Henrique Alves de Mesquitaのピアノ曲リスト(アルファベット順)
エンリキ・アウヴィス・ジ・メスキータのピアノ曲は調べた範囲で、下記の95曲がリストアップされました。文献として、Antônio José Augusto. Henrique Alves de Mesquita: da pérola mais luminosa à poeira do esquecimento. の本、およびウェブサイト Instituto Piano Brasileiro を主に参考にしましたが、他のいくつかの資料も参考にしています。メスキータの劇場作品ー即ちオペラ、オペラ・コミック、オペレッタ、マジカーの一部場面はしばしばピアノ版に編曲されて出版されましたが、このリストではメスキータ自身によると思われるピアノ編曲のみを載せ、他人によってピアノ編曲されたものは載せていません。下記の黄色枠のリストはアルファベット順とし、その下の「Henrique Alves de Mesquitaのピアノ曲の解説」の所を作曲年代順リストとしました。アルファベット順リストの曲名の所をクリックすると、作曲年代順リストの該当曲に飛ぶことが出来ます。
「曲名」のところで斜字で記されている曲は、出版社のカタログや当時の雑誌の記事などで曲が存在したことが分かっているものの、現在楽譜が残されていない作品です。また一部の曲では、楽譜が初版された時の曲名がフランス語で後にポルトガル語版が出版されたり、また初版の綴りが現代ポルトガル語とは異なる古い綴りのことがありました。その場合、まず初版楽譜の古いオリジナルの表記をそのまま記し、次に括弧内 () に再販や現代ブラジル・ポルトガル語の綴りを併記しました。
アルファベット順リストの「作曲年または初版年」については、資料でも作曲年と初版年が区別されていない曲が多いため、当資料も止むを得ず区別せず表記しました。出版はされたもののいつ初版なのかが不明な曲および近年まで未出版だった曲は?と記しました。
Henrique Alves de Mesquitaのピアノ曲の解説(作曲年代順)
1854
1855
1856
- Saudades de Mme. Charton, Valsa シャルトン夫人の思い出、ワルツ
シャルトン夫人(アンヌ・シャルトン=ドゥミール Anne Charton-Demeur, 1824-1892)はフランスのソプラノ歌手で、1854年から1856年にかけてブラジルを訪れてオペラなど多くの公演を行った。この曲の原曲は管弦楽曲で、1855年12月にシャルトンがリオデジャネイロでの最後の公演でヴェルディのオペラ《椿姫》を歌ったが、この公演の最後にメスキータのこの曲が演奏された。ピアノ版の出版は1856年と思われる。曲は序奏-4つのワルツ(いずれもA-A-B-B形式)-コーダの形式の6部構成になっていて、いくつものワルツが途切れず続くのは舞踏会向きの実用的な曲でありつつ、ベルカント・オペラのアリアのような軽快で技巧的な旋律に満ちた曲である。序奏はニ長調、6/8拍子で、イタリアオペラのアリアを思わせる優美な旋律がゆったりと奏され、分散オクターブの変奏で繰り返される。1番目のワルツはニ長調、スタッカートとスラーが交互に現れる旋律が奏される。2番目のワルツはAがト長調・Bがハ長調、なだらかな音階の旋律が奏される。3番目のワルツはAがト長調・Bがニ長調、可憐なAの旋律と華やかなBの旋律が奏される。4番目のワルツは変ロ長調、ベルカント歌唱を思わせる軽快ながら音の跳躍が多い旋律が奏される。コーダは経過句を経て、1番目・2番目のワルツが再現され、ハ長調で幕の終曲場面のように華やかに終わる。- Tamberlick, Polka タンバリック、ポルカ
1857
-1859
1859
1860
1861
- A surpreza (surpresa), Polka brilhante 驚き、華麗なポルカ
ト長調、前奏-A-B-A'-C-D-A-B'-A"形式。スタッカート混じりの浮き浮きするような旋律の曲。Bはへ長調。CとDはハ長調になり、Dは低音オクターブに旋律が現れて吹奏楽のような華やかな響きだ。1862
- La brésilienne, Polka ブラジルの女、ポルカ
へ長調、前奏-A-A-B-A'-C-D-C'-D-C'-A-B'-A-コーダの形式。華やかでコケティッシュな雰囲気の曲。Aは急き立てるような重音の旋律。Bはハ長調で高音部分散和音の旋律が艶やか。Cは変ロ長調で3連16分音符のコブシが混じる旋律は思わせぶりな感じ。Dはト短調になる。1864?
