショパンの影響が感じられる。Aはワルツのリズムにのって細かい動きの8分音符が無窮動で続くヘミオラの旋律はショパンの〈小犬のワルツ〉に似ている。Bは変ロ短調になる。Cは変ト長調で、旋律は2分音符の連続でここもヘミオラだ。Dは変ニ長調に戻り、甘えるような旋律はやはり〈小犬のワルツ〉の中間部に似ている。Eからコーダは華やかに盛り上がる。- Mazurka, Op. 6, N.º 1 マズルカ、作品6ー1
イ長調、A-A'-B-A"-C-A-コーダの形式。おとなしくて上品なマズルカ。微妙に繰り返しのA、A'、A"が異なっている所が凝っている。Cはニ長調になり、澄ましたような旋律が左手に現れる。- Deuxième mazurka, Op. 6, N.º 2 マズルカ2番、作品6ー2
イ長調、A-A-B-A-C-A'形式。右手旋律、左手伴奏ともに半音階進行の響きが印象的。Bはホ長調で勇ましい雰囲気に。Cはニ長調になる。- Paulina, Polka パウリーナ、ポルカ
パウリーナとは、アレシャンドリ・レヴィの姉の名前である。未出版で手稿譜のみが残されている曲である。ト長調、A-A-B-A'-C-A形式。上品な雰囲気のポルカ。Bはハ長調、Cは変ホ長調になる。- Recuerdos, Polka de salon (obra póstuma) 思い出、サロン風ポルカ(遺作)
楽譜には「1882年、ブエノスアイレスにて作曲」と記されているが、アレシャンドリ・レヴィの死後に遺作として出版された曲。変ホ長調、前奏-A-B-A'-C-A-B-コーダの形式。勇壮な8小節の前奏に引き続き、上品な雰囲気のポルカが奏される。Bは変ト長調、Cはロ長調になる。1882?
- 2me Impromptu, Op. 6 即興曲2番、作品6
未出版で手稿譜のみが残されている曲。嬰ヘ長調、A-B-A'形式。全体的に抒情的で幸せな雰囲気。冒頭の流れるような旋律はシューマン風で、Bのアルペジオの伴奏はショパン風だ。1882-1885?
- Scherzo, Op. 7 スケルツォ、作品7
未出版で手稿譜のみが残されている曲。嬰ハ短調、A-B-A'形式。3/4拍子で早く流れるような旋律が奏され、二声、三声とカノンも含めポリフォニックに展開される。Bは嬰ヘ長調になり落ち着いた雰囲気だが、その後の転調が頻繁である。- Tarentelle pour piano à quatre mains, Op. 8 連弾のためのタランテラ、作品8
変ロ長調、A-B-A'-B'形式。Aは概ね6/8拍子のセコンドの伴奏にのってプリモが二声の掛け合いのような旋律を奏する。Bは変ト長調になり、プリモの左手に現れる4連8分音符の旋律が、右手の6/8拍子のアルペジオとヘミオラのポリリズムになる。1883? 1885?
- Romance sans paroles (Feuilles d'album) (obra posthuma) 無言歌(アルバムの綴り)(遺作)
Irmãos Vitale社の出版譜では遺作となっているが、1885年のブラジルの芸術雑誌Gazeta Artísticaにこの曲の楽譜が掲載されている。変ロ長調、A-A-B-A'-C-D-C'-A-B-A'-コーダの形式。抒情的な単旋律に後打ちの伴奏が控え目に奏される。CとDは変ホ長調になる。1885
- Plaintive 嘆き
未出版で手稿譜のみが残されている曲。ロ短調、A-B-A形式。Aの高音部の嘆くような旋律、Bの冒頭の中音部の呻くような旋律のどちらも悲痛な響きで、Bで時々現れるフェルマータの休符はため息を吐くような感じだ。Aがロ短調だと分かるのは5小節目あたりからで、またBは複雑な転調が続き、和声的にも巧みな出来の曲である。- Colin maillard コラン・マヤール(目隠し鬼ごっこ)
未出版で手稿譜のみが残されている曲。変ホ長調、A-A-B-A-C-A-B-A形式。子ども達が遊ぶ光景を暖かく見守っているような曲。AとBは三声〜四声のポリフォニーで主旋律の変形が低音に現れたりする。Cは変イ長調になり、Aの断片がハ長調やホ長調で再現される経過句を経て、冒頭に戻る。- Scherzo-valse pour piano a quatro mãos, Op. 9 連弾のためのスケルツォーワルツ、作品9
変ホ短調の前奏のみ陰うつだが、その後の変ホ長調で始まる速いテンポのワルツは華やかで、いろいろな主題が入れ替わり登場する。1886
