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Fernando Soriaについて
フェルナンド・ソリア・カルペナ Fernando Soria Cárpena は1860年8月11日、メキシコ南東部のチアパス州オコソコアウトラ・デ・エスピノサに生まれた。3歳の時に父親が亡くなり、彼は(現在のチアパス州の州都である)トゥストラ・グティエレスの教会で育てられ、音楽を習った。1872年にチアパス州サン・クリストバル・デ・ラス・カサスに移り、当地の公教神学校に入学し、音楽を学び続けた。1879年に同校を卒業すると、チアパス州や北隣のタバスコ州のあちこちでピアノを教えていたらしい。20歳代前半には首都メキシコシティに出て、国立音楽院でフリオ・イトゥアルテに一年ほど師事したが、学費が続かずサン・クリストバル・デ・ラス・カサスに戻った。1884年にソリアが再び国立音楽院で学べるよう奨学金の援助をチアパス州政府に申し出たが、拒絶された記録が残されている。
その後ソリアは、チアパス州の更に南東部にありグアテマラ国境に近いコミタンに移り住み、地元の学校で、また上流階級の子女に個人レッスンで歌やピアノを教えた。1885年から1888年頃まではしばしばグアテマラのケツァルテナンゴを訪れては、当地の学校でも音楽を教えた。(コミタンとケツァルテナンゴは約160キロ離れているが、標高3500メートルあるペーニャ・ブランカ山の麓を通る山道であり、当時は徒歩にせよラバに乗るにせよ10日から15日はかかる難路であったらしい。ソリアはコミタンとケツァルテナンゴを数ヶ月おきに行ったり来たりしていたとのこと。)ケツァルテナンゴで教えた生徒の一人であるヘスス・カスティージョ Jesús Castillo (1877-1946) は後にグアテマラを代表する作曲家・民族音楽学者となった。またこの頃ソリアは、María del Refugio Zepedaと結婚し、6人の子どもをもうけた。中でも娘のイサベル・ソリア・セペダ Isabel Soria Zepeda (1890-1976) は後にソプラノ歌手として国際的に活躍した。
ソリアがいつ頃から作曲を行なっていたかの資料は乏しいが、1889年にフランスのパリで万国博覧会が開かれた際のメキシコからの出展物カタログにソリアのピアノ曲《収穫をする人々 Los segadores》、《イギリスの監視員 El guarda inglés》の楽譜が含まれており(いずれも楽譜は現存せず)、またソリア自身はパリの万国博覧会でピアノ曲《水に浮かんで、夢想 A flote, Reverie》が賞を得たと語っていたとのことで、この頃にはソリアの作品が印刷されていたものと思われる。1898年以降はソリアのピアノ曲がいくつも出版されている。1900年には《凱旋行進曲 Marcha triunfal》がパリで(1900年開催のパリ万国博覧会または国際音楽会議)銅メダルを受賞したとする記録が残されている。
1901年にソリアは一家と共にメキシコシティに転居した。1905年から1913年までメキシコシティ市内の小学校で音楽を教えた。彼は音楽教育の充実のために2巻から成る《学校合唱曲集 Coros escolares》を作曲した。楽譜は1905年に出版され、市内の多くの小学校の音楽の授業で使われたとのこと。1909年から1914年にかけてはソリアの代表作となるピアノ曲集《心のアルバム第1集:ロマンティックな組曲 Ábum del corazón: nº 1 Suite romántica》と《心のアルバム第2集:哀愁に満ちた組曲 Ábum del corazón: nº 2 Suite elegíaca》が出版された。
ソリアは、コミタン出身でコミタン市長を務めた政治家のベリサリオ・ドミンゲス Belisario Domínguez (1863-1913) と知己の仲であった。ソリアはドミンゲスに献呈したピアノ曲《我が大地に万歳! Viva mi Tierra!》は1913年に出版されている。1913年2月に軍人ビクトリアーノ・ウエルタがクーデターを起こしメキシコ大統領に就任したが、その直後にドミンゲスは国会議員になると、同年9月に国会でウエルタ大統領を批判する演説をした。しかしドミンゲスは反ウエルタ派として10月7日に暗殺されてしまった。ドミンゲスと親しかったソリアは身の危険を感じ、同年末にメキシコシティを逃れてベラクルスに移った。ベラクルスで彼はピアノを教え、演奏会を催し、音楽雑誌を主宰した。
1921年(または1922年初め)にソリアは再びメキシコシティに転居した。いくつもの音楽雑誌に評論を書き、また自宅でピアノの個人レッスンを行いながら暮らした。1934年にメキシコシティでソリアは亡くなったが、死亡月日は不詳である。
