José Rolónのピアノ曲リスト
1895
- Mazurka (a Mercedes) マズルカ(メルセデスへ)
1903-1905?, 1907?
- Bosquejos, Tres danzas 素描、3つのダンサ
- Coqueta 色っぽい
- Amorosa 愛情深い
- Risueña にこやかな
1908
1910
- Cinq petits morceaux, Op. 3 5つの小品集、作品3
- Historiette 小話
- Träumerei トロイメライ
- Petite Mazurka 小さなマズルカ
- Canzonetta カンツォネッタ
- Menuett メヌエット
1911
- Five pieces for piano (Cinco piezas para piano), Op. 12 ピアノのための5つの作品集、作品12
- Valse chromatique 半音階のワルツ
- Arabesque アラベスク
- Berceuse 子守歌
- Prelude 前奏曲
- Mazurka マズルカ
1914
- Scherzo de los enanos 小人たちのスケルツォ
1919
1922?
- Ensayo 随筆
- Madrigal tapatío タパティオのマドリガーレ
1928(-1929?)
- Tres danzas indígenas mexicanas (Jaliscienses) 3つのメキシコ先住民の舞曲集(ハリスコ風)
- Allegro
- Allegro moderato
- Allegro
1933
- Dos trozos de lectura a primera vista 初見演奏のための2つの小品
1934
1935 (1930?)
1944
- Fuga de tono
- Fuga a cuatro voces 四声のフーガ
- Suite All' Antica 古風な組曲
- Prelude 前奏曲
- Allemande アルマンド
- Bourrée ブレー
- Sarabanda サラバンド
- Gavotte ガボット
- Gigue ジーグ
作曲年代不詳
José Rolónのピアノ曲の解説
1900-1905?, 1907?
- Bosquejos, Tres danzas para piano 素描、3つのダンサ
ロロンがフランスに留学中の彼の恋人Eugenie Bellidoに献呈された。各曲1分少々の短い曲集。3曲とも3連8分音符+8分音符2つのハバネラ(またはダンサ・クバーナ)風のリズムから成り、和声的にも分かりやすく甘い雰囲気の親しみやすい小品である。スペインのアルベニスの初期のピアノ曲に似てるかな。第1曲Coquetaはハ長調→ヘ長調、ちょっと気取った楽しい曲。第2曲Amorosaはニ長調→ト長調、しょっとりと落ち着いた曲。第3曲Risueñaはト長調、ほのぼのと明るい曲。
- Coqueta 色っぽい
- Amorosa 愛情深い
- Risueña にこやかな
1908
- Valse intime 親密なワルツ
変イ長調、A-B-A'-コーダの形式。サロン風の落ち着いたワルツで、ユニゾンの旋律と簡単な和音の伴奏だけだが心暖まるようないい雰囲気。中間部Bは変ニ長調になる。和音進行も粋です。1910
- Cinq petits morceaux, Op. 3 5つの小品集、作品3
シューマンの影響の強いドイツ・ロマン派風の組曲である。
- Historiette 小話
ホ短調、A-B-A'形式。悲しげな昔話がゆっくりと語られるような曲。- Träumerei トロイメライ
ホ短調、A-B-A'-B'-A"形式。主旋律、中声部の対旋律、ベース音がそれぞれ複雑に絡んで経過音や掛留音が作る和声進行はシューマンの〈トロイメライ〉を思わせるが、曲調はぐっと悲しげな雰囲気の曲。- Petite Mazurka 小さなマズルカ
ト短調、前奏-A-B-B'-A'形式。付点リズムが続く旋律は軽快ながら哀愁を帯びている。BとB'は変ホ長調から頻繁に転調する。- Canzonetta カンツォネッタ
イ長調、A-B-A'-コーダの形式。伸びやかで抒情的な旋律が奏される。Bは嬰へ短調になる。- Menuett メヌエット
ホ短調、A-B-A-C-D-C-A-B-A'形式。トリル混じりの旋律がバロックらしい雰囲気のメヌエットだが、和音はロマンティックだ。Cはハ長調、Dはイ短調になる。1911
- Five pieces for piano (Cinco piezas para piano), Op. 12 ピアノのための5つの作品集、作品12
1910年作曲の《Cinq petits morceaux, Op. 3》と同様の5曲から成る組曲だが、こちらは和音の響きがより豊かになり、また技巧的にも難しくなっている。
- Valse chromatique 半音階のワルツ