- La brésilienne, Suite de valses ブラジルの女、ワルツ組曲
- Soirée brésilienne, Quadrille (Quadrilha) ブラジルの夜会、カドリーユ(クァドリーリャ)
原曲は1862年に出版された管弦楽曲である。ピアノ独奏版は1864年、ピアノ連弾版は1865年にいずれもパリで出版されたが、1863年から1866年までメスキータはパリの刑務所に服役しており、これらの編曲も管弦楽版作曲の1862年頃かもしれない。クァドリーリャとは、ヨーロッパで18〜19世紀に流行したカドリーユ Quadrille(フランス語)という歴史的ダンスのポルトガル語表記で、19世紀にはブラジルのサロンでも踊られていた。カドリーユ(クァドリーリャ)は五つの部分から成り、形式は以下のように決まっている。1. 〈パンタロン Le pantalon〉(2/4または6/8拍子、A-B-A-C-A形式)〜2. 〈夏 L'été〉(2/4拍子、A-B-B'-A形式)〜3. 〈雌鶏 La poule〉(6/8拍子、A-B-A-C-A-B-A形式)〜4. 〈羊飼い La pastourelle〉(2/4拍子、A-B-C-B-A形式)または〈La Trénis〉(2/4拍子、A-B-B-A形式)〜5. 〈終曲 Finale〉(2/4拍子、A-A-B-B-A-A形式)。メスキータのこの曲では、〈パンタロン〉は優雅な雰囲気で、Aはニ長調、Bはイ長調、Cはト長調。〈夏〉は勇ましく、全曲ニ長調。〈雌鶏〉はのどかな感じで、AとBはト長調、Cはハ長調。〈La Trénis〉は忙しない雰囲気で、全曲ニ長調。〈終曲〉はAはト長調、Bはハ長調で、最後にコーダとして〈La Trénis〉のBの部分をハ長調に変奏する。1865
1866
1867
- Aurora, Polka de salão 夜明け、サロン風ポルカ
ホ長調、前奏-A-B-B-C-C'-D-C'-D-C'-前奏-A-B-B-コーダの形式。AとBは3連16分音符連打の多い旋律が生き生きとしている。Cはイ長調、Dはへ長調になり、流れるような高音部16分音符の旋律が奏される。- Polka de 1867 1867年のポルカ
1868
- A minha Virgínia, Polka 私のヴィルジニア、ポルカ
- La coquette, Quadrille (Quadrilha) コケティッシュな女、カドリーユ(クァドリーリャ)
- Satan, Quadrilha サタン、クァドリーリャ
1870
- Jockey-Club, Quadrilha ジョッキークラブ、クァドリーリャ
- Os tenentes do diabo, Quadrilha fantástica 悪魔の中尉たち、幻想的なクァドリーリャ
1871
- O guerreiro, Quadrilha militar 戦士、軍隊クァドリーリャ
- Olhos matadores,Tango 殺人者の目、タンゴ
- Pik-Nik, Polka ピクニック、ポルカ
- Raios do sol, Quadrilha brilhante 日光、華麗なクァドリーリャ
- Sae Poeira, Polka lundú
- Trunfo às avessas 裏返しの切り札
《裏返しの切り札》は1871年に初演されたオペレッタである。劇中の以下の音楽がピアノ曲に編曲されて出版された。
- Eu amo a calma..., Recitativo
- Fantasia 幻想曲
- Polka ポルカ
ハ長調、前奏-A-A-B-B'-A-C-C-A-A-コーダの形式。Aはスラースタッカートの16分音符重音が続く右手旋律に、3-3-2のリズムの左手伴奏が奏されて、何とも浮き浮きするような音楽だ(下記の楽譜)。特に曲のほぼ全体で奏される左手伴奏のシンコペーションは、ブラジルのタンゴ(タンゴ・ブラジレイロ)という一大ジャンルの先駆けとも言え、後年の作曲家のシキーニャ・ゴンザーガやエルネスト・ナザレに引き継がれる音楽の元祖と言ってもいいような気がする。Bはイ短調、Cはへ長調になる。
Polka da opera comica em 2 actos Trunfo às avessas、12-22小節、T. H. Canongia (Lyra de Apollo) より引用- Quadrilha クァドリーリャ
- Recitativo レチタティーヴォ
- Valsa ワルツ
1872
- Ali-Babá ou os quarenta ladrões アリババと40人の盗賊
