Felipe Villanuevaのピアノ曲リスト
斜字は出版もされず、手稿譜も現存していない(要は存在が現在確認できない)作品です。下記に記した以外にもビジャヌエバによるピアノ用編曲ものの楽譜もあり、ビゼーのカルメンの「ピアノのための編曲~1. ハバネラ、2. マラゲーニャ、3. 闘牛士の歌」などが昔は出版されていました。
1872
- La despedida, Mazurka 別れ、マズルカ
1873?
- El último adiós, Danza 最後の別離、ダンサ
1874
- La caída de las montañas de Tecámac, Vals テカマックの山の斜面、ワルツ
1876
- A orillas del Guadalquivir, Vals グアダルキビル川の畔で、ワルツ
- Natalia, Vals ナターリア、ワルツ
1879
- La brisa, Danza そよ風、ダンサ
- La erupción del peñol, Danza
- La llegada del ciclón, Danza サイクロンの襲来、ダンサ
1880
- Ana, Schottisch アナ、ショッティッシュ
- ¡Ay qué dos!, Schottisch
- La pedradas, Danza あてこすり、ダンサ
- Luz, Schottisch ルス、ショッティッシュ
1887
- Gavota, a cuatro manos 連弾のためのガボット
1888
1890
1891
1892
作曲年代不詳
- Amar..., Nocturno 愛する...、夜想曲
- Tres danzas humorísticas, primera colección 3つのユーモラスなダンサ、第1集
- Algo se pesca
- ¿Y por qué?
- ¡Oh!, la, la
- Tres danzas humorísticas, segunda colección 3つのユーモラスなダンサ、第2集
- Amorosa
- Adelante
- Enredo
- Dos danzas 2つのダンサ
- Cupido キューピッド
- Venus ビーナス
- Dos gavotas 2つのガボット
- Ebelia, Mazurka de salón エベリア、サロン風マズルカ
- El cariño, Vals 愛情、ワルツ
- En el paraíso, Dos danzas 天国にて、2つのダンサ
- Adán アダム
- Eva エバ
- En el baile, Mazurka 踊りで、マズルカ
- Idolina, Melodía イドリーナ、メロディア
- María, Mazurka マリア、マズルカ
- Mariquita, Polka てんとう虫、ポルカ
- Primera mazurka, Op. 20 マズルカ第1番、作品20
- Segunda mazurka, Op. 25 マズルカ第2番、作品25
- Tercera mazurka, Op. 27 マズルカ第3番、作品27
- Recuerdo, Vals 思い出、ワルツ
- Un sueño después del baile, Trozo de salón en forma de danza 踊りの後の夢、ダンサの形式のサロン風小品
- Vals ワルツ
- Vals de concierto 演奏会用ワルツ
- Vals lento ゆっくりしたワルツ
Felipe Villanuevaのピアノ曲の解説
1880
- Ana, Schottisch アナ、ショッティッシュ
変ホ長調、前奏-A-B-A-C-C-D-C-D-C-A-B-A-コーダの形式。付点リズムが語りかけるような曲。Bはハ短調、Cは変イ長調、Dはへ短調になる。- Luz, Schottisch ルス、ショッティッシュ
"Luz"とは「光」とかの意味だが、この曲はビジャヌエバの女弟子のLuz Delgadoに献呈されたので、その女性名を指していると思われる。イ長調。形式は前奏-A-B-A-C-(B-A-C-)D-C-A-B-A。荘厳な前奏はオーケストラを模したのであろう、楽譜にティンパニー、クラリネット、ヴァイオリンソロとか書き込みがある。引き続いて明るいポルカ風のAが現れる。Aの繰り返しの間に嬰ヘ短調Bやロ短調Dの重々しい部分や、長閑なニ長調Cが挟まれる。1888
