Alejandro García Caturlaのピアノ曲リスト
1922
- Las tardes de Campoamor (danzón) カンポアモールの午後(ダンソン)
1923
- El olvido de la canción (danzón) 歌の忘却(ダンソン)
- Tu alma y la mía (danzón) あなたの魂と私の魂(ダンソン)
- Ay mamá, yo te vi bailando (danzón) あ〜ママ、踊っているのを見たよ(ダンソン)
- El saxofón de Cuco (danzón) カッコウのサクソフォーン(ダンソン)
- Laredo se va (danzón) ラレードが行ってしまう(ダンソン)
- Tócala son limón (danzón)
- Cine Méndez (danzón) シネ・メンデス(ダンソン)
1924
- Mi mamá no quiere que yo baile el son (danzón) ママは僕がソンを踊るのを嫌がるんだ(ダンソン)
- Quiéreme camagüeyana (danzón) 私を愛して、カマグエイの女よ(ダンソン)
- Carolyn (fox-trot) キャロリン(フォックス・トロット)
- No quiero juego con tu marido, Danza cubana no. 1 君の夫とは遊びたくない、キューバ舞曲第1番
- La viciosa, Danza cubana no. 2 放蕩女、キューバ舞曲第2番
- La número tres, Danza cubana no. 3 第3番、キューバ舞曲第3番
- Serenata del guajiro 農民のセレナーデ
- Preludio en fa sostenido menor, Op. 15 no. 1 前奏曲嬰へ短調、作品15-1
1924-1925
- Cuentos musicales, Escanas infantiles 音楽の物語集、子どもの情景
- Baladita del niño en la cuna (1924)
- El baile del gnomo Pinocho (1924)
- El scherzito de la lluvia en los cristales (1924)
- La luna me besa por la ventana (1924)
- Fuegos artificiales de juguete (1924)
- Balada del amor bandolero (1924)
- Doctor Gradus ad Parnassum (1924)
- Alba radiante!!! Sol. Sol!!! (1924)
- El caballo encantado (1925)
- Berceuse
1925
- Nadie se muere de amor (danzón) 誰も愛で死んだりしない(ダンソン)
- Doña Francisquita (danzón) フランシスキータ夫人(ダンソン)
- Danza negra 黒人の踊り
- Danza lucumí ルクミの踊り
- Tres preludios, Op. 24 3つの前奏曲集、作品24
- Jardines en quietud 静寂の庭
- Después de la lluvia salió la luna 雨の止んで月が出た
- Fuegos artificiales 花火
- Preludio-vals 前奏曲ーワルツ
1926
- Piano easy jazz music (ragtime) ピアノの簡単なジャズ音楽(ラグタイム)
1927
- Son en do menor ソンハ短調
- Toccata en do menor トッカータハ短調
- Pieza en forma de son ソンの形式の小品
- Preludio corto no. 1 "Mi vida será siempre triste" 短い前奏曲第1番「私の人生は常に悲しみだろう」
- Preludio corto no. 2 "Tu amor era falso" 短い前奏曲第2番「あなたの愛は偽りだった」
- Preludio corto no. 3 "Un sueño irrealizable" 短い前奏曲第3番「かなわぬ夢」
- Sonata corta 短いソナタ
- Vals corto 短いワルツ
