Astor Piazzollaのピアノ曲リスト
1943
- Suite para piano, Op. 2 ピアノのための組曲、作品2
- Preludio 前奏曲
- Siciliana シチリアーナ
- Toccata トッカータ
1944
- 4 piezas breves, Op. 3 4つの小品集、作品3
- Paisaje 風景
- Titeres 曲芸
- Pastoral パストラール
- Toccata トッカータ
1945
- Sonata Nr. 1, Op. 7 ソナタ第1番、作品7
- Presto プレスト
- Lento, Coral con Variaciones レント、コラールと変奏
- Allegro, Rondo アレグロ、ロンド
1949
1950
- Suite Nr.2 para piano ピアノのための組曲第2番
- Nocturno 夜想曲
- Miniatura ミニチュア
- Vals ワルツ
- Danza Criolla クリオージョの踊り
1953
1962?
1987
- Trois préludes pour piano 3つの前奏曲集
- Leijia's Game, Tango Prelude pour piano レイジアのゲーム、ピアノのためのタンゴ前奏曲
- Flora's Game, Milonga Prelude pour piano フローラのゲーム、ピアノのためのミロンガ前奏曲
- Sunny's Game, Valse Prelude pour piano サニーのゲーム、ピアノのためのワルツ前奏曲
1988
Astor Piazzollaのピアノ曲の解説
1943
- Suite para piano, Op. 2 ピアノのための組曲、作品2
全体的にドビュッシーの影響を感じさせる曲集で、3曲とも調号からは一応嬰ハ短調なのが陰鬱な雰囲気を醸し出している。第1曲PreludioはA-B-A-C-A-C'形式。ドビュッシーのアラベスクをちょっと連想させる3連符が続く音型だが、和音はくすんだ響き。第2曲SicilianaはA-B-A'形式。静かで醒めた雰囲気の中で、寂しさを感じさせる曲。第3曲Toccataは花火のようなアルペジオに続いてヘミオラ混じりの旋律(?)が続き、最後は旋律がfffのオクターブになって派手に奏され、グリッサンドの応酬で終わる。
- Preludio 前奏曲
- Siciliana シチリアーナ
- Toccata トッカータ
1944
- 4 piezas breves, Op. 3 4つの小品集、作品3
この曲集では、殆ど調性はなくなっている。第1曲Paisajeは、高音部と低音部に離れた響きが神秘的な静かな曲。第2曲Titeresは、ヨタヨタとした滑稽な曲芸師を描写しているみたい。32分音符が舞い上がる最後の部分は絶妙。第3曲Pastoralは、オクターブ~10度の重たいfの和音の部分と柔らかいpのアルペジオが対称的な曲。第4曲Toccataは、4小節のアルペジオの前奏に続き、重々しくグロテスクな主題が現れ、後半は破壊的な両手連打の64分音符になる。
- Paisaje 風景
- Titeres 曲芸
- Pastoral パストラール
- Toccata トッカータ
1945
- Sonata Nr. 1, Op. 7 ソナタ第1番、作品7
ピアソラのピアノ曲の中で最もアバンギャルドな作品だろう、ハッキリ言って不協和音の固まりの曲である。第1楽章Prestoは、"misterioso"と楽譜に記された4/4拍子・低音部の旋律の第1主題と、3/4拍子・高音部の第2主題が現れ、展開部で両主題が変奏され、最後に第1主題と(五度低く奏される)第2主題が再現される~要するに構成は以外と古典的。第2楽章Lento, Coral con Variacionesは、荘厳なコラールの主題に引き続き8つの変奏が奏される。第3楽章Allegro, Rondoは、A-B-A-C-A形式。Aはちょっとグロテスクな旋律のポルカ風。Bは16分音符の滑らかな曲調。CはMeno mossoとゆっくりになり、変ニ長調の抒情的な旋律が流れる。
- Presto プレスト
- Lento, Coral con Variaciones レント、コラールと変奏
- Allegro, Rondo アレグロ、ロンド
1949
- Tardecita pampeana 大草原の夕暮れ
この曲は素敵!。3分弱の地味な小品だが、私個人的にはピアソラのピアノ曲の中で一番大好き。この知られざる曲を紹介したいが為にピアソラのページを作ったようなものです。曲は3/4拍子、Lento、ト長調。ビダーラのゆったりした左手のpのオスティナートにのって、ギターのアルペジオを思わせる旋律が美しく奏される。正にパンパの大草原に沈む夕暮れが目に浮かんでくるよう。(私としては、ちょっと夕靄の光景を連想するかな。)時々現れる4小節のビダーラの旋律がだんだん上昇し、33小節目にfで歌われるところは感動的。その後はまた静かにビダーラのリズムが流れる。最後の終わり方も絶妙。1950
- Suite Nr.2 para piano ピアノのための組曲第2番
第1曲Nocturnoは、右手の2オクターブに亘るC#が宇宙的な響きの曲。第2曲Miniaturaは、アクセントがきつい騒々しい曲。第3曲Valsは、不協和音ながら柔らかな響きの曲。第4曲Danza Criollaは、当時のピアソラの師であるヒナステラが好んで用いた「マランボ」のリズムを使った荒々しい曲。6/8拍子だが、時々2/8拍子が挟まれリズムが狂うところが面白い。
- Nocturno 夜想曲
- Miniatura ミニチュア
- Vals ワルツ
- Danza Criolla クリオージョの踊り
1953
- Preludio "1953" 前奏曲"1953"
3部形式。冒頭は不協和音のくすんだ、けだるい雰囲気。中間部はその雰囲気を引きずりながらも、左手にゆっくりした、ややぎこちない足取りのタンゴのステップが刻まれる。1962?
