Henrique Oswaldのピアノ曲リスト
オズワルドのピアノ曲は、作曲年が不詳のものが多いので、原則的に作品番号順に載せました。但し、全く別々の曲に同じ作品番号が付いていたり(例えばピアノ曲集《アルバム、作品36》と《ヴァイオリンソナタ、作品36》の両作品に彼は作品36と付けている)の混乱があります。また、彼のピアノ曲は下記の通り「組曲(曲集)」が多いのですが、作曲年代がバラバラのピース曲を後になって寄せ集めて出版しているケースが多いので、作品番号順=作曲年代順とは言えません。彼の長い外国生活を反映して、曲名がイタリア語、フランス語、ポルトガル語と様々なのが興味深いです。
- Polka, Op. 1 ポルカ、作品1
- Macchiette (12 piccoli pezzi), Op. 2 下書き(12の小品集)、作品2
- Le campane della sera 夕べの鐘
- Scherzo スケルツォ
- Valzer ワルツ
- Canzonetta カンツォネッタ
- Ninna-Nanna 子守歌
- Marcia 行進曲
- Romaza ロマンス
- Seconda gavotta ガボット第2番
- Pastorale 牧歌
- Minuetto メヌエット
- Sarabanda サラバンド
- La caccia 狩り
- Pagine d'album (Fogli d'album, 6 piccoli pezzi), Op. 3 アルバムのページ(アルバムの一葉、6つの小品集)、作品3
- Preludio 前奏曲
- Sognando 夢想
- Impromptu 即興曲
- In hamac ハンモックで
- Romanza ロマンス
- Scherzo スケルツォ
- Six morceaux, Op. 4 6つの作品集、作品4
- Valse ワルツ
- Rêverie 夢想
- Menuet メヌエット
- Berceuse 子守歌
- Barcarolle 舟歌
- Impromptu 即興曲
- Deux nocturnes, Op. 6 2つの夜想曲、作品6
- Nocturne 夜想曲
- Nocturne 夜想曲
- Bluettes, Dix petits morceaux, Op. 6 小品集、10の小品集、作品6
- Paquerette ヒナ菊(後にSete Miniaturas, Op. 16, N.º 1. Confidênciaとして出版)
- Myosothis 勿忘草(後にSete Miniaturas, Op. 16, N.º 2. Mazurkaとして出版)
- Bruyère ヒース(後にSete Miniaturas, Op. 16, N.º 6. Saudadeとして出版)
- Perce-neige 待雪草(後にSete Miniaturas, Op. 16, N.º 4. Ingenuidadeとして出版)
- Coquelicot ヒナゲシ
- Muguet スズラン(後にSete Miniaturas, Op. 16, N.º 3. Travêssaとして出版)
- Bluet 矢車菊
- Pervenche ツルニチニチソウ
- Bouton d'or ミヤマキンポウゲ
- Violette 菫(後にSete Miniaturas, Op. 16, N.º 5. Doce afflicçãoとして出版)
- Trois romances, Op. 7 3つのロマンス、作品7
- em mi maior ホ長調
- em mi bemol maior 変ホ長調
- em fa menor ヘ短調
- Trois morceaux, Op. 8 3つの作品集、作品8
- Valse ワルツ
- Polonaise ポロネーズ
- Tarentelle タランテラ
- Menuet, Op. 9 n. 2 メヌエット、作品9-2
- Deux valses caprice, Op. 11 2つのワルツ-カプリース
- Quatre morceaux, Op. 12 4つの作品集、作品12
- Sérénade セレナーデ
- Valse impromptu 即興的ワルツ
- Berceuse 子守歌
- Tarentelle タランテラ
- Seis peças, Op. 14 6つの作品集、作品14
- Berceuse 子守歌
- Mazurka マズルカ
- Tarantella タランテラ
- Barcarola 舟歌
- Noturno 夜想曲
- Scherzo スケルツォ
- Sete miniaturas, Op. 16 7つのミニアチュール、作品16
