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José Pomarについて
ホセ・ポマール・アリアーガ José Pomar Arriaga は1880年6月18日、メキシコシティに生まれた。彼の父はギターを弾く音楽家だったらしく、また母はピアノが弾けた。ポマールは子どもの時からピアノを習い、12歳の時からは国立音楽院でグスタボ・カンパ Gustavo E. Campa らにピアノや作曲を師事したが、独学の部分が多かったとのこと。
1902年から1904年まではEscuela Normal de Méxicoのソルフェージュと合唱の教師を勤めた。
1904年にDolores Luz Aguilar Ortizと結婚し、4人の子供をもうけた。
1908年にイダルゴ州パチューカに移り住み、ピアノ教師をして生計を立てた。またこの頃にポマール六重奏団を結成し、自作のピアノ曲や他の作曲家の管弦楽曲を室内楽曲に編曲しては演奏していた。1911年にはパチューカにあるInstituto Científico y Literarioで音楽を教えた。この頃、彼は《ピアノ協奏曲》(1912) や《ピアノソナタ嬰ヘ短調》(1913) など、いくつかの彼を特徴付けるような作品を作っている。1913年頃には、当時のメキシコ革命に身を投じ、革命軍に参加している。戦闘では膝に銃弾を受け負傷したとのこと。
1915年、ポマールはメキシコシティに戻る。国立芸術院音楽部門で働き、プエブラやグアナファトの音楽院設立を行った。
1918年、ポマールはグアナファトに移り、グアナフアト州立交響楽団を設立し、指揮をした。1926年(または1927年)からはグアダラハラに住み、音楽を教えた。
1928年、メキシコシティに戻ったポマールは、同年にカルロス・チャベスが院長に就任した国立音楽院で、音楽分析やソルフェージュを教えた。彼は今までの国立音楽院の組織・音楽の旧態依然とした考え方に反抗し、ポマールと考えを同じくする音楽家達と、雑誌 "MÚSICA" を編集した。作曲家のレブエルタスとは、特に思想的に共鳴していたと(ポマールがメキシコ共産党に入党したとする文献もある)。1936年、労働者が専門的音楽教育を受ける機会を設けるために夜間音楽学校 Escuela Nocturna de Música(現在のEscuela Superior de Música del INBA)がメキシコシティに作られた。1940年にポマールは国立音楽院を辞め(共産主義的活動のため同音楽院より追放されたとする文献もあり)、夜間音楽学校で晩年まで教鞭をとった。また、革命作家芸術家同盟 Liga de Escritores y Artistas Revolucionarios (LEAR) の創立に加わった。また多くの学生、労働者、農民の合唱団を指導した。
晩年は夜間音楽学校での教鞭と、趣味の鉄道模型をして過ごした。1961年9月13日、メキシコシティにて亡くなった。
ポマールの作品には、《ピアノ協奏曲》(1912初版-1924改訂版)、バレー曲《Ocho horas》(1931)、管弦楽曲《ウアパンゴ Huapango》(1930)、打楽器と管楽器のための《Preludio y fuga rítmicos》(1932)、交響曲《América》(アルゼンチン、ペルー、メキシコ、アメリカ合衆国の四楽章から成る、1945-1946) などがある。歌曲や合唱曲もあり、特に1930年代にはいくつもの革命歌を作曲しているのが特徴的である。またメキシコ民謡の合唱曲やピアノ曲への編曲も多数書いたらしい(ピアノ曲への編曲は15曲が残されている)。
ポマールのピアノ曲を聴いてみると、一言でいってこの作曲家はメキシコの中では「異端児」である。19世紀生まれの他のメキシコ作曲家と同様に、メキシコ・ロマンティシズムの流れを感じさせる小品がいくつかある一方、《パチューカの古いサンフランシスコ修道院》の斬新な題材の処理、《ピアノソナタ嬰ヘ短調》の長大なソナタなど、1910年代のメキシコの他の作曲家には見られないような和声や個性的な発想に満ちたピアノ曲がある。これらの作品はどこから湧き出てきたのであろうか?、不思議である。
José Pomarのピアノ曲リストとその解説
1898
- El juglar 旅芸人
ポマールのピアノ曲の中で、彼の生前に出版された唯一の作品である。彼の作曲の師であるグスタボ・カンパに献呈された。変ロ長調、前奏-A-B-A'-コーダの形式。変ロ短調のレシタティーボ風の前奏は旅芸人が広場で客呼びの笛を吹いているような感じで、続いて変ロ長調で旅芸人が得意芸を見せるような軽快な音楽が奏される。Bは田舎の素朴な祭りの光景を描いたような、ほのぼのとした音楽が流れる。愉快な音楽ながら一抹の哀愁を全体的に感じさせる(特にコーダの部分)は芸人人生の哀歓を漂わせているような気がする。ドビュッシーの初期のピアノ曲を思わせる音使いだが、ポマール18歳にしてなかなかの作曲の腕前である。1899-1902
