Adolfo Mejíaのピアノ曲リスト
アドルフォ・メヒアの作品の多くは1937年から1960年の間に作られたらしい。多くの曲の作曲年は不詳なため、アルファベット順にリストしました。
- Anita, valses アニータ、ワルツ
- Apuntes No. 1 para piano ピアノのための素描第1番
- Apuntes No. 2 para piano ピアノのための素描第2番
- Aquella vez, tango あの時、タンゴ
- Bambuco No. 1 en si menor (1945) バンブーコ第1番、ロ短調
- Bambuco No. 2 en mi mayor (1967) バンブーコ第2番、ホ長調
- El burrito (1965) 小さなロバ
- Cartegena es buena tierra, danza カルタヘナはいい所、ダンサ
- Finitta フィニータ
- Improvisación (1945) 即興曲
- Luminosidad de aguas, preludio (1949) 水のきらめき、前奏曲
- Manopili, zamba (1935) マノピーリ、サンバ
- Pasillo No. 1 en re mayor パシージョ第1番、ニ長調
- Pasillo No. 2 en re mayor パシージョ第2番、ニ長調
- Pasillo No. 3 en mi bemol mayor パシージョ第3番、変ホ長調
- Pasillo No. 4 en si menor, "de las campanas" パシージョ第4番、ロ短調「鐘」
- Pincho, danza ピンチョ、ダンサ
- Preludio en fa menor 前奏曲、ヘ短調
- Preludio en fa menor 前奏曲、ヘ短調
- Preludio en re bemol mayor 前奏曲、変ニ長調
- Primicias (1916) 初物
- Si o no, zamba いずれにせよ、ザンバ
- Trini, danza トリニ、ダンサ
- Valse infantil 子どものワルツ
Adolfo Mejíaのピアノ曲の解説
- Bambuco No. 1 en si menor (1945) バンブーコ第1番、ロ短調
バンブーコはコロンビア南部の民族舞踊。A-A-B-B'-A形式。アンデスの山奥に響く笛の音を思わせる物悲しく、美しい旋律の曲。Aは縦笛の二重奏のような三度重音の旋律が奏される。BとB'はニ長調になる。- Bambuco No. 2 en mi mayor (1967) バンブーコ第2番、ホ長調
前奏-A-A-B-B-A-C-D形式。軽快な踊りの曲。和声はのスペイン近代の作曲家(トゥリーナ辺り)を思わせる響きを感じる。Cは強いて言えば変ニ長調、Dはニ長調になる。- El burrito (1965) 小さなロバ
アドルフォ・メヒア晩年の作品。A-B-B-コーダの形式。ロバの歩みを描写しているかのような左手ラ-レのオスティナートにのって、右手にレのドリア旋法の旋律が初めは静かに、徐々に声部を増やしながら複雑に発展していく。Bでは左手は二声に増え、右手高音部に即興的なパッセージが次々と現れる。メヒアのピアノ曲の中で一番謎めいた響きの曲である。最後は突然、ロバが嘶くような短二度の不協和音強打で終わる。- Improvisación (1945) 即興曲
ト短調、A-A-B-B形式。静かで趣深い曲。メリスマ的な旋律や、内声の対旋律にド♯やミ♮を用いることで響く「フランスの増六和音」などがアンダルシア風に聴こえる。Bは転調が多く色彩的な響き。- Luminosidad de aguas, preludio (1949) 水のきらめき、前奏曲
原曲はハープ用で、スペインのハープ奏者ニカノール・サバレタ Nicanor Zabaleta のために作られた(ハープの原曲は1949年にカルタヘナでニカノール・サバレタにより初演された)。強いて言えばニ長調、A-A-B-C-A'-B'形式。水の流れを思わせる高音部の右手の16分音符アルペジオに、左手の8分音符が水の煌めきのように絡む。ドビュッシーやラベルのこの手のピアノ曲に比べると洗練さでは負けるかも知れないが、素朴な味わいがあって、これこそコロンビア奥地の川か湖の光景かな、と想像するのは私の考え過ぎかな?。- Manopili, zamba (1935) マノピーリ、サンバ