ソリアが1933年に書いた短い自叙伝によると彼は三百以上の曲を作ったと述べているが、楽譜が現存するのはその内の(出版譜および自筆譜合わせて)約90曲である。ピアノと管弦楽のための序曲《栄光を! Gloria!》はピアノ独奏版の楽譜のみが現存、またサルスエラ《Un rival allende el Bravo》は楽譜は現存せず、台本のみが残されている。歌曲は《チアパス賛歌 Himno a Chiapas》など9曲が現存、合唱曲は《学校合唱曲集》が残されている。
ソリアのピアノ曲はサロン向けの小品、愛国曲、そして詩と音楽のコラボレーションと言える曲集《心のアルバム》から成る。各曲の構成や和声はヨーロッパロマン派で、取り立てて新たな音楽を切り開いたという作品もないのだが、《心のアルバム》での心情表現などはなかなかの優れた作品揃いである。ソリアのピアノ曲にメキシコ民族主義は殆ど見られない。惜しむらくは、独特の文化を持ったチアパス州に生まれ育った貴重な作曲家なのだから、現地の民俗音楽を元にしたピアノ曲とか作曲してくれたらな〜と思わずにはいられない。
Fernando Soriaのピアノ曲リストとその解説
斜字は出版もされず、手稿譜も現存していない(要は存在が現在確認できない)作品です。
ソリアのピアノ曲は手稿譜・出版譜ともに作曲年の記述が全く無いです。下記のリストで「1889年頃」にある4曲は、楽譜が現存しない曲も含めて、1889年のパリの万国博覧会に作品(楽譜)を出展したとするいくつかの文献に依ります。他のピアノ曲の出版譜で出版年が判明しているものは、出版年順にリストしました。1889年頃
- A flote, Reverie 水に浮かんで、夢想
この曲は1889年にフランスのパリで万国博覧会で賞を得たと、ソリア自身が述べていた曲。ト長調、前奏-A-B-A-コーダの形式。Aは舟歌らしい左手アルペジオの伴奏にのって穏やかな旋律が流れる。Bは左手に息の長い旋律が現れ、ホ短調から頻繁に転調しながら徐々に盛り上がる。- El guarda inglés イギリスの監視員
- Los segadores 収穫をする人々
- Riviere 川
1898年出版
- ¡Abandonado.....!, Schottisch 見捨てられて!、ショッティッシュ
ホ長調、前奏-A-B-C-D-E-F-Gの形式。全体的には陽気な雰囲気のショッティッシュだが、各旋律の終わりが短調に転調する場面が目立つ。BとCは左手に16分音符音階が頻繁に現れる。Dはハ長調、Fは嬰ハ短調になる。1898-1906年頃出版
- Al pie de la vieja torre, Romanza 古い塔のたもとで、ロマンス
- Auras de Anáhuac, Vals アナウアクのそよ風、ワルツ
- De rodillas ante tí, Mazurka 君の前にひざまずいて、マズルカ
ニ長調、A-B-A-C-D-A-コーダの形式。Aは高音部で旋律に纏わりつくアルペジオが煌びやか。Cはト長調になり、上品で落ち着いた雰囲気になる。- El canto de la alondra, Capricho-schottisch ヒバリのさえずり、カプリーチョ-ショッティッシュ
- En el baño, Schottisch 浴室で、ショッティッシュ
- Tu amor o la muerte, Polka 貴方の愛か、死か、ポルカ
1901年出版
- Ondas muertas, Vals, Op. 1 死の波、ワルツ、作品1
メキシコの詩人マヌエル・グティエレス・ナヘラ Manuel Gutiérrez Nájera (1859-1895) の詩に「死の波 Ondas muertas」(1889)があり、この詩の題名を用いたと思われる。変ホ長調、序奏-A-B-C-D-E-F-G-H-G-I-J-コーダの形式。サロンでの舞踏会の音楽にピッタリの実用的な曲で、ウィンナ・ワルツのように、サロンの参加者にワルツの始まりを告げるような序奏がまず現れ、続いて10の異なった旋律のワルツが転調しつつ次々と切れ目なく奏され、演奏時間約10分と、ソリアのピアノ曲の中でも最長である。J以外は長調で優雅な雰囲気のワルツである。1902年出版
- Bajo el emparrado, Polka 葡萄棚の下で、ポルカ
1903年出版
- Tour de noce, Vals 新婚旅行、ワルツ
変ホ長調、A-B-A-C-A形式。Aは舞うような優雅な旋律が奏される。Bはハ短調、Cは変イ長調になる。1906年出版
- Martellato, Polka マルテラート、ポルカ
1909-1914年出版
- Álbum del corazón nº 1: Suite romántica 心のアルバム第1集:ロマンティックな組曲
《心のアルバム》は各集12曲、2集で計24曲からなる曲集である。各曲の楽譜の冒頭にはそれぞれ、当時のメキシコ現代詩人たちの詩の一節が記されていて、詩と音楽(ピアノ曲)のコラボレーションをソリアは意図して作曲したのであろう。それぞれの詩をここで正しく和訳するのは私の拙いスペイン語力では無理なのでほとんど紹介しませんが、抽象的な詩からの印象や霊感といったものからこれまた抽象的な世界の音楽を紡ぎ出す、発想の豊かさを感じさせる場面はいくつも見受けられ、ソリアの最高傑作と呼んでいいい曲集である。第1集は主に「愛」をテーマにした作品から成っている。
