Moisés Moleiroのピアノ曲リスト
1923
- Ligia リヒア
1931
- Sonatina No.1 ソナチネ第1番
- Sonatina No.2 ソナチネ第2番
- Sonatina No.3 ソナチネ第3番
- Sonatina No.4 ソナチネ第4番
- Sonatina No.5 ソナチネ第5番
- Suite infantil 子どもの組曲
- El manantial 泉
- El gárgaro うがい
- La rueda 車
- El amolador 丸砥石
- La cuna 揺りかご
- Los pájaros 鳥
1932
- Coplas y vals venezolano ベネズエラのコプラとワルツ
1934
- La fuente 噴水
- Tocata en Do Mayor トッカータハ長調
- Tocata en Si Menor トッカータロ短調
- Tocata en Do Sostenido Menor トッカータ嬰ハ短調
1937
1940
- 226 ejercicios para piano ピアノのための226の練習曲集
1942
- Sonata al estilo clásico 古風なスタイルのソナタ
- Allegro moderato
- Adagio
- Rondo-Allegro
1944
1953
1962
- Dos miniaturas 2つのミニアチュール
- La moza de la herrería 鍛冶屋の少女
- El herrero 鍛冶屋
作曲年代不詳
- Pequeña suite para piano ピアノのための小さな組曲
- Aire de danza 踊りの歌
- Cuento infantil (Fuga) 子供の物語(フーガ)
- El carrillón カリヨン
- Tiempo de valse ワルツのテンポで
- Canción de cuna 子守歌
- Una peluca empolvada 埃だらけのかつら
- El señor de la peluca かつらをした紳士
- El clavecín クラヴサン
- Preludio y fuga 前奏曲とフーガ
- Playera 海岸
Moisés Moleiroのピアノ曲の解説
1931
- Sonatina No.1 ソナチネ第1番
モレイロは6曲のピアノのためのソナチネを書いたが、6曲目は現在失われている。どれも単一楽章で3~4分の曲である。古典的な和声と活発な曲調はスカルラッティを思わせる。ソナチネ第1番はイ短調、A-A-B-B形式。速い3連符がずっと続くタランテラ風の曲。Bの後半はイ長調に転調する。この曲は後に当時有名なハープ奏者Nicanor Zabaletaによりハープに編曲されている。- Sonatina No.2 ソナチネ第2番
ハ長調、A-A-B-B形式。3/8拍子の快活な曲で、所々ベネズエラのワルツなどで使われるシンコペーションの出てきて、差し詰め「ベネズエラ風スカルラッティ」と呼びたい。- Sonatina No.3 ソナチネ第3番
ニ長調、A-B-A-B-C-A-C-A形式。上へ下へと舞うような16分音符の旋律が優雅。BとCはイ長調になる。- Sonatina No.4 ソナチネ第4番
ト短調、A-A-B-B形式。静かで上品な雰囲気の曲。Aの最後はト長調になる。Bはニ短調だが、これも最後はニ長調になる。- Sonatina No.5 ソナチネ第5番
イ短調、A-A-B-B形式。威勢のいい曲調で、トリラーや3連16分音符といった「こぶし」のきいた旋律はスペイン風。Bはロ短調→ホ長調→ホ短調→ホ長調と転調が目まぐるしい。- Suite infantil 子どもの組曲
自由な感じでいくつかの小品を書いた組曲。第1曲El manantialはト長調、三部形式。コンコンと静かに湧き出る泉の清らかな水を描いたような曲。第4曲El amoladorは嬰ヘ長調。のどかな雰囲気の曲だが、中間部で砥石?が回るように16分音符がアッチェレランドする。第5曲La cunaは嬰ヘ長調。静かな子守歌が奏される。第6曲Los pájarosはト長調。前打音だらけの曲で、あちこちからチュンチュンという小鳥の泣き声が聞こえてきそう。このSuite infantilは後年、Inocente Carreñoにより管弦楽曲に編曲され、ベネズエラ交響楽団により1946年に初演されている。
- El manantial 泉
- El gárgaro うがい
- La rueda 車
- El amolador 丸砥石
- La cuna 揺りかご
- Los pájaros 鳥
1934
- La fuente 噴水
噴水が時折パーっと噴くのを描写したような爽やかな曲。ホ長調で始まるが、イ長調→嬰ハ長調→嬰ヘ長調→と転調する度に噴水の水の色彩が変わっていくよう。- Tocata en Do Mayor トッカータハ長調
A-A'-B-A"-A-A'-B-A"の形式。16分音符の分散和音がずっと無窮動に続く曲。- Tocata en Si Menor トッカータロ短調
A-A-B-A'-B-A'形式。左手と右手が交互にスタッカートを打ち合う曲。- Tocata en Do Sostenido Menor トッカータ嬰ハ短調
A-B-A-B形式。3連符の軽快な旋律がスカルラッティっぽい。中間部以降、左手のベースの旋律と右手の3連符の中から現れる旋律が2~3小節ごとに交互に聴こえるのが面白い。この曲はAntonio Lauroによりギターに編曲されている。1937
- Danza salvaje (Estudio de concierto) 原始人の舞曲(演奏会用練習曲)
ホ長調の曲だが、冒頭の左手の和音はラ-ド-ミ(Am)で多調で書かれているのが斬新。軽快なスケルツォ風の曲。1942