- Valsisimo バルシシモ
ピアソラのピアノ曲の中で、最も親しみやすい曲だろう。変ホ長調、3/4拍子のワルツ風。ゆったりと、お洒落ににテンポルバートしながら弾きたい。中間部は、ピアソラお得意の“3連符半音階的進行”のモチーフが現れる。- Tango ultimo タンゴ・ウルティモ
ピアソラらしい、くすんだ響きの曲。但し楽譜は単純で左手などドンドンドンドンとベースを刻むだけで、本当にピアノ向けに考えて作った曲かは疑問。1987
- Trois préludes pour piano 3つの前奏曲集
ピアソラのピアノ曲の集大成と呼べる晩年の作品。ピアノの書法は今迄の作品とはかなり異なっていて個性的であり、楽譜を眺めているとバンドネオンの音が聴こえてきそう。言わば幻のバンドネオンをピアノ曲で表現しているような曲である。彼の初期のピアノ作品とは全く異なり、どこを聴いてもピアソラ臭ムンムンである。
- Leijia's Game, Tango Prelude pour piano レイジアのゲーム、ピアノのためのタンゴ前奏曲
全曲、小節線がなくレシタティーボのような曲。突風が吹いたようなアルペジオの短い前奏に続き、バンドネオンが啜り泣いているようなモチーフが、和音を代えながら繰り返される。レ-シ-ファ#-ソ--ファ#-ソ-ファ#-ソ-ファ#-ラ-ソ-ファ#-ミというモチーフ全体にスラーがかかっているが、その中にまた別のスラーだのテヌート記号が入って、この単旋律を如何に音楽的に弾くかがピアニストの腕の見せ所、というかピアノで表現するのはとても難しい。中間部に嵐のようなユニゾンの旋律がなだれ込んだ後、また曲は静かになり例のモチーフが寂しく奏される。- Flora's Game, Milonga Prelude pour piano フローラのゲーム、ピアノのためのミロンガ前奏曲
3曲中最も規模の大きい曲で聴きごたえあり。左手のゆったりとしたミロンガのリズムにのって悲し気な和音が段々厚くなっていく。この主題が一段落すると、"Libero, espressivo" と楽譜に記された変ロ短調の、これまた悲しい旋律が歌われる。次に "Vivace piu mosso" のバンドネオンの和音速弾き?を思わせるピアニスティックでもある部分が盛り上がり、sffの両手和音連打でクライマックスになる。終盤は "Libero, espressivo" の旋律が悲しく静かに繰り返され、pppで終わる。- Sunny's Game, Valse Prelude pour piano サニーのゲーム、ピアノのためのワルツ前奏曲
1962年作曲のValsisimoと同じ旋律の曲だが伴奏はこちらの方がはるかに凝っていて、小節内の和音の移り変わりが速い。美しい和音が続いてるな~と思っていると最後は見る見るうちに密集和音の連打となり、最後はsfffのオクターブ連打で突然終わる。"Trois préludes pour piano" はピアソラのピアノ曲の最高傑作だけあって何人ものピアニストがレコーディングをしており、中にはいい演奏もある。とは言えピアソラのタンゴの自作自演を知った耳で聴くと、何か私の理想のピアソラの世界にピッタリとこないのだ。やはりピアソラの作品は、ピアソラ自身のバンドネオン演奏と切っても切れないもので、(クレーメルやヨーヨーマの演奏もそうだが)何か他の音楽家の演奏はしっくりこないような気がする。となるとピアソラ自身の演奏の無い "Trois préludes pour piano" は、私にとって永遠に理想の演奏は現れないのかな~?。1988
- Adiós Nonino "Tango - Rhapsody" アディオス・ノニーノ(タンゴ・ラプソディー)