- La quimera 幻想
ドイツロマン派、特にシューマンの影響を強く感じさせる組曲。ただし、病から死、そして死後までを題名にしているのは意味深長で、ポマールはどういう意図でこの曲を作ったのだろうか?。
- Visión (1899) 幻影
ニ長調、牧歌的なのどかな曲。- Enferma (1899) 病に
変ホ長調、A-A形式。抒情的だが旋律が中音部のオクターブでやや重々しい。- Realidad (1899) 現実
ロ長調、A-B-A-B'形式。穏やかな曲。- La duda (1900) 疑惑
ト長調、A-B-A'-コーダの形式。静かに語りかけるような旋律で、伴奏和音やバスの半音階進行に翳りを感じさせる響きだ。- Post morten (1902) 死後
ロ長調、A-B-A-B-A形式。左手低音オスティナートにのった和音の旋律が暗い雰囲気。- Entierro (1902) 葬式
嬰ハ短調、前奏-A-A'の形式。沈みこむようなな陰うつな旋律の曲。A'の後半では第3曲〈Realidad〉の冒頭の旋律が断片的に現れる。- Envío (1902) 送り
変イ短調、悲愴的な短い曲。1901?
- Dos danzas 2つのダンサ
2曲共にA-B形式の短い曲で、概ねハバネラのリズムであり、キューバのコントラダンサ(ダンサ)がメキシコ風になった曲と言えよう。
- En re menor ニ短調
前半はやや古風な感じ。後半は一時へ長調になり、3連符混じりの旋律が艶かしい。- En do mayor ハ長調
前半は右手の3連8分音符に加え、左手伴奏がしばしば3連4分音符になり、やや複雑なリズム。1902
- Hoja de álbum No. 1 アルバムの一葉第1番
ポマールはアルバムの一葉を4曲作っている。いずれも長調のサロン風ワルツである。第1番はト長調、A-B-A'形式。抒情的なワルツ。- Serenata セレナーデ
1903
- Hoja de álbum No. 2 アルバムの一葉第2番
ハ長調、A-B-A'形式。跳ねるような旋律が愛らしいワルツ。- Primera mazurka (Mazurka burlesca) マズルカ第1番(悪戯っぽいマズルカ)
イ短調、A-B-A'-C-A"形式。Aはマズルカらしい付点の連続の旋律、Bはイ短調からイ長調に転調する。Cはヘ長調になり、ちょっとシューマンっぽい抒情的な旋律が美しい。1904
- Hoja de álbum No. 3 アルバムの一葉第3番
ニ長調、A-B-A'形式。流れるような優雅なワルツだが、全体的に調性が不安定なのが独特の雰囲気。- Hoja de álbum No. 4 アルバムの一葉第4番
ト長調、A-B-A'形式。Bはト短調になる。1905
- Segunda mazurka マズルカ第2番
メキシコの先輩作曲家のエルネスト・エロルドゥイに献呈された。ロ短調、A-B-A'-C-D形式。Aは哀愁漂う旋律がしっとりと奏される。Bはニ長調になり、左手オクターブが力強い。Cはロ長調になる。1906
- Preludio en mi bemol mayor 前奏曲変ホ長調
8分音符の旋律が盛り上がっては、また静かになっていく。- Preludio en la mayor 前奏曲イ長調
半音階を下がったり上ったりする気怠い旋律が奏され、徐々に盛り上がって両手オクターブfffとなり、また潮が引くように静かになっていく。1907
- Dos fugas 2つのフーガ
いずれも2分程度のバロック風の曲。第1番変イ長調は二声〜三声の落ち着いた曲。第2番ハ短調は二声〜三声のやや速いテンポの曲。
- en la bemol mayor 変イ長調
- en do menor ハ短調
- Oblación fiel a una memoria ある思い出への忠実な捧げ物
変ト長調。2分弱の短い曲で、あてもなく上行していくような旋律が変奏されつつ3回奏される。- Interludio, En sol bemol mayor 間奏曲変ト長調
上記の《Oblación fiel a una memoria》に後打ちの和音を加えた編曲である。- Preludio en sol mayor (1º) 前奏曲ト長調(第1番)
マヌエル・ポンセに献呈された。A-A'-A-A'-コーダの形式。穏やかなト長調の旋律が奏され、それが段々対旋律を増して音を厚くし、音域を増して盛り上がっては、また消えていく。刻々と色を変えてゆく夕暮れの落陽を見ているような、何とも趣深く美しい作品。1908
