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Luis Humberto Salgadoについて

 Luis Humberto Salgado Torres(ルイス・ウンベルト・サルガード・トーレス)は1903年12月10日、エクアドル北部、ピチンチャ州Cayambeに生まれた。彼の父は、地元の教会の聖歌隊の指揮者を務める作曲家であった。3歳の時に一家は首都キトに転居し、サルガードは8歳にしてキトの国立音楽院に入学し、ピアノと作曲を学んだ。小学校時代は、登校する前の早朝に父から和声を習い、昼間は小学校に通い、放課後は国立音楽院に行くというハードな生活だったらしい。青年時代には、映画館のピアノ弾きなどで収入を得ていた。

 1928年にはリストのピアノ協奏曲のソリストを務めピアニストとしてデビュー。キトやグアヤキルで演奏会を催した。1931年にはLaura Merizalde Villavicencioと結婚し、長男をもうけたが、1935年に離婚している。(生計を立てるため、サルガードは映画館やナイトクラブでのピアノ弾きやピアノ教師に精を出し過ぎた影響で離婚したとする資料がある。)1934年には国立音楽院の和声と対位法の教授に就任し、その後、約四十年に亘り国立音楽院で教鞭をとった。

 サルガードは欧米に留学するチャンスはなかった(1938年に、彼は政府にヨーロッパ留学の奨学金を申請したが、却下されている)。国立音楽院の教授とは言え、この頃まだエクアドルでは新古典主義だの十二音技法だのの現代音楽を詳しく知る者は居なかった。サルガードの弟は外交官だったので、弟がヨーロッパに行った折に購入してもらった本やレコードから、彼は独学で無調、十二音技法から微分音、偶然性の音楽まで学んだ。またサルガードはエクアドル国内各地を訪れ、民族音楽の調査を行った。更に彼は1938年から1945年にかけて「アンデスの声 (Voz Andes) 楽団」の指揮者を務めたり、ラジオに頻繁に出演してエクアドル民族音楽の紹介に努め、"Música vernácula ecuatoriana" (1952)という論文を著した。

 サルガードは晩年まで作曲家として活動し続けた。1977年12月12日、キトで亡くなった。

 サルガードの作品は多くのジャンルに亘る。代表作は9曲の交響曲で、第1番「アンデス交響曲 (Sinfonía andina, 1945-1949)」〜この交響曲では第1楽章ではSanjuanitoのリズムを、第2楽章はYaravíを、第3楽章はDanzanteを、第4楽章はAlbazo・Aire típico・Alzaを用い、アンデスの音楽らしい五音音階も多用されているが、その一方、一部で十二音技法も使うという何とも意欲的な作品である。第2番「総合的交響曲 (Sinfonía sintética, 1953)」、第3番「ロココ様式による交響曲 (Sinfonía en estilo rococó, 1956)」、第4番「エクアドル交響曲 (Sinfonía ecuatoriana, 1957)」、第5番「ネオロマンティック交響曲 (Sinfonía neoromántica, 1958)」、「弦楽とティンパニーのための第6交響曲 (Sexta sinfonía para orquesta de cuerdas y timbales, 1968)」〜フーガなどが現れる新古典主義の様式の作品、「第7交響曲 (Séptima sinfonía, 1970)」〜ベートーベン生誕二百年を記念した作品で十二音技法を多用、「ピチンチャの戦い150年記念第8交響曲 (Octava sinfonía en conmemoración al sesquicentenario de la batalla del Pichincha, 1972)」〜民族主義的な作品、第9番「総合的交響曲第2番 (Sinfonía sintética No. 2, 1975-7)」が作曲された。管弦楽曲では、「性格的な作品 (Pieza característica, 1950)」、「エクアドル組曲 (Suite ecuatoriana, 1969)」などがある。協奏曲では、計画的ピアノ協奏曲「太陽の乙女たちの聖別 (La consagración de las vírgenes del sol, 1941)」、民族的様式による幻想(ピアノ)協奏曲 (1948、エクアドル文化社コンクール一等賞受賞作)、ヴァイオリン協奏曲 (1953)、ホルン協奏曲 (1968)、チェロ協奏曲 (1974-5)、ギターのためのエクアドル協奏曲 (1976) などがある。室内楽曲では弦楽四重奏曲第1番 (1958) 、第2番 (1958)、ピアノ五重奏曲第1番 (1963) 、第2番 (1973)、ヴァイオリンとピアノのためのエクアドル奇想曲 (1946)、ヴァイオリンソナタ (1961) 、チェロソナタ (1962)、ヴィオラソナタ (1973) などがある。サルガードはオペラを4つ作曲している。その中でも "Cumandá" (1940-54) は、作家Juan León Meraの同名の小説(アマゾンの密林を舞台にした先住民の娘Cumandáの物語)を元にして作られた。バレー音楽の代表作「舞踊組曲 (Suite coreográfica, 1944-6)」はBallet ShyriとBallet aborigenの2部から成り、先住民族の姿をスペイン征服前後に分けて描いている。歌曲や合唱曲も多数作曲した。