- Confidência 打ち明け(Bluettes, N.º 1. Paqueretteと同作品)
- Mazurka マズルカ(Bluettes, N.º 2. Myosothisと同作品)
- Travêssa いたずら(Bluettes, N.º 6. Muguetと同作品)
- Ingenuidade 無邪気(Bluettes, N.º 4. Perce-neigeと同作品)
- Doce afflicção 甘い悲しみ(Bluettes, N.º 10. Violetteと同作品)
- Saudade サウダージ(Bluettes, N.º 3. Bruyèreと同作品)
- Capricho カプリーチョ
- Impromptu, Op. 19 即興曲、作品19
- Feuilles d'Album, Op. 20 アルバムの一葉、作品20
- Inquiétude 心配
- Chansonette シャンソネト
- Feux follets 鬼火
- Désir ardent 熱烈な想い
- Trois valses, Op. 22 3つのワルツ集、作品22
- Allegro Vivace
- Moderato
- Lento
- Trois morceaux, Op. 23 3つの作品集、作品23
- Menuet メヌエット
- Romance (1898) ロマンス
- Valse ワルツ
- Deux valses, Op. 25 2つのワルツ集、作品25
- Vivace
- Moderato
- Album, Op. 32 アルバム、作品32
- Romance ロマンス
- Valse ワルツ
- Sérénade セレナード
- Menuet メヌエット
- Album, Op. 33 アルバム、作品33
- Sur la plage 浜辺にて
- Idyle 田園詩
- Pierrot ピエロ
- Polonaise, Op. 34, no. 1 (1901) ポロネーズ 作品34-1
- Album, Op. 36 アルバム、作品36
- Bébé s'endort 子守歌
- Pierrot se meurt 瀕死のピエロ
- Chauve-Sourris コウモリ
- Trois études, Op. 42 (1910) 3つの練習曲集、作品42
- em ré bemol maior 変ニ長調
- em dó menor ハ短調
- em mi maior ホ長調
- 2ª barcarola (1872) 舟歌第2番
- Berceuse (À mia carissima madre) (1886) 子守歌(愛する我が母へ)
- Berceuse orientale 東洋の子守歌
- En Nacelle 小舟にて
- Étude pour la main gauche (1921) 左手のための練習曲
- Gavotta (1883) ガボット
- Il Neige!... (1902) 雪が降る・・・
- L'adieu a mon Amie G. L. (Introduction - Thema, Andante - Variazione) 我が友人G. L. への別れの言葉(序曲ー主題、アンダンテ、変奏曲)
- Marcha religiosa (1873) 宗教的な行進曲
- Scherzo-Étude (Estudo-Scherzo) (1902) スケルツォー練習曲
- Scherzo-Mazurka para piano a 6 mãos 6手1台ピアノのためのスケルツォーマズルカ
- Sérénade セレナーデ
- Sérénade grise 灰色のセレナーデ
- Serenatella (1903) 小さなセレナーデ
- Souvenir: polka 思い出、ポルカ
- Tempo di gavotta ガボットのテンポで
- Tempo di valsa (1930) ワルツのテンポで
- Trois romances sans paroles 3つの歌詞のないロマンス (1898)
- Bonheur 幸福
- Agitato 動揺
- La houle 波のうねり
- Un rêve 夢
- Valse lente (1910?) ゆるやかなワルツ
- Variações sobre um thema de Barrozo Netto (1919) バホッゾ・ネットの主題による変奏曲
- Estudo (Obra Posthuma) 練習曲(遺作)
- Folha d'Album (Obra Posthuma) アルバムの一葉(遺作)
- Gavotta - Triste (Obras Posthuma) ガボット〜悲歌(遺作)