- Tercera mazurka マズルカ第3番
嬰ヘ短調、A-B-A-C-A'形式。Aの部分は寂しげな響き。Bはイ長調になる。Cは転調を繰り返し、一応ニ長調に落ち着く。この曲は後に弦楽六重奏にも編曲された。- Cuarta mazurka マズルカ第4番
ニ短調、A-B-A'-C-A形式。一音ずつ下がっていく旋律と対旋律が寂しげ。BとCは四声のポリフォニーになっていて、各声部が複雑な半音階進行をする。Cは変ニ長調になる。1911
- Pieza en sol bemol mayor 小品変ト長調
穏やかな旋律が徐々に音量、音域を増して盛り上がり、また静かになる。1912-1916
- Tres interludios, "Al arrimo de su cariño" 3つの間奏曲「あなたの愛情を支えに」
- En la mayor, Renaciente como la aurora (1912) イ長調、夜明けのような再生
- En sol mayor, Fúlgido como la tarde (1915) ト長調、昼のような輝き
- Enigmático como la noche (1916) 夜のような謎
1912-1919
- El exconvento de San Francisco en Pachuca パチューカの古いサンフランシスコ修道院
パチューカはイダルゴ州の州都で、ポマールは1908年から1915年までそこに住んでいた。彼は、古い修道院の佇まいを元にこの組曲を作ったのであろうが、修道院の光景をただ単に描写したにしては曲の雰囲気がおどろおどろしていて、むしろ修道院の空気から彼が感じ取った霊感を音にしたような、神秘的と言うか、何とも言葉には説明し難い作品である。そのような題材の扱い方や、また和声や半音階進行・全音音階の使用などからも、ポマールのピアノ曲の中で最も音楽的に斬新な作品に思えます。
- El pozo (1919) 井戸
A-B-A'-B'形式。深い井戸の底を連想させる低音部ppで蠢く不協和音と、溜まったエネルギーが噴出するような3連16分音符の上行アルペジオが無気味な雰囲気を醸し出している。Bでは抒情的な落ち着いた旋律が奏される。- El patio (1912) 中庭
第1曲よりattacaで続く。一応ハ短調。左手16分音符にのって、素朴な旋律が流れるが、旋律のレとソが時々♭になる旋法が独特の雰囲気。最後は段々音域が下がって消えるように終る。- Las escaleras (1912) 階段
イ短調、A-B-A'形式。♪♩ ♪♩ ♪♩ ♪♩のちょっと速い上行音型が、階段を上るような感じ。Bはレガートで流れるような旋律だが、転調が頻繁で落ち着かない感じ。最後は8分音符と4分音符が下行音型で、階段を下りるように静かに終る。- Los muros (1912) 壁
重々しい4分音符がポリフォニックに奏され、突然ppで現れる高音のモチーフと対称を成している。調性がぼやけたまま曲は進み、最後にやっと変ホ長調で平安を取り戻したように終る。- Las celdas (1912) 個室
「個室」とは修道院の中の修道士の小さな居室を指すのであろう。ハ短調。組曲の中で唯一活発な、舞曲のような作品で、3/8拍子で低音に現れる旋律は強いて言えば「悪魔の踊り」風。1912-1928
- Bosquejos de escenas infantiles, Suite para piano 子どもの情景の素描、ピアノのための組曲
ポマールの4人の子どものために作られた組曲である。各曲は子どもの遊びなどの日常生活を題材にしていて、無邪気で微笑ましい雰囲気の場面が多い一方、技巧的にも、和音使いなど音楽表現上も中上級向けの曲が多く、子どもが弾くには結構難しいであろう。
- Minué, El envite メヌエット、招待
ト長調、A-A-B-B-A'形式。落ち着いた雰囲気のメヌエット。- Polka, La cajita de música ポルカ、オルゴール
ト長調、A-B-A-C-A形式。全曲両手ともト音記号の高音部で奏される。左手ポルカの伴奏にのって右手にオルゴールのような可愛らしい旋律が奏される。Bはホ短調、Cは変ホ長調になる。- Barcarola, El columpio va y viene 舟歌、ブランコが行ったり来たりする
イ短調、A-B-A'形式。♩ ♪♩ ♪の舟歌の伴奏にのってちょっと寂しげな旋律が静かに奏される。Bはハ長調になり、16分音符音階が上下し、転調を繰り返して魔法のような響き。- Marcha, ¡Armas, apunten, fuego, púm! 行進曲、銃を持って、狙って、撃て、バン!