『アリババと40人の盗賊』の物語は世界中で知られているが、この物語は「マジカ mágica」というジャンルの劇場作品化され、劇中の音楽はメスキータ が作り、1872年にリオデジャネイロで初演された。「マジカ」とはかつてポルトガルとブラジルで流行した、音楽を伴った演劇の一ジャンルで、フランス発祥の「夢幻劇(フェリー )」に近い。劇中の以下の音楽がピアノ曲に編曲されて出版された。
- Marcha turca 中東の行進曲
ポルトガル語のturco(形容詞女性形だとturca)は国名のトルコ、または広義では中東全体を指す。変ホ長調、A-B-B-A'-C-C-A-B-B-A'形式。Aは両手オクターブの旋律が勇ましい。Bは変ロ長調になり、Aと同じリズムの旋律が奏される。Cは変イ長調になり、優雅な雰囲気になる。- Polka ポルカ
- Quadrilha クァドリーリャ
- Tango タンゴ
イ短調、A-B形式。Aの旋律や伴奏のリズムはハバネラだが、左手対旋律に半音階の下降が現れたりと中東の雰囲気も少し醸し出しているかな。Bはイ長調になり、3-3-2のリズムの左手伴奏にのってスタッカートの和音の旋律が軽快に奏される。この曲はマジカ《アリババと40人の盗賊》の劇中音楽の中でも有名になったようで、ブラジルではピアノ独奏版に加え、Lucién Lambertによるピアノ連弾版が出版され、またフランスでも《ズィグ・ズィグ・ズィグ・トン、アリババの有名なタンゴ、オペレッタ=フェリー Zig-zig-zig-tong, Célèbre tango de Ali-Baba, Opérette féerie》という曲名でピアノ独奏版が出版された。- A pera de Satanz (Satanás) サタンのあご髭
《サタンのあご髭》は1871年に初演されたマジカである。劇中の以下の音楽がピアノ曲に編曲されて出版された。- Faustino, Quadrilha ファウスチーノ、クァドリーリャ
- Festival, Quadrilha フェスティバル、クァドリーリャ
- Peixoto, Quadrilha ペイショト、クァドリーリャ
1873
- A coroa de Carlos Magno カール大帝(シャルルマーニュ)の王冠
マジカ《カール大帝(シャルルマーニュ)の王冠》は1859年にポルトガルのリスボンで初演された。この時の音楽はポルトガルの作曲家ジョアキン・カジミーロ・ジュニオールJoaquim Casimiro Júnior (1808-1862) により作曲されたが、1873年にブラジルで上演されるにあたって台本はほぼ同じだが、メスキータが劇中の音楽を新たに作曲した。また劇中の以下の音楽がピアノ曲に編曲されて出版された。- Até já, Noturno またね、夜想曲
- Gostosa, Polka 愉快な、ポルカ
- Mude-se para perto, Polka 近くに移れ、ポルカ
- Não me amole, Polka 私の邪魔をしないで、ポルカ
- O vampiro, Valsa brilhante 吸血鬼、華麗なワルツ
アレクサンドル・デュマ・ペールの戯曲『吸血鬼 Le Vampire』(1851) を元に作られたマジカ《吸血鬼、深夜12時の悪魔》は、メスキータが劇中の音楽を作曲し、1873年に初演された。劇中の〈華麗なワルツ〉はピアノ曲に編曲されて出版された。変ロ長調、前奏-A-A'-B-B-C-C'-D-D-E-E-D-C-C'-A-B-コーダの形式。舞踊会向きの優雅なワルツの旋律が次々と現れる。C、C'、Eは変ホ長調になる。- Relâmpago, Jongo 稲妻、ジョンゴ
1874
1875
- Carnaval no Rio de Janeiro, Quadrilha リオデジャネイロのカーニバル、クァドリーリャ
- Cenas da escravidão, Jongo 奴隷制の光景、ジョンゴ
- Figueira de Mello, Polka フィゲイハ・ジ・メロ、ポルカ
1880
- Camões, Polka カモンイス、ポルカ
楽譜には「偉大な詩人の没後三百年を記念して」と記されている。ルイス・デ・カモンイス (Luís de Camões, 1524?-1580) ポルトガルの有名な詩人である。全体的に陽気な曲調で、カモンイスが書いた格調高い詩作との関連はなさそう。へ長調、前奏-A-B-A-C-C-A-B-A形式。Aは左手で半音階上行する旋律と、右手のスタッカートが掛け合いのように奏される。Bはハ長調、Cは変ロ長調になる。- Polka dos pampas パンパのポルカ