- Tres grandes preludios 3つの大きな前奏曲集
- El barco de la tarde 午後の船
- Preludio pagano 異教徒の前奏曲
- Agitato cantabile アジタート・カンタービレ
- Sonatina "Ojos que te vieron ir... cuándo te verán volver...." ソナチネ「貴方を見つめる瞳は去った・・・貴方が戻るのを見た時・・・・」
- Elegía litúrgica 典礼的な悲歌
- Pavana パヴァーヌ
- Canzonetta カンツォネッタ
- Momento musical 楽興の時
- Pieza en forma de vals ワルツの形式の小品
- Pieza en forma de minuet メヌエットの形式の小品
- Pieza en forma de danza cubana ダンサ・クバーナの形式の小品
- Pieza en forma de giga ジーグの形式の小品
- Messieur le agriculteur... (Pieza humorística) 農民様たち・・・(ユーモアのある作品)
- Danza del tambor 太鼓の踊り
1928
- Primera comparsa コンパルサ第1番
- Canon a 2 voces 二声のカノン
- Fuga libre a 2 voces 二声のフーガ・リブレ
- Gaviotas カモメ
1930
- Son en Mi bemol ソン変ホ長調
- Comparsa (Negro dance) コンパルサ(黒人の踊り)
1936
- Preludio Homenaje a Changó シャンゴを讃える前奏曲
1937または1938
- Berceuse para dormir a un negrito 子どものおやすみの為の子守歌
- Berceuse para el cariño más puro de mi vida, de Papá
1938
1939
Alejandro García Caturlaのピアノ曲の解説
1924
- Mi mamá no quiere que yo baile el son (danzón) ママは僕がソンを踊るのを嫌がるんだ(ダンソン)
ト長調。カトゥルラ初期の、サロン風の優雅で陽気な、和音進行も単純で一本調子な曲。- No quiero juego con tu marido, Danza cubana no. 1 君の夫とは遊びたくない、キューバ舞曲第1番
カトゥルラの作った《Danza cubana》の3曲は、曲の構成がA-Bの二部形式なことや、愛嬌あるロマンティックな小品なことなど、コントラダンサの伝統的形式および、サウメルやセルバンテスなど先輩キューバ人作曲家の影響を強く感じる作品だ。この曲の前半はイ短調の切ない旋律で、後半はイ長調になり甘い雰囲気。- La viciosa, Danza cubana no. 2 放蕩女、キューバ舞曲第2番
前半はト短調の物悲しい調べ。後半は変ホ長調になり甘美な雰囲気になる。- La número tres, Danza cubana no. 3 第3番、キューバ舞曲第3番
前半は嬰ハ短調、後半はイ長調。ゆったりとしたシンキージョやトレシージョのシンコペーションのリズムにのって、物悲しい旋律が奏されが、絶妙な不協和音が多い。この不協和音がキューバの作曲家はもとより、他の国の作曲家にもあまり見られない独特のハッとするような和音で、それを、さしたる音楽専門教育を受けたことの無い18歳のカトゥルラが作曲しているのは、天才としかいいようがない。1925
- Danza lucumí ルクミの踊り
かつてナイジェリアのヨルバ語族が奴隷としてキューバ東部に連れてこられ、彼らはルクミ(ヨルバ語族)と呼ばれていた。カトゥルラが初めて、自分の音楽にアフロキューバ的な響きを本格的に取り入れた曲で、完全四度や長二度を多用した響きが野性的。曲は黒人の踊りらしい8小節の旋律が7回も繰り返さしながら変奏される。最初は単旋律で始まり、段々音を増しテンポも速くなり、激しく盛り上がる。1927
- Pieza en forma de son ソンの形式の小品
強いて言えばト長調、A-A形式。左手リズムは2/4拍子の各拍の頭はおおむね前の拍の16分音符からタイで繋がったシンコペーションで、それにのって長調にも短調ともつかぬ右手重音の旋律が奏される(下記の楽譜)。ソンらしいシンコペーションをバッチリ効かせながらも、不安定な和声が独特の雰囲気で、「少ない音符から豊かな響きを醸し出す」カトゥルラらしい音楽だ。
