Simeón Roncalのピアノ曲リスト
- 20 Cuecas para piano ピアノのための20のクエッカ集
- La ausencia 不在
- La brisa そよ風
- Julia フリア
- Noche Tempestuosa 嵐の夜
- Ramón ラモン
- Rosa ロサ
- La huérfana Virginia 孤独のビルヒニア
- Lección de piano ピアノのレッスン
- Recuerdo 思い出
- Pequeño Simeón 小さなシメオン
- El olvido 忘却
- Lágrimas 涙
- La mujer 女
- Raquél ラケル
- Decepción 失望
- La soñadora 夢見る人
- Amor 愛
- Impresiones 印象
- El arroyo 小川
- Soledad 孤独
- Jazz ジャズ
- Fox trot フォックス・トロット
- Kcaluyo indio Nº 1 カルーヨ・インディオ第1番
- Kcaluyo indio Nº 2 カルーヨ・インディオ第2番
- Kcaluyo indio Nº 3 カルーヨ・インディオ第3番
- Marcha fúnebre 葬送行進曲
- Marcha 3 de Febrero (Marcha) 2月3日行進曲
- Implorando (Cueca) 懇願(クエッカ)
- A Sucre (Bailecito) スクレにて(バイレシート)
Simeon Roncalのピアノ曲の解説
- 20 Cuecas para piano ピアノのための20のクエッカ集
この20曲の作曲年代は不詳であるが、シメオン・ロンカルがポトシに移住する1912年より以前の作曲と思われる。シメオン・ロンカルの作ったクエカの殆どは伝統的な様式にのっとり、8小節の前奏~A(12小節)~A(12小節を繰り返し)~B(12小節の新しい旋律、転調していることがあり)~A'(12小節でAを華やかに変奏)の構成からなり、それを2サイクル演奏する。Aの12小節は、encuentro(出会い)の4小節~visita 1(訪問1)の4小節~visita 2(訪問2)の4小節から成っている。クエッカの踊りではここで「戻って!」などのかけ声がかかってもう一度Aの12小節が繰り返される。この24小節は男女の出会いが踊りで表現される部分である。Bは "Quimba(すまし歩き)" と呼ばれる部分で、男女が寄り添い恋を囁く場面である。A'は "jaleo(大騒ぎ)" と呼ばれ、「Ahora(今だ!)」と喜びの踊りを盛り上がって踊る場面である。クエッカの伝統的な様式に忠実に従って作曲したのは、それはそれで良いのだが、聴くピアノ曲としては構成が単調かな、との思いを感じる。なお、シメオン・ロンカルはこの20曲のクエッカに引き続き、更にもう20曲の未出版のクエッカを作ったとする文献もある。
- La ausencia 不在
嬰ヘ短調。前奏にイ長調の和音が現れる以外は、A、B、A'共にI度とV度またはV7の和音のみから成るのがシンプルな作りだが、切ない旋律が聴かせる曲。Bの部分の左手オクターブのベースの跳躍と中声部の16分音符アルペジオの伴奏を軽快に弾ききるのは結構難しい(下の楽譜)。A'は右手旋律はオクターブffで奏され華やか。
La ausencia、17~22小節、Música nacional boliviana, 20 cuecas para piano por Simeón Roncalより引用- La brisa そよ風
ハ長調。題名通りの春のそよ風を思わせる浮き浮きとした曲。前奏はギターのストロークを思わせるアルペジオが聴かれる。この曲では最初のAから左手オクターブのベース+中声部の16分音符アルペジオの伴奏が現れる。A'では左手和音が華やかに連打される。- Julia フリア
ハ長調。シメオン・ロンカルの娘のフリアに献呈された。Cuecaとして珍しく各部分は14小節から成っている。AとBは可憐な感じで曲が流れ、A'で一気にffに盛り上がる。- Noche Tempestuosa 嵐の夜
変ロ短調。左手のアルペジオは3連16分音符混じりで、嵐を表現しているのかな。苦悩しているような旋律が奏される。Bは変ニ長調になる。- Ramón ラモン
変イ長調。ラモンとはシメオン・ロンカルの息子の一人。AはIV度の和音から始まり、明るい雰囲気。Bは三度で旋律が抒情的に奏される。- Rosa ロサ
変ニ長調。シメオン・ロンカルの娘のロサに献呈された。甘美な響きの曲。Bは嬰ハ短調になり対照的で、アンダルシア終止の和音も現れる。A'では左手伴奏が2オクターブの跳躍を伴って華やか。- La huérfana Virginia 孤独のビルヒニア
ビルヒニアとはシメオン・ロンカルの妻の名前。嬰ヘ短調。ペンタトニック混じりの旋律や、和声がI度とV度に加えIII度を多用している所がいかにもボリビアっぽくて哀愁溢れる。A'は両手共オクターブになりとても華やか。- Lección de piano ピアノのレッスン
変ニ長調。題名通り?シメオン・ロンカルのピアノ曲の中でも技巧的に難しい作品だ。Aの跳ねるような旋律は前打音やトリル混じりで、伴奏のアルペジオは五度や六度の重音。Bは嬰ハ短調になり左手伴奏は16分音符の和音連打。A'の部分の左手の伴奏には半音階混じりの対旋律が絡み、これを軽快に弾くのは難しそう(下の楽譜はB~A'の部分)。
Leccion de piano、25~36小節、Música nacional boliviana, 20 cuecas para piano por Simeón Roncalより引用- Recuerdo 思い出