- Harmonías de la floresta, Romance en mi mayor, Op. 190 林のハーモニー、ロマンスホ長調、作品190
Gonzalo Sánchez G.作の叙事詩の一節が記されている。ホ長調、前奏-A-B-A'-C-C-A'形式。前奏はホ短調で両手和音交互連打、オクターブ、16分音符半音階下行など技巧的で結構ドラマティック(下記の楽譜)。Aは穏やかな旋律が右手〜左手と受け継がれつつ奏される。Cは嬰ハ短調になり、悩ましい旋律が奏される。
Álbum del corazón nº 1: Suite romántica, 1. Harmonías de la floresta, Romance en mi mayor, Op. 190、1~13小節、Edición del autor, Imprenta musical C. G. Roeder. より引用- ¡Bogando sin rumbo!, 3ª Barcarola, Op. 108 あてもなく航海して!、舟歌第3番、作品108
変ホ短調、A-B-C-A-B-C形式。Aの6/8拍子の左手低音オスティナートの♩ ♪♩ ♪と後打ちの右手短和音の響きは、暗く深い海原をあてもなく彷徨うように航海する小舟のような、更には魂の漂泊のような趣である。Bは変ト長調になり、ソプラノとバスが掛け合いで歌うような旋律となる。Cは変ホ長調になり、三度重音で奏される甘い旋律はメキシコ民謡風にも聴こえる。- Cielo y mar, 2ª Barcaroletta, Op. 166 空と海、小さな舟歌第2番、作品166
ニ長調、A-B-コーダの形式。楽譜の冒頭に記された詩の中に「思想の中に空があり、心の中に海がある El cielo en el pensamiento Y el mar en el corazón」とある。Aの高音部のモチーフの爽やかな響きはおそらく「El cielo en el pensamiento」で、Bのニ短調混じりの16分音符の音階が波のように上下する部分は「el mar en el corazón」を現しているのだろう。- Al son de los remos, 3ª Barcarola á la Habanera, Op. 157 オールの音に合わせて、ハバネラ風舟歌第3番、作品157
へ長調、A-B-A-コーダの形式。Aは左手ハバネラのリズムの伴奏にのって、6連16分音符の装飾音付きの旋律が優雅に流れるように奏される。Bはへ短調になり、右手旋律がハバネラのリズムとなり、左手伴奏が6連16分音符になる。- ¡Soñemos!, Serenata romántica, Op. 189 夢を見よう!、ロマンティックなセレナーデ、作品189
ハ短調、A-B-A-B'形式。Aは左手アルペジオの伴奏にのって、単音の寂しげな旋律が奏される。Bは変ホ長調になり、夢幻を見ているような旋律が中音部三度重音で奏される。最後のB'は三度重音の旋律がハ長調で回想される。- ¡Tristeza y desesperación!, Romanza dramática, Op. 103 悲しみと絶望、劇的なロマンス、作品103
ホ短調、前奏-A-B-B-C-C-B-A形式。劇的な前奏に引き続き、Aはシンコペーションの左手和音に急き立てられるように落ち着きのない旋律が奏される。Bは左手和音連打の上で高音部オクターブで弱々しい旋律が奏される(ショパンの《24の前奏曲集、作品28》の第4番に似ていると指摘する文献がある)。Cはホ長調になり、ゆっくりと奏されるワルツが1時の救いのように響く。- El canto del proscrito, 4ª Romanza sin palabras, Op. 104 追放者の歌、歌詞のないロマンス第4番、作品104
ト長調、A-A'-B-A'-コーダの形式。右手後打ちの和音伴奏の下で、男声の歌を思わせる旋律が朗々と奏される。Bはト短調になる。- Nostalgia vespertina, Canzonetta-mignon, Op. 111 夕方の郷愁、可愛いカンツォネッタ、作品111
変ニ長調、A-A-コーダの形式。穏やかな左手アルペジオの伴奏にのって、夕暮れの情景を描くような旋律が静かに奏される。コーダの最後は「晩鐘の音 campana del Angelus」と楽譜に記された高音部と低音部のレ♭-ラ♭の空虚五度がfffで鳴り響く。- Invernal, Legenda, Op. 160 冬に、伝説、作品160
変イ短調、A-B-A-コーダの形式。Aは楽譜に「遠くからの鐘の音 campana di lontano」と記された低音ラ♭-ミ♭のオスティナートにのって、呟くような旋律が中音部に現れ、四声のコラール風に発展する。Bはホ長調になり、四声コラールが穏やかに奏される。- A María, la del cielo, Plegaria, Op. 101 聖母マリアへ、天国の聖母へ、祈り、作品101