- Causerie, Vals lento お話、ゆっくりしたワルツ
変ニ長調、A-B-A'-コーダの形式。甘く話しかけるようなワルツ。Bは変イ長調になり、旋律が中音部に現れる。- Vals poético 詩的なワルツ
変ト長調、A-B-A'-コーダの形式。ビジャヌエバの名刺代わりのような代表曲。中音部にチェロのような旋律が奏され、控えめに伴奏が添えられるだけの曲だが、夢を見ているようなホンワリとした雰囲気が何とも美しい。1890
- Lamento, a la memoria del gran patricio Benito Juárez 悲歌、偉大な英雄ベニート・フアレスの想い出に
メキシコ大統領を務めたベニート・フアレス (1806-1872) はメキシコ干渉でメキシコを侵略したフランスとの戦いを指揮し、1867年にフランス軍を破り「メキシコ建国の父」と讃えられる英雄で、ビジャヌエバと同じく先住民族であった。この曲はベニート・フアレスの息子Benito Juárez Mazaの依頼で作曲された。ロ短調、A-B-A'形式。冒頭は、フアレスの死を悼むような重々しい旋律が中~低音の3オクターブで奏される。Bはフアレスの想い出を切々と歌うような旋律が流れる。1891
- Sueño dorado, Mazurka 金色の夢、マズルカ
ニ長調、前奏-A-B-A-C-D-C-A-B-A-コーダの形式。夢見るような前奏に引き続き、優雅な雰囲気のマズルカが綿々と奏される曲で、Bはイ長調で3連符連打が華やか。C-D-Cはトリオにあたる部分で、Cはト長調でのどかな旋律。Dはホ短調で高音スタッカートの旋律から成る。1892
- Amor, Vals de salón 愛、サロン風ワルツ
これはビジャヌエバのピアノ曲の中でもとりわけ甘く、美しい作品です!。変ホ長調。A-B-Aの3部形式で綿々と愛の歌が綴られる。ヘミオラ混じりの旋律が粋な雰囲気だ。Bの終わりからAに戻る辺りは特にしっとりとしていて、Aが左手に再現され、右手に音階のオブリガートがつく所は美しい。(ちょっとチャイコフスキーっぽいけど。)
Amor、66~83小節、EL FOLKLORE MUSICAL DE LAS CIUDADES, p413, Publicaciones de la secretaria de educacion publica. México 1930.より引用
- Minueto メヌエット
嬰ト短調、A-A-B-B-C-A-B-A形式。題名通りの古典的な曲。Bはロ長調になる。Cはホ長調になりちょっとロマンティックな響き。ビジャヌエバ以外にも19世紀後半のメキシコの作曲家はこういった作品をたくさん作っている。作曲年代不詳
- Amar..., Nocturno 愛する...、夜想曲
変ホ長調、前奏-A-B-A'形式。リカルド・カストロのピアノ曲を思わせる華やかなアルペジオの前奏に引き続き、美しい高音の旋律が現れる。Bは変イ長調で、左手のアルペジオの伴奏にのって滑らかなオクターブの旋律が歌われる。再現部A'は旋律に6連16分音符の装飾が付いてきらびやか。全曲これといった複雑な展開もなく、和音も単純で、ひたすらピアノの響きの美しさに頼った所はビジャヌエバ版《乙女の祈り》と言った感じかな?。- Tres danzas humorísticas, primera colección 3つのユーモラスなダンサ、第1集
短い曲集で、全3曲を繰り返しも含めて弾いても3分少々。構成も和声も凝った所がないが、題名通りの愉快な曲。「ダンサ」とはキューバの民族舞踊コントラダンサがダンサと略され、メキシコにも輸入されて当時流行した音楽である。3曲共、前半はffの堂々とした部分、後半は穏やかな部分から成る2部形式で、これはキューバのコントラダンサの形式に則っている。一方、全体的に3連4分音符、3連8分音符がふつうの8分音符、16分音符と入り混じって現れ、その複雑なリズムが面白い。3曲ともニ長調。第1曲Algo se pescaは3連符混じりの勇ましい部分と静かな半音階旋律の部分からなる。
- Algo se pesca
- ¿Y por qué?