- Primeira marcha, Segunda marcha (Obra Posthuma) 行進曲第1番、第2番(遺作)
- Mazurka (Obra Posthuma) マズルカ(遺作)
- Pequena marcha - Valsa (Obras Posthuma) 小さな行進曲~ワルツ(遺作)
- Scherzando (Obra Posthuma) スケルツァンド(遺作)
- Valsa lenta (Obra Posthuma) ゆるやかなワルツ(遺作)
Henrique Oswaldのピアノ曲の解説
- Macchiette (12 piccoli pezzi), Op. 2 下書き(12の小品集)、作品2
1878年から1883年にかけて作曲されたとされる。オスワルドの中後期の作品に比べると未だ曲の音作りが単純であるが、この頃既に、オズワルドがロマン派作曲家としてのある程度の伎倆を会得していることが窺える作品である。作品中にブラジル風味は全くない。
- Le campane della sera 夕べの鐘
ニ長調、20小節の短い曲。鐘の音を思わせる4分音符ラ音が繰り返され、それに重なって8分音符の旋律が静かに奏される(下記の楽譜)。この頃オズワルドが住んでいたイタリアの、夕暮れの町中の静かな光景が目に浮かぶような美しい作品です。
Macchiette (12 piccoli pezzi), Op. 2, Nº 1 Le campane della sera、1~9小節、G. Venturiniより引用- Scherzo スケルツォ
ロ短調、A-B-A'形式。3連16分音符の単音がずっと続く曲。最後はピカルディー終止になる。- Valzer ワルツ
ト長調、A-B-B-A'形式。楽譜の冒頭にValzer lentoと記されている通り、落ち着いた雰囲気の、シンコペーションの旋律のワルツが奏される。Bはホ短調になる。- Canzonetta カンツォネッタ
変ホ長調、A-B-A'形式。3連符混じりの穏やかな旋律が歌うように奏される。この曲は《Romance sans paroles》という曲名で「1878年6月25日」と記されたオズワルドの自筆譜の同じ曲(但しホ長調)があるとのこと。- Ninna-Nanna 子守歌
変イ長調、A-B-A'形式。左手オスティナートの伴奏にのって、右手六度重音の旋律が静かに奏される。Bは、Aと同じ旋律がハ短調〜ハ長調に移調されて夢見心地の雰囲気。- Marcia 行進曲
ホ長調、A-B-A形式。行進曲と言っても軽いスタッカートとトリルの音色は、子どもの行進の雰囲気。Bはハ長調で、「トランペットのように Quasi trombe」と記された左手旋律が勇ましい。- Romaza ロマンス
イ短調、A-B-A-コーダの形式。「Un poco agitato」と楽譜に記された、急き立てられるような上行音型の感傷的な旋律が両手ユニゾンで奏される。Bはハ長調で、ちょっと落ち着いた雰囲気に。Aが再現された後のコーダは、イ長調でBの旋律が回想されて終わる。- Seconda gavotta ガボット第2番
嬰ヘ短調、A-B-A'形式。バロック風の作品で、前打音混じりの旋律は愛らしい。Bはニ長調になる。- Pastorale 牧歌
変ト長調、A-B-A形式。牧童の歌声のような旋律が二声のカノンで奏される。Bは変ロ長調〜変ニ長調でAの旋律が変形して現れ、続いてイ長調でスタッカートの浮き立つような音型が奏され、田舎の踊りの光景のよう。- Minuetto メヌエット
イ長調、A-A-B-B形式。旋律は4分音符スタッカートと8分音符スラーの対比が溌剌とした曲。Bでは、Aの旋律が一音音高を上げて(和音も変えて)左手で奏されるのが凝っている。- Sarabanda サラバンド
ロ短調、A-A-B-A'-B-A'形式。哀愁を帯びた旋律が静かに奏される。- La caccia 狩り
ニ長調、A-B-A形式。勇ましい雰囲気の曲で、冒頭の♪|♩♪♩♪♩♪♩♪| のリズムは狩猟ホルンの音を思わせる。Bは変ロ長調になり、少し落ち着いた雰囲気で、左手に旋律が現れる。- Pagine d'album (Fogli d'album, 6 piccoli pezzi), Op. 3 アルバムのページ(アルバムの一葉、6つの小品集)、作品3
1885年頃の作曲と思われる。オズワルドのこの組曲を聴くと、彼はブラジル生まれとは言え、16歳よりずっとヨーロッパに住んでいた彼の音楽世界は完全にヨーロッパだな~と思わせるような、典型的ロマン派らしい作品である。
- Preludio 前奏曲
嬰ヘ短調、A-B-A'形式。1分弱ほどの短い曲で、ショパンのスケルツォ第1番を思わせる急速な両手交互のアルペジオが駆け抜ける。- Sognando 夢想