ロ長調、前奏-A-A'-B-B'-A-A'形式。敬虔に祈りを捧げるような雰囲気の曲。Bはホ長調になる。- Dolce tenerezza, Foglieta d'album, Op. 195 甘い優しさ、アルバムの一葉、作品195
ホ短調、A-B-A-コーダの形式。Aはコラール風でfとpが2小節毎に替わるのが劇的な響き。Bは変ホ長調→ト長調→へ長調→ニ長調と転調する。- Amor y celos, Diálogo descriptivo, Op. 130 愛と嫉妬、対話の記述、作品130
ト長調、前奏-A-B-C-D形式。この組曲の中でも唯一のユーモアたっぷりの作品である。あるカップルの出会いから喧嘩別れまでを、曲名通り時系列で記したような面白おかしな作品で、楽譜のあちこちに状況を記した語句が添えられている(以下のカッコ内()は楽譜に書かれた語句です)。前奏は、遠慮がちに声をかけるような (招待 Invitacion) をスタッカートと休符で描写し、(誘惑 Seduccion) しながら繰り返す。Aは散歩をしているようなブンチャッブンチャッの気取った左手伴奏にのって、前奏と同じ旋律が (優しい挨拶 Tiernas Palabras) するように遠慮がちに奏される。誘いへの (疑い Dudas) のような短和音も一時現れるが、長和音に戻って (優しく触れるCaricias) ようになる。Bは同じリズムながら、ニ長調の(疑惑 Sospechas)→変ロ長調の (悲しみ Tristeza)→ト長調の (猜疑心 Desconfianza) と心の揺れを描くような転調が続く。Cはアレグロにテンポを上げ、オペラのアリアの最終部分のような急き立てられるような騒がしい3連符で (非難 Recriminaciones) が始まり、そのままト短調になると(失われた幸せ Felicidad perdida)→(脅し文句 Amenazas)→32分音符半音階下行の (激昂 Furor) となる。終盤のDはト長調で、ドタバタ騒ぎのような16分音符や両手オクターブ連打で (絶交と喧嘩 Ruptura y Riña) を描き、(絶縁と憎悪 Separacion y Odio) で終わる。- Álbum del corazón nº 2: Suite elegiaca 心のアルバム第2集:哀愁に満ちた組曲
この第2集は曲名通り哀愁に満ちており、詩の内容からは主に「死」をテーマにした作品から成っている。
- Más allá de la vida, Meditación, Op. 107 あの世へ、瞑想、作品107
へ長調、前奏-A-A'-B-A'-コーダの形式。Aは右手旋律と左手対旋律が穏やかに奏される。Bは激情するような両手オクターブが現れるが、間もなく穏やかな冒頭の旋律に戻る。- Llorando en silencio, Lieder - Impromtu en la bemol, Op. 110 沈黙の嘆き、リート-即興曲変イ長調、作品110
変イ長調、前奏-A-A'-B-B-コーダの形式。Aはシューマンの歌曲を思わせるような旋律が穏やかに奏される。Bは左手和音連打の伴奏にのって、右手高音オクターブで朗々と歌うような旋律が奏される。- ¡Lágrimas de sangre!, 2ª Romanza sin palabras, Op. 102 血の涙!、歌詞のないロマンス第2番、作品102
へ長調、前奏-A-A'-B-A-A'-コーダの形式。右手旋律と左手伴奏が掛け合いのように奏される。Bは変ニ長調になり、歌うような旋律が流れる。- Penas secretas, 1ª Berceuse, Op. 106 秘かな苦悩、舟歌第1番、作品106
変ロ短調、前奏-A-B-A形式。6/8拍子の舟歌の伴奏にのって、曲名通りの秘めた悩みを歌うような旋律が奏される。Bは変ニ長調になり、一筋の希望を思わせる雰囲気だが、またAの旋律に戻るのが何とも切ない。- Hojas de hiedra, 2ª Berceuse, Op. 150 木蔦の葉々、舟歌第2番、作品150
へ長調。楽譜にリトルネッロと記された静かな中音部の音形と、落ち葉が舞うような色々な音形のモチーフが交互に奏される。- Rumor de sollozos, Patética Reverie, Op. 151 すすり泣きの声、悲痛な夢想、作品151
ホ短調、A-B-A-B'形式。Aはハープを思わせるアルペジオにのって、高音部オクターブで何とも物悲しい旋律が切々と奏される。Bはト長調になりが、それでもppで奏される旋律は哀愁が漂う。B'はホ長調にある。- Canción del desterrado, Dolora, Op. 116 追放者の歌、ドローラ、作品116
イ短調、A-B-C-コーダの形式。Aは中音部に男声を思わせる寂しげな旋律が奏される。Bは嘆きの言葉を繰り返すような旋律。Cはイ長調になり、左手3連8分音符アルペジオの伴奏にのって、過去を回想しているかのような旋律が高音部に奏され、激情するようなffまで盛り上がる。- Ramo de acácias, Melodía elegiaca, Op. 109 アカシアの小枝、哀愁に満ちたメロディー、作品109