変ニ長調、A-A-B-A'-C-A-A'形式。半音階的な倚音や後部倚音がたくさん現れる8分音符の旋律が軽快に奏される。Bは変イ長調になり、旋律が和音の塊で奏されて豪華な響き。Cは変ト長調になり、左手アルペジオの優雅な伴奏にのって右手に歌うような旋律が奏される。- Arabesque アラベスク
変ト長調、A-B-A'-コーダの形式。四度〜七度重音の速い8分音符が続く旋律が右手・左手で手分けして奏されるのに加えて、低音部に十度〜十一度の和音が鳴り、軽快に弾くには結構技巧的に難しい曲。- Berceuse 子守歌
イ長調、A-B-A'-コーダの形式。低音オスティナートのリズムにのって子守歌らしい優しい旋律が静かに奏される。Bは嬰へ短調になり、Bの後半の転調は魔法がかかったような美しさ。- Prelude 前奏曲
ハ長調、A-B-A'-コーダの形式。右手旋律および左手伴奏ともに8分音符重音の連続で、ショパンの練習曲集作品10-7を思わせる。この両手重音が動き回って織り成す和音の豊かな響きはロロンのピアノ書法の特徴で、後の《フベンティーノ・ローサスの「波涛を越えて」によるヴァルス・カプリース》では更に複雑になって出現する。Bはト長調に始まり転調していく。- Mazurka マズルカ
イ短調、A-A'-A-B-C-B'-A"形式。Aは半音階混じりの陰気な旋律が現れる。A'は右手旋律に派手なアルペジオ装飾音が加わる。BとCはへ長調になる。1919
- Valse Caprice d'après "Sur les vagues" (Sobre las olas) de Juventino Rosas フベンティーノ・ローサスの「波涛を越えて」によるヴァルス・カプリース、作品14
フベンティーノ・ローサス (1868-1894) の代表作《波涛を越えて Sobre las olas》(1888) は知らぬ人のいない有名な曲だが、この曲はホセ・ロロン編曲によるピアノ用の演奏会用超華麗超絶技巧バージョンである。1919年、まだ若きピアニストのアルトゥール・ルービンシュタインがメキシコ演奏旅行でグアダラハラを訪れた際、ロロンはルービンシュタインに会った。ロロンはメキシコで最も有名なこの旋律に、ルービンシュタインの腕に不足のない技巧的な編曲を施し、献呈したのがこの作品である。さすがのルービンシュタインも、ロロンから自筆譜を受け取ったその場では弾かず、フランスに持ち帰りパリの楽譜出版社アルフォンス・ルデュック Alphonse Leduc に持ち込み、この曲は出版された。曲はひとことで言って派手であるが、原曲の美しさをうまく残した素敵な編曲で、(上手に弾ければ?)演奏会のアンコールピースにうってつけ!。ト長調、前奏-A-B-A-C-D-E-A-コーダの形式。前奏に引き続き、冒頭の主題(A)からして旋律と伴奏に挟まれた中声部に半音階的対旋律がゴテゴテと絡まり、しかも楽譜に記されているように「優雅に、ピアノで p con eleganza」弾くのは難しい。
Vals Capricho (basado en "Sobre las olas" de Juventino Rosas)、24~39小節、Ediciones Mexicanas de Música.より引用
次の旋律 (B)は(原曲はト長調だが)ニ長調になり、対旋律は和音の固まりになって怒濤の攻めといった感じ。
Vals Capricho (basado en "Sobre las olas" de Juventino Rosas)、56~70小節、Ediciones Mexicanas de Música.より引用
(A)が繰り返された後の落ち着いたホ長調の旋律(C)に絹織物のように絡む3連8分音符の伴奏は天国のよう。
Vals Capricho (basado en "Sobre las olas" de Juventino Rosas)、142~155小節、Ediciones Mexicanas de Música.より引用
次のト長調の(D)は高音部旋律+内声の対旋律+ワルツのリズムの3階建てで華やか。
Vals Capricho (basado en "Sobre las olas" de Juventino Rosas)、176~183小節、Ediciones Mexicanas de Música.より引用
ハ長調の(E)の部分は曲調は落ち着いているが上へ下への細かい3連8分音符の対旋律は忙しそうで、3度重音のグリッサンドまで現れる。
Vals Capricho (basado en "Sobre las olas" de Juventino Rosas)、221~228小節、Ediciones Mexicanas de Música.より引用
(A)が再現された後はリスト風の両手和音連打などのコーダで華やかに終わる。ちなみに現在、私の知る限り録音は8種類の演奏が出ている。Cyprien Katsarisは腕達者だけあり速いヴィルトゥオーゾ的な名演だがあまり楽譜どおりではない。Silvia Navarreteはスピード感では負けるが、それでも上手な演奏で楽譜に比較的正確。José Sandovalはペダルを多用したねっとりとした演奏というか、正直なところ技巧的に弾きこなせていない。1922?