嬰ヘ長調、A-B-A'形式。シューマン風の後打ちのリズムにのって抒情的な旋律が奏される。中間部はイ長調から転調を繰り返す。- Impromptu 即興曲
ニ長調、A-B-A'形式。軽やかに跳ねるような旋律が奏される。中間部は滑らかな旋律が上へ下へと舞うように奏される。- In hamac ハンモックで
嬰ハ短調、A-B-A'-コーダの形式。気怠い旋律が静かに歌われ、ギターかハープを思わせるアルペジオ和音が纏わり付く。中間部Bは一転して変ニ長調となり、長七の和音やナポリのII度の甘い響きがハンモックに揺られて微睡むよう。- Romanza ロマンス
ト長調、A-B-A'-コーダの形式。この曲も後打ちのリズムにのった旋律が抒情的。Bはロ短調になる。- Scherzo スケルツォ
嬰ハ短調、A-B-A'-C-D-C'-A-B-A' の形式。Prestoで始まるAは両手交互連打が華やか。Bは16分音符アルペジオが両手で奏されるーこれをppで軽やかに弾くのは難しい。続く中間部TrioはCは変ニ長調、Dはイ長調で、落ち着いた雰囲気。- Six morceaux, Op. 4 6つの作品集、作品4
1887年頃の作曲と思われる。斬新な和音進行や転調など、オズワルドの作曲技法の上達が窺える作品揃いである。
- Valse ワルツ
ニ長調、A-A'-B-A'-C-D-C'-A'形式。前打音混じりの音や、下に上にと舞うような8分音符の旋律が優雅な雰囲気。Bはロ短調、Cはト短調、Dは嬰ヘ短調になる。- Rêverie 夢想
変ニ長調、三部形式。ハープを思わせる3連符伴奏にのって穏やかな旋律が奏される。冒頭はナポリの六度で始まり、聴き手に調性が定まらないような和音進行を続け6小節目でやっとI度が現れる、という凝った書法だ(下記の楽譜)。中間部は変ロ短調になる。
Six morceaux, Op. 4, Nº 2 Rêverie、1~8小節、G. Venturiniより引用- Menuet メヌエット
嬰ト短調、A-B-A-C-A-B-A形式。8分音符スタッカートが可愛らしい雰囲気の曲。中間部Cはホ長調になる。- Berceuse 子守歌
ニ長調、A-A'-B-A'形式。ppで奏される六度重音の穏やかな旋律が微睡みを誘うような感じ。Bは16小節だが、ニ短調〜ヘ短調〜変ニ長調〜イ短調〜ヘ長調〜と目まぐるしく転調していくのが何とも色彩的な響きだ(下記の楽譜)。
Six morceaux, Op. 4, Nº 4 Berceuse、23〜38小節、G. Venturiniより引用- Barcarolle 舟歌
嬰ヘ短調、A-B-A'-C-A-コーダ形式。船乗りがもの悲しい歌を歌うような旋律が三度重音で奏される。Cはヘ長調で、少しテンポを速めて郷愁漂う歌になる。Aが再現された後のコーダは、Cの旋律が嬰ヘ長調で短く回想される。- Impromptu 即興曲
嬰ハ短調、A-B-A'形式。短調ながら活発な曲。Bはホ長調になり、流れるような16分音符が無窮動である。- Deux nocturnes, Op. 6 2つの夜想曲、作品6
- Nocturne 夜想曲
1889年頃の作曲。変イ長調、A-A'-B-A" 形式。ゆったりと旋律が歌われるが、ハープを思わせるアルペジオの和音がしばしば減七の和音になって、翳りを落とすような響きだ。Bはヘ短調で、暗雲立ちこめるような旋律が現れる。- Nocturne 夜想曲
ニ長調、前奏-A-B-C-A'-コーダの形式。後打ちの伴奏にのった旋律がシューマン風のとてもロマンティックな曲。中間部は夜想曲らしからぬ熱情的。この曲はオズワルド自身により管弦楽曲にも編曲された。- Bluettes, Dix petits morceaux, Op. 6 小品集、10の小品集、作品6
1887-1888年に作曲。各曲には花の名前が付けられている。全10曲の《Bluettes》として存在するのは自筆譜のみで出版はされなかったが、後年に第1、2、3、4、6、10番は《7つのミニアチュール Sete Miniaturas、作品16》として曲名が変えられて出版された。
- Paquerette ヒナ菊(後にSete Miniaturas, Op. 16, N.º 1. Confidênciaとして出版)
ニ長調、A-B-A'形式。静かに語りかけるような雰囲気の曲。- Myosothis 勿忘草(後にSete Miniaturas, Op. 16, N.º 2. Mazurkaとして出版)
ロ短調、A-B-A-B-A形式。マズルカのリズムの曲だが、ミとラが♯になるのが何かジプシー音楽みたい。- Bruyère ヒース(後にSete Miniaturas, Op. 16, N.º 6. Saudadeとして出版)