1880-
-1881
1882
- Marquez (Marquês) de Pombal, Marcha heroica ポンバル侯爵、英雄行進曲
ポンバル侯爵 (1699-1782) はポルトガル王国の政治家で、当時ポルトガルの植民地であったブラジルにも影響を与えた。彼の没後百周年を記念して作曲された。変ホ長調、A-B-B'-A'-C-A-コーダの形式。勇壮な吹奏楽の音色を思わせる曲で、Aは右手和音と左手オクターブが堂々と奏される。BとCは朗々とした旋律が奏される。- Pastora dos Alpes, Polka アルプスの羊飼いの娘、ポルカ
1882-1888
- Os sonhos d'ouro, Quadrilha 金色の夢、クァドリーリャ
クァドリーリャの形式通り、五つの部分から成る。〈パンタロン〉は軽快な曲で、Aはイ短調、BとCはハ長調。〈夏〉は勇ましく、Aはイ短調、Bはハ長調。〈雌鶏〉は戯けた感じで、AとBはト長調、Cはハ長調。〈La Trénis〉は軽快な曲で、全曲ハ長調。〈終曲〉はスタッカートの旋律が跳ねるような雰囲気で、ト長調。最後にコーダとして〈La Trénis〉のAの部分が再現される。1884
1885
- Mayá, Polka マヤ、ポルカ
変ロ長調、前奏-A-A-B-A'-B-A'-C-C-A"形式。Aの旋律はシンコペーション混じりだ。Bはト短調になり、右手オクターブ旋律に左手伴奏の和音連打が騒がしい響き。Cは変ホ長調になり、3連符混じりの甘い旋律になる。この曲は後年のエルネスト・ナザレのピアノ曲に似ていて、例えばナザレの《アパニェイチ・カヴァキーニョ(頑張れ、カバキーニョ)、ポルカ Apanhei-te, cavaquinho, Polka》(1914) のAの部分の和音進行や、Bが平行調に転調、Cが下属調に転調する所はこの曲と同じである。1887
- A faísca, Polka 閃光、ポルカ
ニ長調、A-A-B-B-A-C-C-A-A-コーダの形式。旋律の高音部スタッカートや16分音符重音が曲名の《閃光》を表しているのかもしれない。Cはト長調になる。- Carlos Gomes, Polka (Piano solo com trompete ad libitum) カルロス・ゴメス、ポルカ(ピアノ独奏と任意のトランペット)
当時のブラジルを代表するオペラ作曲家のカルロス・ゴメスを讃えて作られたポルカで、ゴメスの代表作であるオペラ《グアラニー族 Il Guarany》の序曲のいくつかの一節がこの曲に現れる。曲の後半ではトランペットのパートが現れており、トランペット奏者でもあるメスキータらしい曲である。曲はカルロス・ゴメスの兄サンタアナ・ゴメス Sant'Ana Gomes に献呈された。ニ長調、前奏-A-A-B-A-C-C-A-A-B-A-コーダの形式。前奏の勇ましいモチーフは《グアラニー族》の序曲の後半に出てくるモチーフである。Aは軽快ながらも自信に満ちたような旋律が奏される。Bはイ長調になり、前奏でも用いられたモチーフがここでもffで勇ましく変奏される。Cはト長調になり16分音符スタッカートの旋律が現れるが、ここも序曲の一節に似ている。曲の後半でAが再現される部分では楽譜にトランペットの朗々とした対旋律が記されていて、これは序曲の終盤でトランペットが吹く対旋律と同じである。1889
- Duque d'Alba, Polka brilhante アルバ公爵、華麗なポルカ
- Revista de 1888 1888年のレヴュー
レヴュー(ポルトガル語ではヘヴィスタ)とは音楽を基盤に、歌と踊りを主とし、寸劇などから構成された軽快なテンポの音楽劇のことで、この《1888年のレヴュー》は1889年に上演されたらしい。1889-1895
- Quebra-quebra minha gente, Polka cateretê 皆んな、ケブラケブラ(暴動だ)、ポルカ・カテレテ
カテレテ cateretê とはブラジルの民族舞踊で、ギターを伴奏にして(歌が入ることもある)、手を叩き、足を鳴らしながら二列になって踊る。現在もサンパウロ州やミナスジェライス州、マットグロッソ州など主に内陸部の地方に残っている。この曲が果たしてカテレテのリズムと言っていいかは私にも分かりませんが、陽気な踊りを思わせるような曲である。ハ長調、A-B-A'-C-C'-A-B-A'-コーダの形式。全曲、左手3-3-2のリズムの伴奏にのってシンコペーション混じりの跳ねるような旋律が奏される。Bはト長調、Cはへ長調になる。1890