Pieza en forma de son、5-8小節、Ediciones del Patrimonio Musical de Cubaより引用- Preludio corto no. 1 "Mi vida será siempre triste" 短い前奏曲第1番「私の人生は常に悲しみだろう」
楽譜に小節線はなく(曲の真ん中に一カ所のみ点線があるのみ)、調性も定まらない謎めいた作品。完全五度で奏される旋律が、最初は静かに、徐々に音域を増して響く。- Preludio corto no. 2 "Tu amor era falso" 短い前奏曲第2番「あなたの愛は偽りだった」
醒めた雰囲気ながら意味深げな4分音符和音が続き、徐々に盛り上がって行く。- Preludio corto no. 3 "Un sueño irrealizable" 短い前奏曲第3番「かなわぬ夢」
強いて言えば変イ長調だが、静かに流れる四声の調べは七度や九度の音程が多く、霧がかかった夢の世界のような不協和音が響く。- Sonatina "Ojos que te vieron ir... cuándo te verán volver...." ソナチネ「貴方を見つめる瞳は去った・・・貴方が戻るのを見た時・・・・」
穏やかな動きの3拍子の曲で、強いて言えばメヌエット風。但し、音は右手と左手で調が異なる多調であるのみならず、2~3小節おきにその調自体突飛な転調を繰り返し、奇怪な響きの曲だ。- Elegía litúrgica 典礼的な悲歌
楽譜の冒頭には「私の友人カタリーナに捧げるー彼女の歌う典礼歌に霊感を受けこのエレジーを作った」と記されている。カタリーナとはカトゥルラの妻Manuelaの妹で、黒人であったカタリーナが歌う(おそらく)アフリカ由来の典礼歌の神秘的な雰囲気にカトゥルラは影響を受けたのだろう。四~五声の合唱曲のような作りで、調性の定まらない神秘的な不協和音が静かに奏される。- Canzonetta カンツォネッタ
静かな旋律が三〜四声のポリフォニックで奏されるが、減8度や増8度を含む不協和音が多調にも聴こえる謎めいた響きの曲。- Messieur le agriculteur... (Pieza humorística) 農民様たち・・・(ユーモアのある作品)
1927年1月にハバナ大学を卒業し、故郷のレメディオスに戻ったこの年は、カトゥルラが最も多くピアノ曲を作曲した年である。カトゥルラはシリアスな作品だけでなく、地元の友人を楽しませるために軽い曲もいくつか作っていて、この作品はそんな一曲である。とは言えグリッサンドを多用し、多調な所が多く、エリック・サティの作品のような〜分かったような分からないような〜皮肉めいた解説が楽譜のあちこちに記されており、けっこう凝った冗談音楽だ(解説がスペイン語、フランス語、英語のごちゃ混ぜなのもワザとであろう)。最初は「陽気に、とても戯けて Alegre y muy jocoso」と記されたト長調の4拍子ブンチャッチャッブンで始まり、5オクターブのグリッサンドが時々挟まれる。「農民様たちはクエッカを口ずさむ Messieur le agriculteur tararea la "cueca"」で3連符混じりの暢気な旋律が現れ、「頭を振って・・ agite la tête...」を経て、「・・農場への道・・ ...camino a la "farm"...」で曲は3拍子になり、「残酷な石 una piedral cruel」にぶつかり曲は急停止、「農民様たちは歩き疲れて cansado le messieur recorta il passo」で気怠い2拍子になり、「だいたいラグのテンポ cuasi un tempo di rag」が現れ、「正にラグタイム Just a Rag time」のリズムになり、「彼の親愛なる友人の別の農民が見えてくる m. agriculteur divisa su cher ami le otre agriculteur」、最後は「見ると瓶だ un botello a la vista」で終わる。- Danza del tambor 太鼓の踊り
この曲は面白い!。左手の九度のリズムはコンガを打つ音だろう。右手の旋律は3連4分音符混じりでコンガのリズムとずれ(下記の楽譜)、不協和音が野性的に鳴りながら段々盛り上がり、最後はテンポアップして終わる。この《太鼓の踊り》と《ルクミの踊り》は1929年にカトゥルラ自身により管弦楽に編曲され、《3つのキューバ舞曲集 Tres danzas cubanas》のそれぞれ第1曲、第3曲に収められた。