この曲集の中でも最も趣深い曲に感じます。変ホ短調、A-B-A形式。舟歌風の曲。Aは中音部の呟くような旋律は哀愁が漂い、Bは変ホ長調になり夢見るような雰囲気になる。- Perce-neige 待雪草(後にSete Miniaturas, Op. 16, N.º 4. Ingenuidadeとして出版)
ホ短調、A-A-A'形式。中音部に悲しい歌が奏される曲。- Coquelicot ヒナゲシ
イ短調、A-A-B-A'-B-A'形式。ポルカ風の曲。Bの旋律やA'の伴奏に現れる短2度重音の響きが特徴的。- Muguet スズラン(後にSete Miniaturas, Op. 16, N.º 3. Travêssaとして出版)
嬰ヘ短調、A-B-A'形式。速いテンポの踊りのような曲。- Bluet 矢車菊
変イ長調、A-A'-B-A-A'形式。付点混じりの旋律が愛嬌ある。Bは変ニ短調になる。- Pervenche ツルニチニチソウ
変ニ長調、A-B-A形式。穏やかな旋律と、控えめな和音が落ち着いた雰囲気の曲。変ロ短調になる。- Bouton d'or ミヤマキンポウゲ
ニ短調、A-B-A'形式。タランテラ風の跳ねるような旋律の曲。- Violette 菫(後にSete Miniaturas, Op. 16, N.º 5. Doce afflicçãoとして出版)
ト長調、A-A'-A'-コーダの形式。左手中音部にトリルが無窮動で続き、その上で3連符混じりの旋律が現れる。練習曲のようで難技巧である。- Trois romances, Op. 7 3つのロマンス、作品7
- em mi maior ホ長調
中音部の3連符の伴奏にのって抒情的な旋律が流れる。- em mi bemol maior 変ホ長調
3連符の伴奏にのった旋律は穏やかだが、和声はト短調やハ短調になったり戻ったりと落ち着かない雰囲気。- em fa menor ヘ短調
三部形式。陰うつな旋律が左手に現れる。中間部は変イ長調になる。- Deux valses caprice, Op. 11 2つのワルツ-カプリース
第1番は変ニ長調、前奏-A-B-A'-C-C'-D-A"-コーダの形式。楽譜にVivaceと速度記号が記されており、急速で華やか、技巧的な曲である。突風が吹き抜けるような両手アルペジオの前奏に引き続き、優雅なA、ホ長調で両手オクターブ和音が派手なB、変ニ長調で華やかな舞踏会を思わせるC、再現部への経過句のD、と息つく暇もなく奏される。- Seis peças, Op. 14 6つの作品集、作品14
- Berceuse 子守歌
変ト長調、三部形式。ちょっと悲しげな旋律の子守歌で、中声部の対旋律が揺りかごのよう。再現部へ戻る辺りの和音変化が美しい。- Mazurka マズルカ
嬰ヘ短調、A-B-A'-C-A形式。陰うつな雰囲気の曲。Cはニ長調になり、ちょっと活気がでる。- Tarantella タランテラ
ロ短調、A-B-A'-C-D-C-A-B-A'-コーダの形式。リストなどの大家の作ったタランテラに比べると音が薄いが、それでも全6曲の中では一番華やかな曲。両手オクターブの前奏に引き続き、6/8拍子のリズムが無窮動に続く。C-D-Cはト長調になる。私の所蔵するこの曲の楽譜は(ブラジルではなく)イタリアのRicordi社1964年印刷のもので、オズワルドの没後も以前はヨーロッパでもある程度弾かれていた曲だったのだろうか。- Barcarola 舟歌
変ロ短調、A-A'-B-A形式。右手アルペジオの伴奏の下で、悲しい曲調の舟歌の旋律が左手に奏される。Bは変ニ長調で、旋律と伴奏が左右入れ替わる。- Noturno 夜想曲
ロ長調、A-B-A-コーダの形式。夢見るような美しい旋律の曲で、フォーレを思わせる雰囲気。Bはニ長調になる。- Scherzo スケルツォ
ヘ短調、A-B-A-C-A-B-コーダの形式。力強く、やや重たいスケルツォ。Cはト長調になる。- Sete miniaturas, Op. 16 7つのミニアチュール、作品16
この組曲の第1番から第6番までは、1887-1888年作曲の上記の未出版の曲集《小品集 Bluettes》より6曲を選び、曲名を変えて出版されたもの。第7番〈カプリーチョ Capricho〉のみが新たな書き下ろしの曲である。
- Confidência 打ち明け(Bluettes, N.º 1. Paqueretteと同作品)
- Mazurka マズルカ(Bluettes, N.º 2. Myosothisと同作品)
- Travêssa いたずら(Bluettes, N.º 6. Muguetと同作品)
- Ingenuidade 無邪気(Bluettes, N.º 4. Perce-neigeと同作品)