アディオス・ノニーノはピアソラの作品の中でも最も有名な曲。ピアソラはパリ留学中の1955年に "Nonino" という父ビセンテ(愛称ノニーノ)に捧げた作品を作っている。その後、1959年に亡くなった父を回想して "Nonino" の出だしを用いたアディオス・ノニーノをニューヨークで作曲。1961年1月にピアソラ五重奏団(バンドネオン、ヴァイオリン、ピアノ、コントラバス、エレキギター)により初めて公式録音された。更に1969年再結成されたピアソラ五重奏団の為に新編曲されたアディオス・ノニーノでは、新たに起用されたピアニストのダンテ・アミカレリの為に、ピアソラは2分半ほどの美しい冒頭のカデンツァを作った。そして年月は流れ、1988年にピアソラはこのカデンツァを含んだアディオス・ノニーノのピアノ独奏を編曲。それがこの曲で、楽譜は2000年に全音楽譜出版社の「ラテン・アメリカ・ピアノ曲選アルゼンチン編」に収められている。このピアノバージョンの目玉は何と言っても、あの美しいカデンツァが譜面になったこと。その後の本編?の部分もピアソラ五重奏団の雰囲気を上手く留めた編曲で、技巧的にも結構難しくて本格的。
さて、この全音から出ているこの貴重な楽譜、ピアソラ自身の五重奏団の録音と聴き比べる迄もなく記符上、和声などにかなりおかしい所が多数見受けられます。私自身、趣味で作曲をするので判る事なのですが、作曲者自身の自筆譜だから作曲者の思い浮かべた音楽に一番近いということは必ずしも当てはまらず、しばしば作曲者の自筆譜というのは(もちろん人にもよりますが)乱雑で、結構うっかりミスが多いんですね。そういった楽譜を音楽的に修正するのが“校訂”という作業なのですが、この楽譜にはそれが十分になされていないです。時には敢えて校訂の手を加えないまま自筆譜をそのまま写植した楽譜というのも勿論売られていることがあり、それはそれで資料的価値は大変高いこともあるのですが、あくまでそれは研究目的であって実用目的ではないことがあります。この楽譜のままで演奏すると、聴いていて変な音の多い演奏になってしまっています。ということで、この全音楽譜でどうしても直したい主な所を下に列挙しました。他にも、1969年の録音と楽譜を突き合せて見ると直したい所が多数あるのですが割愛します。この素晴らしいピアソラ自身によるピアノバージョンを彼の思い浮かべたであろうハーモニーとスピード感ある演奏で甦らせたいという思いで、私なりに数十ケ所を校訂し、一部自分の編曲もちょっとだけ加えて、とある発表会で演奏しました。アマチュアのお聞き苦しい演奏ですが、もし興味がございましたら下記をクリックしてお聴き下さい。
- 98ページ
- 3小節目、冒頭の音はAではなくA♭。
- 4小節目、3拍目の右手のG-Cの下にD♭の音が欲しい。
- 6小節目、4拍目の右手のF♯EはEDだと思う。
- 100ページ
- 最下段1小節目、3拍目の左手和音はG♭-C-D♭-Fとなってるが、G♭でなく絶対G(ナチュラル)だ。
- 最下段2小節目、3拍目の頭には低音部にGの2分音符が是非欲しい(アミカレリは弾いている)。ついでにこの小節の最後の左手の和音はF-B-Eとなっているが、和音の次の小節への流れからしてEではなくE♭だと思う。
- 101ページ
- 最上段1小節目、4拍目の前半右手和音はB♭-E-G-B♭となってるが、EはE♭だと思う。(その方がピアソラらしい和音進行。)
- 102ページ
- 4段目3小節目、冒頭の左手の和音がC-Fだけでは空虚な感じ。C-F-Aとすれば右手のBとも相俟っていい響き。
- 103ページ
- 最下段1小節目、左手のE♭は、いくらピアソラでも全部E(ナチュラル)の方が自然。
- 109ページ
- 2段目2小節目、右手の最初がD-A♭-Fとなってるが、旋律の流れから言ってD-A♭-Dでいいんじゃないかな。
Astor Piazzolla: Adiós Nonino "Tango - Rhapsody" アストル・ピアソラ:アディオス・ノニーノ(タンゴ・ラプソディー)