ハ短調、前奏-A-A'-B-B'-コーダの形式。Aは高音部オクターブで情熱的な旋律が歌うように奏される。Bは変ホ長調→ハ長調と転調する。- Una flor en su tumba, Pequeña marcha fúnebre, Op. 115 あなたの墓の上の一輪の花、小さな葬送行進曲、作品115
楽譜には「亡くなった私の息子の思い出に」と記されている。若くして亡くなった長男Moisésを偲んで作曲したと思われる。嬰へ短調、A-A'-B-B-A-C-C'-A'-B-A-コーダの形式。Aはトボトボと弾かれる左手スタッカートにのって寂しげな単音の旋律が奏される(下記の楽譜)。
Álbum del corazón nº 2: Suite elegiaca, 9. Una flor en su tumba, Pequeña marcha fúnebre, Op. 115、1~10小節、Edición del autor, Imprenta musical C. G. Roeder. より引用
Bはイ長調になり歌うような旋律が現れるが、途中で嬰へ短調に戻ってします。Cは嬰へ長調になり、Aに似た旋律で亡き息子との思い出を回想するような雰囲気になる(下記の楽譜)。
Álbum del corazón nº 2: Suite elegiaca, 9. Una flor en su tumba, Pequeña marcha fúnebre, Op. 115、31~37小節、Edición del autor, Imprenta musical C. G. Roeder. より引用- Lamentos de dolor, Melodía-nocturno, Op. 107 苦悩の嘆き、メロディー-夜想曲、作品107
変ト長調、前奏-A-B-C-コーダの形式。ハープを思わせる柔らかい響のアルペジオ伴奏にのって、穏やかな旋律が奏される。Cはニ長調になる。- Gotas amargas, Hoja de álbum, Op. 105 苦い涙、アルバムの一葉、作品105
変イ長調、A-B形式。穏やかながら哀愁漂う旋律が奏される。Bはへ短調になり、苦悩を表すような旋律になるが、最後は変イ長調に戻る。- A través de una lágrima, Walse lánguido, Op. 112 一粒の涙の間から、活気のないワルツ、作品112
ハ短調、前奏-A-A-B-A-C-C-A形式。前奏で奏される「ピタッポタッ」というモチーフは涙を現しているのであろう。Aはこのモチーフが用いられ、楽譜に "sospir. (ため息)" と記されたフェルマータも挟まれて、憔悴したような雰囲気のワルツだ(下記の楽譜)。Bは変ホ長調になる。Cはハ長調になり、高音部三度重音の旋律は華やかなワルツにも聴こえるが、旋律の中には涙のモチーフが使われていて切なさが漂っている。
Álbum del corazón nº 2: Suite elegiaca, 12. A través de una lágrima, Walse lánguido, Op. 112、1~12小節、Edición del autor, Imprenta musical C. G. Roeder. より引用- Ninfas juguetonas, Vals de salón ふざけ好きなニンフ達、サロン風ワルツ
1910年出版
- A la luz de las estrellas, Vals-serenata 星明かりに照らされて、ワルツ-セレナーデ
ト長調、A-B-C-D-C-A-B形式。静かな夜のロマンティクな雰囲気を描いたような曲。Cはハ長調、Dはイ短調になる。- Gualda y rojo, Paso doble flamenco 黄色と赤、パソドブレ・フラメンコ
- La virgen de mis sueños, Gavota-schottisch 私の夢の中の聖母、ガボット-ショッティッシュ
変ホ長調、A-B-A-C-D-C-A形式。明るい雰囲気の曲。Bは変ロ長調になり、両手スタッカートで奏される高音部和音が可愛らしい。Cは変イ長調、Dはへ短調になる。- Ternura, Vals lento 優しく、ゆっくりしたワルツ
へ長調、A-A-B-B-C-C-A-B形式。Aは可憐な旋律で始まり、後半はへ長調から4小節毎に変イ長調→へ短調→変イ長調→へ長調と転調するのが凝っている。Bは華やかな雰囲気。Cはニ短調になる。1913年出版
- A media luz, Two-step 薄暗く、ツーステップ
- Divina, Danza ディビーナ、ダンサ
ト長調、A-B-C-A-B-C形式。シンコペーションと3連符のリズムが混ざったメキシコ風のダンサ(ダンサ・クバーナ)らしい雰囲気の曲。Cはト長調になり、3連符の旋律が甘い響き。- Gajos y capullos, Vals 房と蕾、ワルツ