- Doce afflicção 甘い悲しみ(Bluettes, N.º 10. Violetteと同作品)
- Saudade サウダージ(Bluettes, N.º 3. Bruyèreと同作品)
- Capricho カプリーチョ
ロ短調、A-B-A形式。楽譜には「Tempo di polacca」と記されていて、ポロネーズ風の勇ましい曲。Bは嬰ヘ長調になる。- Impromptu, Op. 19 即興曲、作品19
変ニ長調、A-B-A'-C-A-B-A'-コーダの形式。Aは2/4拍子で右手は16分音符が疾走する一方、左手はワルツのリズムとヘミオラが面白い(下記の楽譜)。Bでは16分音符は左手に受け継がれ、ニ長調に転調して、ワルツのリズムが急に崩れだしてシンコペーションなるーとドラマチックな展開だ。中間部Cはイ長調で、左手16分音符トリルが無窮動に奏される。
Impromptu, Op. 19、1~10小節、E. Bevilacqua & C.より引用- Feuilles d'Album, Op. 20 アルバムの一葉、作品20
題名からしてロマン派の匂いがする組曲。
- Inquiétude 心配
嬰ハ短調、A-B-A'形式。シューマンを重くしたような曲。- Chansonette シャンソネト
変ニ長調、A-A-B-A形式。穏やかな旋律の下で静かに奏される伴奏はハープの演奏のようで優しい。- Feux follets 鬼火
変ロ短調、A-B-A-A-B-A形式。32分音符と16分音符の音型が飛び跳ねるように奏されるのが鬼火なんだろうが、やや重ったるい曲。- Désir ardent 熱烈な想い
ロ短調、A-B-A-B-A-コーダの形式。熱情的な曲だが、和音やオクターブが16分音符で連なり重い雰囲気。- Trois morceaux, Op. 23 3つの作品集、作品23
- Menuet メヌエット
ニ長調、三部形式。曲名通りの優雅な曲。中間部はロ短調になる。- Romance (1898) ロマンス
変ト長調。中声部でゆっくり奏される旋律の上下を優しいアルペジオが包み、夢の中を彷徨っているような美しい曲。- Valse ワルツ
ニ長調、A-B-A-C-D-C-A-B-A-コーダの形式。最初はゆったりしているが、中間部のC-D-Cはト長調で、アルペジオの和音などがちょっと華やか。- Album, Op. 32 アルバム、作品32
- Romance ロマンス
イ長調、A-A-B-A-コーダの形式。冒頭Aは、情感たっぷりの旋律が対旋律を絡ませながら四声〜五声のポリフォニックで奏される。Bは情熱的な旋律が一気にffまで盛り上がり、また静かなAに戻る。- Valse ワルツ
変ニ長調、A-A'-B-A'-コーダの形式。Vivaceの速いテンポで颯爽と踊るようなワルツが奏される。Bは嬰ヘ短調になる。- Sérénade セレナード
ニ長調、A-B-A'形式。シューマンのピアノ曲を思わせる感じの曲。4分音符の和音にのって穏やかな旋律が流れる。Bはロ短調になる。- Menuet メヌエット
変ニ長調、A-A-B-A'-B-A'-C-A-B-A'形式。スタッカートが溌剌としたメヌエットが奏される。左手和音はしばしば十度や十一度になるので弾きにくい。Cは変ト長調になり、一転してスラーで奏される流れるような旋律となる。- Album, Op. 33 アルバム、作品33
- Sur la plage 浜辺にて
変ニ長調、A-B-A'形式。穏やかに繰り返すモチーフは、静かに寄せては返すさざ波のような感じ。Bは嬰ハ短調で、一転して嵐で荒れる海のような左手モチーフと右手3連16分音符になる。- Idyle 田園詩
変イ長調、A-A'-B-A"形式。平和そうなのどかなな曲で、A'-B-A"は二声の旋律が絡み合うのがいい感じ。- Pierrot ピエロ
変ニ長調、A-B-A'形式。ポルカ風の曲。3連16分音符やスタッカートのおどけた所がピエロらしい。Bはイ長調になる。- Polonaise, Op. 34, no. 1 (1901) ポロネーズ 作品34-1
ホ長調、A-A-B-C-A'-D-E-D-A-B-C-A'形式。左手伴奏は鍵盤上で広い跳躍しながらのポロネーズのリズムを刻み、右手旋律はオクターブで華やかな響き。BはAの続きの雰囲気で華やか、Cは嬰ハ短調で少し思索的。D-E-Dは中間部にあたる部分。Dはハ長調で、旋律が16分音符が重音で駆け上ったりして派手。Eはイ短調でやや陰うつ。全体的に華やかな響きの作品だが、繰り返しが多いのが冗長に思えます。- Album, Op. 36 アルバム、作品36
- Bébé s'endort 子守歌