この曲のサンバ zamba とはアルゼンチンの、ゆったりとしたテンポの3拍子の舞曲で、ブラジルのサンバ samba とは違います。ホ短調、前奏-A-B-C-A-B-C-コーダの形式。印象派風の前奏に続き、Aは素朴な物悲しい旋律が弱々しく奏される。この旋律の終わりに左手に現れるシ↑シ↓ド♯↑ド♯↓レ♯↑レ♯↓ミのベース進行がサンバらしい。Bは激情をぶつけるようなfが鳴る。Cはいっときト長調になる。- Pasillo No. 1 en re mayor パシージョ第1番、ニ長調
このパシージョは素晴らしい!。ビダール、ムリージョ、カルボといったコロンビアの先輩作曲家たちが民族舞踊パシージョをピアノ曲へと昇華させてきたのが、遂にアドルフォ・メヒアにより実を結んだと言っていい気がする名作。A-A-B-B-A-C-C(-A)形式。Aでは二声の旋律が交互に音階を上昇していくのが何とも絶妙で、うきうきしてくる(下記の楽譜)。Cの変ロ長調に転調した所も優美でいい。
Pasillo (1)、1-6小節、Adolfo Mejía. Obras completas para piano. Colegio Máximo de las Academias Colombianas, Patronato Colombiano de Artes y Ciencias. Sonata Editores. より引用- Pasillo No. 2 en re mayor パシージョ第2番、ニ長調
A-A-B-B形式。ちょっと地味ながら、優しい雰囲気が伝わってくるいい曲。Bはト長調になる。- Pasillo No. 3 en mi bemol mayor パシージョ第3番、変ホ長調
A-A-B-B'形式。ほのぼのとした暖かさに満ちた雰囲気の曲。Bは変イ長調になり、B'の最後で変ホ長調に戻る。- Pasillo No. 4 en si menor, "de las campanas" パシージョ第4番、ロ短調「鐘」
全体的に、アドルフォ・メヒアの「魂の歌」と呼びたくなるような感動的な曲である。A-A'-B-B-A-A'-C-C'-A-A'形式。冒頭のAとA'の部分は左手でパシージョのリズムを、右手で中音部で歌われる三度重音の物憂い旋律と高音に現れる鐘のオクターブ和音を同時に弾く、という技巧的にも凝った作りだ(下記の楽譜)。Bはニ長調になり、郷愁を誘うような雰囲気。Cはロ長調になり、天上の世界を思わせる。
Pasillo (4)、1-6小節、Adolfo Mejía. Obras completas para piano. Colegio Máximo de las Academias Colombianas, Patronato Colombiano de Artes y Ciencias. Sonata Editores. より引用- Pincho, danza ピンチョ、ダンサ
ピンチョとは、カルタヘナ出身のピアニストのアグスティン・デ・ラ・エスプリエジャ Agustín de la Espriella の愛称で(大作曲家ショパンの音節Cho-pinを逆のpin-Choにして呼ばれていたらしい)、彼に献呈された。ニ長調、A-A'-B-B'形式。主にトレシージョのリズム(♪.♪.♪)を多用した旋律はお洒落で、カリブ風の明るい(でもちょっと切ない)雰囲気の曲。ポピュラー音楽もやってきたメヒアらしい素敵な曲で、私は大好き!。- Preludio en fa menor 前奏曲、ヘ短調
A-B-C-A'形式。印象主義の影響を感じる神秘的な曲。予期せぬ和音進行など、クラシック作曲家としてのメヒアの作曲技法の高さを感じさせる。- Preludio en fa menor 前奏曲、ヘ短調
A-A-B形式。瞑想的な曲。左手アルペジオの雰囲気はショパンにやや似てるかな。- Preludio en re bemol mayor 前奏曲、変ニ長調
A-B-B'-A形式。落ち着いた雰囲気の曲。特にBとB'のアルペジオからなる部分はドビュッシーの初期のピアノ曲を思わせ、属九の和音などによる繊細な和音の移ろいが何とも美しい。- Trini, danza トリニ、ダンサ
Triniはアドルフォ・メヒアの二男の名前。ニ長調、前奏-A-A-B-B-C-C形式。前奏に引き続き、明るく優美な踊りの旋律が奏される。Cはロ短調になる。- Valse infantil 子どものワルツ
ト長調。あどけない旋律の小品。和音がGからC7に行くなど突飛な流れが子どもの世界かな。