Danza del tambor、1-11小節、Editions Maurice Senartより引用1930
- Comparsa (Negro dance) コンパルサ(黒人の踊り)
未完のバレー曲《オリレ Olile》の中の一曲として作られた曲で、ピアノ譜はアメリカの雑誌 "New Music Quarterly" で出版された。ピアノ譜を見ると三段楽譜~四段楽譜に管弦楽のスコアを圧縮して詰め込んだような感じで、カトゥルラが管弦楽での完成を目指していたことが分る楽譜だ(管弦楽譜は残されていないーというかカトゥルラが総譜を書いたかも不明)。コンパルサとは主にキューバ東部の伝統的なカーニバル・パレードのこと。アフロ=キューバ音楽と、カトゥルラの高度な作曲技法が巧くミックスされた興味深い作品である。曲は左手低音に黒人の太鼓を思わせるラ♭-ミ♭-ドのオスティナートで始まり、これにのって右手にラ♭-シ♭-レ♭-ミ♭-ソ♭から成るペンタトニックの旋律が静かに奏される。旋律が繰り返される時には、ファのリディア旋法による対旋律が絡み多調だ(下記の楽譜)。経過句を経て、ペンタトニックの旋律が今度はド-レ-ミ-ソ-シ♭の音階で奏され、ここでは中声部の対旋律はシ-ド♯-ファ♯-ソ♯のテトラトニック、低音オスティナートはレ♭-ラ♭-ファと3つの調がぶつかる多調?だ。カーニバルの行進が段々近づいているのを描写するように曲は盛り上がり、クライマックスはfffで両手オクターブ和音が強打され、最後は冒頭の旋律がpで奏されて終わる。
Comparsa (Negro dance)、17-26小節
1937または1938
- Berceuse para dormir a un negrito 子どものおやすみの為の子守歌
"negrito"とはnegroの示小辞で直訳すれば「小さな黒人」となる。黒人の子どものための子守歌らしく、全曲五音音階の呟くような旋律から成る。旋律は素朴だが、やがてポリフォニックになり、更に多調になるのが魔法がかったような雰囲気。旋律も伴奏も音域が広がって盛り上がった後、冒頭の旋律が静かに繰り返され曲は終わる。1938
- Berceuse campesina 田舎の子守歌
カトゥルラのピアノ曲の中では最も知られている作品。米国の楽譜出版社Carl Fischerが出版した "Masters of Our Day" というシリーズに収めるために作られた曲。ヘ長調。ソンのリズムによるオスティナート風静かな左手伴奏にのって、自由に即興しているような旋律が歌われる(下記の楽譜)。和音が基本的にI度とV度の繰り返しのみから出来ている所はショパンの子守歌に似ているが、響きはずっと素朴で、正に田舎のお母さんの歌う子守歌が聞こえてくるよう。曲はI度とV度を繰り返しつつ、最後はリタルダンドが軽くかかった程度でV度和音の方でフッとーまるで蝋燭の炎がふっと消えるようにー終る。(この終わり方は、キューバの先輩作曲家マヌエル・サウメルのピアノ曲《明かり La luz》に似ているような‥‥。)
Berceuse campesina、1-7小節、Ediciones del Patrimonio Musical de Cubaより引用1939
- Son en fa menor ソン、ヘ短調
ソンのリズムにのって物悲しい素朴な旋律が奏され、転調しながら変奏して繰り返される。中間部では少ない音の中で多調になって、複雑な響きの曲。曲の最後が低音部ファ♭-ラ♭音(変へ長調=ホ長調)の音で終わっているのも、「最小の音で最大の効果」のお手本のような絶妙な音使いだ(下記の楽譜)。この曲も《田舎の子守歌》同様、Carl Fischer社出版の "Masters of Our Day" というシリーズから初版された。"Masters of Our Day" シリーズは、現代作曲家たちに、初心者でも弾けるピアノ曲を委嘱したのだが、カトゥルラが最初に提出した楽譜は予想外に技巧的に難しかったのだろう。Carl Fischer社はカトゥルラに「ソンをもっと簡単にできる可能性を考えて、より易しく弾けるよう変えて頂きたい(例えば3段譜などは止めて頂きたい)。」と曲の改変を要求し、カトゥルラは已む無く作品を簡単にして再提出し、出版を認められたとのこと。元の難しい?版は現存していなく、残念だな~。
Son en fa menor、37-41小節、Ediciones del Patrimonio Musical de Cubaより引用