ニ長調、A-B-A'形式。ほぼ全曲pp~pで奏される繊細な子守歌。子守歌らしいオスティナートの左手伴奏、透明感のある音色、旋律の一部にソ♯の音が現れる(則ちリディア旋法になる)所など、その一音で夢の世界へ行ってしまいそうな絶妙な音使いだ。
Bébé s'endort, Op. 36, no. 1、1~11小節、E. Bevilacqua & C.より引用- Pierrot se meurt 瀕死のピエロ
変イ短調、A-A'形式。楽譜には「ポルカ(とても遅く)POLKA (très lente)」と記されているように、ポルカのリズムが葬送行進曲さながらゆっくりと刻まれ、悲愴的な旋律が奏される。- Chauve-Sourris コウモリ
ロ短調、A-B-C-A形式。16分音符アルペジオが全曲通して続く曲。強いて言えばロ短調だが、アルペジオはペンタトニックや全音音階が多用される印象派風の響きで、陰のある響きは暗闇を飛び回るようコウモリを上手く表現している。- Trois études, Op. 42 (1910) 3つの練習曲集、作品42
3曲共、ショパンの練習曲集の中に入れても遜色がないと言っていい難技巧な曲で、和音展開などもオズワルドは実はかなりの作曲技法を持っていたことが分かる作品だ。3曲とも三部形式から成る。
- em ré bemol maior 変ニ長調
右手3連8分音符の細かい分散和音の下に、チェロを思わせるため息の出るような旋律が奏される。右手分散和音の中に対旋律が見え隠れするのが絶妙。中間部は左手旋律はオクターブになったり、分散和音が左手に移ったりして、劇的な和音進行でfffまで盛り上がる。3連8分音符分散和音を続けつつ、それに加えて両手を駆使して2声の旋律が掛け合う様は見事である(下記の楽譜)。
Trois études, N. 1、53~56小節、Editorial Mangione S. A. より引用- em dó menor ハ短調
この曲は自筆譜と出版譜が存在するが、主旋律の音形が自筆譜で8分音符や3連8分音符の所が、出版譜では16分音符+8分音符+16分音符のシンコペーションになっていたりと、所々で異なる。右手5連16分音符のアルペジオの下に、やはり中音部で旋律が奏される。この旋律は自然短音階で、(出版譜では)リズムもシンコペーションが混じっている点などブラジルっぽい響きがしないでもない。中間部は左手はオクターブ、右手のアルペジオは3オクターブを行き来して派手に盛り上がる。- em mi maior ホ長調
32分音符アルペジオの上下で旋律が奏される。中間部はアルペジオが両手になったり、幅広いアルペジオが現れたりと派手である。- Berceuse (À mia carissima madre) (1886) 子守歌(愛する我が母へ)
自筆と思われる手稿譜には「1886年9月22日」と記されている。変ニ長調、A-B-A形式。揺かごの動きを思わせるようなゆったりとした左手オスティナートにのって、静かに歌うような旋律が現れる。Bは8小節のみで、へ長調〜変イ長調になる。- En Nacelle 小舟にて
A-B-A'形式。小舟がゆっくりと霧の中を進むような雰囲気の曲。左手16分音符アルペジオと右手高音の旋律が織りなす繊細な和音は、ヘ短調とも変イ長調ともはっきりしない調性で、印象主義風。オスワルドにしては斬新な響きの曲である。- Étude pour la main gauche (1921) 左手のための練習曲
ブラジルの作曲家のアウベルト・ネポムセノの娘Sigrid Nepomucenoは、生まれつき右手がなかった。そのSigridのために作曲した作品。変ホ短調、A-B-C-A形式。4分音符和音による旋律が重々しく奏される。冒頭は旋律と伴奏の音域がかなり近かったり、一部重なったりと、これを左手のみで上手く旋律を際立たせるのは難しそう。Bは変ト長調になり、三度または六度重音の伴奏にのって穏やかな旋律が奏され、Cはその旋律がffの高音部和音と低音部オクターブで荘厳に鳴り響く。- Il Neige!... (1902) 雪が降る・・・
3分少々の短い小品。1902年にフランスの新聞社 "Le Figaro" が主催した作曲コンクールで一等賞をとったオズワルドの最高傑作かな。A-B-A'形式。冒頭は変ホ短調のppの悲しい曲調で、右手の3連8分音符、中声部の4分音符、左手の8分音符がそれぞれ違う速さで降っていく雪を描写しているようで絶妙。中間部Bの変ト長調は夜空に高く雪が煌めくように3連符が高音に舞い上がり、希望を持たせる。しかし間もなく曲は最初の悲しい変ホ短調に戻り、最後は沈むように静かに終わる。とても感傷的な曲で私は大好き~。
新聞 "Le Figaro"、1902年11月8日の紙面に掲載された楽譜- Scherzo-Étude (Estudo-Scherzo) (1902) スケルツォー練習曲