へ長調、A-B-A'形式。付点音符混じりの勇ましい行進曲。中低音部で和音がffで鳴る場面は銃というよりまるで大砲の音のよう。Bは左手トレモロや右手16分音符分散和音など技巧的。- El tarantela, El trompo タランテラ、こま
ニ短調、A-B-A'形式。こまが回っているような速い3連符の旋律が続く。Bはへ長調になる。- Gavota, Cómo es la muñeca ガボット、どんなお人形
ハ長調、A-B-A'-C-A"形式。Aはスタッカートで奏される愛嬌ある旋律。Cはホ短調になる。A"の最後2小節はイ短調になって終わる。- Danza, La muñeca se duerme en la cuna ダンサ、お人形が揺りかごで眠り込む
ト短調、A-B-A'形式。物悲しい旋律がダンサのリズムにのって静かに奏される。Bは変ロ長調〜変ロ短調になり、ハバネラのリズムになる。- Mazurka, La pelota bota y robata マズルカ、ボールが跳ねていって、盗られてしまった
嬰へ短調、A-B-A'-C-A"形式。右手・左手の交互スタッカートの旋律はボールがポンポンと跳ねて行くような感じ。Cはニ長調になる。- Scherzo, El escondite スケルツォ、かくれんぼ
へ長調、A-A'形式。スタッカートやトリルは子どもが遊んでいる光景を表すようで、全音音階や増三和音が悪戯っぽい雰囲気を出している。- Cake-Walk, del gato 猫のケークウォーク
変ホ長調、A-B-A'-C-A"形式。シンコペーションの旋律はまるで猫が戯けているようで愉快な曲。Cは変イ長調になる。- Vals, Al fin dormidos....... ワルツ、最後に寝付いて・・・
ト長調、A-B-B'-C形式。Aは可憐なワルツが奏される。Bは変ロ長調になり、流れるような旋律と半音階の対旋律が眠気を誘う。Cはト長調に戻るが、音程を下げつつディミヌエンド、リタルダンドして、最後は高音部で和音がpppで鳴って終わる。1913
- Sonata en fa sostenido menor ソナタ嬰ヘ短調
作曲は1913年だが、初演されたのは1928年にグアダラハラにてのこと。全5楽章、演奏時間約20分になるこれだけの壮大なピアノソナタをメキシコで1913年当時に書いた作曲家は他になく、構成力からはポンセやロロンのピアノ曲をはるかに凌駕した力作である。起承転結がはっきりした循環形式の構成、ロマン派風の和声に両手オクターブを多用した重厚な響きなど、ベートーヴェンやブラームスのソナタの影響を感じつつも、他では聴けない独特の雰囲気を放つ作品である。
- Allegro, El presago アレグロ、予兆
嬰ヘ短調、ソナタ形式。第1主題は16分音符のラ-ド♯-ファ♯-ソ♯-ラ-レ-ファ♯-ソ♯-ラというモチーフが嬰ヘ短調→変ロ長調→ト短調と、調を変えながら落ち着きなく繰り返される。半音階進行する左手16分音符伴奏が不安げな雰囲気を増長している。劇的な響きの移行部を経て、次に第2主題がイ長調で現れる。第2主題は穏やかで、旋律は8分音符でド♯-ミ-ラ-シ-ド♯-ミ-ラ-シと、第1主題冒頭のモチーフを用いている。展開部は第1主題冒頭の右手モチーフが終わらないうちに、次の小節で左手にモチーフが現れるの繰り返しー即ちストレッタの形で緊張感を出しつつ盛り上がり、第1主題移行部のモチーフも絡んで来る。再現部は嬰ヘ短調の第1主題、嬰ヘ長調の第2主題が奏され、劇的なコーダで終る。- Moderato, Su mirada en la noche モデラート、夜の貴方の眼差し
前楽章より低音ファ♯の持続音がattacaで続き変ト長調になる。A-A'-A"-A"'形式。舟歌かビダーラ風の静かな左手伴奏にのって、単音の旋律が穏やかに奏され、題名通り夜想曲風である。A'、A"、A"'は最初の2小節はAと同じだが、3小節目以降は旋律はそれぞれ自由に展開し、それぞれの表情の変化が何とも豊かである。A"の展開はffまで盛り上がり、A"'は静かに奏されて終わる。- Lento, Su silueta ante el crepúsculo レント、黄昏れ時の貴方のシルエット
変ニ長調、A-A'-A"形式。オクターブの旋律がゆっくりと、しかし情熱的に歌うように奏される。- Leggiero, Un sueño レッジェーロ、夢