- Andante romantique (pour orchestre), Réduction pour piano à 4 mains par l'auteur (oeuvre posthume) アンダンテ・ロマンティク(管弦楽のための)、作曲者によるピアノ連弾用編曲(遺作)
アレシャンドリ・レヴィの交響曲の第2楽章をピアノ連弾用に編曲したもの。1887
- Trois morceaux, Op. 13 3つの作品集、作品13
アレシャンドリ・レヴィのパリ留学中の作品で、第1曲と第3曲はパリでの知人女性に献呈されている(第1曲を献呈したピアニストのAdelaide Barbès嬢とレヴィはピアノ連弾をしたらしい)。以前にも増してドイツ・ロマン派の作品かと見紛う程で、聴いているとヨーロッパの田舎の風景が目に浮かんでくるよう。また全体的に、旋律に加え対旋律を歌わせることに力を入れた作品揃いで、二声、三声、四声とポリフォニックに旋律が絡み合うのがアレシャンドリ・レヴィのお得意だったように思える。
- Coeur blessé 傷付いた心
変ホ短調、A-B-A'形式。3連符の伴奏にのってやるせない旋律が歌われる。Bの変ト長調になる部分は牧歌的で、正にドイツ音楽の響きだ。冒頭の変ホ短調が最後に短く再現され、ピカルディ終止で終わる。- Amour passé 過ぎ去った愛
ホ長調、A-B-A'-B'形式。過去の愛を惜しむようなロマンチックな、ややメンデルスゾーンっぽい響きの落ち着いた曲。全体的にポリフォニックに旋律が絡む曲だ。- Doute 迷い
変ト長調、A-B-A'-B'-A"形式。中音部に幸せそうな旋律が歌われる。Bは変ホ短調になり、Aの変奏のような旋律が奏される。A"の後半は、バス+中音部主旋律+中音部伴奏和音+高音部対旋律の4階建の凝った変奏が聴き所だ(下記の楽譜)。曲名の「迷い」って何だろう?。
Doute, Op. 13, n.º 3、40-46小節、Irmãos Vitaleより引用- Allegro appassionato, Op. 14 (obra póstuma) アレグロ・アパショナート、作品14(遺作)
パリ留学直前またはヨーロッパへ向かう船内で作曲されたと推定されている。自筆譜には「作品9」と記されているが、アレシャンドリ・レヴィの没後に出版された楽譜では「作品14」とされた。ほぼ全曲に亘って急速な16分音符が駆け回り技巧的で、またピアノ書法からもアレシャンドリ・レヴィの円熟を感じさせる作品である。ホ短調、A-B-C-B'-A'-C'-コーダの形式。Aはベートーヴェンのピアノソナタ《ピアノソナタ第17番「テンペスト」》の第3楽章を思わせる速い音型で始まる。Bは16分音符のアルペジオや分散オクターブが絶えまなく続き華やかで、上下する右手アルペジオの下の中音部で息の長い旋律が奏される所は、メンデルスゾーンの《ロンド・カプリッチョーソ》を思わせる。Cはホ長調になりロマンチックで美しい。C'はイ長調になる。- Variations sur un thème populaire brésilien (Vem Cá, Bitú) ブラジル民謡の主題による変奏曲(ヴェン・サ・ビトゥ)
この作品もパリ留学中の作曲。演奏時間約15分の大曲。まず主題のブラジル童歌〈ビトゥ、こっちに来なさい Vem Cá, Bitú〉の旋律がホ長調の単音で奏され、その後に16個の変奏が続く。主題は内声や左手低音で奏されたり、スケルツォ(第8変奏)や無言歌風(第10変奏)、牧歌(第11変奏)に変奏されたり、一部嬰ハ短調の葬送行進曲(第9変奏)になったりはするが、概ね主題からはさほど外れず、分かりやすい変奏曲。主題にブラジル民謡を用いたものの、変奏のリズムや和声にブラジル風味は殆ど無い。この曲はアレシャンドリ・レヴィの没後、レオポルド・ミゲスにより管弦楽曲に編曲された。1890
- Tango brasileiro タンゴ・ブラジレイロ
アレシャンドリ・レヴィの代表作。初版は1890年4月5日、新聞Diário Popularに掲載された。南国的な雰囲気の曲。イ長調、A-B-A'-A"-コーダの形式。Aの明るい前奏に引き続き、Bのイ短調の物憂い旋律が突然に現れるのが絶妙。その後A'とA"のイ長調の前奏がやや形を変えて続き、コーダは4小節のイ短調の旋律の回想、冒頭のイ長調の前奏がまた8小節奏され、最後はまた突然イ短調の和音で終わる。二分半ほどの短い曲だが、アレシャンドリ・レヴィの才能が詰まっている。- Samba (Suite brésilienne, IV.), Reducção para piano a 4 mãos サンバ(ブラジル組曲第4番)、ピアノ連弾用編曲