- Guapísima, Danza 最高の美女、ダンサ
ホ短調、A-B-コーダの形式。Aは哀愁を歌い上げるような旋律が奏される。Bはホ長調になり、息の長い旋律が奏される。- Magdalena, Vals マグダレーナ、ワルツ
- Sabrosa, Mazurka de salón 可愛らしく、サロン風マズルカ
"Sabrosa" とは「美味しい」と食べ物を形容するのが一般的な意味だが、(私は未見ですが)出版譜の表紙絵が女性を描いていることと、曲の雰囲気から「可愛らしく」と意訳しました。前奏-A-B-A-C-D-C-A-B-A-コーダの形式。高音部のレチタティーヴォ風の前奏に引き続き、Aの高音部16分音符が可憐な旋律が奏される。Bはへ短調、Cは変ニ長調、Dはへ短調になる。- Sueño rosa, Schottisch バラ色の夢、ショッティッシュ
- Tacubaya, Danzón two step タクバヤ、ダンソン-ツーステップ
- ¡Viva mi tierra!, Bolero, Op. 85 我が大地に万歳!、ボレロ、作品85
1915年出版
- Lirios azules, Vals, Op. 140 イギリスあやめ、ワルツ、作品140
変ホ長調、A-A-B-B-C-C-A-B形式。花のワルツらしい明るい曲。Cは変イ長調になる。- Morelos, Marcha o Paso doble, Op. 145 モレロス、行進曲またはパソドブレ、作品145
- Linda pecadora, Gavota, Op. 153 麗しい罪人、ガボット、作品153
- La miel de tus besos, Vals, Op. 168 貴方のキスの蜜の味、ワルツ、作品168
- Marcha yaqui, Op. 169 ヤキ族の行進、作品169
作曲年および出版年不詳
- Evocación, Vals, Op. 144 エボカシオン、ワルツ、作品144
- Berceuse I, Canción de cuna, Op. 194 子守歌第1番、作品194
- Berceuse II, Canción de cuna, Op. 180 No. 5 子守歌第2番、作品180の5
- Hoja de álbum, Op. 198 アルバムの一葉、作品198
- Chole, Mazurka チョレ、マズルカ
へ長調、前奏-A-B-C-D-E-A-コーダの形式。ソリアのピアノ曲の中でも、速く音域の広いアルペジオや装飾音などを多用した技巧的な曲。Aは高音部で旋律に纏わりつく分散和音が煌びやか。Bはニ短調になり、左手オクターブの力強い旋律の上で、右手上行アルペジオが華やか。Cは変ニ長調、Dはニ短調、Eは変ロ長調になる。- ¡Dios, Patria y Libertad!, Fantasía 神よ、祖国よ、そして自由よ!、幻想曲
- Friné, Mazurka フリュネ、マズルカ
フリュネとは古代ギリシアのヘタイラ(高級娼婦)の女性の名前。伝説では、フリュネは不信心のため裁判にかけられたが、弁護人が裁判官達の面前でフリュネの服を剥ぎ取って彼女を裸にすると、裁判官達は彼女の美しさに恐れをなし、フリュネは無罪となったのこと。ハ長調、前奏-A-B-A-C-D-A-コーダの形式。Aはフリュネの艶やかな姿を描いたような旋律が中音部に現れる。Bはト長調になり、マズルカの付点のリズムが悪戯っぽく奏される。Cはへ長調、Dはニ短調になる。- ¡Gloria!, Obertura 栄光を!、序曲
- Mariposeando, Polka 移り気、ポルカ
- Quejas íntimas, Mazurka "Melancólica de salón" 内なる嘆き声、マズルカ「サロンの憂うつ」
- Urania, Mazurka ウラニア、マズルカ
ウラニアとはギリシア神話に登場するムーサ(女神)の1柱の名前。ニ長調、前奏-A-B-A-C-D-C-A-B-A形式。Aの煌めくように高音部で奏される三度重音の旋律は、天文と占星術を司るウラニアを描いているのだろう。Bはト長調、Cはイ長調、Dは嬰へ短調になる。- Ensayos para piano ピアノのための随筆集
- Éxtasis sublime, Vals 崇高な法悦、ワルツ
- Fantasía sobre una romanza あるロマンスによる幻想曲
- Pobre de mi!, Op. 91 ああ情けない!、作品91
- Marinera tropical , Op. 92 熱帯のマリネラ、作品92
- Variaciones sobre motivo del wals ワルツのモチーフによる変奏曲
Fernando Soriaのピアノ曲楽譜
Edición del autor, Imprenta musical C. G. Roeder (ライプツィヒ)
- Álbum del corazón nº 1: Suite romántica, 1. Harmonías de la floresta, Romance en mi mayor, Op. 190