変ロ短調、A-B-A-コーダの形式。両手交互で奏される16分音符リズムが途切れる事なく続く曲。Bは変ホ短調〜変ニ長調と転調する。- Sérénade grise 灰色のセレナーデ
A-B-A-コーダの形式。強いて言えば嬰ハ短調だが、II7(但しベースは属音のソ♯)の和音などが多用され、I度は殆ど現れないので、陰うつな「灰色」の雰囲気のセレナーデである。- Tempo di valsa (1930) ワルツのテンポで
ハ長調。1分弱の短い、可愛らしいワルツ。- Trois romances sans paroles 3つの歌詞のないロマンス (1898)
- Bonheur 幸福
ロ長調。左手の穏やかな8分音符オスティナート伴奏と、右手中音部の後打ちの和音にのって優しい旋律が流れる。- Agitato 動揺
へ長調、A-B-A-コーダの形式。旋律の上下に伴奏が覆うように奏される。Bはイ短調〜ニ短調になる。- La houle 波のうねり
変イ長調、A-B-A形式。穏やかな旋律の下で、右手〜左手と受け継がれるアルペジオの伴奏が優しく鳴る。Bはハ短調になる。- Un rêve 夢
作曲年代は不明だが、おそらく中〜後期の作品であろう。印象派にも通ずるような調性をぼかした幻想的な響きは、オズワルドの作曲技法の円熟を思わせる小品である。強いて言えば変ハ長調、A-A'-B-A形式。中音部に旋律がpp奏され、それに長調とも短調ともつかぬ3連符の伴奏が絡むようにpppで奏される。Bはト長調になり、右手和音の旋律、左手アルペジオが静かに鳴り、夢の中で天上を彷徨うような心地である。- Valse lente (1910?) ゆるやかなワルツ
変ト長調、A-B-A'-C-A'形式。《雪が降る・・・ Il Neige!...》と並ぶオズワルドの代表作。題名通りのゆったりとしたワルツで、そこはかとなく哀愁が漂う。Cはニ長調になり、高音部に繊細な旋律が奏され、夢見るよう。- Variações sobre um thema de Barrozo Netto (1919) バホッゾ・ネットの主題による変奏曲
バホッゾ・ネット作曲のピアノ曲集《小さなスケッチ Esbocetos》の第7曲〈変奏曲のための主題 Thema para variações〉を元に作られた変奏曲である。ホ長調。冒頭の主題Andanteはバホッゾ・ネットの作で、だいたいが付点2分音符から成る落ち着いた旋律が流れる。第1変奏は、主題に8分音符と3連8分音符の和音が装飾のように絡み付き繊細な響きだ。第2変奏は、8分音符トリルが主題旋律に絡み付く。第3変奏Allegro moltoは、主題旋律の下で8分音符スタッカートが無窮動に鳴り響く。第4変奏はVivaceは、16分音符連打混じりの音型が軽快に続いて練習曲風。第5変奏Allegroは、両手オクターブの音型が上がったり下がったりして勇ましい。第6変奏Vivaceは、32分音符の上行音階が右手・左手にと吹きすさぶように奏されて華やかだ。第7変奏Andanteはホ短調になり、主題は低音部で奏され、高音部に16分音符対旋律が響き荘厳な雰囲気。最後にホ長調に調性が戻り静かに終わる。- Estudo (Obra Posthuma) 練習曲(遺作)
変ホ短調、A-B-A'形式。嵐が吹き抜けるような、両手交互打鍵による16分音符3連符が急速な曲。中間部Bは変ト長調を始めに転調していく。- Gavotta - Triste (Obras Posthuma) ガボット〜悲歌(遺作)
ガボットはイ短調、A-A-B-B形式。二声で書かれた古風な曲。トリステは変ロ短調、A-B-A'形式。左手4分音符和音の伴奏にのって、右手に寂しげな旋律が奏される。- Primeira marcha, Segunda marcha (Obra Posthuma) 行進曲第1番、第2番(遺作)
2曲共1分足らずの短い曲である。行進曲第1番はハ長調、A-B形式。勇ましい旋律と対旋律が絡んで奏される。行進曲第2番はハ長調、A-A-B-A'形式。旋律はしばしばスタッカートで元気に満ちた曲。- Pequena marcha - Valsa (Obras Posthuma) 小さな行進曲~ワルツ(遺作)
行進曲、ワルツ共に右手左手は単音、ハ長調の初心者向けの短い曲。- Valsa lenta (Obra Posthuma) ゆるやかなワルツ(遺作)
上述の《ゆるやかなワルツ Valse lente》(変ト長調)と紛らわしいが別の作品で、遺作として出版された。ヘ短調、A-B-A形式。左手単音の伴奏にのって寂しげな旋律が奏される。Bは、変ニ長調ながらV7が主和音に戻らないまま続くような響き。