- Sonata al estilo clásico 古風なスタイルのソナタ
古典派様式のソナタ。第1楽章Allegro Moderatoはイ長調で、モーツァルト風。第2楽章Adagioはニ長調で、ベートーベンの後期ピアノソナタの緩徐楽章を思わせる。第3楽章Rondo-Allegroはイ長調で、やっぱりベートーベン風。
- Allegro moderato
- Adagio
- Rondo-Allegro
1944
- Serenata al estilo español スペインのスタイルによるセレナーデ
イ長調、A-B-C-A'-B'形式。ギターでバロック曲を弾いているような作品だが、Cのレシタティーボの所はちょっとフラメンコ風。- Joropo ホローポ
モレイロの名刺代わりと言って良い(といってもベネズエラ以外では殆ど知られていないが)代表作。ホローポとはベネスエラとコロンビアの草原音楽で、速くて激しい8分6拍子と4分3拍子の混合リズムから成る。モレイロのホローポは概ね3部形式の速い曲で、19小節の序奏に引き続いて始まるニ短調の右手旋律は3拍子と2拍子が目まぐるしく変り、左手は16分音符の分散和音が延々と奏される。途中から旋律は1オクターブ高くなりニ長調で演奏されるところは華やか。中間部はヘ長調と成る。和音はFとC7の繰り返しだけで、跳ねるような旋律が変奏されていく。再現部はニ短調、ニ長調が繰り返される。以上、構成も単純で、和音もほとんどI度とIV度とV度だけの曲なのだが、休むことのなく全曲続く左手の16分音符の伴奏と右手の躍動的な旋律が何とも見事で、「何百人もが踊っている光景を目の当りにしたような」と評されるのがもっともな素晴らしい曲。演奏時間わずか3分だが、全265小節を乱れずに左手16分音符を弾き切るのは技術的に結構大変。1953
- Estampas del Llano 平原の印象
モレイロの作品で一曲としては最長で、演奏時間は約9分を要する。Llanoとは「平原」を意味するが、特にベネズエラからコロンビアにまたがるオリノコ川流域一帯の大平原のことを指す言葉である。全体的にはいくつものエピソードが万華鏡にように現れる物語風の曲で、Llanoの色々な光景を音に託して語っているよう。素朴でいい感じの曲には違いないが、9分の大作としては構成や和音に今一つひねりがなく、冗長に聴こえなくもない。モレイロの娘Carmencita MoleiroのCDによると曲は4つの部分から成るとのこと。跳ねるような2つの主題(Galopes)が弾かれた後、嬰ト短調、Lento、3拍子の悲しい旋律(Tonada)~変イ長調、Andantino、2拍子の子守歌のような優しい旋律と嬰ト短調の似た雰囲気の旋律(Caminos del alto llano)と続く。最後に2つの主題がもう一度繰り返され(galope final)終わる。1962
- Dos miniaturas 2つのミニアチュール
モレイロの後期の作品は印象主義の影響も感じられる。第1曲La moza de la herreríaは嬰ヘ長調。冒頭の4小節の不協和音は独特。その後は優しい旋律が続く。第2曲El herreroは強いて言えば嬰ト短調。鍛冶屋がカチカチと仕事をする光景が描写されている。
- La moza de la herrería 鍛冶屋の少女
- El herrero 鍛冶屋
作曲年代不詳
- Pequeña suite para piano ピアノのための小さな組曲
1953年前後の作曲と思われるこの組曲は、モレイロの娘のCarmencitaに献呈されている。(Carmencita Moleiroは現在ピアニストとして活躍中で、父のピアノ曲のCDを出している。)この組曲は全体的にモレイロお得意のスカルラッティ風やバッハ風の曲が多いが、その中にもモレイロらしい素朴なロマンチシズムが見え隠れしていて興味深い。第1曲Aire de danzaはハ短調。バッハ風の旋律で始まるが、その後は田舎の踊りのよう。第2曲Cuento infantil (Fuga)はハ長調。素朴な旋律による三声のフーガ。第3曲El carrillónはヘ長調。カリヨンとは教会や塔などにある演奏用の多数の鐘のこと。3拍子の落ち着いた曲。第4曲Tiempo de valseは、ニ短調の悲しいワルツで、途中に2小節だけニ長調になるのが変わっている。第5曲Canción de cunaはト短調、A-B-A'-B形式。Aは悲しい物語を静かに語っているよう。その後に6小節現れるBのト長調の部分は「よい子よ、寝んねしなー」と語りかけるよう。第6曲Una peluca empolvadaと第7曲El señor de la pelucaは、二声のフーガ。「かつら」ってバッハへのオマージュを示しているのかしら。第8曲El clavecínはニ短調、A-B-A'形式。3拍子の軽快な曲でスカルラッティ風。
- Aire de danza 踊りの歌
- Cuento infantil (Fuga) 子供の物語(フーガ)
- El carrillón カリヨン
- Tiempo de valse ワルツのテンポで
- Canción de cuna 子守歌
- Una peluca empolvada 埃だらけのかつら
- El señor de la peluca かつらをした紳士
- El clavecín クラヴサン
- Preludio y fuga 前奏曲とフーガ
嬰ハ短調。軽快な3拍子の前奏曲と、少し落ち着いた三声のフーガからなる。- Playera 海岸
妻Carmenに献呈。変ロ長調、A-B-C-D-B'-C-A形式。左手は静かに打ち寄せる波のようなアルペジオ、右手は似たようなモチーフが何度も現れる単調な曲だが、転調が頻繁で、その度に音の色彩の変化が感じられる。