- Álbum del corazón nº 1: Suite romántica, 2. ¡Bogando sin rumbo!, 3ª Barcarola, Op. 108, 3. Cielo y mar, 2ª Barcaroletta, Op. 166
- Álbum del corazón nº 1: Suite romántica, 4. Al son de los remos, 3ª Barcarola á la Habanera, Op. 157, 5. ¡Soñemos!, Serenata romántica, Op. 189
- Álbum del corazón nº 1: Suite romántica, 6. ¡Tristeza y desesperación!, Romanza dramática, Op. 103
- Álbum del corazón nº 1: Suite romántica, 7. El canto del proscrito, 4ª Romanza sin palabras, Op. 104, 8. Nostalgia vespertina, Canzonetta-mignon, Op. 111
- Álbum del corazón nº 1: Suite romántica, 9. Invernal, Legenda, Op. 160, 10. A María, la del cielo, Plegaria, Op. 101
- Álbum del corazón nº 1: Suite romántica, 11. Dolce tenerezza, Foglieta d'album, Op. 195, 12. Amor y celos, Diálogo descriptivo, Op. 130
- Álbum del corazón nº 2: Suite elegiaca, 1. Más allá de la vida, Meditación, Op. 107, 2. Llorando en silencio, Lieder - Impromtu en la bemol, Op. 110
- Álbum del corazón nº 2: Suite elegiaca, 3. ¡Lágrimas de sangre!, 2ª Romanza sin palabras, Op. 102
- Álbum del corazón nº 2: Suite elegiaca, 4. Penas secretas, 1ª Berceuse, Op. 106, 5. Hojas de hiedra, 2ª Berceuse, Op. 150
- Álbum del corazón nº 2: Suite elegiaca, 6. Rumor de sollozos, Patética Reverie, Op. 151, 7. Canción del desterrado, Dolora, Op. 116
- Álbum del corazón nº 2: Suite elegiaca, 8. Ramo de acácias, Melodía elegiaca, Op. 109, 9. Una flor en su tumba, Pequeña marcha fúnebre, Op. 115
- Álbum del corazón nº 2: Suite elegiaca, 10. Lamentos de dolor, Melodía-nocturno, Op. 107
- Álbum del corazón nº 2: Suite elegiaca, 11. Gotas amargas, Hoja de álbum, Op. 105, 12. A través de una lágrima, Walse lánguido, Op. 112
Modesto González (タマウリパス)
- Abandonado, Schottisch
- Al pie de la vieja torre, Romanza
- Auras de Anáhuac, Vals
- Bajo el emparrado, Polka
- De rodillas ante tí, Mazurka
- El canto de la alondra, Capricho-schottisch
- En el baño, Schottisch
- Martellato, Polka
- Tour de Noce, Vals
- Tu amor o la muerte, Polka
Wagner y Levien
- A la luz de las estrellas, Vals-serenata
- A media luz, Two-step
- Dos danzas
- Divina, Danza
- Guapísima, Danza
- Friné, Mazurka
- Gualda y rojo, Paso doble flamenco