 サルガードは下記のリストの通り、多数のピアノ曲を作曲したが、出版譜も録音も一部の作品のみしかなく、全貌は私も知りません。サルガードお得意の十二音技法を用いた作品は意欲的ではあるが難解でもあり、また一方、エクアドル民族音楽の響きをそのままピアノ曲にしたような素朴な作品も多いのが特徴である。いずれの作風においても、インディヘナ(先住民)の民族舞踊であるdanzante、yaraví、yumboや、メスティーソ(インディヘナと白人の混血である人々)のaire típico、albazo、pasillo、sanjuanitoなどをふんだんに用いており、エクアドル民族主義を代表する作曲家に相応しいピアノ曲を残している。

 

Luis Humberto Salgadoのピアノ曲リストとその解説

1929

1932

1933

1938-1940

1940

1941

1942

1943

1944

194?

1945

1945-1956

1947

1948

1949

194?-1950

1951

195?

1957

1968

1969

 

Luis Humberto Salgadoのピアノ曲楽譜

Ediciones del Banco Central del Ecuador / Benjamin Carrion

  • Luis Humberto Salgado. Un quijote de la música
    • Sanjuanito futurista, Microdanza
    • Mosaico de aires nativos
    • Variaciones en estilo folklórico
    • Quadrivium
     サルガードの生涯、作品分析などの本で、巻末に上記のピアノ曲の楽譜が収載されている。

CONMUSICA (Corporación Musicológica Ecuatoriana)

 

Luis Humberto Salgadoのピアノ曲CD

星の数は、は是非お薦めのCD、は興味を持たれた人にはお薦めのCD、はどうしてもという人にお薦めのCDです。

Grandes temas de música ecuatoriana

Guillermo Meza (pf), Marcelo Ortiz (pf)

 

Souvenir de l'Amérique du Sud

  • Pasillo (pasillo) (Gerardo Guevara)
  • Fiesta (albazo) (Gerardo Guevara)
  • Tonada (tonada) (Gerardo Guevara)
  • El espantapájaros (pasillo) (Gerardo Guevara)
  • Apamuy Shungo (danzante) (Gerardo Guevara)
  • I. Amanecer de trasnochada (pasillo) (Luis H. Salgado)
  • Brindis al pasado (pasillo) (Luis H. Salgado)
  • II. Romance nativo (sanjuanito) (Luis H. Salgado)
  • VI. Nocturnal (pasillo) (Luis H. Salgado)
  • Pasional (pasillo) Arrangement: Marcelo Ortiz (Enrique Espín Yépez)
  • Articulo 8 del Código Civil (pasillo) (Sixto María Durán)
  • Sumac shungulla (Bonito corazoncito) (fox-trot) (Sixto María Durán)
  • Brumas (pasillo) (Sixto María Durán)
  • Souvenir (Sixto María Durán)
  • Lamparilla (pasillo) - Arrangement: Marcelo Ortiz (Miguel A. Casares)
  • Vasija de Barro - Arrangement: Marcelo Ortiz (Miguel A. Casares)

Marcelo Ortiz (pf)

 1995年および2000年の録音。Marcelo Ortizはエクアドル出身のピアニストで、現在カナダに在住し活動中とのこと。

 

Piano Music by Ecuadorian Composers

Alex Alarcón Fabre (pf)

 2016年のリリース。

 

Luis Humberto Salgadoに関する参考文献