《ブラジル組曲 Suite brésilienne》の原曲は4曲から成る管弦楽組曲(第2番は散逸)だが、その第4番〈サンバ Samba〉はアレシャンドリ・レヴィ自身によりピアノ連弾に編曲された。また彼の兄のルイス・レヴィによりピアノ独奏版および2台ピアノ版に編曲された。後にソウザ・リマにより3台ピアノ版にも編曲された。変ホ長調、A-B-A-コーダの形式。サンバというよりかは、その起源の一つのバトゥーキに近いリズムである。Aは躍動的な旋律が形や調を変えながら何度も繰り返されるが、この旋律は作曲家のブラジリオ・イチベレ・ダ・クーニャ (1846-1913) のピアノ曲《ア・セルタネージャ A sertaneja、作品15》の中間部で用いられている旋律と同じである。Bは牧歌的なモチーフが現れるが、低音で鳴るリズムは3-3-2で躍動感が続く。1891
- Shumanniana, Op. 16 シューマン風に、作品16
アレシャンドリ・レヴィ晩年の作品。ここでは彼はシューマンへの敬愛する思いを隠そうともせず、題名まで《シューマン風に》としている。本当に彼はシューマンの音楽に心酔していたんだな~。
- Allegretto, ma un poco agitato
変ニ長調、A-A-B-B-A-B形式。流れるような曲で、内声の3連符の伴奏と流れるような旋律はシューマンの《子供の情景》の第1番に似てるかな。- Allegro moderato
変ニ長調、A-A-B-A形式。右手の和音と左手のベースから成る付点混じりの勇ましいリズムが、やはり《子供の情景》の第6番に似てるかな。- Lento
変ニ長調、A-A-B-B形式。中声部に現れる8分音符の優美な旋律は、シューマンの《森の情景》の第3番に似ている。- Allegretto giocoso
一応変イ長調だが、ヘ短調にも聴こえる、A-B-A形式。ポルカ風の曲。Bで3つの声部がカノンになる所は、シューマンの《幻想小曲集》の第5番〈夜に〉の中間部に似ている。- Moderato assai
ト短調、A-B-A形式。悲しげなコラール風の曲。- Allegro
変ロ長調、A-B-A'形式。途中から現れる後打ちの伴奏音型がシューマン的。Bは変ホ長調になる。- Moderato
変ロ短調、A-B-A形式。組曲中最も情熱的な曲で、6連16分音符のアルペジオの伴奏にのって切ない旋律が歌われる。Bは転調を繰り返す。- Allegro molto - Presto
変ロ長調、A-B-A'-C-A"-D-A'"-E-A""形式。勇壮で華やかなな曲で、シューマンの《ウィーンの謝肉祭の道化》の第3番〈スケルツィーノ〉にとっても雰囲気が似ている。作曲年代不詳
- Papillonage (Papillonnage), Op. 23 パピヨナージュ、作品23
パピヨナージュとは、フランス語で蝶が花から花へと飛び回ること。練習曲風の曲。16分音符が無窮動で続く曲で、変ロ短調に始まり、頻繁に転調する。アレシャンドリ・レヴィの手稿譜は未完となっていて、義弟のEzequiel Ramos Júniorにより補筆完成された。- En mer (poème musical) pour piano a 4 mains 海で(音楽詩)、連弾のための
海が見せるいろいろな表情が眼に浮かぶような標題音楽である。3曲ともアタッカで繋がっている。第1曲〈出発、穏やかな海〉はイ長調。題名通りの穏やかな海を航海しているような曲。概ねプリモが主旋律と対旋律を、セコンドがもう一つの対旋律と低音部16分音符アルペジオを弾き、即ち伴奏+三声となっている。第2曲〈空が暗くなる、大時化〉は大時化の海を描写。セコンドの低音部トリルやプリモの高音部のうねるようなオクターブ旋律が荒れた海を描写している。第3曲〈月の光、つかの間の牧歌〉は未完の作品。変ト長調。月の光が凪の夜の海に煌めくように静か。レヴィの自筆譜の表紙には第4曲〈到着、舞曲 Arrivée. Danse〉の題名も記されていて、実際に緩徐楽章となっている第3曲は後が欲しい終わり方であるが、結局第4曲は作られなかったとのこと。
- Depart. Mer calme 出発、穏やかな海
- Le ciel s'assombrit. Tempète 空が暗くなる、大時化
- Clair de lune. Idylle fugitive 月の光、つかの間の牧歌