- La virgen de mis sueños, Gavota-schottisch
- Magdalena, Vals
- Sabrosa, Mazurka de salón
- Sueño rosa, Schottisch
- Tacubaya, Danzón two step
- ¡Viva mi tierra!, Bolero, Op. 85
Enrique Munguía
- Ternura, Vals lento
Juan M. Prado Sucr. (ベラクルス)
斜字は絶版と思われる楽譜
- La miel de tus besos, Vals, Op. 168
- Linda pecadora, Gavota, Op. 153
- Lirios azules, Vals, Op. 140
- Morelos, Marcha o Paso doble, Op. 145
Fernando Soriaのピアノ曲CD
星の数は、は是非お薦めのCD、は興味を持たれた人にはお薦めのCD、はどうしてもという人にお薦めのCDです。
Antología, Volumen I
Universidad de Ciencias y Artes de Chiapas
- Divina
- Guapísima
- Mazurka "Urania"
- Ternura
- De rodillas ante tí
- La virgen de mis recuerdos
- Abandonado
- A flote, Reverie
- Tour de noce
- Lirios azules
- Sabrosa
- Ondas muertas
- A la luz de las estrellas
Max A. Ruíz (pf), José Alfredo Torres (pf), Glenda Courtois (pf), Douglas Bringas (pf), Enrique Palomeque (pf), Carlos Chacón (pf), Adaney Cruz (pf)
Álbum del corazón
Universidad de Ciencias y Artes de Chiapas
- Suite romántica
- Harmonías de la floresta, Romance en mi mayor
- ¡Bogando sin rumbo!, Tercera barcarola
- Cielo y mar, Segunda barcaroletta
- Al son de los remos, Tercera barcarola a la habanera
- ¡Soñemos!, Serenata romántica
- ¡Tristeza y desesperación!, Romanza dramática
- El canto del proscrito, Cuarta romanza sin palabras
- Nostalgia vespertina, Canzonetta-mignon
- Invernal, Legenda
- A María, la del cielo, Plegaria
- Dolce tenerezza, Foglieta d'album
- Amor y celos, Diálogo descriptivo
- Suite elegiaca
- Más allá de la vida, Meditación
- Llorando en silencio, Lieder - Impromtu en la bemol
- ¡Lágrimas de sangre!, Segunda romanza sin palabras
- Penas secretas, Primera berceuse
- Hojas de hiedra, Segunda berceuse
- Rumor de sollozos, Patética reverie
- Canción del desterrado, Dolora
- Ramo de acacias, Melodía elegiaca
- Una flor en su tumba, Pequeña marcha fúnebre
- Lamentos de dolor, Melodía-nocturno
- Gotas amargas, Hoja de álbum
- A través de una lágrima, Walse lánguido
Douglas Bringas (pf)
2014年の録音。
Fernando Soriaに関する参考文献
- Douglas Marcelo Bringas Valdez. Fernando Soria (1860-1934): compositor, crítico y pedagogo. Tesis, Universidad Complutense de Madrid 2017.