1891
1894
- Batuque, Tango característico バトゥーキ、性格的なタンゴ
メスキータの作品の中では比較的演奏される機会の多い曲。と言ってもこの曲を原曲のピアノ独奏で録音したCDは現在、下山静香さんの演奏のみで、むしろブラジルを代表するようなバンドリンやギター奏者、ショーロ楽団など〜ジャコー・ド・バンドリン、トゥリビオ・サントス、カメラータ・カリオカら〜によるアレンジの録音がある。バトゥーキとはアフリカ由来の踊りや音楽の一つで、伝統的には歌と打楽器による音楽にのって集団で踊られる。この曲はアフロ=ブラジル音楽を思わせるようなリズム、色彩的な転調、場面毎の表情の豊かな変化など聴きどころたっぷりで、私個人的にはメスキータのピアノ曲の中でも最高傑作かなと思っています。変ホ長調、前奏-A-A-B-A-C-C'-A-A-B-A-コーダの形式。前奏で現れるリズムは密林の奥から太鼓の音が聞こえてくるような様である。そのリズムがAでも左手オスティナートで続き、それにのった右手旋律はクレッシェンド・デクレッシェンドを伴いながらも最初は小さく、やがて左手伴奏が和音になると共に旋律もffになる対比が何とも面白い。Bは2小節毎に転調を繰り返し、色彩的である。Cは変イ長調になり、軽やかに跳ねるような16分音符の旋律の明るい響きがAと対称的でいい感じ。1895
- Água do vintém, Polka ヴィンテムの水、ポルカ
- A vaidosa, Tocata ヴァイドーザ(自惚れた女)、トッカータ
ハ長調、A-A-B-B-A-A'-C-C'-A-A-B-B-A-A'形式。Aの旋律は左手オクターブで、合いの手の右手和音も相俟って大仰な響きだ。Bは対称的に高音部スタッカートが愛嬌ある。CとC'はpとf・ffが掛け合いのように交互に現れる。1896
- Dolce ricordo, Intermezzo 甘い思い出、間奏曲
メスキータのピアノ曲は殆どがポルカ、クァドリーリャ、タンゴ、ワルツといった舞曲であるが、間奏曲と副題の付いたこの曲はヨーロッパ・ロマン派のピアノ曲ど真ん中のような抒情的かつ感傷的な曲で、本当にメスキータの作品?ー本当ならばメスキータの作風の幅を示すような珍しい作品である。前奏-A-A-B-A-A-C-A-B-A-A-コーダの形式。Aは沈み込んでいくような左手バスの下降音階にのって悲しげな右手旋律が静かに奏される。Bは囁き合うような二声の旋律が奏され、ハ長調〜ホ長調と転調する。Cは小鳥が囀るような3連16分音符混じりの旋律がハ長調〜変イ長調と転調しつつ奏される。1899
作曲年代不詳
- A baiana, Polka-catêretê バイーアの女、ポルカ・カテレテ
バイーアとはブラジル北東部にあるバイーア州を指すか、または州都サルヴァドールを指す。サルヴァドール(バイーア)は1763年まではブラジル植民地の首府であった。ト長調、前奏-A-B-A-C-C'-D-C'-D-C'-E-A-B'-A"形式。前奏は調性がはっきりしない。Aは分散和音の部分と3-3-2の軽快なリズムの部分が交互に現れる。Bはニ長調、Cはハ長調、Dは転調が多い。- As mil e uma noites, Quadrilha 千夜一夜、クァドリーリャ
- A valsa, Recitativo ワルツ、レチタティーヴォ
- A visão (Na barca veloz), Recitativo 眼差し、レチタティーヴォ
- Le pont des soupirs, Quadrilha ため息橋、クァドリーリャ
- Ma philosophie, Recitativo 我が哲学、レチタティーヴォ
- Minha estrela, Recitativo 私の星、レチタティーヴォ
- Quadrilha heroica 英雄クァドリーリャ
- Roberto o diabo, Quadrilha 悪魔のロベール、クァドリーリャ
- Sempre, Recitativo いつでも、レチタティーヴォ
- Souvenir de Bahia, Polka バイーアの思い出、ポルカ
ニ短調、前奏-A-A-B-A-C-C-D-C-D-C-A-B-A-コーダの形式。Aはゆったりとしたテンポで悩ましげな旋律が奏される。Bはニ長調になる。Cはへ長調になり、スタッカート重音の旋律が可憐な雰囲気。Dはハ長調になる。- Vila Isabel, Quadrilha ヴィラ・イザベル、クァドリーリャ
- Vitória, Polka militar 勝利、軍隊ポルカ