嬰ハ短調、A-B-A'形式。Aはスケルツォ風の軽快な主題が奏される。Bはホ短調、7/4拍子で物語風。A'の最後の部分はピカルディの三度(ド♯-ミ♯-ソ♯)となっていて、これは次の第5楽章(嬰ヘ短調)への準備(ドミナント)ととれよう。- Allegro, El presago cumplido アレグロ、実現した予兆
嬰ヘ短調、ソナタ形式。第1主題は左手16分音符伴奏にのって情熱的な旋律が現れ、第1楽章への回帰を連想させ、それが怒濤のように盛り上がる。第2主題はロ短調で両手オクターブffの応酬が技巧的に奏される。展開部左手に第1楽章の第1主題も現れる。再現部は嬰ヘ短調の第1主題、嬰ヘ長調の第2主題が奏され、コーダで低音3連符が連打されて終わる。1915
- Alma mía de mi grandota
- Balada de Noche Buena クリスマスイブのバラード
メキシコのクリスマスの歌からの2曲を用いた、結構技巧的で華やかなピアノ曲。前半は〈キャンディーとシュガープラムを投げて! ¡Echen (Tiren) Confites y Canelones!〉という歌で、6/8拍子の軽快な旋律が繰り返されつつ変奏される。転調を経て変ホ長調になると、後半は〈幼子イエスの子守歌 Arrulladora del Niño Jésus〉という2/4拍子の歌になり、最初は穏やかに、やがて転調しつつ変奏され、最後はハ長調になって両手オクターブffで力強く奏され、静かなコーダで曲を終える。この曲は後の1918年にポマール自身により《Balada de Navidad》の題名で管弦楽曲にも編曲された。1917
- Pieza en mi mayor 小品ホ長調
1分強の短い曲。3連符混じりの重音で奏される旋律は、メキシコ民謡風に聴こえる。1927-1928
- Oblación a los compositores populares ポピュラー音楽作曲家たちへの捧げ物
- A la memoria de Teófilo Pomar, Tiempo de danza (1927) テオフィロ・ポマールの思い出に、ダンサのテンポで
テオフィロ・ポマール (?-1898) はいくつものダンス曲を作った作曲家で、ホセ・ポマールの叔父。一応変ロ短調、A-B-A'形式。ハバネラのリズムの伴奏にのって歌うような旋律が奏されるが、伴奏の和音や半音階進行の対旋律が複雑な響き。- A la memoria de J. de Jesús Martínez, Tiempo de mazurka (1927) ホセ・デ・ヘスス・マルティネの思い出に、マズルカのテンポで
ホセ・デ・ヘスス・マルティネス (1888-1916) は作曲家・ピアニストで、歌曲やサロン風ピアノ曲を作っている。一応変ホ長調、A-B-A'-C-A"形式。三声〜四声のポリフォニックな作りで、対旋律が半音階進行する複雑な響き。- A la memoria de Salvador Pérez, Tiempo de vals (1928) サルバドール・ペレスの思い出に、ワルツのテンポで
サルバドール・ペレス (1872-1924) は作曲家・ピアニスト。一応変ニ長調だが、調性は不安定で転調が多い。- Tiempo de schottis (1929) ショッティッシュのテンポで
1929
- Aire de mariachi マリアッチの調べ
1934
- Sonatina ソナチネ
2曲通して僅か5分程の短い組曲だが、ポマールのアイデアと作曲技法が詰まった面白い作品。
- Bien rimado 韻を踏んで
新古典主義風の曲。演奏時間2分くらいと短いながらもソナタ形式だ(三部形式であると分析する文献もある)。楽譜に「フォルテでレガートせずに f y desligado」と記された快活なレのミクソリデイア旋法の第1主題が、続いて「レガートで ligado」と記されたロ短調の第2主題が奏される。展開部は第1主題と第2主題が用いられた三声の多重フーガとなり、音価が4倍の拡大フーガの声部も現れたりと結構凝っている。再現部は少し変奏された第1主題、ニ長調の第2主題が奏され終る。- Con aire de danzón ダンソンのリズムで
A-B-A-C-A' 形式。ダンソンとはハバネラが発展したキューバのリズムのことで、ポマールがこの曲を作った頃は、キューバに近いメキシコ東部ではダンソンが流行していたとのこと。Aの部分は二声のインベンション風だが、シンコペーション混じりの旋律はダンソンだ。Aの前半8小節と後半8小節では二声の上下を取り替えただけの繰り返しだが、表情の変化が面白い。Bは一応ニ長調だが、ドビュッシー風の和音を甘くしたようないい響き。Cはニ長調で、これまたキューバの夜を思わせるような甘美な響き。1936