- Madrigal tapatío タパティオのマドリガーレ
マドリガーレとはイタリア・ルネッサンス時代の歌曲の形式の一つで、タパティオ(=メキシコ・ハリスコ州)風のマドリガーレを作曲したということであろう。2分少々の短い曲。ニ長調、A-B-A'形式。爽やかな感じの旋律が奏される。Bは変ロ長調〜変ニ長調になる。1928(-1929?)
- Tres danzas indígenas mexicanas (Jaliscienses) 3つのメキシコ先住民の舞曲集(ハリスコ風)
スペインのピアニスト、リカルド・ビニェス Ricardo Viñes に献呈。2度目のパリ留学中の作品で、初版はパリのMax Eschigより出版された。この組曲は、メキシコで1928年に出版されたRubén M. Campos著の『フォルクローレとメキシコ音楽:1525-1925年のメキシコの音楽文化に関する研究 EL FOLKLORE Y LA MUSICA MEXICANA: Investigación acerca de la cultura musical en México (1525-1925)』に収載されているメキシコ民謡75~81番(いずれも〈先住民の舞曲 Danza indígena〉)を基にホセ・ロロンが彼独自の編曲を施したピアノ作品である。全体的に九度の和音を多用していて、彼の以前の作品よりずっと不協和音の新しい響きを感じさせる曲集である。
- Allegro
A-B-A形式。冒頭のト長調の勇ましい旋律はRubén M. Campos著の(以下も同様)メキシコ民謡81番によるものだが和音進行が斬新、左手の和音が時々9度になり、右手左手で多調になる所があったりが特徴的。中間部はロ長調でメキシコ民謡80番を高音部で奏でる。- Allegro moderato
A-B-A'形式。冒頭のハ長調の跳ねるような旋律はメキシコ民謡77番で、ここでも5小節目から左手の和音が9度になる。中間部はメキシコ民謡79番、ヘ長調になるが目まぐるしく転調する。- Allegro
A-B-A'形式。冒頭はメキシコ民謡78番がト長調で奏されるが、やはり原曲との違いは左手のアルペジオがオクターブでなく9度になった所。中間部は変ホ長調になり、メキシコ民謡76番、75番が現れる。1934
1935 (1930?)
- Estudio en segundas 二度の練習曲
ロロンのピアノ曲ではほぼ初めてと言える機能的和声から離れた曲であり、彼の二度目のフランス留学の成果であろう。後期のピアノ曲を代表する作品と思います。長二度の重音が8分音符で半音階進行を無窮動で続ける。中間部では高音部の長二度重音連続の下で、中音部に新たな旋律が現れる。- Estudio en quintas 五度の練習曲
ハ長調、A-B-A'-コーダの形式。完全五度または減五度の右手重音が8分音符で続き、左手五度重音も所々加わって豊かな響きだ。Bはほぼホ短調になる。1944
- Suite All' Antica 古風な組曲
- Prelude 前奏曲
ホ短調。トリル混じりの旋律が淋しげにゆっくりと奏される。- Allemande アルマンド
- Bourrée ブレー
ホ短調。上品な旋律と対旋律の二声が奏される。- Sarabanda サラバンド
ホ短調。深刻な雰囲気の旋律が奏される。- Gavotte ガボット
ホ短調。中間部はホ長調になる。- Gigue ジーグ
作曲年代不詳
- Les papillons blancs 白い蝶
変イ長調、A-A'-A"形式。歌うような可憐な旋律が奏されるが、和音進行はA♭-Em-A♭-E♭aug-A♭と陰のある響きが印象的。A'は変ホ長調になり、A'の終わりは技巧的なカデンツァが現れる。