- ¡Oh!, la, la
Algo se pesca、1~9小節、EL FOLKLORE MUSICAL DE LAS CIUDADES, p394, Publicaciones de la secretaria de educacion publica. Mexico 1930.より引用
第2曲¿Y por qué?は跳ねるような16分音符の部分と静かなハバネラ風の部分からなる。(後者の中声部のラの音の3連符が ¿Y por qué? と歌うらしく楽譜に記されている。)第3曲¡Oh!, la, laは冒頭のベースのモチーフに楽譜上Oh, la, laと記されている。後半の部分の旋律はアルペジオの和音でおしゃれ。- Tres danzas humorísticas, segunda colección 3つのユーモラスなダンサ、第2集
第1、2曲はニ長調、第3曲はト長調。第1曲Amorosaは題名通りの落ち着いた甘い曲。第2曲Adelanteは軽快な曲。第3曲Enredoは賑やかな曲で、特に後半は右手が2/4拍子、左手が3/4拍子でそのズレが一層賑やかな雰囲気を醸し出す。
- Amorosa
- Adelante
- Enredo
- Dos danzas 2つのダンサ
2曲続けて弾かれる短い曲。第1曲Cupidoはト長調、華やかな曲。第2曲Venusはト長調、軽快な曲。
- Cupido キューピッド
- Venus ビーナス
- Ebelia, Mazurka de salón エベリア、サロン風マズルカ
変ホ長調、前奏-A-B-B'-C-D-E-D-A-B-B'-A-コーダの形式。全体的に華やかな雰囲気の曲。前奏は、これからマズルカが始まるとは思えないような荘厳な響き。続いて華やかなマズルカが奏される。Bは変イ長調で、B'はBの変奏だが高音部16分音符がとてもきらびやか。Cはヘ短調、Dは変イ長調、Eは変ニ長調になる。- En el paraíso, Dos danzas 天国にて、2つのダンサ
2曲続けて弾かれる短い曲。第1曲Adánはニ長調、騒がしい前半と4分3連符が優雅な後半からなる。第2曲Evaはニ長調、華やかな前半と抒情的な後半からなる。
- Adán アダム
- Eva エバ
- En el baile, Mazurka 踊りで、マズルカ
ハ長調、A-B-A-C-D-C'-A-B-A形式。冒頭の部分は右手の旋律も左手の伴奏もオクターブで力強い。中間部のトリオのCはヘ長調になって優雅。- Idolina, Melodía イドリーナ、メロディア
変ロ長調。Larghettoの厳かな前奏に引き続き、Andante amorosoの抒情的な旋律がアルペジオの伴奏にのってゆったりと奏される。最後の部分の右手はトリルを弾きつつ旋律も弾くようになっていてちょっと難しい。- Primera mazurka, Op. 20 マズルカ第1番、作品20
ニ長調、A-A-B-A-C-D-C-A-B-A形式。素朴な田舎の踊りを思わせるマズルカ。Cはト長調。Dのホ短調の部分のみ歌曲のようにテンポルバートがかかる。当時ヨーロッパで有名なスコットランド出身のピアニストのオイゲン・ダルベール Eugene D'Albert (1864-1932) が1890-1891年にメキシコを演奏旅行した際、ダルベールはメキシコ人作曲家のピアノ曲を演奏会のプログラムに入れようと考え、多くの楽譜を参照した。その中から彼が選んだのがビジャヌエバのこの曲で、実際に演奏会で度々弾いたとのことである。- Segunda mazurka, Op. 25 マズルカ第2番、作品25
イ短調、A-A'-B-A-C-A'-B-A形式。Aの旋律は寂しげだが、Bのアルペジオ混じりの旋律が情熱的。中間部Cはヘ長調になる。- Tercera mazurka, Op. 27 マズルカ第3番、作品27
変ニ長調、A-B-A-C-A-A'形式。マズルカというよりかは繊細なワルツの趣の美しい曲。Aの旋律はビジャヌエバらしい静かな打ち明け風で、ベースが半音階進行で下がるのが滑らかな雰囲気。Bは変ロ短調。Cは変ト長調になり、ベルカント調の旋律が劇的。- Un sueño después del baile, Trozo de salón en forma de danza 踊りの後の夢、ダンサの形式のサロン風小品
ニ長調、A-B-A'形式。サパテアード風の軽快な踊りと、中間部の優雅な歌の部分から成る。