- Contrastes コントラステス
José Pomarのピアノ曲楽譜
Wagner y Levien
- El juglar
Ediciones de la liga de compositores de méxico
下記の楽譜は全てポマールの没後の1981年から1993年にかけて出版された。
- Bosquejos de escenas infantiles
- La quimera
- Oblación a los compositores populares, Oblación fiel a una memoria
- Preludio No. 1 en Sol Mayor (Edición facsimilar)
- Sonatina
- El exconvento de San Francisco en Pachuca
斜字は絶版と思われる楽譜
José Pomarのピアノ曲CD
星の数は、は是非お薦めのCD、は興味を持たれた人にはお薦めのCD、はどうしてもという人にお薦めのCDです。
PRESAGIO Música para piano de José Pomar
Urtext, JBCC 041
- El juglar
- La Quimera
- Primera mazurka en La menor
- Tercera mazurka en Fa# menor
- Sonatina
- Preludio en sol mayor
- El exconvento de San Francisco en Pachuca
- Sonata en Fa# menor "El presagio"
Daniel Noli (pf)
La Obra Integral para Piano de José Pomar
Tempus Clásico, 10155
Disco 1 Juventud y Delirio
- El juglar
- Dos danzas
- La quimera
- Serenata
- Cuatro hojas de álbum en tiempo de vals
- Dos fugas
- Cuatro mazurkas
- Tres preludios
- Oblación. Fiel a una memoria
- Interludio en sol bemol
- Tres interludios "Al arrimo de su cariño"
- Pieza en mi mayor
- Pieza en sol bemol mayor
Disco 2 Éxtasis y Consagración
- El exconvento de San Francisco en Pachuca
- Sonata para piano en fa sostenido menor
- Bosquejos de escenas infantiles, suite para piano
- Balada de Noche Buena
- Oblación a los compositores populares
- Sonatina para piano
2019年の録音。ホセ・ポマールのピアノ曲のほぼ全曲録音の待望のアルバムです。
José Pomarに関する参考文献
- Emilio Casco Centeno. Análisis de la Sonatina para piano de José Pomar. Heterofonía, Número 134-135, 2006.
- Maby Muñoz Hénonin. José Pomar y su música para piano: una aproximación a la obra y al compositor. Tesis, Universidad Nacional Autónoma de México, Facultad de Música 2016.
- Rodrigo Acevedo Traba. La Sonata para piano de José Pomar: contexto y análisis. Tesis, Universidad Nacional Autónoma de México, Facultad de Música 2020.