変ロ短調。もの悲しい思い出の曲で、特にBの左手伴奏は氷雨が降るような雰囲気。一転してA'の部分は両手オクターブで情熱的。- Pequeño Simeón 小さなシメオン
変ニ長調。最初のAから右手旋律はオクターブ、左手アルペジオは幅広く、華やかな響き。- El olvido 忘却
嬰ハ短調。何とも切ない旋律の美しい曲。Bの左手伴奏は和音と16分音符が絡み結構複雑だ。- Lágrimas 涙
嬰ヘ短調。うら寂しい曲。Bの左手伴奏は流れるようなアルペジオで珍しい。この曲の楽譜は1924年、アルゼンチンの新聞 "La Prensa" に掲載された。- La mujer 女
嬰ヘ短調。Aは悲しい身の上を語るような旋律が現れる。Bはイ長調になり、動きのある16分音符伴奏と右手高音の旋律が幸せだった頃を回想するようかな?。 旋律の曲。A'の部分の右手は華やか。- Raquél ラケル
変ニ長調。ラケルとはシメオン・ロンカルの娘の一人。Aは三度で旋律が可憐に奏される。Bは嬰ハ短調になり、左手伴奏はまた難しい。- Decepción 失望
嬰ヘ短調。悲しい旋律の曲。Aの左手伴奏の対旋律はペンタトニックの音階を下りる音型になっている。- La soñadora 夢見る人
変ト長調。左手のショパン風の伴奏型がいつものクエカと違う、牧歌的なほのぼのとした曲。Bの部分はリディア旋法とミクソリディア旋法が混じった旋律で不思議な雰囲気。- Amor 愛
嬰ヘ長調。クエカの踊りに最も相応しいのが「愛」を描く事だろう。Aはシメオン・ロンカルお得意の左手オクターブのベース+中声部の16分音符アルペジオの伴奏にのって、優美な旋律が奏される(下の楽譜)。
Amor、4~8小節、Música nacional boliviana, 20 cuecas para piano por Simeón Roncalより引用
Bの左手伴奏は、16分音符和音連打の中に半音階進行の対旋律が見え隠れして結構難しい(下の楽譜)。
Amor、17~20小節、Música nacional boliviana, 20 cuecas para piano por Simeón Roncalより引用
A'の左手伴奏はオクターブが32分音符トレモロで鳴り響き、右手旋律はオクターブで喜びの踊りを高らかに奏する。- Impresiones 印象
嬰ヘ長調。優しい旋律の曲。この曲も左手伴奏和音のなかで16分音符が動いている。- El arroyo 小川
変ニ長調。楽しそうな雰囲気の曲。- Soledad 孤独
変イ長調。前奏~A~A'~B~A"の形式で、Aの変奏が2種類現れるのはこの曲のみ。Aの部分は右手に中声部の旋律と後打ちの和音が任される。A'は左手オクターブの跳躍が幅広くやや華やかに。Bは一転して最高音部で旋律がppで奏される。最後のA"は両手共オクターブを含むff和音で華やかに締められる。- Jazz ジャズ
変イ長調。ラグタイムのリズムによる優雅な曲。- Fox trot フォックス・トロット
変イ長調、A-B-A-C-A形式。滑稽な旋律が愛嬌ある曲。Bは変ホ長調、Cは変ニ長調になる。- Kcaluyo indio Nº 1 カルーヨ・インディオ第1番
カルーヨ(Kaluyoとも綴る)はボリビアの伝統的な舞曲の様式で2/4拍子で、形式は前奏にあたるEntrada〜ゆっくりして哀愁を帯びるようなLamento〜テンポを速めたZapateado〜力強いEnérgicoから成る。この曲は嬰ハ短調。カルーヨの形式に従い、低音部オクターブのバスや中音部の旋律が重々しいLamento、チャランゴの響きを思わせるような和音連打のZapateado、両手オクターブの派手なEnérgicoと奏される。- Kcaluyo indio Nº 2 カルーヨ・インディオ第2番
嬰ヘ短調。8小節の前奏 (Entrada) に続き、ケーナの音色を思わせるようなペンタトニックの哀愁漂う旋律が現れる (Lamento)。次にチャランゴをかき鳴らすような和音連打が現れ、それにのって先程の旋律が繰り返される (Zapateado)。最後に両手オクターブの華やかな響きで旋律が再び繰り返されて終わる (Enérgico)。- Kcaluyo indio Nº 3 カルーヨ・インディオ第3番
嬰ヘ短調。16小節の前奏 (Entrada) に続き、ペンタトニックの旋律が現れる。旋律のモチーフがこだまのように繰り返されるのがいい感じ。次にチャランゴをかき鳴らすような和音連打が現れ、それにのって先程の旋律が繰り返される。最後は力強い左手伴奏にのって旋律がオクターブで繰り返されて終わる。- Marcha fúnebre 葬送行進曲
亡くなったロンカルの妻Virginia Cortez de Roncalに捧げた曲。ロンカルの作品の中でも、最も悲愴的な曲に聴こえます。変ホ短調、三部形式。スクレのカテドラルが鳴らす弔鐘を模したとされる悲しげな付点音連打のモチーフに引き続き、低音オクターブに荘厳な旋律が現れる。中間部は変ト長調になり、左手アルペジオの伴奏にのって穏やかな旋律が流れる。- Marcha 3 de Febrero (Marcha) 2月3日行進曲
ト短調。ブンチャッブンチャッという左手の伴奏と古めかしい右手の旋律が何かイイ雰囲気。- Implorando (Cueca) 懇願(クエッカ)
嬰ト短調。暗い旋律の曲。左手のアルペジオ混じりの伴奏がシメオン・ロンカルらしい難しい音型だ。- A Sucre スクレにて(バイレシート)
ニ短調。和音進行もペンタトニックな旋律もボリビアらしい曲。